GetUpEnglish

日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

GetUpEnglishについて

毎日更新! GetUpEnglish Updates Every Day! Since April 1, 2006 (c) 2006-2025 Uesugi Hayato(上杉隼人)

東田直樹さま、すばらしい推薦文をありがとうございます。

2025-03-23 01:13:52 | All the Little Bird-Hearts
 自閉症者のもどかしさをここまで情緒的に綴る文章は僕には書けない。
I don't think I could ever write something so emotionally powerful about the frustrations faced by people with autism.

 東田直樹さま
 すばらしい推薦文をありがとうございます。
 お言葉痛み入ります。
 
 
https://x.com/higashida_naoki/status/1902642755811303822
 
https://ameblo.jp/higashida-naoki/entry-12890670956.html
 
 今訳しているヴィクトリア・ロイド=バーロウさんのエッセイに、

自閉症の作家たちも本物の文学の規範【ルビ キャノン】を築き上げて、自閉症の内的世界が外側からの誤解や歪んだ視点ではなく、自閉症者自身の言葉によってようやく正確に伝えることができる、とわたしは期待を抱いている。

という一節があります。
 東田さんは自閉症の人たちが見た世界を正確に見せてくれます。それによって、自閉症の人たちも、なんだ、わたしたちと同じだよ、とみんなに教えてくれます。
 東田さんはロイド=バーロウさんが言うように、新しい文学を作り上げています。
 翻訳者として、東田さんやロイド=バーロウさんの言葉と文学を世界中に伝えられることを心から楽しみにしています。

 2025/3/23  上杉隼人

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ヴィクトリア・ロイド=バーロウ『鳥の心臓の夏』(朝日新聞出版)、見本到着!

2025-03-11 22:06:20 | All the Little Bird-Hearts
 ヴィクトリア・ロイド=バーロウ『鳥の心臓の夏』(上杉隼人訳、朝日新聞出版)、見本到着!
 ありがたいことにいろいろな仕事をいただけますが、自閉症と障がい者支援につながる本の翻訳は精力的に取り組みたいと思っているので、
 https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/82b2b56c1c555c1bc80a8c005b05d947
 この本が出版できて、本当にうれしいです。
 本書の刊行により、翻訳書は100冊となりました。多くの方々に深く感謝します。
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鳥の心臓の夏
ヴィクトリア・ロイド=バーロウ著
上杉 隼人 訳


「自閉症者のもどかしさをここまで情緒的に綴る文章は僕には書けない」
――『自閉症の僕が跳び跳ねる理由』著者・東田直樹氏推薦! 

自閉スペクトラム症のサンデーは白いものしか口にしない。他人のかかわりは暗記したマナーブックの指南通り。自分のルールを守りながら、娘のドリーと二人ひっそりと暮らしている。しかし、ある夏の日、唐突に現れた自由奔放で謎の魅力をもつ隣人によって、これまでの日常が侵されていく。一方で、ドリーは隣人に惹かれていく。幼い頃から母親にその特性をみとめてもらえなかったサンデー。現在も、唯一の愛する家族である娘との関係に悩み続けている。自身も同じ特性をもつ著者の初めての作品にして、ブッカー賞ノミネート作。

<本書の内容>
火は光と見紛う/輝く魚/冬の蜂/大きな声で話して、普通に話して/辿れない心/精巧に作られたおもちゃ/個人の邸宅/やわらかい羽と鋭い目/この見せびらかすようなキス/猫の眠り/所有欲に似た愛情/際立って違うもの/ある種の告白/イーヴィは水が大好き

<著者略歴>
ヴィクトリア・ロイド=バーロウ Viktoria Lloyd-Barlow
イギリスの作家。ケント大学でクリエイティブ・ライティングの博士号を取得。2023年発表のデビュー作である本作が、同年のブッカー賞のロングリスト入りを果たし、自閉スペクトラム症の作家として初のブッカー賞候補となる。現在は創作活動を続けながら、自閉スペクトラム症と文学の関係について積極的に発言している(ハーバード大学でも講演)。夫と子どもたちとケントの海岸地域で暮らしている。


<訳者略歴>
上杉隼人Hayato Uesugi
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター、通訳。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(講談社青い鳥文庫)、ムスタファ・スレイマン『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind 創業者の警告』(日経BP/日本経済新聞出版)など多数。自閉スペクトラム症関係の本の訳書に、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文藝春秋)がある。


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鳥の心臓の夏  3月21日発売

2025-03-02 00:09:44 | All the Little Bird-Hearts
鳥の心臓の夏 単行本 – 2025/3/21
ヴィクトリア・ロイド=バーロウ (著), 上杉 隼人 (翻訳)

「自閉症者のもどかしさをここまで情緒的に綴る文章は僕には書けない」
――『自閉症の僕が跳び跳ねる理由』著者・東田直樹氏推薦! 

