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毎日更新! GetUpEnglish Updates Every Day! Since April 1, 2006 (c) 2006-2024 Uesugi Hayato(上杉隼人)

『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【46】(2025/1/25)

2025-01-30 04:48:11 | 桐生タイムス
ハリー‧ポッター公式!  魔法のカエルチョコレートキット』!

「ハリー‧ポッターシリーズ」に出てくる「カエルチョコレート」が簡単に作れる夢のキット『ハリー・ポッター公式 魔法のカエルチョコレートキット』(Harry Potter: Make Your Own Chocolate)が来月、河出書房新社より発売される。大変光栄なことに、同梱のレシピブックの翻訳(英語から日本語)と各種プロモーションツールの翻訳(日本語から英語)を担当させていただいた。 
 今月の「永遠の英語学習者の仕事録」では、プレスリリース文とその英訳を通じて、この魅力的なキットをご紹介する。
 
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000809.000012754.html

 

【「ハリー‧ポッターシリーズ」日本語版刊行から25周 年!】家のキッチンが魔法の空間に。『ハリー‧ポッター公 式 魔法のカエルチョコレートキット』、2025年2月発売。数量限定。
[25th Anniversary of the Japanese Publication of the Harry Potter Series!]
 Transform your kitchen into a magical space with the Harry Potter Official Magical Chocolate Frog Kit, scheduled for release in February 2025. Limited quantities available.


 映画「ハリー‧ポッターシリーズ」でもおなじみの、人気のカエルチョコレートが簡単に作れるファン待望、夢のキット!
The dream kit that lets you make those iconic Chocolate Frogs from the Harry Potter films is almost here!

 ハリー‧ポッターファンならだれもが知る「カエルチョコレート」が家で作れる夢のキット『ハリー‧ポッター公式 魔法のカエルチョコレートキット』かが誕生します。美しい包装箱からカエルの造形、付録の魔法使いカードまで、映画に登場するものとまったく同じ、ファン待望のオフィシャルキットです。
Introducing the Harry Potter Official Magical Chocolate Frog Kit, a dream kit that lets all Harry Potter fans make the iconic "Chocolate Frogs" at home. From the beautiful packaging to the silicone frog mold and lenticular wizard cards, this long-awaited official kit replicates exactly what appears in the movies.

 カエルチョコレートは、記念すべきシリーズ第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』で、主人公のハリーがホグワーツ魔法魔術学校に向かう電車のなかで食べるチョコレートであり、とても有名なお菓子です。物語ではボックスを開けた途端に、チョコでできたカエルは跳んで逃げ去ってしまいます。
The Chocolate Frog is a famous treat that first appears in the memorable Harry Potter and the Philosopher's Stone, the first book of the series. It’s the magical chocolate that Harry eats on the train to Hogwarts School of Witchcraft and Wizardry. In the story, the chocolate frog leaps from its box and escapes as soon as Harry opens it.

 本キットでは、映画版の「カエルチョコレート」を忠実に再現。映画でおなじみのカエルチョコレートが作れるシリコン製の安全な流し型に、できあがったチョコレートを入れるギフトボックスと「動く魔法使いカード」をセットにしました。最高に仕上げるための作り方を記したレシピブックもついていますので、誰でも簡単にハリー・ポッターに登場する魔法のカエルチョコレートを作ることができます。This kit faithfully recreates the "Chocolate Frogs" from the movie. It includes a safe silicone mold to make the Chocolate Frogs seen in the film, foil gift boxes to hold the finished chocolates, and “3D lenticular wizard cards.” With the included recipe book detailing how to make them perfectly, anyone can easily create the magical Chocolate Frogs that appear in Harry Potter.

 カエルチョコレートは、洗ったシリコン製の型に溶かしたチョコレートを流し込み、固めるだけでできあがります。簡単に組み立てることができるおしゃれなギフトボックスも8箱入っています。映画に登場するものとまったく同じデザインのギフトボックスにできあがったカエルチョコレートと「動く魔法使いカード」を入れれば、ハリー・ポッター・ファンへの素敵なプレゼントが完成です。
To make the Chocolate Frogs, simply pour melted chocolate into the washed silicone mold and let it set. The kit also includes eight stylish, easy-to-assemble foil gift boxes. Place the finished Chocolate Frogs and “3D lenticular wizard cards” into the gift boxes, which are designed to look exactly like those in the movie, and you’ll have the perfect gift for any Harry Potter fan.

■キット内容
★シリコン製のカエルの形をしたチョコレートの安全な流し型
★詳細な作り方&アレンジレシピも入ったレシピブック(12頁)
★簡単に組み立てられるおしゃれなギフトボックス(8箱)&「動く」魔法使いカード(8枚/3D)
*本製品は日本の食品衛生法の基準をクリアしています。 主素材/シリコン
*チョコレートは付属していません。
■ Kit Contents
★ Safe silicone mold to create frog-shaped chocolates
★ Recipe book (12 pages) with detailed instructions and creative variations
★ Eight stylish, easy-to-assemble foil gift boxes
★ Eight “3D lenticular wizard cards”
This product meets Japanese food safety standards.
Main material: Silicone
Chocolate is not included.

■今も大人気!「ハリー・ポッター」シリーズ
今年、2024年はJ・K・ローリングによるシリーズ第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』の日本語版刊行(1999年12月刊)からちょうど25周年の節目。全7巻まで刊行された「ハリー・ポッター」シリーズは、誰もが知る子ども向けの、大人気ファンタジー小説です。シリーズ累計発行部数は、世界では6億部、日本では3000万部以上と言われています。
■ The Beloved Harry Potter Series!
This year, 2024, marks the 25th anniversary of the Japanese publication of Harry Potter and the Sorcerer’s Stone, first released in Japan in December 1999. J.K. Rowling’s beloved seven-book series has become a global phenomenon, captivating readers of all ages with its magical world and unforgettable characters. With over 600 million copies sold worldwide and over 30 million in Japan alone, the Harry Potter series continues to enchant readers around the globe.
また、「ハリー・ポッター」シリーズは2001年より映画化も進み8作が公開。さらに、2016年よりスピンオフ作品の「ファンタスティック・ビースト」シリーズも3作が続いて映画化。これらは総称して「魔法ワールド」シリーズと呼ばれており、2018年の段階で全世界累計興行収入が1兆円を突破したと発表されています。
Beginning in 2001, the Harry Potter series was also adapted into a wildly successful film franchise, with eight movies released in total. Since 2016, the magical world has expanded even further with three spin-off films in the “Fantastic Beasts” series. Collectively known as the Wizarding World franchise, these films surpassed 1 trillion yen in global box office revenue by 2018.
(
https://wwws.warnerbros.co.jp/fantasticbeasts/2/news/1207_01.html)

 小説や映画以外でも「ハリー・ポッター」は抜群の人気を博しており、2023年6月には、アジア初、世界では2番目となるスタジオツアー施設「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 – メイキング・オブ・ハリー・ポッター」がとしまえん跡地に開業。また、2022年7月からスタートした日本版の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』は、現在も無期限ロングラン上演中で総観客数は100万人を突破するなど、日本でもますます人気・知名度ともに高まっています。
The magic of Harry Potter extends far beyond the novels and films. In June 2023, “Warner Bros. Studio Tour Tokyo – The Making of Harry Potter” opened on the former site of Toshimaen amusement park, becoming the first Harry Potter studio tour in Asia and only the second in the world. The magic continues on stage with the Japanese production of Harry Potter and the Cursed Child. Since its debut in July 2022, the play has captivated audiences, surpassing one million attendees during its ongoing run. Clearly, the popularity of Harry Potter in Japan shows no signs of slowing down.


★   ★   ★

 河出書房新社のご厚意により、この魅力的なキットを本紙読者にプレゼントする(詳細は後日、本紙でお知らせします)。バレンタインデーにぴったりの1冊。奮って応募ください!

ハリー・ポッター公式 魔法のカエルチョコレートキット
インサイト・エディションズ[編]、上杉隼人[訳]
出版社:河出書房新社


上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数。2025年には日英翻訳をあわせて翻訳書数は100以上になる予定。


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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【45】(2024/12/28)

2024-12-29 12:53:33 | 桐生タイムス
風と光と六十の英語学習者と

 2024年もムスタファ・スレイマン『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』(日経BP/日本経済新聞出版、「永遠の英語学習者の仕事録」第42回、43回[2024年9月、10月]で紹介)、マシュー・ラインハートほか『ディズニーランド・パーク ポップアップ・パークツアー』(河出書房新社、同第44回[2024年11月]で紹介)などの話題書を翻訳刊行することができた。
 本年最後の「英語学習者の仕事録」では、2025年の刊行予定翻訳書を紹介したい。

ハリー・ポッター公式 魔法のカエルチョコレートキット
25th Anniversary of the Japanese Publication of the Harry Potter Series!
Harry Potter Official Magical Chocolate Frog Kit
映画でもおなじみの人気のカエルチョコレートが簡単に作れる
ファン待望、夢のキット!
The dream kit that lets you make those iconic Chocolate Frogs from the Harry Potter films is almost here!

