GetUpEnglish

日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

GetUpEnglishについて

毎日更新! GetUpEnglish Updates Every Day! Since April 1, 2006 (c) 2006-2024 Uesugi Hayato(上杉隼人)

TO CONCERN

2023-06-21 08:41:58 | ハックルベリー・フィンの冒険
 動詞concernは「(人)を心配させる、(人)に懸念を与える」の意味で使われるが、「  (物事が)~に関係する、影響を与える」の意味でも用いられるので、注意しよう。
 今日のGetUpEnglishはこの動詞のこの意味の使い方を学習する。
 誰が担当者がわからない組織にメールを書く場合、次のように最初に記す。

○Practical Example
 To whom it may concern
 関係当事者殿

●Extra Point
 古すぎて思い出せないが、昔誰かが言っていた「関係ないね」は、次のように言ってもいいだろう。

◎Extra Extra Example
 It doesn't concern me. 
「私には関係のあることではない/関係ないね」
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最近のTWITTERから 『ハックルベリー・フィンの冒険』に対する好意的なコメント、誠にありがとうございます。

2022-02-12 19:50:25 | ハックルベリー・フィンの冒険

最近のTWITTERから

『ハックルベリー・フィンの冒険』に対する好意的なコメント、誠にありがとうございます。

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嬉野君@「続・金星特急」3巻3月10日発売@ureshinokimi2021年の青い鳥文庫版「ハックルベリー・フィンの冒険(上杉隼人訳)」とても面白い!/~(中略)公爵がダメ出しした。「そんなダミ声じゃダメだ。『ロミオォ!』って牛やロバが吠えてるみたいな感じじゃなくて、『ろみお♥』って感じじゃいかないと。(略)」/ってノリの訳がはまってる。

嬉野君@「続・金星特急」3巻3月10日発売@ureshinokimi·2月9日返信先: @ureshinokimiさんこの『ろみお♥は書体もいきなりキラキラになってて笑った。私が2020年代に小学生だったとしたら、この明るく殺伐、ホロッとしつつ色々考えさせられる物語に夢中になっただろうな。イラストえらい可愛いと思ったら、にしけいこ先生でした。

https://twitter.com/ureshinokimi/status/1491076811153108992

田中智行@t_tomoyuki77
上杉隼人訳の『ハックルベリー・フィンの冒険』は、期待にたがわぬ口調のよさ。このシリーズの挿絵は、

子どもに上巻を読み聞かせているところですが、口調がよいのはもちろん、原文を消化しきった自信があればこその闊達さなのだろうと感じ入りました。王様と公爵の登場が楽しみです!
https://twitter.com/t_tomoyuki77/status/1489418335204773892

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始まりは2020年1月10日、青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』の翻訳をめぐる冒険

2022-01-10 07:13:41 | ハックルベリー・フィンの冒険

始まりは2020年1月10日、青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』の翻訳をめぐる冒険

上杉隼人

「『ハックルベリー・フィンの冒険』の冒険を、今の子どもたちにいちばん読みやすいかたちで出せないか、検討しているところです」

 講談社の青い鳥文庫編集部の山室秀之さんから『ハックルベリー・フィンの冒険』の翻訳依頼メールを受信したのは、2020年1月10日(月)の午後だった。

 こんな光栄な話はないし、ぜひ引き受けてみたいが、大きな問題がふたつあった。

 言うまでもないことだが、『ハックルベリー・フィンの冒険』はアメリカ文学にとどまらず、世界文学の名作中の名作だ。アーネスト・ヘミングウェイ、J・D・サリンジャー、カート・ヴォネガット、ソール・ベローほか、のちの重要なアメリカ作家にとどまらず、わが国の大江健三郎をはじめ、世界中の作家が愛読し、自身の作品にエッセンスを組み込みつつ、精力的な作品を書き上げてきた。(これについては、柴田元幸編訳『「ハックルベリー・フィンの冒けん」をめぐる冒けん』[研究社]にわかりやすく語られている。)

マーク・トウェインによって『ハックルベリー・フィンの冒険』が書かれることがなければ、20世紀のアメリカ文学のみならず世界文学は、まるで違うものになっていたことは間違いない。

こんな世界の名作を、わたしが訳せるだろうか?

 青い鳥文庫で訳出するにあたって、わたしが考えなければならなかった最初の問題がこれだ。

 わたしはスター・ウォーズやアベンジャーズやマーベル関連のジュニア・ノベルを多く訳しているので、青い鳥文庫の山室さんもそのことに注目して、お話をくださったのだと思う。だが、『ハックルベリー・フィンの冒険』となると、全然話が違う。少年少女向けとは言え、基本的にオリジナル・テキストをすべて訳し、現代の子供たちが普段読む物語と同じような小説に仕上げなければならない。

 もうひとつは『ハックルベリー・フィンの冒険』に関しては、柴田元幸『ハックルベリー・フィンの冒けん』(研究社、2017年)が刊行されたことで、これ以上の翻訳は必要ないと個人的に思うからだ。  

 文法もつづりも論理も間違っているけれども英語の限りない伸びやかなハック・フィンやジムの語りを、日本語で伝えるにはどうしたらいいか? 

ハックにこの漢字が書けるか? ジムはこの言い回しをどんな日本語で言うか?

名翻訳家、柴田元幸はこうしたことをとことん考えて、誰にもできなかったすぐれた訳を作り上げてしまった。柴田訳『ハックルベリー・フィンの冒けん』は、日本の翻訳史をすべて塗り替えてしまった名訳と言える。

 そしてここでははっきり言えないが、柴田元幸『ハックルベリー・フィンの冒けん』に、わたしはおそらくほかの誰より強い関わりを持っているかもしれない。『ハックルベリー・フィンの冒けん』は何度も読んだし、柴田訳のすごさを誰よりも強く感じている。

 この柴田訳のあとに、ひどいものはとっても出せない。

 わたしが大きく悩んだもうひとつの問題がこれだった。

 ☆

 2020年1月10日の午前10時頃だった。

 山室さんからの『ハックルベリー・フィンの冒険』の翻訳依頼のメールを受信する前だった。

 本マーク・トウェイン協会の会長も務めた偉大な文学者、渡辺利雄がご逝去されたという知らせを、ご長男の渡辺英彦さんから電話でいただいた。

 これもここでははっきり言えないのだが、渡辺利雄との付き合いは20年以上におよぶし、『講義アメリカ文学史』「全3巻」(2007)、同「補遺版』(2009)、『入門編』(2011)[すべて研究社]をはじめ、多くの偉大な仕事を残したアメリカ文学者、翻訳者であり、すぐれた教育者でもあった渡辺利雄から、一言ではとても語れない多くのことを学んだ。

