昨日について今日のGetUpEnglishもMONKEY Volume 3: Crossingsから紹介する。
https://monkeymagazine.org/monkey-vol-3
柴崎友香の『百年と一日』所収の短篇「一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込みできのこを発見し、卒業して二年後に再開したあと、十年経って、二十年経って、まだ会えていない話」は、次のように始まる。
なにか見えたような気がして一年一組一番が植え込みに近づくと、そこには白くて丸いものがあった。
「忽然」という言葉はこういうときに使うのだろう、と一組一番は思った。
この部分をどう訳すのか、「忽然」という日本語をこの文脈で訳すのは無理なのではないか、と思っていたところ、
Catching sight of something, student number one from class one in the first year of high school went over to the flower bed to discover a round white growth.
It’s times like these, she thought, that you use the word “unheralded.”
とPolly Bartonさんは見事に訳していた。
おお、「忽然(と)」はunheraldedが使われるのか、とびっくりした。
unheraldedはこの場合は「不意の、だしぬけの、思いがけない」の意味で使われている。
次のように使われる。
○Practical Example
"Shang-Chi and Katy Chengot an unheralded visit from Benedict Wong."
「シャン・チーとケイティ・チェンはベネディクト・ウォンの思いがけない訪問を受けた」
MONKEY New Writing from Japan Vol. 3が発売になったのだが、これはすごい!
https://monkeymagazine.org/monkey-vol-3
MONKEY Volume 3: Crossings
Vol. 3 of MONKEY is 176 pages of full color, featuring the best of contemporary Japanese literature, from Hiromi Kawakami and Aoko Matsuda to Hideo Furukawa and Haruki Murakami, a graphic story by Satoshi Kitamura inspired by the Lascaux caves, and new work by American writers Stuart Dybek and Matthew Sharpe—all friends of MONKEY. Transitioning out of the pandemic, we are inspired by stories of transformation and the joyful play between Japanese and Western literatures.
とある通り、最良の現代日本を英語で紹介しているのだが、翻訳も最高だ。
GetUpEnglishでは、MONKEY Volume 3: Crossingsの翻訳のすばらしさを(不定期になってしまうが)継続して紹介してみたい。
柴崎友香の『百年と一日』はすばらしい短篇集であるが、ご存知のとおり各短篇のタイトルがどれも長いので翻訳はまず不可能ですねと勝手に思っていたが、Polly Bartonさんがそのうちの一篇をMONKEY Volume 3で見事に翻訳している。
その短篇のタイトルはこんな感じだ。
一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込みできのこを発見し、卒業して二年後に再会したあと、十年経って、二十年経って、まだ会えていない話
日本の学校教育に根差した言い方があるが、柴崎友香ならではの不思議な、ある意味不気味な感じがうかがえるこの短篇のタイトル(しつこいようだが、短篇のタイトルで有って、短篇のなかの描写ではない)をどんな英語にするのか?
One summer during a long rainy spell, student number one from class one and student number one from class two discover mushrooms growing in a flower bed next to a covered walkway at their school; two years after leaving school they bump into each other, but after that, ten years pass, twenty years pass, and they don’t meet again
ここでぜひ注目したいのは、
student number one from class one and student number one from class two
という表現だ。studentとclassの前には定冠詞theも不定冠詞aもない。
theが付けば特定のクラスの特定の生徒と特定されるし、aが付けば特定でないクラスの特定でない生徒(場合によってはどこにでもあるクラスのどこにでもいる児童)ということが示されるわけであるが、どちらも付いていないことで、そもそも存在するかどうかもわからないクラスの、まったくどこから出てきた変わらない生徒たちということになる……。
これは時に無骨と思えるほど形式を重んじる英語では普通ありえないことで、ひょっとすると翻訳だからできたこともかもしれないし、Monkeyの編者柴田元幸は時々「翻訳によって日本語の可能性を広げることを目指したい」と言っているが、ここでは「日英翻訳によって、英語の可能性を広げている」のかもしれない。
MONKEY Volume 3: Crossings, 英語のネイティブスピーカーと英語がよくできる人たちが読んだらもちろん面白いだろうが、わたしのように英語学習中の英語オタクにも思い切り突き刺さる1冊で、大変ありがたい。
でも、しっかり勉強してやるぞというよりはとにかく手に取ってしっかり楽しみたいと思えるのがうれしい。
5月1日から、『スター・ウォーズ ファンの心に響いた111の言葉』(講談社)からスター・ウォーズの名言を紹介します。
5月4日、May 4thはやはりこの名セリフを。
"May the Forth be with you."
「フォースとともにあらんことを」
このセリフは、実はエピソードI~VIまで、スター・ウォーズ全編で複数のキャラクターが口にします。
『スター・ウォーズ ファンの心に響いた111の言葉』には、誰がどの場面でこのセリフを使うか、すべてまとめられています。
ぜひお読みください!