 
 2025年2月には『ハリー・ポッター公式 魔法のカエルチョコレートキット』(インサイト・エディションズ、河出書房新社)が刊行される。
 この出版物の内容は以下のサイトにくわしくまとめられている。
 
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000809.000012754.html
 
 ハリー・ポッターファンの待望のキットで、B4変型判セット箱に、シリコン製カエルチョコレート流し型、ギフトボックス8箱、動く魔法使いカード8枚のほか、12頁レシピブックが収録される。
 発売前にもかかわらず、オンライン書店のデザート・スイーツ部門で第1位にランキングされた。
 3月には、ウォルト・ディズニー・ジャパン『Marvel Anatomy 超人ヒーロー解体図鑑』(KADOKAWA)を刊行予定。こちらは本欄第35回(2024年2月)で紹介した。
 
 マーベル・ヒーロー、ヴィランズを完全解剖した驚異のヴィジュアル大図鑑! 科学や最先端技術の力を得たヒーロー(キャプテン・アメリカ、アントマン、アイアンマン、ハルクなど)、宇宙の力を得たヒーロー(ファンタスティック・フォー、キャプテン・マーベルなど)、地球外生命体(サノスなど)、動物の能力を兼ね備えたヒーロー(スパイダーマン、ゴーストスパイダー、スクイレルガールなど)や神秘のヒーロー(ゴーストライダーなど)、ミュータント(X-MEN、ウルヴァリン、デッドプールなど)、強化種族(ソーなど)、マーベルのスーパーヒーロー、スーパーヴィラン60名以上の能力を、超精密な迫力満点のヴィジュアル(100点以上!)を示しつつ、科学的に分析、詳細に記述。
 
 4月には、デイビッド・ラロッチェル文、マイク・ウォウナウカ絵『あのねこがいるよ』と『あのいぬがいるよ』 (すばる舎)の2冊を刊行予定だ。

 マックスは猫じゃない。どう見ても犬である。でもしつこく読者に「猫がいるよ!」と言い続ける。はたしてマックスは自分が犬であるとわかってもらえるのだろうか? まるで犬と会話しているように楽しめる、新感覚絵本。読み聞かせに大活躍間違いなし! 2021年、アメリカ図書館協会が優れた児童書を選出する「セオドア・スース・ガイゼル賞」の最優秀作品賞受賞作品。

 絵本の翻訳は本当に久しぶりなので、とても楽しみだ。
 4月、5月頃にはダグラス・ウォーク『マーベル・コミック大全』(仮題、作品社、本欄第31回[2023年11月]で紹介)を刊行予定だ。
大変な情報量で、訳者の詳細な注や索引も加えるので、おそらく800ページはいってしまうだろうが、マーベルとアメリカン・コミックスのすべてがわかる1冊になると思う。著者にインタビューして、新しい情報も聞き出したい。
 同じく4月か5月頃に建築家のフランク・ロイド・ライトが書き残した浮世絵の随筆集を翻訳刊行する。1世紀以上前に書かれた随筆を含めて本邦初訳の歴史的にも非常な重要な1冊になる。

★    ★    ★

 そのほか、まだ情報は公開できないが、以下の3冊も刊行予定だ。
 3月には、2023年のブッカー賞候補になった女流作家の小説を刊行する。主人公は娘を持つ自閉スペクトラム症(ASD)の女性で、彼女の心の声が美しい文章でつづられる。1月からゲラ校正が始まる。自身も自閉スペクトラム症である著者に、ぜひインタビューしたい。
 マーベル社刊行のスパイダーマンの小説も2冊(5月、7月刊行予定)予定している。どちらも分厚いので上下巻になるかもしれない。この2冊以外はすべて訳稿を担当編集者に提出しているので、こちらも早めに訳了したい。大変うれしいことに、わたしの担当編集者は皆さん優秀で、非常に親切に対応してくれる。
 以上、今のところ、2025年前半に9冊の英日翻訳書を刊行予定だ。
さらに日本映画の脚本と字幕の英訳も担当する予定。海外向けの各種メディアのPRリリースの英訳もできる限り対応したい。

★    ★    ★

 わたしは本業が英語関係の書籍の編集者で、編集者としても2025年前半に翻訳書と同じくらいの冊数を担当する予定なので、時間の使い方が非常にむずかしい。だが、何年も両方の仕事を続けられているのは、翻訳力向上のために英語学習にとても楽しく取り組めているからだと思う。日英翻訳、英文記事の執筆、英語でのインタビューもするので、英会話や英文ライティングのトレーニングにも日々精力的に取り組んでいるし、時間があれば各種英語試験も受けて動向を探っている。

 私はそのころ太陽というものに生命を感じていた。私はふりそそぐ陽射しの中に無数の光りかがやく泡、エーテルの波を見ることができたものだ。私は青空と光を眺めるだけで、もう幸福であった。麦畑を渡る風と光の香気の中で、私は至高の歓喜を感じていた。(坂口安吾「風と光と二十の私と」)

 四十歳の坂口安吾は二十歳の自分を回想してこの言葉を残しているが、2025年10月に還暦を迎えるわたしは、「英文を眺めて英語の音声を聞くだけで、もう幸福だ。英語を読んで、聞いて、書いて、話していると、至高の歓喜を感じる」
 いくつになっても、「永遠の英語学習者」でありたい。

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数。2025年には日英翻訳をあわせて翻訳書数は100以上になる予定。

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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【44】(2024/11/30)

2024-12-02 00:01:36 | 桐生タイムス
「夢と魔法の世界」があなたの家にやってくる!

ディズニーランド・パーク ポップアップ・パークツアー
Disneyland: Pop-Up Park Tour
「夢と魔法の世界」があなたの家にやってくる!
"World of Dreams and Magic" is now at your fingertips!  

 今月の「永遠の英語学習者の仕事録」は、前回、前々回のムスタファ・スレイマン『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』で論じたシリアスなテーマから大きく変わり、夢と希望があふれる『ディズニーランド・パーク ポップアップ・パークツアー』をご紹介する。
★    ★    ★
 12月3日、河出書房新社から、『ディズニーランド・パーク ポップアップ・パークツアー』がついに発売される。
 これは驚くべき1冊だ。海外印刷だったので、翻訳、編集作業は5月くらいに終了したが、そこから河出書房新社のイカしたプロモーションチームと、PR動画など、魅力的なセールスツール制作を精力的に進めた。
 これはディズニー公式製品であるため、日本語版制作にあたっては、原書にはない注などを入れた場合、すべて英語にして許可をとらなければならないし、プロモーション素材についても同様のことが求められる。
 まだ発売前で本書についている豪華ブックレットの内容はご紹介できないので、本欄ではPR動画やチラシに使った宣伝文を英訳とともに紹介する。
 PR動画は、河出書房新社のプロモーションチームが、信じられないような魅力的なものを作り上げてくれた。ぜひこちらをご覧いただきたい。
 
https://www.youtube.com/shorts/cIOuXqdsdBU

 
  
 最近の販売戦略では、スマートフォンに対応した動画を作るのが効果的なので、今回は縦型のShort動画を制作した。最初から、
 
 アメリカ、カリフォルニア
 ディズニーランド・パーク開園70周年!


と実に魅力的な言葉が目に飛び込んでくるが、こちらは

 Celebrating 70 magical years of Disneyland in California!

といった英語で表現すればよい。そうだ、ウォルト・ディズニー(1901-1966)がカリフォルニアのアナハイムに世界初のディズニー・テーマパークを開園したのは1955年7月17日で、2025年に開園70周年を迎えるのだ。
 以下、動画に流れる文字を英訳とともに紹介する。あわせてPR動画もぜひご覧いただきたい。

カリフォルニア、ディズニーランド・パークを立体的に再現!
Experience a stunningly realistic 3D pop-up recreation of California's iconic Disneyland Park with the Disneyland: Pop-Up Park Tour.

ウォルト・ディズニーの「夢と魔法の世界」があなたの家にやってくる!
Walt Disney's "World of Dreams and Magic" is now at your fingertips!

メインストリートUSA
アドベンチャーランド
ニューオリンズ・スクエア
クリッターカントリー
スターウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ
フロンティアランド
ファンタジーランド
ミッキーのトゥーンタウン
トゥモローランド
Main Street USA
Adventureland
New Orleans Square
Critter Country
Star Wars: Galaxy's Edge
Frontierland
Fantasyland
Mickey's Toontown
Tomorrowland

ブックレット付き!
Includes a special booklet!

人気アトラクションの
興味深い歴史や
楽しいトリビア満載
Packed with fascinating histories and fun trivia about popular attractions.

この幸せな場所を訪れた
すべての人たちへ、ようこそ  
――ウォルト・ディズニー
“To all who come to this happy place: Welcome.” —Walt Disney

初版限定生産
11月下旬発売!
Limited First Edition.
On sale in late November.

驚くほど精巧な
ポップアップ・ディスプレイ
本を開けば、そこはもう
ディズニーランド!
Stunningly realistic 3D pop-up display.
Open the book, and you’re already at Disneyland!

ディズニーランド・パーク
ポップアップ・パークツアー
Disneyland: Pop-Up Park Tour

本体価格7500円(税別)
2024年11月下旬発売
ご予約はお早めに!
Price: 8,250 yen (including tax) [7,500 yen base price]
Release Date: Late November 2024
Book now before it's too late!

河出書房新社
Kawade Shobo Shinsha Co., Ltd.

 
今回は英語オタクの余計は英語の講釈は不要だ。ぜひディズニーの夢あふれる1冊を心ゆくまでお楽しみいただきたい。(Enjoy this enchanting Disney book, filled with dreams and magic, to your heart's content!)

★    ★    ★

 そしてなんと河出書房新社のご厚意により、この超豪華な1冊を本紙読者にプレゼントする(詳細は後日、本紙でお知らせします)。クリスマスにぴったりの1冊。奮って応募ください!

『ディズニーランド・パーク ポップアップ・パークツアー』(マシュー・ラインハート[作]、上杉隼人[訳]、チャーリー・プライス[文]、ルイ・リカルド[イラスト]、)
河出書房新社

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』、ムスタファ・スレイマン『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』(日経BP/日本経済新聞出版)多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。
 来年2025年には3月に『Marvel Anatomy 超人ヒーロー解体図鑑』(KADOKAWA)のほか、現時点で7冊の刊行が予定されている。




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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【43】(2024/10/26)

2024-10-27 00:46:19 | 桐生タイムス
AIが引き起こす大惨事のシナリオ

 テクノロジー創出者として、私はテクノロジーが桁外れの価値をもたらし、無数の人たちの生活を改善し、次世代クリーンエネルギーから安価な難病治療まで、数々の難問に対処してくれる、と信じている。テクノロジーは人類の生活を豊かにできるし、そうでなければならない。歴史を振り返れば、テクノロジーと、その発明家や起業家は、人類の進歩を強力に推し進め、数十億人の生活をよりよいものにしてきたし、それが繰り返されてきた。
But without containment, every other aspect of technology, every discussion of its ethical shortcomings, or the benefits it could bring, is inconsequential. We urgently need watertight answers for how the coming wave can be controlled and contained, how the safeguards and affordances of the democratic nation-state can be maintained, but right now no one has such a plan. This is a future that none of us want, but it’s one I fear is increasingly likely, and I will explain why in the chapters that follow.
だが「封じ込め」ができなければ、テクノロジーの倫理的問題点や恩恵を論じても無意味だ。来たるべき波を管理し封じ込める方法と、民主主義国家の安全装置と活動の許容範囲をいかにして堅持するか、しっかりとした答えを至急出さなければならないが、現時点では誰も具体案を持ち合わせていない。私は誰も望まない未来が訪れるという不安を強めているし、その理由は本書各章で説明する。(『THE COMING WAVE』30ページ) 