 今のわたしがあるのは、渡辺利雄のおかげである。

 2006年の夏に、氏の軽井沢の別荘にご招待いただき、奥様の淳子さんと共に大変温かくもてなしていただいたことを昨日のことのように思い出す(その淳子さんも2021年6月4日に亡くなった)。

 よく考えて、2020年の1月11日の早朝、青い鳥文庫の山室さんにメールを送信した。

 ☆

 「『ハックルベリー・フィンの冒険』の新訳、ぜひ挑戦させてください!」 

 ☆

 渡辺利雄の専門は、マーク・トウェインであり、『ハックルベリー・フィン』であった。

 ☆

 今回の青い鳥文庫版翻訳にあたって、注意したことがふたつある。

 ひとつは、『ハックルベリー・フィン』の原書の持ち味は決して崩すことなく、現代の日本の子供たちに抵抗なく受け止めてもらえるものにしなければならない。

 言うまでもなく、これは大変むずかしいことだった。まずは先ほど述べたように、マーク・トウェインのオリジナル・テキストを全部自分なりに訳す必要がある。

 カリフォルニア大学出版局の『125周年版』(Adventures of Huckleberry Finn, 125th Anniversary Edition, 1994 ) を底本としたが、当然のことながら、教養のあるネイティブでも理解がむずかしい言い方がたくさん出てくる。 

 だが、21世紀に生きるわれわれにはインターネットという強力な武器がある。研究者や愛好家が協力して現代アメリカ英語に書き換えてくれているサイトもあって、特にSparkNotesの「『ハックルベリー・フィンの冒険』スタディ・ガイド」(www.sparknotes.com/nofear/lit/huckfinn)は大変参考になったし、こちらを常時参照しつつ、『125周年版』のテキストを訳していった。

 ここでも、柴田元幸訳『ハックルベリー・フィンの冒けん』のすごさを思い知ることになる。どうにか自分なりの訳を作ってみたもの、よくわからないところは柴田訳を、時々ではなく、随時確認した。中には自分の訳もなかなかだと思うことも稀にあったが、柴田訳はその部分をさらにうまく訳している。わたしの訳も運よく柴田訳と同じ表現になることもあったが、それでは柴田訳の剽窃になってしまうので、泣く泣く違う表現にしたところも少なくない。 

 だが、これはあくまで青い鳥文庫のための翻訳作業の第一段階であって、ここから少年少女向けに圧縮しつつ、言い換えていくことをしなければならない。

 これも大変なことだったが、曲がりなりにも自分の全訳を作っていたのが大きかった。そしてスター・ウォーズ、アベンジャーズのジュニア・ノベル翻訳を通じて、スーパー・ヒーローたちから学んだ/学んでいることが、やっぱり大いに役立った。

 ☆

 でもおれたちが今度はクモを取りに行っているあいだに、家の子供たちがそれを見つけて、開けたらネズミでも出てくるのかなと思って開けたら、ほんとにネズミたちが次々に飛び出してきて、間の悪いことにサリーおばさんもやってきて、うわあ、これはなんだいと大声を上げたけど、ネズミたちもおばさんを退屈させちゃいけないと思ったようで思い切り動きまくったから、おばさんをギャアギャアよけいに大騒ぎさせることになった。(青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』下巻、192ページ) 

 こんな調子で翻訳作業は終えることができたが、もうひとつしなければならないことがあった。

 青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』の読者は、「小学校上級・中学から」だ。19世紀アメリカで書かれたオリジナル・テキストには、21世紀の日本の小学生、中学生にはなじみがないこともたくさん記されている。

 そこで「これは今の子たちにはわからないかも」と思えることはできるかぎり注をつけることにした。

 山室さん、さらには講談社の優秀な校閲者のみなさんのお力も借りて、「なぜハックは子供なのにタバコを吸ってる?」、「女性の溺死体は仰向けに漂うが、男性の溺死体はうつぶせに漂うとハックは言っているけど、ほんとうなの?」、「ハックを探そうとしてなぜ船は大砲を撃ち、水銀の入ったパンが流されたの?」、「難破船にテキサスと呼ばれる高級船室が出てくるけど、これって何のこと?」「どうして王と公爵は体にタールをかけて鳥の羽でおおわれて運ばれていくの?」「サイラスおじさんが使徒行伝の17章を読み直していたって言ってるけど、どうして使徒行伝17章なの?」といった、子供たちが疑問に思うかもしれないことには、できるかぎり注をつけて、できるかぎりわかりやすく答えてみた。

 さらに、「ハックが黒人ジムを助けるのが、そんなに悪いことなの?」というこの作品の最大の問題については、注のほか、下巻の訳者あとがきで、当時の社会情勢について触れながら十分な字数を取って説明した。

 日本の子供たちがハックとジムの筏の旅がどれだけ壮大であったか感じてもらえるように、地図も作って、日本を旅すればそれがどれくらいの距離になるか一目でわかるようにした。

 この一連の作業においては、『125周年版』の詳細な註はもちろん、Michael Patrick HearnのThe Annotated Huckleberry Finn: Adventures of Huckleberry Finn, Tom Sawyer's Comradeに大いに助けられた。 

 さらにすべて挙げれば大変なリストになってしまうが、亀井俊介『マーク・トウェインの世界』(南雲堂、1995)、後藤和彦『迷走の果てのトム・ソーヤー 小説家マーク・トウェインの軌跡』(松柏社、2000)、石原剛『マーク・トウェインと日本―変貌するアメリカの象徴』(彩流社、2008)、亀井俊介監修『マーク・トウェイン文学/文化事典』(彩流社、2010)、平石貴樹『アメリカ文学史』(松柏社、2010)、中垣恒太郞『マーク・トウェインと近代国家アメリカ』(音羽書房鶴見書店、2012)、竹内康浩『謎解き「ハックルベリー・フィンの冒険」 ある未解決殺人事件の深層』(新潮選書、2015)など、わが国のマーク・トウェイン研究者の方々のすぐれたお仕事がなければとてもできないことだった。

 青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』の翻訳を開始したのは、渡辺利雄ご逝去の知らせをいただいた2020年1月10日の翌日、1月11日であった。すぐあとコロナウイルスによって全世界の情景は一変する。外出を控えることが求められ、家にいることが多くなった。これが個人的にはよかったのかもしれない。毎朝、毎晩、仕事の前後に、この翻訳を精力的に進めた。