■『スター・ウォーズ ファンの心に響いた111の言葉』
スター・ウォーズの言葉を通じて生活を向上させる評議会・編
発売日:2015年4月22日(水)
価格:1,200円(+税)
出版:講談社
新書サイズ:128ページ ハードカバー
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062193962
一昨日、昨日につづいて、『スター・ウォーズ ファンの心に響いた111の言葉』(講談社)からスター・ウォーズの名言を紹介します。
今日はPalpatine(Darth Sidious)のこのおそろしいセリフを。
The dark side of the Force is a pathway to many abilities some consider to be unnatural.
「フォースの暗黒面は、誰もがとうてい不可能と考えるようなあまたの力を得るための道だ」
この本には、各名言が話され状況がわかりやすく書かれています。
このセリフについては、以下の記述があります。
「ギャラシー・オペラ・ハウスの議長専用ボックスで、パルパティーンはモン・カラマリ・バレエを鑑賞していた。そこに呼び出されたアナキンが隣の席に座ると、パルパティーンは何気ない様子で、ジェダイ評議会の動向について尋ねてくる。直前に議長の動向を探るようにと極秘の指令を受けたアナキンは、心の動揺を隠せない。そんなアナキンを見て、パルパティーンは、死をも超越することができたというダース・プレイガスの伝説を語りはじめる」
『スター・ウォーズ ファンの心に響いた111の言葉』、明日のスター・ウォーズの日の前に、ぜひお読みください。
■『スター・ウォーズ ファンの心に響いた111の言葉』
スター・ウォーズの言葉を通じて生活を向上させる評議会・編
発売日:2015年4月22日(水)
価格:1,200円(+税)
出版:講談社
新書サイズ:128ページ ハードカバー
昨日につづいて、『スター・ウォーズ ファンの心に響いた111の言葉』(講談社)からスター・ウォーズの名言を紹介します。
今日はDarth Vaderのこの名言。
"We meet again, at last. The circle is now complete."
「ついに再会したな、オビ=ワン。宿命の環が閉じる」
ここでもWe meet again, at last.とat lastをうしろにまわして「最後に」を強調しています。
この本には、from CBL-GSWQ(評議会からのコメント)というコラムがすべての名言についているのですが、これが実に興味深い。
これはダークサイドに堕ちたダース・ベイダーが、かつてのジェダイの師匠Obi-Wan Kenobiとついに再会した時にいうコメントです。本書の「評議会からのコメント」には、次のように書かれています。
「ベイダーはオビ=ワンに復讐心を燃やす。かつての自分を知るオビ=ワンを葬り去ることで、ベイダーは過去の自分と完全に決別できる。しかし二人の対決はこの直後、ベイダーも予想もつかない結末を迎える。ベイダーとオビ=ワンの宿命の環は閉じられることなく、運命の歯車はルークを通して、その後もなお音を立てて回り続ける。」
『スター・ウォーズ ファンの心に響いた111の言葉』、超おススメです。
■『スター・ウォーズ ファンの心に響いた111の言葉』
スター・ウォーズの言葉を通じて生活を向上させる評議会・編
発売日:2015年4月22日(水)
価格:1,200円(+税)
出版:講談社
新書サイズ:128ページ ハードカバー
今年12月公開のStar Wars: The Force Awakens(スター・ウォーズ/フォースの覚醒)がすごく楽しみです。
そのまえに、Star Warsのこれまでの作品の内容をぜひおさらいしておきたいところです。そのために便利な1冊が、このたび講談社から発売されました。
ぜひこちらをご覧ください!
http://ddnavi.com/news/235886/
GetUpEnglishでは、今日から「Star Warsの日」である5月4日(May the 4th)まで、本書に乗っているスター・ウォーズの名言を紹介します。
1日目は、Obi-Wan Kenobiのこの名言を。
"The Force will be with you always."
「フォースが守ってくれる。いかなる時も」
『スター・ウォーズ』では、よくこうした倒置用法が使われます。これは普通であれば、The Force will always be with you.となるでしょうが、alwaysを最後に持って来ています。これで倒置された語が強調され、まるで芝居を観ているような効果が生み出されます。今度映画を観る時には注意してみてください。
本書には、こうした名言の背景情報が1ページにぎっしり詰まっています。ページをめくるたびに壮大なスター・ウォーズのストーリーが目に浮かぶことでしょう。
『スター・ウォーズ ファンの心に響いた111の言葉』、超おススメです。
■『スター・ウォーズ ファンの心に響いた111の言葉』
スター・ウォーズの言葉を通じて生活を向上させる評議会・編
発売日:2015年4月22日(水)
価格:1,200円(+税)
出版:講談社
新書サイズ:128ページ ハードカバー
好評発売中です。よろしくお願いします!
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『STAR WARS スター・ウォーズ ビジュアル事典 ジェダイの謎全解明 ―ジェダイになるための秘密大公開!』
編:ラスト,シャリー, 訳:上杉隼人, 訳:杉山まどか
定価 : 本体2,000円(税別)
ジェダイ図鑑の決定版!エピソード1~6を網羅した、ジェダイに関する情報はこの本におまかせ!<巻末用語集と索引付>
TM & (C) 2014 Lucasfilm Ltd.
