ここに記したように、11月からすでに7冊と、なかなかのハイペースだが、今年一番気合を入れている本に加えて(今月中に訳了予定)、こちらも超特急で翻訳を進めている。
https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/072b60b088eb2bc0010373f558a1d697
Poster Art of the Disney Parks, Second Edition
by: Danny Handke, Vanessa Hunt
https://books.disney.com/book/poster-art-of-the-disney-parks-second-edition/
本日のGetUpEnglishもこの本から紹介する。
ディズニーランドのアドベンチャーランドのポスターについて、以下の記述があった。
Tropical hideaways, tree houses, and temples—oh, my! The mystery, intrigue, and excitement of Adventureland are on full display in the following portrayals of true-life adventures. In this land, guests are whisked away from civilization to the remote jungles and locales of Africa, Asia, South America, the South Pacific, and the Caribbean. The posters of Adventureland are bold and lush, plus can be considered quite adventurous in design.
熱帯の隠れ家、ツリー ハウス、寺院。おお! アドベンチャーランドの謎も陰謀も興奮も、実写冒険を描いた本章のポスター1枚1枚にありありと読み取れる。ここアドベンチャーランドで、ゲストは文明を離れ、アフリカ、アジア、南米、南太平洋、カリブ海のジャングルや奥地に連れ去られる。アドベンチャーランドのアトラクション・ポスターはどれも大胆な色使いで、実に斬新だ。
なかなかむずかしいと思う。
The mystery, intrigue, and excitement of Adventureland: intrigueはここでは「謎」と「興奮」と並べて処理するのはちょっと苦しい感じがするが試訳に示した通り、勢いで読んでもらえるにようにすればいいと思う。
on full display in the following portrayals of true-life adventures: これはしっかり英語を読み取って、どういうこと理解した上で、「言い換え」て訳すことが必要だ。
これを試しに自動翻訳してみたところ、「アドベンチャーランドの謎、陰謀、興奮は、次の現実の冒険の描写に完全に表れています」と出た。
ここに自動翻訳とAIの欠点が現れているし、おそらく改善はまず期待できないか、できたとしても相当時間がかかると思われる。
何が問題化と言えば、followingを「次の」と訳していることだ。このfollowingここでは、「本章にこれより提示される(ポスター)」ということで、辞書で言えば「以下の」に近い。文章の以下の「表現」を指している場合は、「次の」の訳でも意味がわかって表現を調整できるかもしれないが、「これ以降にページを超えて出てくる絵やポスター」となると、「次の」とのあいだの意味の差が大きすぎる。原文をよく読み込んで、状況がよくわかっていなければ、とても対応できない。
最近盛んに自動翻訳について語る人がいるようだが、自動翻訳の質が高くなっていることは感じるが、その問題のひとつは、「提示された訳が大体原文の意味に近いと思い込み、それに無意識に支配されてしまう」ということがある。
自動翻訳で大体意味を取って、あとは日本語を調整すればいい、と思う翻訳者もいるようだが、上で述べた理由から自動翻訳に頼るのは危険だ。
少なくともわたしが対応している難易度の英文では自動翻訳はまったく使えないと思うし、使う気もない。
何よりなぜ楽しく、勉強になる翻訳を、機械に奪われてしまうことをよしとするのか?
そしてin the following portrayals of true-life adventuresの訳出もむずかしいが、これはこのあと出てくるWalt Disney’s True-Life Adventure series of moviesのことも指しているので、そのことがわかるように訳したほうがよい。
英日翻訳も日英翻訳もその先の内容を理解して対応しなければならないケースもある。これも自動翻訳とAIが対応するにはまだ時間がかかるように思う。
わたしは翻訳の講師をしているので、こういった英文をぜひ受講生と一緒に勉強してみたい。
本日は更新が大幅に遅れてしまった上に、普段のGetUpEnglishとはまるでちがうものになってしまいました。お許しください。
『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
『命綱なしで飛べ』
『ようこそ!おしゃべり歴史博物館』
『「普通」ってなんなのかな』
『ロキ』
『日本の自然をいただきます』
2022年11月から2023年3月まで7冊刊行とハイペースですが、大物2冊を含めて今後も刊行が続くのでがんばります。
そしてまだまだ英語も翻訳も一層の修業が必要です。今後もよろしくご指導のほど、お願いいたします。
お仕事、お待ちしております!