 AI、さらにはAIが最も賢い人間以上に人間の持つすべての認知能力を実行できる段階にあるAGI(汎用人工知能[artificial general intelligence])を中心とする来たるべき波は、21世紀の行く末を決する非常に大きな問題を生み出す。われわれはこの新テクノロジーがもたらす恩恵を享受しつつ、その「封じ込め」を試みることが必要だ。それができなければ、人類は悲惨な状況に置かれる可能性がある。
今月の「永遠の英語学習者の仕事録」では、ムスタファ・スレイマンの『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』について、さらにくわしく論じてみたい。
★    ★    ★
 AIを使うのは善意ある者たちだけではない。悪意ある者たちに使われる可能性は十分にある。
 悪意ある者に使われれば、どのような壊滅的被害がもたらされるだろうか。

 テロリストが顔認識機能を備えた自動火器を数百から数千の強力な自律型ドローン群に搭載する。どのドローンも銃撃後に速やかに体勢を立て直し、短時間に連射し、移動することができる。そのドローン群がある人物の殺害を指示され、大都市の中心街に解き放たれる。通勤ラッシュの最中に、恐ろしいほど効率的に都市を最適ルートで移動する。わずか数分で、たとえば主要駅など都市のランドマークを襲撃した2008年のムンバイ同時多発テロより、はるかに大規模な攻撃を起こせるだろう。
 大量殺人者が大規模政治集会の襲撃を決意し、特製の病原体を入れた噴霧装置つきドローンを使用する。集会参加者たちは次々に病気を発症し、家族にも伝染する。演説していた賛否両論ある注目の政治家が最初の犠牲者の1人になる。激しい党派対立の中でこのような攻撃があれば、暴力的な報復が各地に広がり、国内は混乱状態に陥る。
 アメリカ在住の危険な陰謀論者が、自然言語だけを使ってAIに生成させた偽情報動画を大量に流す。さまざまな偽情報動画を発信するが、ほとんどがあまり拡散しない。だが、「シカゴで警察官による殺人事件が発生」というひとつの動画が火を付ける。完全なフェイク動画だが、街頭では騒ぎが起き、警察への嫌悪感が広がる。こうして陰謀論者は拡散させるノウハウを手に入れる。警察官による殺人がフェイク動画であると確認されるまでの間に、暴動が全米規模で発生し、多数の犠牲者が出る。新たな偽情報動画が燃料として次々に投下され、暴動は沈静化しない。
 あるいは、これらが同時発生するかもしれない。ひとつの集会やひとつの都市だけでなく、何百もの場所で同時発生したらどうなるだろうか。(『THE COMING WAVE』324~325ページ)

 来たるべき波が封じ込められなかった場合にどんなことが起こるか、特に本書第III部でくわしく論じられる。
 現在の政治秩序の基盤であり、テクノロジーを封じ込める上で最も重要な役割を果たすのは、国民国家(nation-state)だ。だが、封じ込めが失敗すれば、国民国家が弱体化し、そこから新しい形態の暴力が生まれ、偽情報が拡散し、仕事は消滅し、壊滅的な大災害が発生するかもしれない。来たるべき波は権力構造に変化と転換をもたらし、そこから新たな独裁的な巨大企業がつぎつぎに誕生し、伝統的な社会構造から外れたグループも力を得ることになる。人類はディストピアか破局かというジレンマに陥るのだ(「人類は既知の宇宙における支配的な種から初めて転落するのだ」[三二七ページ]とまで著者は言う)。
 どうすればテクノロジーの波を封じ込めることができるだろうか? 第IV部でムスタファ・スレイマンは「封じ込めへの10ステップ」を提言する。コンピュータープログラムやDNA組み換えのレベルから、国際条約の管理まで、10の厳格な制約を封じ込めの基本計画として提案する。殺戮兵器を作り出すことも、コロナウイルスよりも致死性の高い病原体を作り出してドローンで巨大都市に散布することも可能なテクノロジーを封じ込めるにはどうしたらよいか? AIの普及により仕事を失う可能性のある人たちにどんな対応をするべきか? これまでほとんど論じられることがなかった対応策が、ここで具体的に提言される。
 現在、AI規制については全世界で論じられているし、その関連のニュースはほぼ毎日報じられている。来たるべき波がすぐそこに迫りつつある現代において、本書は全世界の政治家やテクノロジー開発者だけでなく、新テクノロジーがもたらす有益なものを手に入れつつあるわれわれ多くの者たちも読むべき1冊だ。

【本稿は『図書新聞』3660号 (発売日2024年10月19日)に寄稿した一面記事「全人類への警告書――DeepMindの共同創業者、現マイクロソフトAIのCEOによる話題書の邦訳」と同時執筆となったため、同記事と重複する箇所があることをお断りしておく】 

 ムスタファ・スレイマン、マイケル・バスカー『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』(上杉隼人訳、日経BP/日本経済新聞出版)

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。
 12月には『ディズニーランド・パーク ポップアップ・パークツアー』(河出書房新社)、来年3月には『Marvel Anatomy 超人ヒーロー解体図鑑』(KADOKAWA)の刊行が決まっている。
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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【42】(2024/9/28)

2024-09-29 13:19:14 | 桐生タイムス
DeepMindの共同創業者、現Microsoft AIのCEOの全人類に対する警告書

 今日のAI(人工知能)システムの進化はめざましい。物体も人間の顔もほぼ完璧に認識し、音声からテキストへの変換も、瞬時の言語間の翻訳も問題なくこなす。AIナビで自動運転も可能だ。いくつか簡単なプロンプトを与えれば、新世代の斬新な画像を生成し、情報量の多い論理的な文書も書き上げる。驚くほどリアルな合成音声も生成可能だし、美しい音楽も作曲する。長期的な計画も立ててくれるし、想像力が求められる複雑なアイデアをシミュレーションするなど、かつては人間にしかできないと思われていたことも軽々とこなしてしまう。
数年後には人間と同じレベルでさまざまなタスクを処理できると思われるし、すでに実現しているのかもしれない。
 だが、このAIがロボット工学、合成生物学、量子コンピュータといった同じく急激な進化を遂げている新世代テクノロジーと組み合わさることで、開発者すら想定していない未曾有の大混乱と大惨事がもたらされる可能性がある。
 可能性は低いかもしれないが、一度起こってしまえば甚大な影響がもたらされる。たとえわずかな可能性であっても、緊急に対応しなければならない。だが、まだ何も準備ができていない。このまま強力なテクノロジーの「封じ込め」(英語のcontainmentで、管理し、制限し、止めること)に失敗すれば、現在の国家は崩壊し、世界秩序は大混乱に陥る……。
 本書は、AlphaGoを開発したDeepMindの共同創業者で、現在はMicrosoft AIのCEOを務めるムスタファ・スレイマン(Mustafa Suleyman, 1984- )の全人類に対する警告書だ。1年前の2023年9月に原書が刊行されて以来、世界中で大変な話題を集めている。
 この注目の1冊がついに日本に上陸、昨日9月26日に発売された。

★    ★    ★
 
 ムスタファ・スレイマンの主張は常に一貫している。
 人類は未曾有の力を備えた「来たるべき波」(The Coming Wave)を迎えつつある。来たるべき波はかつてない規模の富と利益を生み出すAIを有するが、これが合成生物学などのほかの新テクノロジーとあわさりつつ急速に拡散すれば、さまざまな形で悪用される可能性もある。それによって想像もできない大規模な混乱が生じ、社会は不安に陥り、大惨事が引き起こされるかもしれない。われわれはAIと新テクノロジーがもたらす恩恵を享受しつつも、その「封じ込め」を試みることが必要だ。それができなければ、人類は悲惨な状況に置かれる可能性がある。

The coming wave of technologies threatens to fail faster and on a wider scale than anything witnessed before. This situation needs worldwide, popular attention. It needs answers, answers that no one yet has.
Containment is not, on the face of it, possible. And yet for all our sakes, containment must be possible.  
 来たるべき波は、史上最速かつ最大規模の失敗をもたらす可能性がある。全世界の注視が必要だ。どうすればよいか? 答えはまだ誰も出していない。
 一見、封じ込めは不可能に思える。だが、全人類のために、封じ込めは可能にせねばならない。

★    ★    ★
 
 ビル・ゲイツ(マイクロソフト共同創業者)、ダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞、『ファスト&スロー』)、アル・ゴア(元アメリカ副大統領)、エリック・シュミット(元グーグルCEO)、グレアム・アリソン(ハーバード大学ケネディスクール初代院長、『米中戦争前夜』)、エリック・ブリニョルフソン(スタンフォード大学教授、人工知能学者)ほか、実に30人以上もの著名人が本書に推薦文を寄せている。
 そのうちのひとりユヴァル・ノア・ハラリ(歴史学者、『サピエンス全史』)は、本書について次のように述べている。

"The Coming Wave is a fascinating, well-written, and important book. It explores the existential dangers that AI and biotechnology pose to humankind, and offers practical solutions for how we can contain the threat. The coming technological wave promises to provide humanity with godlike powers of creation, but if we fail to manage it wisely, it may destroy us."― Yuval Noah Harari
興味深く重要な本。AIとバイオテクノロジーが突きつける人類存亡の危機を探究し、その脅威を封じ込めるための現実的な解決策を提示している。来たるべきテクノロジーの波は人類に神のような創造力を与えることを約束しているが、賢く管理できなければ人類を滅ぼすかもしれない」――ユヴァル・ノア・ハラリ

 大変光栄なことに、わたしは全世界が注目する本書の日本語翻訳を担当させていただいた。この大作を数か月で訳すのは大変な作業であったが、多くの人たちの支援を得てどうにかやり遂げることができた。
 来月の本欄で、『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』についてさらにくわしく論じてみたい。

 ムスタファ・スレイマン、マイケル・バスカー『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』(上杉隼人訳、日経BP/日本経済新聞出版)

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』、ジョー・ノーマン『英国エリート名門校が教える最高の教養』(ともに文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。
 12月には『ディズニーランド・パーク ポップアップ・パークツアー』(河出書房新社)、来年3月には『Marvel Anatomy 超人ヒーロー解体図鑑』(KADOKAWA)の刊行が決まっている。


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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【41】(2024/8/24)