 2020年11月15日、第1稿を青い鳥文庫編集部の山室秀之さんに送信した……。

 ☆

 楽しくて、わくわくして、はらはらして、気づけば涙もこぼれ落ちている……。

『ハックルベリー・フィンの冒険』は小説のあらゆる要素が詰まっています。

 読者のみなさんがハック・フィンと生涯忘れることのない冒険をしていだけますことを、心から祈っております。 

 ☆

 青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』下巻「訳者あとがき」にこのように記しているが、現代の少年少女にマーク・トウェインの名作をそんなふうに味わってもらえたら、とてもうれしい。

 上杉隼人(うえすぎはやと)

 翻訳者(英日、日英)、編集者、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書に『ハックルベリー・フィンの冒険』(講談社青い鳥文庫)のほか、「スター・ウォーズ」シリーズ[エピソード1~9]、『アベンジャーズ エンドゲーム』『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(いずれも講談社)、『Star Wars スター・ウォーズ ライトセーバー大図鑑』(グラフィック社)、『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』(KADOKAWA)、『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』(集英社インターナショナル)、チャーリー&ステファニー・ウェッツェル『MARVEL 倒産から逆転No.1となった映画会社の知られざる秘密』『若い読者のための宗教史』『若い読者のためのアメリカ史』(すばる舎)、ウィリアム・C・レンペル『ザ・ギャンブラー ハリウッドとラスベガスを作った伝説の大富豪』(ダイヤモンド社)、ジョン・ル・カレ『われらが背きし者』(岩波現代文庫)など多数(70冊以上)。

(日本マーク・トウェイン協会 Newsletter No. 53 October, 2021 初出)

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You don’t know about me without you have read a book by the name of The Adventures of Tom Sawyer...

2021-12-31 02:10:32 | ハックルベリー・フィンの冒険

2021年も終わりですね。

 今年はマーク・トウェーンの『ハックルベリー・フィンの冒険』を講談社の青い鳥文庫から刊行することができました。

 すごく光栄なことですし、この作品を訳している時はなんだか夢を見ているみたいでしたが、夢を見ているのなら、覚めないうちにやらなくちゃと思って必死に訳しました。

 2021年の最後のGetUpEnglishは、この名作の冒頭文をご紹介します。

You don’t know about me without you have read a book by the name of The Adventures of Tom Sawyer; but that ain’t no matter. That book was made by Mr. Mark Twain, and he told the truth, mainly. There was things which he stretched, but mainly he told the truth. That is nothing. I never seen anybody but lied one time or another, without it was Aunt Polly, or the widow, or maybe Mary. Aunt Polly—Tom’s Aunt Polly, she is—and Mary, and the Widow Douglas is all told about in that book, which is mostly a true book, with some stretchers, as I said before.

 Now the way that the book winds up is this: Tom and me found the money that the robbers hid in the cave, and it made us rich. We got six thousand dollars apiece—all gold. It was an awful sight of money when it was piled up. Well, Judge Thatcher he took it and put it out at interest, and it fetched us a dollar a day apiece all the year round...

 『トム・ソーヤーの冒険』って本を読んでなけりゃおれのことなんて知らないだろうけど、全然オッケー。あれってマーク・トウェーンって人が作った本だけど、大体ほんとのことが書かれてる。大げさに書いてあるとこもあるけど、大体ほんとのことが書かれてる。

 誰だって一度や二度はウソつくから、少し大げさに書かれてたって全然オッケーだ。もっともポリーおばさんや、ダグラスさんの未亡人や、メアリーみたいな人はウソつかないだろうけど。トムのポリーおばさんのことも、ダグラスさんの未亡人のことも、メアリーのこともみんな書いてある。大げさに書かれてるとこもあるけど、だいたいほんとのことだ。

 その本には盗賊たちが洞穴に隠したカネを、おれとトムが見つけてカネ持ちになる話も書かれてる。おれたち六千ドルずつもらえることになって、その金貨をぜんぶ積み上げてみたら、びっくりするくらい高い山がふたつできた。これをどうしたらいいかと思ってたら、判事のサッチャーさんがぜんぶあずかってくれて、利子もつくようにしてくれて、おれとトムは何もしなくても毎日一ドルずつもらえることになった。

「日本マーク・トウェイン協会 Newsletter No. 53 October, 2021」の寄稿記事もぜひご覧ください。

『ハックルベリー・フィンの冒険』(青い鳥文庫、上、下)

 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000352320

 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000353152

 プロモーション・ビデオはこちら。

 上巻

 https://youtu.be/fWQ6gsZPSNU

 下巻

 https://youtu.be/XNyZY-XI5ds

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始まりは2020年1月10日、青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』の翻訳をめぐる冒険

2021-12-31 01:55:03 | ハックルベリー・フィンの冒険

始まりは2020年1月10日、青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』の翻訳をめぐる冒険

上杉隼人

「『ハックルベリー・フィンの冒険』の冒険を、今の子どもたちにいちばん読みやすいかたちで出せないか、検討しているところです」

 講談社の青い鳥文庫編集部の山室秀之さんから『ハックルベリー・フィンの冒険』の翻訳依頼メールを受信したのは、2020年1月10日(月)の午後だった。

 こんな光栄な話はないし、ぜひ引き受けてみたいが、大きな問題がふたつあった。

 言うまでもないことだが、『ハックルベリー・フィンの冒険』はアメリカ文学にとどまらず、世界文学の名作中の名作だ。アーネスト・ヘミングウェイ、J・D・サリンジャー、カート・ヴォネガット、ソール・ベローほか、のちの重要なアメリカ作家にとどまらず、わが国の大江健三郎をはじめ、世界中の作家が愛読し、自身の作品にエッセンスを組み込みつつ、精力的な作品を書き上げてきた。(これについては、柴田元幸編訳『「ハックルベリー・フィンの冒けん」をめぐる冒けん』[研究社]にわかりやすく語られている。)

 マーク・トウェインによって『ハックルベリー・フィンの冒険』が書かれることがなければ、20世紀のアメリカ文学のみならず世界文学は、まるで違うものになっていたことは間違いない。

 こんな世界の名作を、わたしが訳せるだろうか?