自閉スペクトラム症のサンデーは白いものしか口にしない。他人のかかわりは暗記したマナーブックの指南通り。自分のルールを守りながら、娘のドリーと二人ひっそりと暮らしている。しかし、ある夏の日、唐突に現れた自由奔放で謎の魅力をもつ隣人によって、これまでの日常が侵されていく。一方で、ドリーは隣人に惹かれていく。幼い頃から母親にその特性をみとめてもらえなかったサンデー。現在も、唯一の愛する家族である娘との関係に悩み続けている。自身も同じ特性をもつ著者の初めての作品にして、ブッカー賞ノミネート作。

<本書の内容>
火は光と見紛う/輝く魚/冬の蜂/大きな声で話して、普通に話して/辿れない心/精巧に作られたおもちゃ/個人の邸宅/やわらかい羽と鋭い目/この見せびらかすようなキス/猫の眠り/所有欲に似た愛情/際立って違うもの/ある種の告白/イーヴィは水が大好き


<著者略歴>
ヴィクトリア・ロイド=バーロウ Viktoria Lloyd-Barlow
イギリスの作家。ケント大学でクリエイティブ・ライティングの博士号を取得。2023年発表のデビュー作である本作が、同年のブッカー賞のロングリスト入りを果たし、自閉スペクトラム症の作家として初のブッカー賞候補となる。現在は創作活動を続けながら、自閉スペクトラム症と文学の関係について積極的に発言している(ハーバード大学でも講演)。夫と子どもたちとケントの海岸地域で暮らしている。

<訳者略歴>
上杉隼人Hayato Uesugi
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター、通訳。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(講談社青い鳥文庫)、ムスタファ・スレイマン『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind 創業者の警告』(日経BP/日本経済新聞出版)など多数。自閉スペクトラム症関係の本の訳書に、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文藝春秋)がある。
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ALL THE LITTLE BIRD-HEARTS(2)

2024-06-15 07:08:29 | All the Little Bird-Hearts
 2024/4/2の国際自閉症啓発デーに、Viktoria Lloyd-BarlowのAll the Little Bird-Heartsを紹介した。

 本日のGetUpEnglishはその一節を紹介したい。
 主人公のSunday Forresterは自閉スペクトラル症だ。娘Dollyととともに生活している。これまでもサンデーは日常の生活の中で定型発達者の中でうまくコミュニケーションをはかることができなかった。
 この小説が驚かされるのは、そのサンデーの感じること、心の動きが自閉症の視点から書かれていることだ。

I have perfected a sound like an exhalation for people who talk like this: Ha! This effectively indicates that I am both amused by and understand their point. It is the answer to all social riddles that cannot be solved by stating the alternative option: ‘That’s interesting.’ People like this observation, too, but both responses must only be made during the silences between their statements and not spoken during their speech, even if they are repeating themselves. Do not reference their repetition or correct them, however factually wrong they are. People, too, like eye contact. But not too much. I have a system for this, as I do for many of the social situations in which I find myself. I hold the person’s gaze for five seconds and then away for six, then back on for five. If I am unable to reach five seconds, I try instead for three before allowing myself to look away.
 こんな話し方をする人たちに対して、わたしは〝はっ!〟と息を吐くような音を完璧に出せるようにしている。これによって、わたしはあなたの言いたいことを理解しています、楽しんでいます、と問題なく示せるのだ。この音を出すことで、「それは面白いですね」というほかの選択肢を口にすることでは解決できないすべての社会の謎に答えを示すことができる。人々は「それは面白いですね」という言い方も好むが、その表現も先ほどの〝はっ!〟も人々が話を止めて口を閉じているあいだに発しなければならず、たとえ向こうが同じことを繰り返しているとしても、話をつづけているあいだは決して口にしてはならないし、どれほど事実と異なっていても訂正するようなことをしてはならない。人々は目を見て話すことも好むが、あまりじっと見つめてしまってもいけない。自分が置かれた多くの社会状況と同じように、「人の目を見て話すこと」に対してもわたしはひとつの方式を構築している。相手の視線を5秒間見つめ、それから六秒間目を逸らし、ふたたび五秒間見つめるのだ。五秒間見つめるのがむずかしければ、三秒を目指し、その後目を逸らす。