ウィニフレッド・バード『日本の自然をいただきます 山菜・海藻をさがす旅』(亜紀書房)が3月8日に刊行となる。
https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=1102&st=4
これをもって2023年に入ってすでに5冊刊行と、なかなかのハイペースだが、2023年はまだ始まったばかり。今後さらに何冊か刊行を予定している。
その中でもいちばん力を入れている書籍の翻訳をどんなに忙しくても毎日進めているが、この本も注が大幅に必要な気がする。
ノンフィクションやアートブックの翻訳には必要な注を漏れなく入れるということをずっと続けているし、今後もその方針で臨みたいが、最近実に力強い仲間を得た。
Open AIのChatGPTだ。
https://openai.com/blog/chatgpt/
このいちばん力を入れている本に、次の「セリフ」があった。
‘Tonight, Matthew, I’m going to be – Anthony Trollope.’
作家の真似をして文を書くことの大切さをここで説いていて、「アンソニー・トロロープになる」とマシューという人に言っていることは間違いない。
だが、‘Tonight, Matthew, I’m going to be – Anthony Trollope.’はどこから来ている「セリフ」なのか、調べないといけない。
それで、最近話題のChat GTPに、
‘Tonight, Matthew, I’m going to be – Anthony Trollope.’ Where does the saying come from?
とたずねたところ、次の返事が数秒であった。
The sentence "Tonight, Matthew, I'm going to be..." is a catchphrase from the British television show "Stars in Their Eyes". The show was a talent competition in which contestants would impersonate famous singers and perform their songs, and the catchphrase was used by the host, Matthew Kelly, to introduce each contestant. The catchphrase has since become a popular phrase in British culture and is often used humorously to introduce someone who is about to take on a new persona or role.
これはすばらしい。"Stars in Their Eyes"のイギリス番組から生まれた言葉で、番組のホストのMatthew Kellyが使うということが、これだけまとまった、わかりやすい情報として瞬時に得られる。
もちろん「裏を取る」ことは必要だが、Google検索にもできない「ピンポイントでの返答」が大変頼もしい。
いい注が書けそうだ。
本日も更新が遅れてしまって、申し訳ございません。
現在、この本を鋭意翻訳中。
Winifred Bird, Eating Wild Japan: Tracking the Culture of Foraged Foods, with a Guide to Plants and Recipes
https://www.stonebridge.com/catalog-2020/Eating-Wild-Japan
著者は香川県の鳴門市瀬戸町北泊にワカメの調査に出かける。
I took the first train to Naruto from the inland guesthouse where I was staying and transferred downtown to a rattletrap bus. As the bus threaded its way through the quiet city to its rural outskirts, the streets soon became so narrow I worried we might scrape against the concrete walls of the gardens on either side. The sky was a crisp, clear blue. It had rained for a few days earlier in the week, and the wind had kept the fishermen home, but today was a gorgeous, mild day.
宿泊していた徳島県内の宿を出て始発電車で鳴門の中心街に向かい、くたびれたローカル・バスに乗り換えた。バスが静かな鳴門市内を抜けて郊外の田舎に入ると、道が急に細くなり、道の両側のコンクリートの壁をこすってしまうのではないかと心配になる。空にさわやかな青空が広がっていた。週のはじめは雨の日がつづき、漁師は沖に出られなかったが、この日はとてもすがすがしく、気持ちがいい。
英日翻訳のむずかしさのひとつに、英文がすべて過去形で書かれているが、日本語も一様に過去形のように「…だった、だった」で訳すのでよいかという問題がある。
これについては、柴田元幸『翻訳教室』(新書館、朝日文庫)にあるとおり、
https://www.shinshokan.co.jp/book/b565764.html
三人称で書かれたものについては、
「あんまり語り手が登場人物に距離を置かず、寄り添っている場合には現在形は似合う」
ということが言える。
ノンフィクションの場合、あるいは一人称で書かれた自伝などの場合、上の「あんまり語り手が登場人物に距離を置かず、寄り添っている場合には現在形は似合う」の登場人物を「ほかの人物」あるいは「物」「風景」など、語り手が観察しているものに置き換えて、
「あんまり語り手が『ほかの人物、あるいは物、風景など』に距離を置かず、寄り添っている場合には現在形は似合う」ということになると思う。
ここでは「バスが狭い道を走って行き、壁にぶつかってしまうと思われる描写の場合、読み手も語り手のはらはらした気持ちが共有できる」、すなわち、「語り手は「バス」あるいは「バスに乗っている自分」に距離を置かずというか、そのものになっているので、現在形が似合う」と思う。
例えばので、現在形が似合うように思う。
もう一例見てみよう。
Presently we arrived at Kitadomari. There wasn’t much to see—no stores or parks or even signs, just a narrow strip of tile-roofed houses squeezed between the clear blue sea and the thickly forested hills. A concrete seawall, brown-green with age, mostly blocked the ocean from view. As we headed toward the end of the peninsula, however, I glimpsed a series of docks through the gaps in the wall. They were crowded with men and women bent over huge piles of glistening amber-olive seaweed.