 青い鳥文庫で訳出するにあたって、わたしが考えなければならなかった最初の問題がこれだ。

 わたしはスター・ウォーズやアベンジャーズやマーベル関連のジュニア・ノベルを多く訳しているので、青い鳥文庫の山室さんもそのことに注目して、お話をくださったのだと思う。だが、『ハックルベリー・フィンの冒険』となると、全然話が違う。少年少女向けとは言え、基本的にオリジナル・テキストをすべて訳し、現代の子供たちが普段読む物語と同じような小説に仕上げなければならない。

 もうひとつは『ハックルベリー・フィンの冒険』に関しては、柴田元幸『ハックルベリー・フィンの冒けん』(研究社、2017年)が刊行されたことで、これ以上の翻訳は必要ないと個人的に思うからだ。  

 文法もつづりも論理も間違っているけれども英語の限りない伸びやかなハック・フィンやジムの語りを、日本語で伝えるにはどうしたらいいか? 

 ハックにこの漢字が書けるか? ジムはこの言い回しをどんな日本語で言うか?

 名翻訳家、柴田元幸はこうしたことをとことん考えて、誰にもできなかったすぐれた訳を作り上げてしまった。柴田訳『ハックルベリー・フィンの冒けん』は、日本の翻訳史をすべて塗り替えてしまった名訳と言える。

 そしてここでははっきり言えないが、柴田元幸『ハックルベリー・フィンの冒けん』に、わたしはおそらくほかの誰より強い関わりを持っているかもしれない。『ハックルベリー・フィンの冒けん』は何度も読んだし、柴田訳のすごさを誰よりも強く感じている。

 この柴田訳のあとに、ひどいものはとっても出せない。

 わたしが大きく悩んだもうひとつの問題がこれだった。

 ☆

 2020年1月10日の午前10時頃だった。

 山室さんからの『ハックルベリー・フィンの冒険』の翻訳依頼のメールを受信する前だった。

 本マーク・トウェイン協会の会長も務めた偉大な文学者、渡辺利雄がご逝去されたという知らせを、ご長男の渡辺英彦さんから電話でいただいた。

 これもここでははっきり言えないのだが、渡辺利雄との付き合いは20年以上におよぶし、『講義アメリカ文学史』「全3巻」(2007)、同「補遺版』(2009)、『入門編』(2011)[すべて研究社]をはじめ、多くの偉大な仕事を残したアメリカ文学者、翻訳者であり、すぐれた教育者でもあった渡辺利雄から、一言ではとても語れない多くのことを学んだ。

 今のわたしがあるのは、渡辺利雄のおかげである。

 2006年の夏に、氏の軽井沢の別荘にご招待いただき、奥様の淳子さんと共に大変温かくもてなしていただいたことを昨日のことのように思い出す(その淳子さんも2021年6月4日に亡くなった)。

 よく考えて、2020年の1月11日の早朝、青い鳥文庫の山室さんにメールを送信した。

 ☆

 「『ハックルベリー・フィンの冒険』の新訳、ぜひ挑戦させてください!」 

 ☆

 渡辺利雄の専門は、マーク・トウェインであり、『ハックルベリー・フィン』であった。

 ☆

 今回の青い鳥文庫版翻訳にあたって、注意したことがふたつある。

 ひとつは、『ハックルベリー・フィン』の原書の持ち味は決して崩すことなく、現代の日本の子供たちに抵抗なく受け止めてもらえるものにしなければならない。

 言うまでもなく、これは大変むずかしいことだった。まずは先ほど述べたように、マーク・トウェインのオリジナル・テキストを全部自分なりに訳す必要がある。

 カリフォルニア大学出版局の『125周年版』(Adventures of Huckleberry Finn, 125th Anniversary Edition, 1994 ) を底本としたが、当然のことながら、教養のあるネイティブでも理解がむずかしい言い方がたくさん出てくる。 

 だが、21世紀に生きるわれわれにはインターネットという強力な武器がある。研究者や愛好家が協力して現代アメリカ英語に書き換えてくれているサイトもあって、特にSparkNotesの「『ハックルベリー・フィンの冒険』スタディ・ガイド」(www.sparknotes.com/nofear/lit/huckfinn)は大変参考になったし、こちらを常時参照しつつ、『125周年版』のテキストを訳していった。

 ここでも、柴田元幸訳『ハックルベリー・フィンの冒けん』のすごさを思い知ることになる。どうにか自分なりの訳を作ってみたものの、よくわからないところは柴田訳を、時々ではなく、随時確認した。中には自分の訳もなかなかだと思うことも稀にあったが、柴田訳はその部分をさらにうまく訳している。わたしの訳も運よく柴田訳と同じ表現になることもあったが、それでは柴田訳の剽窃になってしまうので、泣く泣く違う表現にしたところも少なくない。 

 だが、これはあくまで青い鳥文庫のための翻訳作業の第一段階であって、ここから少年少女向けに圧縮しつつ、言い換えていくことをしなければならない。

 これも大変なことだったが、曲がりなりにも自分の全訳を作っていたのが大きかった。そしてスター・ウォーズ、アベンジャーズのジュニア・ノベル翻訳を通じて、スーパー・ヒーローたちから学んだ/学んでいることが、やっぱり大いに役立った。

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 でもおれたちが今度はクモを取りに行っているあいだに、家の子供たちがそれを見つけて、開けたらネズミでも出てくるのかなと思って開けたら、ほんとにネズミたちが次々に飛び出してきて、間の悪いことにサリーおばさんもやってきて、うわあ、これはなんだいと大声を上げたけど、ネズミたちもおばさんを退屈させちゃいけないと思ったようで思い切り動きまくったから、おばさんをギャアギャアよけいに大騒ぎさせることになった。(青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』下巻、192ページ) 

 こんな調子で翻訳作業は終えることができたが、もうひとつしなければならないことがあった。

 青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』の読者は、「小学校上級・中学から」だ。19世紀アメリカで書かれたオリジナル・テキストには、21世紀の日本の小学生、中学生にはなじみがないこともたくさん記されている。

 そこで「これは今の子たちにはわからないかも」と思えることはできるかぎり注をつけることにした。

 山室さん、さらには講談社の優秀な校閲者のみなさんのお力も借りて、「なぜハックは子供なのにタバコを吸ってる?」、「女性の溺死体は仰向けに漂うが、男性の溺死体はうつぶせに漂うとハックは言っているけど、ほんとうなの?」、「ハックを探そうとしてなぜ船は大砲を撃ち、水銀の入ったパンが流されたの?」、「難破船にテキサスと呼ばれる高級船室が出てくるけど、これって何のこと?」「どうして王と公爵は体にタールをかけて鳥の羽でおおわれて運ばれていくの?」「サイラスおじさんが使徒行伝の17章を読み直していたって言ってるけど、どうして使徒行伝17章なの?」といった、子供たちが疑問に思うかもしれないことには、できるかぎり注をつけて、できるかぎりわかりやすく答えてみた。