2024-08-25 06:34:44 | 桐生タイムス
フランク・ロイド・ライトと浮世絵

 アメリカの建築家フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright, 1867-1959)は、日本と関係が深く、東京千代田区の帝国ホテル・ライト館(大正12年[1923年]竣工)のほか、兵庫県芦屋市の旧山邑家住宅(大正13年[1924年]竣工)や東京豊島区の自由学園明日館(大正10年[1921年]開校)などの国の重要文化財を設計したことで知られる。 
 今月の「永遠の英語学者の仕事録」は、日本の近代建築に大きな足跡を残したフランク・ロイド・ライトの文章を英語で読んでみよう。
★    ★    ★

Now look about and see for the first time what severe simplicity of form and beautiful materials left clean for their own sake can do for a house interior. Enter a scene of shifting color and quick movement. No noise but silvery laughter. All clean for soft white-shod feet. How can anything human be so polished and clean? Sliding screen partitions moving aside beneath great carved wood open panels cross the matting and make the general space into separate rooms at will.
 As we pass by the rooms we glimpse charming sights. Guests robed in silks, fan in hand, heads gleaming with polished black. Ah! you see — in everything inimitable, imperishable style! Black, as in itself a property, is revelation here.
 では、あたりを見回し、形がどこまでも簡素で、本来の美しさをそのまま活かした素材を用いることで、一軒の家の室内装飾に何がもたらされるか、ここで初めて確認してみよう。色の変化と速い動きが感じられる場面に入ってみる。聞こえてくるのは銀のように澄んだ笑い声だけ。柔らかい白い足袋で移動できるようにすべてがきれいに保たれているのだ。人間のものがどうしてこんなにきれいなのか。透かし彫りが刻まれた大きな欄間(らんま)の下を襖がすっと畳を横切り、大広間に小部屋を自在にいくつか作り出す。
 ひと部屋ずつ通り過ぎるたびに魅力的な光景が目に入る。絹をまとい、扇子を手にした客人たち。頭部は磨き上げられ、黒々と輝いている。おお、いずれもほかでは見ることができない、朽ちることにない様式だ。黒それ自体に価値があり、ここでは啓示のように感じられる。 

これはフランク・ロイド・ライトの浮世絵に関する文章を集めたThe Japanese Print: An Interpretationにあったもので、同書によると、「The Anderson Galleriesが1927年に出版した The Frank Lloyd Wright Collection of Japanese Antique Printsにライトが寄せた序文」とある。 
 おそらくこの英語はライトが初来日した翌年の明治39年(1906年)に書かれたものなので、古く、凝った表現がいくつも見られる。
たとえば、great carved wood open panelsは、「大きな、透かし彫刻が刻まれた、パネル」だが、日本家屋の知識がないと適当な日本語に訳出できない。これはおそらく襖の鴨居の上の部分に装飾用の「大きな(great)、彫刻が施された(carved)、向こう側まで『開いている』(open)、パネル(鏡板、羽目板)」があるということになり、それを何かと考えれば、「欄間(らんま)【ルビ らんま】」ということになるだろう。
★    ★    ★
 
 フランク・ロイド・ライトの文章をもうひとつ挙げる。

All the while, to and fro in the corridors, Geisha parties noiselessly undulate to and fro, samisen in hand, faces crimsoned slightly at the temples, otherwise foreheads and cheeks whitened to brilliant­ scarlet lips. Yes, then, except the more reddened cheeks, even as in New York today. Just as Harunobu, Kiyonaga and Utamaro, Shunsho and Shigemasa faithfully recorded it, that the world might never lose it. Again exclaim — "It is all just like the prints!"
 その間ずっと、芸者たちは廊下を行ったり来たりしている。三味線を手にして音もなくうねるように動き回る彼女たちのこめかみがわずかに紅潮しているが、額も頬も白く染め上げられ、鮮やかな紅の唇が際立って見える。そうだ、ひどく赤みを帯びた頬を除けば、今日のニューヨークでも同じものが見られるのだ。この暮らしを鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、勝川春章、北尾重政が忠実に記録し、決して世界から失われないものにしたのだ。ふたたび声を上げる。
「すべて浮世絵に描かれた通りだ!」

 引用した文章には、ライトがいつ、どのようにして日本の版画と出会い、どこに魅了されたかが語られたのちに、日本の浮世絵の技法、モチーフ、芸術性、文化的価値(当時の日本の生活を映し出す記録)などが印象深く記される。
 読者はライトの言葉による巧みな案内を受けながら、浮世絵が映し出す江戸の当時の暮らしぶりや文化に思いを馳せることができる。
 フランク・ロイド・ライトは熱心な浮世絵のコレクターとしても知られる。明治38年(1905年)の初来日以来、浮世絵に惹かれ、何枚も買い集めてアメリカに持ち帰った。ライトの功績もあって、アメリカには日本の質の高い浮世絵が数多く残されることになる。
 そしてライトは浮世絵に関する興味深い文章も数多く残した。
 来年令和7年(2025年)は、フランク・ロイド・ライト来日120周年を迎える。この記念すべき年に、浮世絵を愛したライトの一面がうかがえる本が出せたらいいと思っている。

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。美術関連の訳書に、ベン・ルイス『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』(集英社インターナショナル)などがある。


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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【40】(2024/7/27)

2024-07-29 00:02:43 | 桐生タイムス
10分で読めてずっと心に残る、本当にあった話

 編集者としても翻訳者としてもすでに30年以上近く仕事をしているし、翻訳者としては翻訳書出版点数が100冊を超えつつあるが(名前も出ていないものも数えればすでに超えている)、代表作にはならなかったかもしれないが、忘れがたい本、忘れがたい仕事がある。
 今月の「永遠の英語学習者の仕事録」は、その1冊を紹介したい。
★    ★     ★
To all of you who have known and loved Bob,
I am terribly sad to say that Bob left us Saturday morning.
 He was a great source of love, comfort and laughs to many of us.
 He should serve as a powerful remainder to us all that wounded hearts can, and do, heal.
 ボブと知り合って、彼を愛してくれたすべてのひとたちへ。
 すごく悲しい報告をしなければならないけど、土曜日の朝、ボブはぼくらのもとを離れていった。

 ボブはぼくらみんなにとてもやさしくしてくれたし、安らぎや笑いもたくさん与えてくれた。
 ボブは、傷ついた心も、いつかかならず癒えるよ、ということをいつもぼくらに強く思い出させてくれる。 

[訳者注]wounded hearts can, and do, healは、wounded hearts can heal and do healで、「傷ついた心も癒えるし、実際そうなる」ということだが、「いつかかならず癒える」で、その意味が出る。 

 トム・コーウィンの『ぼくのだいじなボブ』は、講談社から2007年に刊行された。
 隣の家で飼われているゴールデンレトリーバーがひどい扱いを受けているのを見て、「ぼく」(コーウィン)は心を痛めていたが、ある日その犬「ボブ」が家の庭にやってきた。
 そこからぼくとボブの友情が始まる。「生まれてから誰にも愛されたことのない犬」ボブは、初めてぼくに心から愛されて、ぼくと楽しい日々を過ごす。
 隣の家の飼い主に隠れて、ぼくはボブと一緒に家で過ごしたり、どこかに出かけたりするようになる。
 ぼくはボブと離れられなくなり、意を決して隣人の飼い主に、ボブを引き取りたい、と伝える。

「マーク、レッドのことで話がしたいんだ」(ボブはじつはレッドという名前だった)
(……)
それに対して、マークは
「ああ、トム、ぼくはもう1年前にわかっていたよ。レッドは君の犬になるって決めたんだよ」


 これで「もうボブとぼくは誰にも隠し立てせずにつきあうことができるんだ」とぼくは喜ぶ。
 だが、楽しいことには必ず終わりがある。

I lay on the floor with Bob and cuddled him for over an hour
and then I held him as he left his beautiful body.
 What mattered most was for him to feel the depth of my love until the last second of his life.
 I know he did
 - I still feel his.
 ぼくは床の上にボブと横になって、そのからだを長いことなでていた。
 そしてボブがその美しいからだから離れていくときは、彼をしっかり抱きしめた。
 ボブが何より望んでいたのは、自分はほんとうに最後の最後の瞬間までぼくにすごく愛されていた、と感じられることだったろう。
 ボブはそう感じてくれたと思う。
 ――ぼくはまだボブのからだのぬくもりを感じるから。

[訳者注]I still feel his.のhisはhe(Bob)の所有代名詞でhis life(彼の生命)を意味するので、「彼がまだ生きている」状態を示す日本語を充てるのがよい。

 これは本当にあった話だ。著者は「おわりに」に書いている。

 ……ボブの物語と、そして悲しいことにすでに彼が旅立ってしまったことを、彼と触れ合った人たちにどうしても知らせなければならない、と思った。(……)
 手紙をメールで発信してから数カ月のうちに、それはまるで生命を得たかのようにあちこち自由に動きまわった。メールを受け取ったひとたちの多くが、それを読んだあと、それぞれの知り合いに転送してくれたのだ。
そのうちにぼくのところにまったく知らない人たちからメールが届くようになった。そこには、あなたの物語にわたしもとても心が動かされました、というメッセージが書かれていた。
 それから親しい友人で「こいぬのタッカー」シリーズで知られる絵本作家のレスリー・マクガークが、君の手紙は本にして出版するべきだ、と熱心にすすめてくれた。それがどんなものになるかすぐにわかったから、ぼくは出版に向かって夢中で動き出した。
 こうしてぼくは、自分が最初に書いた手紙をそのまま本にして刊行することになった。

 著者トム・コーウィンにはインタビューもしている。ぜひこちらもご覧いただきたい。
 
https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/4105f21569d7b8d72499e079aebec7af
  ★    ★    ★
 トム・コーウィンの『ぼくのだいじなボブ』は非常に思い出深い本だし、実際この本を訳してから各出版社から様々な仕事をいただくことになった。担当編集者の堀沢加奈さんにはひとかたならぬお世話になった。17年も経ってしまったが、この場を借りて、厚くお礼を申し上げる。そして本書を読んでくださった皆さんに、心より感謝したい。
 本書は今は絶版で手に入らないが、いつの日か復刊されることを祈っている。

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。2024年後半に、話題書を含めて英日翻訳を6冊刊行予定。




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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【39】(2024/6/29)