ISBN:978-4-06-218884-5
判型/ページ数:B5変型/96ページ
May the force be with you.
ロバート・ヒルキ、上原雅子、横川綾子、トニー・クック 〔著〕
【頂上制覇 TOEICテスト® 究極の技術(テクニック) シリーズ】
頂上制覇
TOEIC® テスト スピーキング/ライティング
究極の技術(テクニック)
A5判 並製 280頁+別冊96頁 2C刷り CD2枚付/定価2,835円(本体2,700円+税)
ISBN 978-4-327-29106-8 C1082
TOEIC(R)990だけでなく、TOEIC(R) SWで200/200をめざせ!
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TOEIC(R) SWテストを知り尽くした著者たちが試験問題を徹底分析し、その対策を完全公開。
模擬試験も2セットのほか、練習問題を多数収録。完全無欠のTOEIC(R) SWテスト対策本!
*96頁の別冊+CD2枚付
今週の本棚:井波律子・評
『われらが背きし者』=ジョン・ル・カレ著
毎日新聞 2012年12月16日 東京朝刊
http://mainichi.jp/feature/news/20121216ddm015070029000c.html
「英語便」(www.eigobin.com/)のすばらしさについては、GetUpEnglishで何度も紹介しています。
http://blog.goo.ne.jp/getupenglish/d/20110923
http://blog.goo.ne.jp/getupenglish/d/20120112
そしてこの英語便の公式学習書がついに発売になりました!
http://www.amazon.co.jp/dp/4327452440
http://www.eigobin.com/eigobin_book2.html
英語便のネイティブチェックの質の高さが、この1冊で十分にわかると思います。 そして本書を購入した方は、英語便の無料添削が1回受けられますので、ぜひお試しください!
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東京、仙台、フィレンツェ、ロンドンに拠点を置くビジュアルデザインスタジオ「WOW」が手がけるビジュアルブック。映像、インスタレーション、アプリケーションなど多岐に渡る分野において活動し、世界的な評価を誇る数々のクリエイティブを手がけてきたWOWの、設立15年を記念する書籍である。本書籍はWOWが手がけた代表的なオリジナル作品をまとめた作品集であるだけでなく、WOWの理念に共鳴し、数多くのコラボレーションを行ったクリエイターとの対話を収録。
Visual designs have been rapidly extended to wider media among video and interactive installations, short films, mobile applications and user interface design. This book showcases the work created in WOW’s 15 years for a wide range of original visual works as well as commercial projects from interactive installations for the Victoria and Albert Museum in London and the Sendai Mediatheque in Japan, short films for the Salone Internazionale del Mobile in Milan and mobile applications such as addLib and VisuaMusio to video works for the Japan Pavilion at the International Architecture Exhibition, Venice Biennale, advertising projects for Canon, TOYOTA, Moët & Chandon, SONY, PSA Peugeot Citroën and DuPont, and user interface design
for mobile companies.
英語の勉強方法については、ここでかすみさんのご質問に答える形で、少し意見を述べました。
http://getupenglish.blog.ocn.ne.jp/getupenglish/2008/12/wish.html#comment-24725966
この『名演説で学ぶアメリカの文化と社会』はとても効果的な英語学習書だと思いますが、著者の上岡伸雄先生はたいへんな才能の持ち主で、今度は『釜石ラグビー 栄光の日々』というすばらしいノンフィクションを出されました。
http://www.chuko.co.jp/tanko/2011/08/004266.html
(このアメリカ文学と英語の達人は、『この風にトライ』というラグビー小説も書いているので、ラグビーにも造詣が深いことはわかっていましたが、ここまでのラグビー・ファンだったとは思いませんでした!)
英語学習に疲れた方は、本書をぜひ読んでみてください。『この風にトライ』も超おススメ!
http://renzaburo.jp/shinkan_list/temaemiso/071214_book02.html
『賜物』
ウラジーミル・ナボコフ 著
沼野充義 訳
定価2,730円(本体2,600円) ISBN 978-4-309-70962-8 C0397
ベルリンに亡命した青年が、世界的な蝶の研究者である偉大な父への追憶を抱きつつ作家として自立するまで描く。祖国への思いを込めたナボコフ最後のロシア語小説を原典から初の邦訳。
ウラジーミル・ナボコフ (ナボコフ,V) 1899年ペテルブルク生まれ。ロシア革命によりベルリンに亡命し、ロシア語で執筆を開始。1940年には米国に移住し、大学で教えながら英語で執筆する。代表作に、本書の他『ロリータ』『アーダ』など。
沼野 充義 (ヌマノ ミツヨシ) 1954年東京生まれ。東京大学教授。著書に『亡命文学論 徹夜の塊』『W文学の世紀へ 境界を越える日本語文学』など、訳書に『ナボコフ短篇全集』(共訳)、ブロツキー『大理石』、レム『ソラリス』など。