 さらに、「ハックが黒人ジムを助けるのが、そんなに悪いことなの?」というこの作品の最大の問題については、注のほか、下巻の訳者あとがきで、当時の社会情勢について触れながら十分な字数を取って説明した。

 日本の子供たちがハックとジムの筏の旅がどれだけ壮大であったか感じてもらえるように、地図も作って、日本を旅すればそれがどれくらいの距離になるか一目でわかるようにした。

 この一連の作業においては、『125周年版』の詳細な註はもちろん、Michael Patrick HearnのThe Annotated Huckleberry Finn: Adventures of Huckleberry Finn, Tom Sawyer's Comradeに大いに助けられた。 

 さらにすべて挙げれば大変なリストになってしまうが、亀井俊介『マーク・トウェインの世界』(南雲堂、1995)、後藤和彦『迷走の果てのトム・ソーヤー 小説家マーク・トウェインの軌跡』(松柏社、2000)、石原剛『マーク・トウェインと日本―変貌するアメリカの象徴』(彩流社、2008)、亀井俊介監修『マーク・トウェイン文学/文化事典』(彩流社、2010)、平石貴樹『アメリカ文学史』(松柏社、2010)、中垣恒太郞『マーク・トウェインと近代国家アメリカ』(音羽書房鶴見書店、2012)、竹内康浩『謎解き「ハックルベリー・フィンの冒険」 ある未解決殺人事件の深層』(新潮選書、2015)など、わが国のマーク・トウェイン研究者の方々のすぐれたお仕事がなければとてもできないことだった。

 青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』の翻訳を開始したのは、渡辺利雄ご逝去の知らせをいただいた2020年1月10日の翌日、1月11日であった。すぐあとコロナウイルスによって全世界の情景は一変する。外出を控えることが求められ、家にいることが多くなった。これが個人的にはよかったのかもしれない。毎朝、毎晩、仕事の前後に、この翻訳を精力的に進めた。

 2020年11月15日、第1稿を青い鳥文庫編集部の山室秀之さんに送信した……。

 ☆

 楽しくて、わくわくして、はらはらして、気づけば涙もこぼれ落ちている……。

『ハックルベリー・フィンの冒険』は小説のあらゆる要素が詰まっています。

 読者のみなさんがハック・フィンと生涯忘れることのない冒険をしていだけますことを、心から祈っております。 

 ☆

 青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』下巻「訳者あとがき」にこのように記しているが、現代の少年少女にマーク・トウェインの名作をそんなふうに味わってもらえたら、とてもうれしい。

 上杉隼人(うえすぎはやと)

 翻訳者(英日、日英)、編集者、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書に『ハックルベリー・フィンの冒険』(講談社青い鳥文庫)のほか、「スター・ウォーズ」シリーズ[エピソード1~9]、『アベンジャーズ エンドゲーム』『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(いずれも講談社)、『Star Wars スター・ウォーズ ライトセーバー大図鑑』(グラフィック社)、『マーベル・シネマティック・ユニバース ヒーローたちの言葉』(KADOKAWA)、『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』(集英社インターナショナル)、チャーリー&ステファニー・ウェッツェル『MARVEL 倒産から逆転No.1となった映画会社の知られざる秘密』『若い読者のための宗教史』『若い読者のためのアメリカ史』(すばる舎)、ウィリアム・C・レンペル『ザ・ギャンブラー ハリウッドとラスベガスを作った伝説の大富豪』(ダイヤモンド社)、ジョン・ル・カレ『われらが背きし者』(岩波現代文庫)など多数(70冊以上)。

(日本マーク・トウェイン協会 Newsletter No. 53 October, 2021 初出)

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I knowed he was white inside

2021-08-21 01:28:47 | ハックルベリー・フィンの冒険

 この夏、大変うれしいことに、講談社青い鳥文庫から『ハックルベリー・フィンの冒険』上巻、下巻を刊行することができた。

『桐生タイムス』の連載「永遠の英語学習者の仕事録」にも書いたが、

 http://kiryutimes.co.jp/wp/wp-content/uploads/20210626_uesugi_03.pdf

 http://kiryutimes.co.jp/wp/wp-content/uploads/210724_uesugi_04.pdf

 “All right, then, I’ll go to hell”

「よし、じゃあ、おれは地獄に行く。」

は世界文学に刻まれた名ゼリフであると思うし、『ハックルベリー・フィンの冒険』にはほかにも読者の心に訴える言葉がたくさんある。

 この作品はもう何度も読んでいるが、今回訳してみて気になったのは、40章にあるハックのセリフだ。

 I knowed he was white inside

 knowedはもちろんknewであるが、この表現について、マイケル・パットリック・ハーン『ヴィジュアル注釈版「ハックルベリー・フィン」』には、次の解説が記されている。

「乱暴でここでは差別的な言い方だが、ハックはジムが自分とまったく同じだとおそらく認識している。この日この時に口にできるおそらく最高の言葉でジムを称賛しているのだ」

 ここから「ジムは心が白人だってわかっていたから」と言いつつ、「おれと同じで心が真っ白な人間だから」と思っていると解釈できる。

 名作は読めば読むほどいろんなことを教えてくれる。

 特に若い読者の皆さんには読んでいたけるとうれしい。

『ハックルベリー・フィンの冒険』(青い鳥文庫、上、下)

 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000352320

 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000353152

 プロモーション・ビデオはこちら。

 上巻

 https://youtu.be/fWQ6gsZPSNU

 下巻

 https://youtu.be/XNyZY-XI5ds

 

 

 

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新刊講談社青い鳥文庫「ハックルベリー・フィンの冒険」上・下巻、英語便メンバー3名様へプレゼント!

2021-07-19 07:49:05 | ハックルベリー・フィンの冒険

いつも大変お世話になっている英語便(https://www.eigobin.com/)さんにご紹介いただきました。

https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/c/101b5b2366a9caebfbcc8df720a45b10

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新刊講談社青い鳥文庫「ハックルベリー・フィンの冒険」上・下巻、英語便メンバー3名様へプレゼント!