2024-06-29 00:25:21 | 桐生タイムス
日々のトレーニングが大事

 現在、訳了し、出版に向けてゲラ校正に備えている本が話題作を含めて6冊、出版の予定はまだないが英語に訳了した日本小説が1冊、すべてを終えて出版を待つだけの本が1冊、その上で急いで翻訳を進めている大作が2冊ある。まさしく自転車操業であるし、わたしの場合、本業(書籍編集)の合間を縫っての翻訳作業なので、最大限効果的な時間の使い方が求められる。だが、仕事をいただけるのは本当にありがたいことだし、何と言ってもわたしは「永遠の英語学習者」なので、さらに質の高い仕事ができるように、日々のトレーニングが重要だ。英文のニュース記事はなるべくたくさん読んで聞くようにしているし(毎週Asahi Weeklyは隅々まで読んでいる)、オンライン英会話で毎日レッスンしている。そして気になった英語表現は、第32回の本欄(2023年11月25日)でも紹介した18年間毎日更新しているブログ「GetUpEnglish」にまとめている。
 訳了している、出版に向けて待っているものはあるものの、契約によって現在は口外できないものばかりなので、今月の「永遠の英語学習者の仕事録」はGetUpEnglishに書いた記事から気になる英語を紹介したい(出版を公表してもよい本からは引用した)。

★   ★   ★

 第31回(2023/10/28)の本欄で紹介したDouglas Wolk, All of the Marvels: An Amazing Voyage into Marvel’s Universe and 27,000 Superhero Comics(2022)に、次の表現があった。 

Ever since then, Galactus has mostly been a presence of overwhelming, impossible catastrophe in Marvel’s comics, a world-exterminating force, older than the universe itself, against which there can be no resistance. His presence signifies that a story in which he appears is meant to be taking place on the level of what one character in Fantastic Four #49 calls “the great cosmic game of life and death.” Which is to say: he is all the way out of Squirrel Girl’s league.  
 以来、ギャラクタスはマーベル・コミックスにおいて抑制不可能な災害をもたらす圧倒的な存在として描かれてきた。宇宙創成以前から存在し、宇宙そのものを滅ぼしうる力を備え、何者の抵抗も許さない。このギャラクタスの登場によって、ひとつのストーリーが、『ファンタスティック・フォー〈49〉』のあるキャラクターが言うように、「偉大なる宇宙の生と死のゲーム」のレベルで展開する。つまり、ギャラクタスはスクイレルガールがまったく手に負える相手ではないのだ。

 最後のhe is all the way out of Squirrel Girl’s league.にご注目いただきたい。be out of …'s leagueは、「~とは格が違う、~には手が届かない」だ。次のように使われる。

"She’s out of my league, as she’s so intelligent and successful."
「彼女はすごく頭がよくて大活躍してるから、僕には手が届かないよ」
"The luxury car was out of my league due to its high price."
「その高級車は目が飛び出るような値段で、手が出なかった」

★   ★   ★

 mentalは大きくふたつの意味があり、ひとつは「心の、心的な、精神の、内的な」、もうひとつは「知的の、知力の、知能の、頭脳を使う」だ。
 英日翻訳においては大概このふたつの意味で状況に応じて処理すればよいが、「心の、心的な、精神の、内的な」の意味で使われている場合、たとえばSFなどの文脈ではよく考えて訳語を選ばないとまるで意味をなさないことがあるので注意しよう。
以下の文はどう訳せばよいか?

"The superhero's mental powers allowed her to move objects with her mind."
 
 たとえば、「そのスーパーヒーローは精神の力で物体を動かした」などとしたら、とても変だ。
 このmentalは「意志の力で」という意味で使われていると考えればよい。であれば、次のように訳せるだろう。
 
 そのスーパーヒーローは念力で物体を動かした。

 mentalを使った用例をもうひとつ挙げる。

"He practiced for years to develop his mental abilities, eventually mastering telekinesis."
「彼は何年も修練を積んで念力を高め、最終的にテレキネシスを習得した」

 本欄第35回(2024/2/24)に紹介した Marvel Anatomy: A Scientific Study of the Superhumanに、次の表現があった。 

The Human Torch can harness ambient atmospheric energy, sheathing his body in superheated plasma. Johnny Storm retains mental control of the positive ions and free-roaming electrons that surround him in this state, enabling him to isolate the flames to specific body parts or even just his fingertips. On average, the flame aura generated by the Human Torch’s plasma sheath extends up to five inches from his epidermis and burns at temperatures up to 780 degrees Fahrenheit. He has been observed to maintain his full-body flames for nearly 17 uninterrupted hours.
 ヒューマン・トーチ/ジョニー・ストームは周囲の大気エネルギーを操作し、自分の体を超高温のプラズマで包み込む。この状態で体を取り巻く正イオンと自由電子を超能力で制御し、炎を指先などの特定の部分に集中することができる。プラズマ・シース(プラズマ放電が作り出す空間電荷層)が作り出す炎は最大12センチほど広がり、最高温度約摂氏415度で燃焼する。炎に包まれたまま17時間過ごせることも確認されている。

 All of the   MarvelsMarvel Anatomyもすでに訳了し、ゲラ校正に備えている状態だ。前者はおそらく800ページ近く、後者は大判サイズ240ページの大作になる。校正もしっかりしなければならない。

GetUpEnglishは2006年4月1日に開始し、以来18年間、日々の更新は時々遅れつつも、1日も休まず更新を続けている。

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。2024年はジョー・ノーマン『英国エリート名門校が教える最高の教養』以降、話題書を含めて英日翻訳6冊刊行予定、日英翻訳も1点。



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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【38】(2024/5/25)

2024-05-26 07:43:33 | 桐生タイムス
 生と死のはざまで 最後の瞬間を看取る仕事

 本欄「永遠の英語学習者仕事録」第36回「コロナ以前に書かれた、コロナ時代を予見する短篇集 アレグザンダー・ワインスタインの『新世界の子供たち』」(2024年3月23日付本紙に掲載)でも記したが、上杉はまだまだ駆け出しの翻訳者なので待っていれば仕事がどんどん入ってくるということはなく、ある本を翻訳刊行したいと思えば、まずは出版社に相談し、企画検討してもらえることになれば、内容をまとめて、一部サンプル訳を添えて提出することになる。
 今月の「永遠の英語学習者仕事録」も、そんな「翻訳出版したいが、予定が立っていない1冊」であるハドリー・ヴラホスの『生と死のはざまで――ホスピスが看取った人たちの最後の物語』(Hadley Vlahos,  The in-between: Unforgettable Encounters During Life’s Final Moments, 2023)を紹介してみたい。
★    ★    ★
 緩和ケア(ホスピス)とは、死の間際にある人たちが病院で治療を受けるのをやめ、かわりに快適な自宅で、最後の数日から数か月間を愛する人たちに囲まれて過ごすことだ。 本書の著者ハドリー・ラオスは緩和ケア看護師として、患者とその家族をサポートし、患者ができるだけ痛みが少なく快適に過ごせるようにしている。
 ハドリーは第2章でカールの思い出を語る。
 先輩看護師から実地で学んだあと、ハドリーが最初に担当したのがこのカールだった。カールは80歳で鬱血性心不全を患っていた。
ある日、カールの妻メアリーに呼び出されて訪問すると、カールが歩いていた。ハドリーはカールが一度もベッドから出るところを見たことがなかったので驚いてしまう。そして何をしているのかと聞くと、「アナとかくれんぼをしている」とカールは答えた。それを聞いてメアリーは泣き崩れた。アナは2歳の時に溺死したふたりの子供だった。カールは娘を助けられなかった自分をいまだに許せないのだ。
同僚のホスピス医師にカールの話をすると、それは「サージ」(surge)だと説明してくれた。死の直前に急激に活力が増し、奇跡的に回復することがあるという。カールは死んだ娘や母親にも会っていると思っていたようです、とハドリーが言うと、「死は近いだろうね」とそのホスピス医師は答えた。
 翌日に訪れてみたが、カールはずっと目を覚まさなかった。それでもようやく目を開けで、ハドリーに感謝の気持ちを伝えた。ハドリーにとって、カールは祖父のような人だった。
 夜明けにメアリーから連絡があり、カールが亡くなったと伝えられた。緩和ケア看護師としてメアリーを慰めなければならないのに、ハドリーは大泣きしてしまう。
 カールの葬儀の描写が悲しい。
★    ★    ★
As they placed Mr. Carl onto the gurney and pulled the white sheet over him, Ms. Mary stopped them, suddenly remembering something.
 “Socks!” she said. “He has to wear socks!” I looked at her. “Anna. He put socks on her before they took her away when she passed. He said he didn’t want her feet to get cold.”
 I nodded in understanding and handed the tie and socks to the funeral home workers.(…)
 As they wheeled him down the driveway and into the waiting hearse, I heard chirping nearby and looked up at a nearby tree, where I saw a bluebird. It happily chirped a few times and then began flapping its wings. I watched in awe as the bird flew directly alongside the hearse.
 I smiled to myself with tears in my eyes, and whispered, “Take good care of your daddy for me, Anna.”
 カールさんが台車に乗せられ、白いシーツをかけられると、メアリーさんが突然何か思い出して、葬儀屋の人たちを止めた。
「靴下よ!」とメアリーさんは言った。「カールに靴下を履かせないと!」
 わたしはメアリーさんの顔をじっと見つめた。
「アンナよ。あの子が亡くなって連れていかれる前に、カールはあの子に靴下を履かせたの。あの人言ってたわ、アンナの足が冷たくないようにねって」。
 わたしはわかりましたとうなずいて、ネクタイと靴下を葬儀屋の人に渡した。(……)
 カールさんを乗せた台車が私道を降りていき、停まっていた霊柩車に乗せられるあいだ、近くで鳥が鳴き声を上げていた。そばの木を見上げると、青い鳥が一羽、留まっていた。鳥はうれしそうに数回鳴き声を上げて、翼をはためかせた。鳥が霊柩車のすぐ近くを飛んでいくのを厳かに見送った。 
 わたしは目に涙をためたまま、笑みを浮かべてつぶやいた。
「アンナちゃん、どうかパパをよろしくね」

 本書は、著者がTikTokのフォロワー190万人、Instagramのフォロワー41万人以上の強力なインフルエンサーであることもあり、アメリカで大ベストセラーになった。翻訳出版できたらうれしい。

Hadley Vlahos, The in-between: Unforgettable Encounters During Life’s Final Moments