 自閉症の人たちはうまくコミュニケーションがはかれないが、頭の中ではこんなふうに考えていることがよくわかる。
 著者Viktoria Lloyd-Barlowはケント大でクリエイティブライティングの博士号を取得。サンデーと同じように自閉スペクトラム症の当事者、自閉症に人たちが社会でコミュニケーションをはかるむずかしさについて、ハーバード大で講演を行なうなど、積極的に活動している。

 なお、ここでのobservationは「観察」ではなく、「(観察に基づく)言説, 所見」の意味で使われているので、注意。
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ALL THE LITTLE BIRD-HEARTS

2024-04-02 08:05:16 | All the Little Bird-Hearts
 本日4月2日は国連が定めた「世界自閉症啓発デー」。
 日本各地でも啓発イベントが行われます。詳しくは公式サイトへ
世界自閉症啓発デー 日本実行委員会公式サイト

 そして本日のGetUpEnglishは、今年度ブッカー賞のロングリストにノミネートされたこの作品を紹介したい。

ALL THE LITTLE BIRD-HEARTS
by Viktoria Lloyd-Barlow

Sunday Forrester lives with her sixteen-year-old daughter, Dolly, in the house she grew up in. She does things more carefully than most people. On quiet days, she must eat only white foods. Her etiquette handbook guides her through confusing social situations, and to escape, she turns to her treasury of Sicilian folklore. The one thing very much out of her control is Dolly – her clever, headstrong daughter, now on the cusp of leaving home.
 サンデー・フォレスターは自分の育った家で16歳の娘ドリーと暮らしている。サンディは何をするにもほかの多くの人たちより注意している。穏やかな日は白い食べ物だけ食べる。そんなふうに自分のノートには社会で混乱してしまうようなことがあったらどうすればいいか記されていて、もし逃げ出したくなるようなことがあればシチリアの民話の世界に入り込んでしまうこと。そんなサンディがコントロールできないのは、娘のドリーだけ。あの娘は頭がよくて頑固で、家を出で行こうとしている。

 そんなサンデーの家の隣にヴィータとロロというカップルが引っ越しきて、サンデーのきっちり整えられた世界に入り込んでくる。ふたりはサンデーを〝武装解除〟して、サンデーのノートに書かれたルールを次々に破り捨てていく。ヴィータとロロのふたりはサンディの家をよく訪れるようになり、ふたりもサンデーを家に迎え入れる。サンデーはこれまでにないほど人に愛されて、受け入れられたように感じる。でも、ヴィータとロロの上品な装いの下には、何か別の暗いものがある……。なぜならサンデーは、ヴィータがずっと欲しかったものを、つまり娘を持っているからだ。

 「なぜならサンデーは、ヴィータがずっと欲しかったものを、つまり娘を持っているからだ」の英語はFor beneath Vita’s charm lies a desperation and a certain entitled ambition – to have a daughter just like Dolly, all to herself.であるが、注意しないといけない。このforは接続詞で、「というわけは[その理由は]…だから」。
 普通は既述の事柄の理由を示す説明文を導く等位接続詞で、文頭には置かず、次のように使われる。
 It will rain, for the barometer is falling.(雨が降るだろう, 晴雨計が下がっているから。『コンパスローズ英和辞典』)
 この場合は、前の文にほぼつながる形で文頭に置かれている。

 このすばらしい小説を今楽しく読んで、著者の朗読で聞いている。自閉症の人の世界を描いた小説は少なくないが、「自閉症の人の視点」で書かれた小説はほとんどない。

 「自閉スペクトラム症の母親の視点から書かれた本書は著者の詩的なデビュー作で、家族愛、友情、階級、偏見、トラウマといったテーマを巧みに結びつけ、的確な心理描写とウィットを用いて語ってみせる」(ブッカー賞選考委員寸評)

とあるとおり、大変読み応えのある小説だ。
 著者Viktoria Lloyd-Barlowはケント大でクリエイティブライティングの博士号を取得。サンデーと同じように自閉スペクトラム症の当事者で、こうしたテーマにつきハーバード大で講演を行なうなど、積極的に活動している。
 このすばらしい小説をまたGetUpEnglishで紹介したい。

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