    今回は青い鳥文庫「ハックルベリー・フィンの冒険」上・下巻をご紹介いたします。 本書の発売を記念して、講談社さんのご厚意により、メンバー3名様に訳者上杉隼人さんのサイン入り書籍(上下巻セット!)をプレゼントさせていただきます。ご希望の方はこの頁のご応募要項に従い、期日までにご応募ください。

プレゼント書籍のご案内


「ハックルベリー・フィンの冒険」上巻

「ハックルベリー・フィンの冒険」下巻
 
「ハックルベリー・フィンの冒険」上巻・下巻

 

[著]マーク・トウェーン
[訳] 上杉 隼人
[絵]にしけいこ
ISBN-13: 978-4065235584
ISBN-13: 978-4065239698


※ 本書は翻訳本(日本語)です。

(内容紹介)

青い鳥文庫「ハックルベリー・フィンの冒険」上巻

19世紀のアメリカ南部。何ものにもとらわれない自然児のハックルベリー・フィンは、ダグラスさんの未亡人の家での生活にも、学校の勉強にもうんざり。乱暴者の父親からも逃げ出して、黒人奴隷のジムとともにミシシッピー川を下る旅に出る--。アメリカ文学史上に燦然と輝く名作が、読みやすい新訳でよみがえる!
Amazon=> https://www.amazon.co.jp/dp/4065235588

青い鳥文庫「ハックルベリー・フィンの冒険」下巻

ハックルベリーとジムのミシシッピー川を下る筏の旅は、詐欺師の「王」と「公爵」が加わり、ますます波乱の展開! ハックは、純真な人たちから大金をだましとろうとする悪党ふたりを追い払おうとするが、つかまってしまう。さらに、逃亡黒人のジムも売り飛ばされて、はなればなれに。そんなとき、親友のトム・ソーヤーと再会し、ジムを救う計画を立てる。
Amazon=> https://www.amazon.co.jp/dp/4065239699

翻訳者の上杉隼人さんは、英語便の熱心なメンバーであると同時に、スター・ ウォーズ全作(エピソードI~IX)やアベンジャーズ関係を含めてさまざまな翻訳書を70冊以上刊行しているスゴ腕翻訳者。そしてこの度、世界の名作『ハックルベリー・フィンの冒険』を訳されました。上杉隼人さんのブログGetupEnglishで、上杉さんのご経歴、過去の翻訳書一覧、著者インタビューなどがご覧いただけます。

 

★ ★ ★ プレゼントご応募方法 ★ ★ ★

ご応募期間 

2021年7月15日(木)~ 2021年7月31日(土) 

ご応募方法

アドレスcustomer@eigobin.comまでインターネットメールでご応募ください。

メールタイトルに、「ハックルベリー・フィンの冒険」と記載ください。

メール本文中に、英語便ハンドルネームを記載して送信ください。 (必要事項のみで、挨拶等なしでご送信いただいてかまいません。

※申し訳ありませんが、プレゼント本の発送は日本国内のみとさせていただきます。海外ご在住の方でも、日本国内のご親戚・ご友人がお受け取り可能な場合はご応募いただけます。

抽選と当選者発表

ご応募者の中から3名様をコンピュータ抽選で選ばせていただきます。

2021年8月2日(月)にInformationメールにて当選者3名様のハンドルネームを発表させていただきます。

皆様のご応募お待ちしております。

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“All right, then, I’ll go to hell”—and tore it up.

2021-07-18 08:12:21 | ハックルベリー・フィンの冒険

  講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』下巻のプロモーション・ビデオができた。

 https://youtu.be/XNyZY-XI5ds

 今日のGetUpEnglishはこのプロモーション・ビデオと合わせて読んでほしい。

 上巻に書いた通り、1830年代から1840年代はアメリカの北部でも南部でも奴隷の所有は合法的なものであり、奴隷を逃がしたり、逃亡を助けたりすることは犯罪であると、それもかなり重大な犯罪であると見なされていた。

 そんな時代に、ハック少年は大きな問題を突きつけられ、ひどく苦しむ。

 逃亡黒人のジムをどうしたらいいか?

 ★ 

 こんなにすっきりした気持ちというか、何の罪も感じない気持ちになれたのは、生まれて初めてだ。

 これで祈れる。

 でも、おれは祈らずに紙を置いて考えた。

 これでよかったんだ、あやうく地獄に落ちるところだったんだ。

 おれは考えつづけた。

 ずっと考えてると、ジムとふたりで川を下った日々を思い出した。

 ジムはいつも一緒にいてくれた。

 昼も夜も嵐のときも、おれの前にいてくれた。

 ゆらゆら筏で川を下りながら、ふたりで話して、笑って、歌った。

 ジムのことを忘れようとするけど、ジムのことばかり考えてしまう。

 筏の見張りをおれの分までしてくれて、おれが寝られるようにしてくれた。

 おれが霧の中から戻ってきたら、すごく喜んでくれた。

 グランジャフォード家とシェパードソン家の確執の果ての惨事から逃げて沼地に戻ってきたときも、とっても喜んでくれた。

 おれをいつも抱きしめてくれたし、かわいがってくれたし、すごくやさしくしてくれた。

 逃亡黒人を探してた男たちに、天然痘が出たと思わせてジムを助けたときは、あんたはサイコーの友達だ、たったひとりの友達だって言ってくれた。

 そこに紙切れがあった。

 どっちに転がってもおかしくなかった。

 その紙を取って握りしめた。

 ふたつにひとつだ。どっちかに決めないといけない。

 体がブルブル震えた。

 息を止めて、しばらく考えた。

 ★

 当時の社会では逃亡黒人を助けたり逃がしたりすることは絶対許されないし、神さまだってそんなことは求めていないかもしれない。

でも、自分は人間としてどうしたらいいか?

 そして、ハックは結論を出す。

 ★

 “All right, then, I’ll go to hell”—and tore it up.

「よし、じゃあ、おれは地獄に行く。」

 おれは紙をビリビリ破った。

 ★

 ハックはジムの所有者であるワトソンさんにジムの居場所を手紙に書いて送ろうとしたが、それを破り捨てて、逃亡奴隷のジムを逃がすことを決意するのだ。

 “All right, then, I’ll go to hell”—and tore it up.

 この言葉ははかり知れないほど重い。

 https://youtu.be/XNyZY-XI5ds

 

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講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』下巻のプロモーション・ビデオ

2021-07-17 19:59:14 | ハックルベリー・フィンの冒険

講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』下巻のプロモーション・ビデオができました!

https://youtu.be/XNyZY-XI5ds

講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』、7月14日、下巻発売!