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。2024年はジョー・ノーマン『英国エリート名門校が教える最高の教養』以降、話題書を含めて英日翻訳6冊刊行予定、日英翻訳も1点。


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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【37】(2024/4/30)

2024-05-02 06:08:46 | 桐生タイムス
最高の教養

 今月は4月8日に刊行されたばかりのジョー・ノーマン『英国エリート名門校が教える最高の教養』(上杉隼人訳、文芸春秋)を紹介する。
★    ★    ★
 本書の著者ジョー・ノーマン(Joe Norman)は、2000年からイートン、ウィンチェスター・カレッジ、ウェストミンスターといったイギリスの名門校(パブリックスクール)への進学を望む10歳から13歳の生徒たちを学習指導し、何人も志望校に送り込んできたThe Super Tutor(最高の受験指導教師)だ。 
 著者はイギリスの名門校進学を希望する生徒たちに、「何を読むか」(What to Read)、「どう読むか」(How to Read)だけでなく、「どう書くか」(How to Write)、「エッセイをどう構成するか」(How to Structure an Essay)、「ストーリーをどう語るか」(How to Tell a Story)について教えてくれる。
 内容についてはすでに文芸春秋のサイトに特別記事や担当編集者の衣川理花さんのポッドキャストなどが上がっていて、どれもとても興味深いので、ぜひチェックしてみてほしい。
   

★    ★    ★
「永遠の英語学習者の仕事録」も4年目に入ったが、筆者はエリートどころか、いつまで経っても文字通りの英語学習者なので、今月も気になる英語とその訳し方を確認する。
 本書198ページのある「おわりに 囚人のジレンマを超えて―未来のエリートに求められるもの」は楽しく訳すことができた。

 さて、きみは銀行強盗で、捕まってしまった。きみの仲間も捕まった。ついてないな。
 きみたちふたりが口裏を合わせられないようにそれぞれ別々の部屋に入れられてしまったが、仲間もこの署内のどこかにいる、ときみはわかっている。すると、尋問中に刑事に取引を持ちかけられた。仲間を売れば、きみは晴れて自由、仲間は10年の懲役を受ける。何も言わなければ、きみは1年の懲役だ。どちらを選ぶ? 仲間を売って、無罪放免? それとも何も言わずに1年服役するか? きみはその仲間をどれだけ好きだろうか? 忠誠心にどれだけ価値がある?

以下、英語とあわせて見てみよう。

Then it occurs to you. Your buddy is somewhere in the same police station, being offered the same deal. If he turns you in, he goes free. If he stays quiet, he gets a year of jail time. So you’re pretty sure your buddy is having the same thought. Does he turn you in and go free? Or does he keep quiet and do a year in jail? 
 そこできみは思う。仲間も同じ署内のどこかで、同じ取引を持ちかけられたはずだ。あいつが僕を裏切って僕を売れば、あいつは自由だ。黙っていれば、1年臭い飯を食う。そうだ、まちがいなく向こうも同じことを考えているはずだ。さて、仲間はきみを裏切って自由を手に入れるか、それとも口をつぐんで一年ムショにいるか? 

it occurs to you: それであなたは思い浮かぶ。occur to ....で、「~に思い浮かぶ」。occur to A that...(Aに思い浮かぶ)の形でもよく使われる。It didn't occur to him that his wife was having an affair.(妻が浮気をしているとは思わなかった。Oxford Advanced Learner's Dictionary) 
turn ... in: 〈犯人・容疑者などを〉引き渡す (hand over); 〈犯人の居所・正体などを〉内報する (inform on)[『研究社英和大辞典』]

次のように続く。
There’s one more thing. If you both turn each other in, you both get ten years. That’s what your interrogators are hoping – that there’s no honour among thieves, as the saying goes. So what do you do? Do you keep quiet, hoping he does too, and you both do a year inside? A year isn’t that long, is it? Or do you rat on the guy, hoping he doesn’t do the same, and go free that day? Unless he has the same idea, in which case you’re both looking down the barrel of ten years’ hard time
 What do you do?
 もうひとつ考えられる。もしきみたちがふたりともおたがいを裏切れば、ふたりとも10年の刑だ。きみたちの取り調べにあたっている者たちは、実はそれを願っている。ことわざにあるとおり、「盗人には仁義などない」と思っているのだ。で、きみはどうする? 自分は黙秘し、彼も同じように黙秘し、ふたりで1年刑務所で過ごすのを望むか? 1年なんてすぐじゃないか。それとも、仲間はきっと黙っていてくれるから、その仲間を裏切って、自由の身になることを選ぶか? 仲間も同じように考えれば、きみたちふたりとも10年ブタ箱入りだ。
 さてどうする?

looking down the barrel of ten years’ hard time: 10年のきびしい時間が詰め込まれた銃身をのぞき込む。このbarrelはtheがあることから、a barrel of(たくさんの~)ではなく、「銃身、砲身」。銃身を覗き込むというのは非常に危険な状況であり、今はきびしい状況や避けられない苦境にあることを比喩的に表現している。
 
 本書は何と言っても「最高の教養」が問われる1冊なので、教養とは無縁のわたしに果たして対応できるのかという大いなる不安があったが、担当編集者の衣川さんのほか、フリー編集者の上原昌弘さんや英語講師/ライター/オンライン英会話A&A English経営者の品川暁子さんに助けられて、どうにかやり遂げることができた。衣川さん、上原さん、品川さんにこの場をお借りして、厚くお礼を申し上げる。
 本書を皮切りに話題作も含めて翻訳刊行が続くので、本欄で随時ご紹介します。どうか「永遠の英語学習者の仕事録」を引き続きよろしくお願いします。

ジョー・ノーマン『英国エリート名門校が教える最高の教養』(上杉隼人訳、文芸春秋)

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。2024年はジョー・ノーマン『英国エリート名門校が教える最高の教養』以降、話題書を含めて英日翻訳6冊刊行予定、日英翻訳も1点。


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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【36】(2024/3/23)

2024-03-25 06:48:20 | 桐生タイムス
コロナ以前に書かれた、コロナ時代を予見する短篇集
アレグザンダー・ワインスタインの『新世界の子供たち』

 語り手の男性(僕)は大学教員で、妻のアンと思春期を迎えた十代の息子マックスと3人で暮らしている。世界の人々は家の中から出ずに生活している。「僕」は大学教員としてオンラインで授業をし(デートもセックスもオンラインの仮想世界で行っている)、妻は仮想世界のランドスケープデザイナーとしてそれぞれ自分の部屋で働いている。夫婦仲は悪くないが、バーチャルの世界でアバターを介してのセックスしかしていない(ゴーグルをつけて、スーツを着て、バーチャルの世界で行う)。息子は部屋で授業を受けたりゲームをしたりしているが、最近挙動におかしなところがあり、バーチャルドラッグをしているのではないかと夫婦は疑っている。「僕」はもう何年もの間、現実世界では家族以外と接触していない。
 そんなある朝、マックスが家からいなくなった。自転車で外に出て行ったようだ。「僕」はマックスを追う。そして廃墟となったショッピングモールでマックスを見つける。これからドラッグのディーラーに会うのではないかと様子を見ていたが、マックスはテニスボールを壁に打ち付けて遊んでいるだけだった……。

アレグザンダー・ワインスタインの『新世界の子供たち』(Alexander Weinstein, Children of the New World, 2016)収録の短篇「移動」(“Migration”)はこんなストーリーだ。一部訳してみる。 

Max puts his foot down onto the ground and steps off his bicycle. “Wow,” he whispers.
 “I know,” I whisper back.
 The world is quiet except for the hooves on the concrete and Max’s breathing. Between the jigsaw of houses, another herd is migrating past the rotten swing set of an English Tudor. Above us, a V of birds crosses the sky, their honking close. I shut my eyes and imagine the grid of streets where my son and I stand, visualize beyond to our house where Ann is waiting for us, alone and worried, and farther still, far beyond our subdivision, to where the geese head toward warmth and herds make their way beneath the arc of evening sky. I want to tell Max that I love him; that he’ll always be my son; that somehow everything will be okay again. But maybe that’s too far from the truth. So, instead, I put my arm around him, and we stand together in the falling snow, watching the deer return to their migration.  
 マックスは足を地面につき、自転車から降りる。
「わあ」と息子はつぶやく。
「すごいな」と僕も応える。
 世界は静かで、コンクリートに響く蹄の音とマックスの息遣いしか聞こえない。別の群れがさまざまな家が立ち並ぶ通りを進み、イギリスのチューダー様式の家の庭に置かれた朽ち果てたブランコを通り過ぎる。Ⅴ字型を形成して上空を横切る鳥たちの鳴き声が近くに聞こえる。目を閉じ、マックスとともに街路に立つ自分を想像し、この先の僕らの家でひとり心配してマックスと僕を待っていてくれるアンを思い浮かべる。そのずっと向こう、僕らの家の区域をはるか越えて、ガチョウの群れは暖かい場所に向かい、シカの群れは夕空の弧の下を移動していく。マックスに、おまえを愛している、おまえはいつまでも僕の子供だ、どうにかすべて元通りになるさ、と伝えたい。だが、それはあまりにも真実からかけ離れているかもしれない。だから代わりに腕をまわして息子を抱き寄せ、降りしきる雪の中、ふたりしてシカの群れがふたたび移動するのを見守る。 
 I know: わかっている。マックスが“Wow”という理由はわかるし、自分もシカの群れを見てWow”と思っているということ。「僕」はマックスの感じていることを理解し、同じ気持ちであると伝えている。
 the hooves on the concrete: コンクリートの上をコツコツと響くシカの蹄の音。
 the jigsaw of houses: 何軒もの家のジグソーパズル。異なる形やサイズの家々がいくつも並んでいる様子を表現している
 English Tudor: チューダー朝時代(1485年から1603年)の建物を指す。イギリスのチューダー様式は歴史を感じさせる外観と独特の雰囲気を備えていて、伝統的な英国の住居を思わせる。
 their honking close: 彼ら(鳥たち)の鳴き声は近い。their honking is close to usということ。
the grid of streets: 街路の配置、配列。道路が水平方向と垂直方向に交差していて、碁盤の目のように整然と配置されている様子。
 migration: 鳥や動物たちの移動。

