英日翻訳をしていると、表面上の意味で日本語にすると、文脈、状況からしっくりしない、意味がよく通らない、という表現になってしまうことがある。
たとえば、ようやく訳了したSpider-Manの小説3部作第1弾Spider-Man’s Social Dilemma by Preeti Chhibbeに、次の表現があった。
“I’LL SMASH YOU TO BITS!”
Flint’s voice roared from all around. Spidey would’ve consider it a neat trick if it wasn’t so terrifying.
Spidey would’ve consider it a neat trick if it wasn’t so terrifying.は直訳すれば、
「もしそれがそんなに恐ろしくなかったら、スパイディはそれをおもしろいトリックだと思ったかもしれない」
ということになる。
フリント・マルコ/サンドマンの声がありとあらゆる方向から響きわたったので、それが怖くてしかたがなく、トリックやサウンドエフェクトのようにはとても思えなかった(全然笑えなかった)ということだ。
こういう場合、「意訳が必要だ」との一言で片づけようとする人もいるが、わたしはそうは思わない。
①英語と日本語の構造はまるで違う。
②英語の文も言い方も、それを書く人それぞれ違うので、すべて定理化できない。
ということを頭に置いて、日本語を母語する者は、英日翻訳にも日英翻訳にも自分が英語を書くことにも取り組むべきであると思う。
それを念頭に置いたうえで、「表面上はそういう意味だが、どうしてもしっくりしない、意味が通じない」という訳文を作ってしまった時は、
③逆の言い方をしてみる
ということが意外に効果的だ。
よって、この
Spidey would’ve consider it a neat trick if it wasn’t so terrifying.
であれば、
Spidey wouldn’t have consider it a neat trick if it was so terrifying.
と逆の言い方で考えてみれば、
「もしそれがそんなに恐ろしくなかったら、スパイディはそれをおもしろいトリックだと思ったかもしれない」
は、
「もしそれがそんなに恐ろしければ、スパイディはそれをおもしろいトリックだなんて思えなかっただろう」
と置き換えられるから、
「それはすごくおそろしくて、とってもおもしいトリックだなんて思えなかった」
ということになるから、
「サンドマンの声があちこちからこだまして聞こえてきてすごく怖くて、とってもおもしろいトリックだなんて思えなかった」
と考えられる。
であれば、
「おまえを粉々にしてやる!」
フリント・マルコ/サンドマンの声があらゆる方向から響き渡った。怖すぎて、おもしろいトリックだなんてとても思えなかった。
とくらいに訳せばよいだろう。
明日のGetUpEnglishは英語は表面上はそういうことだが、違う日本語の言い方にしないとしっくりしない、意味が通じないという例をいくつか紹介する。