「よし、じゃあ、おれは地獄に行く。」

 おれは紙をビリビリ破った。

ハックルベリー・フィンの冒険(下)

マーク・トウェーン/作

上杉 隼人/訳

にしけいこ/絵

定価:本体740円(税別)

ISBN 9784065239698

ハックルベリーとジムのミシシッピ川ーを下る筏の旅は、詐欺師の「王」と「公爵」が加わり、ますます波乱の展開! ハックは、純真な人たちから大金をだましとろうとする悪党ふたりを追い払おうとするが、つかまってしまう。さらに、逃亡黒人のジムも売り飛ばされて、はなればなれに。そんなとき、親友のトム・ソーヤーと再会し、ジムを救う計画を立てる――。

<世界の名作 小学上級・中学から すべての漢字にふりがなつき>

http://aoitori.kodansha.co.jp/book/2021/7/8.html

https://www.amazon.co.jp/dp/4065239699

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講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険(下)』見本到着!

2021-07-08 19:03:32 | ハックルベリー・フィンの冒険

  講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険(下)

 見本到着。編集者の山室秀之さんのやさしいお言葉に、ふたたび涙。原稿を提出してからずっと一緒に冒険の旅をつづけてくれた山室さんに、深く感謝します。

 下巻は7月14日頃、本屋さんに並びます。みなさん、どうかハックをかわいがってやってください。

下巻は7月14日発売!

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065239698

講談社青い鳥文庫

ハックルベリー・フィンの冒険(下)

マーク・トウェーン(著/文)上杉 隼人(翻訳)にしけいこ(著/文)

発行:講談社

新書判  272ページ

定価 740円+税

ISBN978-4-06-523969-8   COPY

CコードC8297

児童 新書 外国文学小説

発売予定日2021年7月14日

紹介

ハックルベリーとジムのミシシッピ川ーを下る筏の旅は、詐欺師の「王」と「公爵」が加わり、ますます波乱の展開! ハックは、純真な人たちから大金をだましとろうとする悪党ふたりを追い払おうとするが、つかまってしまう。さらに、逃亡黒人のジムも売り飛ばされて、はなればなれに。そんなとき、親友のトム・ソーヤーと再会し、ジムを救う計画を立てる--。

<世界の名作 小学上級・中学から すべての漢字にふりがなつき>

著者プロフィール

<世界の名作 小学上級・中学から すべての漢字にふりがなつき>

マーク・トウェーン

1853年、アメリカ合衆国ミズーリ州に生まれる。父の死後、12歳で実社会に出て、見習い印刷工をしながら文章をおぼえる。蒸気船の水先案内人などをした後、新聞記者として成功。『ジム・スマイリーと彼の跳び蛙』『赤毛布外外遊記』で人気を得て、『トム・ソーヤーの冒険』『王子と乞食』『ハックルベリー・フィンの冒険』などでアメリカ文学の頂点に立つ。1910年没。

上杉 隼人

翻訳者(英日、日英)、編集者、英語・翻訳講師。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。『アベンジャーズ エンドゲーム」(講談社)ほか、マーベル、アベンジャーズ、ディズニー関連の書籍を多数翻訳。訳書に「スター・ウォーズ」シリーズ(講談社)、『21匹のネコがさっくり教えるアート史』(すばる舎)など多数(70冊以上)。

にしけいこ

漫画家、イラストレーター。都留文科大学国文学科卒業。在学中にデビューし、教員を経て、漫画家として独立。作品に、『ひらひらひゅ~ん』(新書館)、『亀の鳴く声』(小学館)など多数。挿絵の仕事に、「都会のトム&ソーヤ」シリーズ(講談社)、『坊っちゃん』(講談社青い鳥文庫)などがある。

出版社 : 講談社 (2021/6/16)

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000353152

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4065239699

 

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Teen who recorded Floyd’s arrest, death wins Pulitzer nod

2021-07-06 08:09:52 | ハックルベリー・フィンの冒険

アメリカのすぐれた報道に贈られるピューリツァーの特別賞が、ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を圧迫される様子をスマホで撮影した当時17歳の女性に贈られることになった。

 今日のGetUpEnglishはこのニュースを読んでみよう。

 https://apnews.com/article/pulitzer-prize-2021-citation-darnella-frazier-george-floyd-dce128319a373ef5360237f4c80dc9bb

The teenager who pulled out her cellphone and began recording when she saw George Floyd being pinned to the ground by a Minneapolis police officer was given a special citation by the Pulitzer Prizes on Friday for her video that helped to launch a global movement to protest racial injustice.

 pinned to the groundは「地面におさえつけられた」

 citationは「表彰」

Darnella Frazier was cited “for courageously recording the murder of George Floyd, a video that spurred protests against police brutality, around the world, highlighting the crucial role of citizens in journalists’ quest for truth and justice,” the Pulitzer Prizes said.

 spur(red)は「~に駆り立てる」

Frazier was not giving interviews to the media, her publicist said Friday.

 

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作家の天川栄人さんに、青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』(上)について、ありがたいコメントいただきました。感激です!

2021-07-04 11:36:08 | ハックルベリー・フィンの冒険

作家の天川栄人さんに、青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』(上)について、ありがたいコメントいただきました。感激です!

天川栄人

@EightTenkawa

そういえば担当さんから送っていただいた青い鳥文庫版『ハックルベリー・フィンの冒険』素晴らしかったです!

にしけいこ先生のイラストがピッタリだし、何より訳文が軽やかで本当に読みやすい

トウェインはトムソーヤだけじゃないんだよってことを、子どもたちに知ってほしい〜!

https://twitter.com/EightTenkawa/status/1411166451843493890

天川さま、ありがとうございます!

天川(てんかわ)さんは、岡山県出身、角川ビーンズ小説大賞 審査員特別賞/集英社みらい文庫大賞 大賞受賞。8/4に、『毒舌執事とシンデレラ』(講談社青い鳥文庫)発売。

【新刊おしらせ】情報出ました! 『毒舌執事とシンデレラ』(講談社青い鳥文庫) 8/4ごろ発売です

自尊心低めのにわかお嬢様をスパルタ執事がビシバシ鍛える、いたって真面目な(?)学園ラブコメです!