 わが子マックスはただ外に出たかった、自転車に乗りたかったのだ。「僕」は息子の顔をひさしぶりにしっかりと見ることができた。
このまま人は他人と出会わず、子供も作らず、いずれみんな死に絶えてしまうんだ、というマックスの言葉を聞き、「僕」はその事実に目をつぶっていたことに気づく。
家に帰る途中、ふたりは百頭ほどのシカの群れに出会う。空には鳥が群れをなして飛んでいる。移動する鹿の大群に感動するふたり。「僕」は息子に対する愛情と未来への希望を口はできないが、息子を抱き寄せてシカの群れがふたたび移動していくのを見守る。

 アレグザンダー・ワインスタインの短篇集『新世界の子供たち』は、本短篇「移住」のほか、2022年公開の映画『アフター・ヤン』(After Yan)の原作となった「ヤンにさよなら」( “Saying Goodbye to Yang”)をはじめ、表題作「新世界の子供たち」を含む全13編からなる。近未来の世界を舞台に、現在存在する技術の延長線上にあるが、現在ではあり得ないと思われる技術や設定が取り巻く世界における人々の交流を描く。ここに紹介した「移住」のように世界から離れて外部とオンラインで交流をはかるなど、2016年に発表されたにも関わらず、どれも新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)後の世界を予見していたと思われる作品ばかりで驚いてしまう。
 本短篇集が上杉訳でこれから翻訳刊行されるというわけではない。翻訳刊行したいと思い、本書の内容をまとめて、一部訳してレポートにまとめてすでに複数の出版社に見てもらっているが、まだどこからもいい返事がもらえていないのだ。
 こうしたことはよくあるから、必要以上にがっかりしてはいけない。常にアンテナを張り巡らして「これは多くの読者をつかめそうだ、訳してみたい」という本を探せばよい。幸いなことにわたしは英語講師でもあるので、翻訳講義の課題に使える題材を探しながら、翻訳してみたい本を常時チェックしている。

Alexander Weinstein, Children of the New World

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。2024年は現時点で話題書を含めて英日翻訳7冊刊行予定、日英翻訳も1点。
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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【35】(2024/2/24)

2024-02-25 01:11:15 | 桐生タイムス
マーベルのスーパーヒーローのスーパーパワーの秘密を網羅した重要資料

 変身能力を持つエイリアン、スクラルの軍隊がすでに地球に潜入し、地球のヒーローたちに変身しているかもしれない。侵略の危機が迫っている。早急に準備せねばならない。
そんなスクラル兵士と本物の地球の最強のヒーローを見分けるために、故ブラックパンサーが作成した地球の重要ヒーローたちの解剖図(Anatomy)が残されていた……。
 本書はブラックパンサー/ティチャラが地球防衛のために残した重要資料だ……
 今月の「永遠の英語学習者の仕事録」は、マーベルのスーパーヒーローたち(一部ヴィランズも含む)のスーパーパワーの秘密をまとめた『マーベル・ヒーロー解剖大図鑑』(Marvel Anatomy)を紹介する。
★    ★    ★
 本書にブラックパンサーは記している。

Not knowing who I can trust, I have put my faith in the data gathered over my years as an Avenger as I seek enlightenment on how we might expose these invaders. Since the transformation of a Skrull is a purely physical process, these imposters cannot reproduce the effects of most superpowers without additional enhancement. Thus, I believe that the key to determining which of my earthborn allies are truly who they appear to be lies in a comprehensive understanding of their anatomical origins. Given that time is of the essence, and because this exploration must be completed behind a veil of secrecy for the protection of all subjects, I am not fully able to confirm the validity of many of the scientific theories presented here. Once this threat has passed, I look forward to the opportunity to test these hypotheses further.
 誰を信用していいかわからない状況で、アベンジャーズの一員として活動しながら得た情報を頼りに、地球に侵入したスクラルたちをどうすれば見抜けるか考えてきた。スクラルはある人物やヒーローと肉体的に同じ風貌に変化するだけで、特別な力を注入されない限り、われわれのスーパーヒーローのスーパーパワーまでは再現できない。したがって、地球のヒーローたちが、スクラルの変身した姿ではなく、地球を守る本物のヒーローに相違ないと見極めるには、彼らヒーローの肉体や頭脳の構造や特質を完全に頭に叩き込んでおく必要がある。何より時間が限られている上に、対象者全員の保護のために本調査はすべて秘密裏に遂行しなくてはならず、ここに示した科学的理論が妥当であるかどうかを完全に確認することはできない。スクラルの脅威が過ぎ去ったのちに、ここに集めた仮説をさらに検証する機会があることを願う。

 上杉のもうひとつの仕事に、大学や書店や家庭教師で英語や翻訳(英日、日英)を教えることがある。そこで今回は講義録のような形で書いてみたい。
 put one’s faith in... : ~を信用する。
 enlightenment: 啓発、教化。I seek enlightenment on how we might expose these invadersを直訳すれば、「これらの侵入者たちの正体をどのように暴くか啓発を求めている」ということであるが、英語はこのように名詞が幅を効かせる言語なので、それを状況に応じて品詞転換して訳せばよい。この場合は「~を考えてきた」と動詞のようにして訳すのが効果的だ。
 expose: ~の正体をあばく、化けの皮をはがす。
 these invader(s): 「これらの侵入者たち」であるが、the Skrullsを指していることは明らか。英語は同じ語や表現の繰り返しを嫌う言語なので、このような言い方をする。よって、英語の表面的な意味のまま日本語にすると、一読で理解してもらえないと思うのであれば、日本語訳ではその名前をそのまま訳語にしても構わないし、日本語は英語ほど繰り返しを嫌う言語ではないので、そのほうが効果的であることもある。
 these imposter(s): これらの詐欺師たち。これもthe Skrullsを指している。英日翻訳がわかりにくくなるひとつに、こうした英語の言い換えを律儀にそのまま置き換えてしまうことがある。先ほども述べたように、英語は繰り返しを嫌うのでこうした表現を多用するのだ。もちろん、表面上の意味をそのまま日本語にしても英語の雰囲気を伝えつつ印象的に読ませることもできるので、こうした英語の違う言い方は一切考えなくてよいというわけではないが、状況で判断すること。
 additional enhancement: 追加の強化、増強。たとえばこの文を「スクラルの変身は単なる物理的な過程であるから、これらの詐欺師たちは追加の強化なしにはほとんどの超能力の効果を再現できない」では何となく意味はわかるとしても、おかしな日本語であることは誰でもわかる。こういう時にはその英語が一体何を指している、何を言おうとしているか完全に理解し、それを「言い換える」、あるいは「最低限の必要な情報を補い」、日本語に移すことが大切だ。このadditional enhancementは、たとえばキャプテン・アメリカのように超人血清を接種する、ハルクのようにガンマ放射線を浴びる、スパイダーマンのように被爆したクモに嚙まれる、といった経験をした結果、超人能力を「追加で得て、身体能力を増強する」ということだ。
 their anatomical origin(s): 「彼らの解剖学的起源」であるが、これではさっぱりわからない。ここでは「彼ら(=地球のスーパーヒーロー)の身体的、生物学的特徴の根源」いうことであり、彼らがそうした超人能力を元々どのようにして得たか(origins)、それは突きつめればどんなものか、ということになる。それを踏まえて日本語にすること。
 of the essence: 最も重要で。例: "I want to develop a good command of English."/"If that's what you want, constant practice is of the essence." (「英語をうまく使いこなせるようになりたい」/「そう思うなら、コツコツ勉強しなくちゃ」)
 veil: 「ベール」であるが、「覆い、覆って隠す[見えなくする]もの」。a veil of... の形でよく使われる。
validity: 正当さ、妥当性。例: "The scientists spent months verifying the validity of the experimental data."(科学者たちは数ヶ月を費やして実験データの妥当性を検証した)
 hypotheses>hypothesis: 仮説。発音に注意。 /haɪpɑ́(ː)θəsɪs / 
★    ★   ★
 
 本書には、アントマン&ワスプ、キャプテン・アメリカ、デアデビル、アイアンマン、ファンタスティック・フォー、スパイダーマン、ゴーストライダー、X-MEN、デッドプール、サノス、ウルトロンほか、マーベルのスーパーヒーロー&ヴィランズの身体機能の秘密が完全網羅されている。上杉は光栄なことに、この大判、フルカラー、232ページの大冊『マーベル・ヒーロー解剖大図鑑』の翻訳者に指名された。明晰な頭脳と超人的な身体能力を備えたマーベル・ヒーローであれば本書の翻訳も瞬時にこなしてしまうのだろうが、生身の人間のわたしはそうはいかない。毎日コツコツ作業して早期の訳了をめざします。

『マーベル・ヒーロー解剖大図鑑』(仮題)
マーク・スマラック、ダニエル・ウォレス著、ジョナ・ローブ画、上杉隼人訳

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。


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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【34】(2024/1/27)

2024-01-28 00:58:56 | 桐生タイムス
天皇皇后両陛下と愛子さまの歌を英訳する

 令和6年1月19日、皇居で新年恒例の「歌会始の儀」が行われた。今年のお題は「和」。
 今月の「永遠の英語学習者の仕事録」は、天皇皇后両陛下とご長女愛子さまが詠まれた和歌を英語にしてみたい。
 最初にお断りしておく。「歌会始の儀」で詠まれた和歌にはすべて宮内庁による英訳が付いている。よって、わたしの英訳は正解ではないし、そもそも英詩になっていない。だが、「和」をテーマに天皇皇后両陛下とご長女愛子さまが詠まれた歌の魅力を読者の皆さんと英語を通して分かちあいたく、おそれながらわたしの英訳を示し、訳出にあたって工夫したことをお話ししようと思う。[今回も訳出した英語は信頼厚き英語便(www.eigobin.com)に念入りに見てもらったし、貴重なアドバイスも賜った]
★    ★    ★
「をちこちの旅路に会へる人びとの笑顔を見れば心和みぬ」

 天皇陛下は47都道府県すべて、皇后さまはオンライン2県を含めて45都道府県と、天皇皇后両陛下は全国ほぼすべての都道府県を訪ねられた。天皇陛下は訪問先で温かく迎えられたことをうれしく思い、この歌を詠まれたという。
宮内庁の英訳は以下の通り。

Seeing the smiles of the people 
 I meet during my many journeys 
 Throughout the country 
 Fills my heart with peace

 非常にコンパクトでわかりやすく訳されているし、英詩として見事に機能している。
 その上で、英詩の体系を崩して、「あちらこちら」を意味する古語「をちこち」の響きを印象的に表現したい、「心和みぬ」の天皇陛下のやさしい笑顔が思い浮かぶ「まろやかな感じ」を出してみたいと考えれば、次のような英語にできるだろうか。 

Seeing beautiful smiles during my journeys here and there comforts and warms my heart.