イラストは三月リヒト先生(@mizuki_rihito)です。 ご期待ください。

http://aoitori.kodansha.co.jp/book/2021/8/6.html

https://twitter.com/EightTenkawa/status/1410513370348875779

こちらも楽しみな1冊です。早速予約入れました。

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ハックルベリー・フィンの冒険(下)、7月14日発売!

2021-06-29 23:39:31 | ハックルベリー・フィンの冒険

下巻は7月14日発売!

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065239698

講談社青い鳥文庫

ハックルベリー・フィンの冒険(下)

マーク・トウェーン(著/文)上杉 隼人(翻訳)にしけいこ(著/文)

発行:講談社

新書判  272ページ

定価 740円+税

ISBN978-4-06-523969-8   COPY

CコードC8297

児童 新書 外国文学小説

発売予定日2021年7月14日

紹介

ハックルベリーとジムのミシシッピ川ーを下る筏の旅は、詐欺師の「王」と「公爵」が加わり、ますます波乱の展開! ハックは、純真な人たちから大金をだましとろうとする悪党ふたりを追い払おうとするが、つかまってしまう。さらに、逃亡黒人のジムも売り飛ばされて、はなればなれに。そんなとき、親友のトム・ソーヤーと再会し、ジムを救う計画を立てる--。

<世界の名作 小学上級・中学から すべての漢字にふりがなつき>

著者プロフィール

<世界の名作 小学上級・中学から すべての漢字にふりがなつき>

マーク・トウェーン

1853年、アメリカ合衆国ミズーリ州に生まれる。父の死後、12歳で実社会に出て、見習い印刷工をしながら文章をおぼえる。蒸気船の水先案内人などをした後、新聞記者として成功。『ジム・スマイリーと彼の跳び蛙』『赤毛布外外遊記』で人気を得て、『トム・ソーヤーの冒険』『王子と乞食』『ハックルベリー・フィンの冒険』などでアメリカ文学の頂点に立つ。1910年没。

上杉 隼人

翻訳者(英日、日英)、編集者、英語・翻訳講師。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。『アベンジャーズ エンドゲーム」(講談社)ほか、マーベル、アベンジャーズ、ディズニー関連の書籍を多数翻訳。訳書に「スター・ウォーズ」シリーズ(講談社)、『21匹のネコがさっくり教えるアート史』(すばる舎)など多数(70冊以上)。

にしけいこ

漫画家、イラストレーター。都留文科大学国文学科卒業。在学中にデビューし、教員を経て、漫画家として独立。作品に、『ひらひらひゅ~ん』(新書館)、『亀の鳴く声』(小学館)など多数。挿絵の仕事に、「都会のトム&ソーヤ」シリーズ(講談社)、『坊っちゃん』(講談社青い鳥文庫)などがある。

出版社 : 講談社 (2021/6/16)

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000353152

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4065239699

 

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講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』上巻、試し読み

2021-06-18 23:30:04 | ハックルベリー・フィンの冒険

講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』上巻、好評発売中です。

こちらで試し読みができます!

http://aoitori.kodansha.co.jp/trial/

プロモーション・ビデオもできました!

https://youtu.be/fWQ6gsZPSNU

さあ、ハックと一緒に冒険の旅に出よう!

講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』、6月16日、上巻発売!

『トム・ソーヤーの冒険』って本を読んでなけりゃおれのことなんて知らないだろうけど、全然オッケー。あれってマーク・トウェーンって人が作った本だけど、大体ほんとのことが書いてある。大げさに書いてあるとこもあるけど、大体ほんとのことが書かれてる。

誰だって一度や二度はウソつくから、少し大げさに書かれてたって全然オッケーだ。もっともポリーおばさんや、ダグラスさんの未亡人や、メアリーみたいな人はウソつかないだろうけど。トムのポリーおばさんのことも、ダグラスさんの未亡人のことも、メアリーのこともみんな書いてある。大げさに書かれてるとこもあるけど、だいたいほんとのことだ(本文より)。

ハックルベリー・フィンの冒険(上) (講談社青い鳥文庫) 新書 – 2021/6/16

マーク・トウェーン/著、上杉隼人/訳、にしけいこ/絵

19世紀のアメリカ南部。何ものにもとらわれない自然児のハックルベリー・フィンは、ダグラスさんの未亡人の家での生活にも、学校の勉強にもうんざり。乱暴者の父親からも逃げ出して、黒人奴隷のジムとともにミシシッピー川を下る旅に出る--。アメリカ文学史上に燦然と輝く名作が、読みやすい新訳でよみがえる!

<世界の名作 小学上級・中学から すべての漢字にふりがなつき>

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065235584

http://aoitori.kodansha.co.jp/book/2021/6/10.html

https://www.amazon.co.jp/dp/4065235588

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講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』上巻のプロモーション・ビデオができました!

2021-06-15 15:01:36 | ハックルベリー・フィンの冒険

講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』上巻のプロモーション・ビデオができました!

https://youtu.be/fWQ6gsZPSNU

さあ、ハックと一緒に冒険の旅に出よう!

講談社青い鳥文庫『ハックルベリー・フィンの冒険』、6月16日、上巻発売!

『トム・ソーヤーの冒険』って本を読んでなけりゃおれのことなんて知らないだろうけど、全然オッケー。あれってマーク・トウェーンって人が作った本だけど、大体ほんとのことが書いてある。大げさに書いてあるとこもあるけど、大体ほんとのことが書かれてる。

誰だって一度や二度はウソつくから、少し大げさに書かれてたって全然オッケーだ。もっともポリーおばさんや、ダグラスさんの未亡人や、メアリーみたいな人はウソつかないだろうけど。トムのポリーおばさんのことも、ダグラスさんの未亡人のことも、メアリーのこともみんな書いてある。大げさに書かれてるとこもあるけど、だいたいほんとのことだ(本文より)。

ハックルベリー・フィンの冒険(上) (講談社青い鳥文庫) 新書 – 2021/6/16

マーク・トウェーン/著、上杉隼人/訳、にしけいこ/絵

19世紀のアメリカ南部。何ものにもとらわれない自然児のハックルベリー・フィンは、ダグラスさんの未亡人の家での生活にも、学校の勉強にもうんざり。乱暴者の父親からも逃げ出して、黒人奴隷のジムとともにミシシッピー川を下る旅に出る--。アメリカ文学史上に燦然と輝く名作が、読みやすい新訳でよみがえる!

<世界の名作 小学上級・中学から すべての漢字にふりがなつき>

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065235584

https://www.amazon.co.jp/dp/4065235588

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