「をちこち」の「ち」の繰り返しはhere and thereでうまく再現できる。以下、赤字は太字。
 天皇陛下が感じられた温かなお気持ちは、動詞comfort(~を慰める、元気づける、楽にする)あるいはwarm(~を暖める、暖かくする)を使って、それぞれcomfort my heartwarm my heartと表現できる。だが、「心和みぬ」のまろやかさは英語のcomfortとwarmのどちらのニュアンスも併せ持っているように思える。ひとつ問題は、英語のcomfortとwarmはよく似た表現であり、たとえばcomforts warmlyなどとどちらかを副詞にして一緒に使うと何か不自然になってしまうことだ。それでもできればcomfortもwarmも使ってみたい。さてどうしたものか。
 いろいろ考えて、comforts and warms my heartとどちらも動詞として使うことにした。これによってはからずも詩的な響きをもたらすことができた。
★    ★    ★
 皇后さまは以下の歌を詠まれた。

「広島をはじめて訪(と)ひて平和への深き念(おも)ひを吾子(あこ)は綴れり」

 発表された英訳は以下の通り。

How moved I was to read
 My daughter's deep feelings for peace
 After her first visit
 To Hiroshima

 この歌の背景には、ご長女の愛子さまが中学3年生の修学旅行で初めて広島を訪ねられ、原爆ドームや広島平和記念資料館の展示などをご覧になって平和の大切さを肌で感じられ、その時のご経験と思いを中学校(学習院女子中等科)の卒業文集の作文につづられたこと、そして両陛下が愛子さまのその文章を感慨深くご覧になったことがある。皇后さまはその時のお気持ちを込めてこの歌を詠まれたという。
上の英訳がすばらしく、わたしの英訳を出すのは気が引けるのだが、平和を願う愛子さまのお気持ちを大切に受け止め、愛子さまのご成長を頼もしく感じつつも、ご自身も同じように平和への願いを強められている皇后さまのお気持ちをさりげなく出すとすれば、こんな英語にできるだろうか。

In the wake of her first visit to Hiroshima, my daughter emphatically pens her profound yearning for peace.

 In the wake of... は「~に引き続いて」であるが、「~の結果として」という意味も表現できるので、「初めて広島に訪れたことで」→「平和を願うお気持ちを強くされた」の流れが自然に表現できる。
 penは「~をペン(筆)で書く」の意味。「羽」(feather)を意味のラテン語から来ている歴史を感じさせる言い方だから、古語のニュアンスが再現できる。
 emphaticallyは「力強く、強調して」。この副詞で愛子さまの「平和を願うお気持ちの強さ」を(離れたところから)頼もしく感じられている皇后さまのお気持ちが「客観的に」表現できると思う。宮内庁訳のHow moved I was to read(心を動かされて読んだ)の感じがどうにか示せるのではないだろうか。
★    ★    ★
 愛子さまは学業を優先され、宮殿・松の間にはお越しにならなかったが、今年のお題である「和」にそって寄せられたお歌が詠みあげられた。

「幾年(いくとせ)の難き時代を乗り越えて和歌のことばは我に響きぬ」

 発表された英訳は、以下のとおり。

Surviving centuries of hardship
 The words of Waka poems
 Touch my heart today

 これも見事な英詩になっている。
 もし「幾年の難き時代」をもう少し古い言い方に、「響きぬ」を詩的な言い方に、「和歌」を英語ではっきりわかるようにするとすれば、次のように表現できると思う。

Through a millennium of trials and tribulations, the verses of ancient Japanese poetry finally find their echo within my heart.

 trials and tribulationsは「苦難、辛苦」の意味で使われる。“t”の頭韻(alliteration)によって詩的な言い方になる。
 キャッチフレーズ的な言い方find echo within my heartがここではしっくりする。echoは普通は「数えられる名詞」として使われ、ここでは主語versesが複数であるからechoも複数を示す言い方にしなければならない。もちろんechoesとすることはできるが、their echoとすることで「長くきびしい時代を乗り越えて、愛子さまの耳についに届いた、和歌の持つ、『ひとつの共通した』力強い響き」が表現にできるのではないだろうか。
 言うまでもないことだが、愛子さまの「幾年の難き時代を乗り越えて和歌のことばは我に響きぬ」のほうがずっと美しいし、「皆さんで苦難を乗り越えましょう」というお気持ちが強く感じられる。

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。2023年後半最大の話題書の1冊を訳了し、次の大作を鋭意翻訳中。

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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【33】(2023/12/23)

2023-12-24 06:04:32 | 桐生タイムス
日本文学の英訳~坂口安吾を訳す

わたしは永遠の英語学習者であり、今も英語は修業中であるが、本当にありがたいことにさまざまな出版社から英日翻訳の仕事をいただき、2023年も9冊刊行することができた。あらゆる人たちに深く感謝する次第である。今後も英日翻訳には精力的に取り組みたいが、日英翻訳にも挑戦したい……(続きはこちらから↓)

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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【32】(2023/11/25)

2023-11-26 22:45:47 | 桐生タイムス
 GetUpEnglish――毎日更新。
英語表現を適切な翻訳例とともに記録する。

 a little favorのlittleは、日本語の「ちょっと」とか「小さな」とか「ささやかな」と同じような意味で用いられる。実際、それはまったく「ちょっと」でも「小さな」で「ささやかな」お願いではなかったりする。

 “Can I ask you a little favor? Lend me 2 million yen. I promise to pay you back someday.” 

 「ちょっとお願いがあります。200万円ほど貸していただけないでしょうか? いつか必ずお返ししますから」   


このsomeday(いつか)とは一体いつのことか? これを明確に定義できる言語はまず存在しない。(2006/04/01)


 上杉隼人は2006年4月1日に英語学習ブログGetUpEnglish(https://blog.goo.ne.jp/getupenglish)を立ち上げて、以来、今日までほぼ17年7カ月、毎日更新している。
 今月の「永遠の英語学習者の仕事録」は、このGetUpEnglishをご紹介したい。

★   ★   ★
 基本的には、毎日の読書、編集業務、翻訳作業、英語学習において気づいたぜひ覚えておきたい英語表現を紹介している。

 prodigiousは、「巨大な, 莫大な」「感嘆すべき、驚異的な」

“His novel achieved prodigious success worldwide.”

「彼の小説は世界中で驚異的な成功を収めた」(2023/10/12)


do byは「…に対して尽くす、…を遇する」


“He didn't feel the company did right by him, so he decided to look for a new job.”

「彼は会社に正当に扱われていないと感じたので、新しい仕事を探すことにした」(2023/11/17)


 scarcely(やっと、かろうじて)がcouldなどの「推量の助動詞」と比較級と合わせて使われる時には注意すること。


“There could scarcely be a better opportunity to showcase your talent than this upcoming audition.”

「今度のオーディション以上に、あなたの才能を披露するよい機会はあり得ない」(2023/07/09)


 上杉の専門はアメリカ文学なので、アメリカ文学の「埋もれた」古典も時々紹介している。

Man's youth is a wonderful thing: It is so full of anguish and of magic and he never comes to know it as it is, until it has gone from him forever. It is the thing he cannot bear to lose, it is the thing whose passing he watches with infinite sorrow and regret, it is the thing whose loss he must lament forever, and it is the thing whose loss he really welcomes with a sad and secret joy, the thing he would never willingly relive again, could it be restored to him by any magic. ―― Thomas Wolfe, Of Time and the River 

 人間の若さはすばらしい。たいへんな苦悩と魔法にあふれていて、自分から永遠に離れてしまうまで、人はその通りに理解できない。失うことが耐えられないものであり、自分から過ぎ去っていくのを測り知れない悲しみと後悔の念をもって見つめるものであり、その喪失を永遠に嘆き悲しむものであり、失うことを悲しみと密かな喜びをもって実際に受け入れるものであり、魔法をもってすれば再生が可能だとしても、ふたたびよみがえらせたいとは決して思わないものである。―― トマス・ウルフ『時と河について』


 日本語ならではの表現も英語にして紹介している。


 日本語の慣用句に「取りつく島がない」がある。さて、これはどんな英語にしたらよいだろう。

 wouldn't (even) give someone the time of day(今何時かということさえ教えてくれない)という表現が使える。

 共同事業をやらないかと彼にもちかけたが、取りつく島もない。

 I approached him about the possibility of a joint venture, but he wouldn't even give me the time of day.


『鬼滅の刃』をはじめ、日本のアニメーションのセリフも英語にしたりする。


「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」(富岡義勇)

“Don't take from me the power to spare or take the lives and property of the people.”(2023/05/01)


俺は俺の責務を全うする!! ここにいる者は誰も死なせない!!(煉獄杏寿郎)

“I will fulfill my duty!! I won’t let anyone here die!”(2020/12/31)


 そして上杉の現在進行中の翻訳や活動についても報告している。


"Following to a courtesy call on Midori City’s mayor in March, I am paying an official visit to Kiryu City’smayor today."

「3月はみどり市の市長に表敬訪問したが、本日は桐生市の市長に表敬訪問する」(2023/09/29)


「日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します」とTOPページで宣言しているが、最近は更新がどんどん遅れてしまっていて、GetUpEnglishどころか、GoodAfternoonEnglish、GoodEveningEnglish、はてはGoodNightEnglish化してしまっている。
 それでも日々の編集業務と翻訳作業において出会った英語表現(英日、日英ともに)を、適切な翻訳例とともに記録しておきたいから、永遠の英語学習者として活動できるかぎり続けてみたい。
 皆さま、どうか今後ともGetUpEnglishをよろしくお願いします。
 Please keep clicking on GetUpEnglish! 

翻訳書は90冊、桐生発祥の講談社からの翻訳書は50冊になる。9月29日、荒木恵司市長を表敬訪問し、講談社の本を贈って歓談した。

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)、『続ディズニーテーマパークポスターコレクション』(講談社)、『ディズニー ふしぎの国のアリス タロット』(河出書房新社)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。2023年後半最大の話題書の1冊を訳了し、次の大作を鋭意翻訳中。
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