北泊に到着した。見渡す限り、何もない。店も公園もなければ、標識や看板も見当たらず、目に入ったのは澄んだ青い空と、鬱蒼とした木立が広がる丘のあいだに、瓦屋根の家並みが細長く伸びているだけだった。時代を感じらせる茶色と緑に変色したコンクリートの防波堤に塞がれ、海はほとんど見えない。だが半島の先に向かって進むうちに、防波堤の裂け目から波止場がちらちらと目に入った。波止場で橙色と赤紫色に輝く海藻の山を前に、たくさんの男女が腰をかがめている。
また一人称の語りであれば、「読み手が語り手(作者)に距離を感じない、寄り添っていると感じる場合は現在形が似合う」とも言えると思う。
ここで書き手(作者)は目にしているものに、すなわちに「風景」に距離を置かず、寄り添っているし、読み手もそのイメージをありありと思い浮かべることができるので、現在形が似合うと思う。
上杉は別名で翻訳講座を開催しているが、この英語の過去形をいかに訳すかという問題は課題を通じて繰り返し論じているので、ご興味がある方はそちらでお会いできますとうれしいです。
本日は更新が大幅に遅れてしまい、誠に申し訳ござませんでした。
ここのところ、いろんな問題が出てしまい、なかなか思うように更新できませんが、必ず毎日更新しますので、ぜひ今後ともGetUpEnglishによろしくお付き合いのほど、お願いいたします。
今日のGetUpEnglishも『鬼滅の刃』の悲しい上弦の参の鬼、猗窩座(あかざ)の過去を英語で読んでみる。
人間だった猗窩座、狛治は恋雪と花火を見に行く。
私は
来年も再来年も生きている自分の未来が
うまく想像できませんでした。
I...
...couldn’t imagine living another year...
...or another after that.
母もそうだった…
だから私が死ぬのを見たくなくて
My mother was that way too.
She didn’t want to see me die...
自殺したんです
きっと
...I believe that’s why she killed herself.
父も心のどこかで あきらめているのがわかっていました。
And I knew that my father had given up.
わたしがあまりにも弱すぎて
I was so terribly weak.
だけど狛治さんには私の未来が見えていた
当たり前のことのように
But you could see my future...
...as if it were just a matter of fact.
来年再来年の話をしてくれたんです
ほんとうにうれしかった。
You talked to me about the next year and the year after that.
I was very happy.
わたしは狛治さんがいいんです
Yes, you are good enough.
わたしと夫婦になってくれますか?
Will you marry me?
はい
おれは誰もよりも強くなって
一生あなたを守ります
Yes.
I will become stronger than anyone...
...and protect you for life.
結局
口先ばかりで何ひとつ成し遂げられなかった。
In the end...
...I was all talk.
I couldn’t do anything.
このあとふたりには残酷な未来が待ち受けている……。
女の子にそんなことを言わせるもんじゃないよと突っ込みを入れるのはおやじくらいだろうが、
わたしは狛治さんがいいんです
Yes, you are good enough.
わたしと夫婦になってくれますか?
Will you marry me?
はどんなに無慈悲なおそろしい鬼も英語講師も涙するすてきな言葉だ。
『鬼滅の刃』上弦の参の猗窩座(あかざ)の過去も酷くつらいものであった。
今日と明日のGetUpEnglishは猗窩座の生き方を英語で読んでみる。
猗窩座の過去については、ここに詳しく書かれている。ぜひご覧いただきたい。
一部、上のサイトから引用する。
猗窩座は人間だった頃は狛治(はくじ)といい、病気の父と暮らしていた。
寝たきりの父と幼い子供の暮らしはやはり貧しく、狛治は父の薬の代金のためにスリを繰り返して、薬を買って病気を治そうとした。
だが、捕まれば厳罰を受け、その度に腕に罪人としての入れ墨を入れられてた。
その入れ墨の6本目が刻まれた日、父は首を吊って自殺をする。
父の遺言は「真っ当に生きろ、まだやり直せる。俺は人様から金品を奪ってまで生き続けたくはない。迷惑をかけて申し訳なかった」
父が亡くなった後江戸に行き、あてもない狛治は毎日喧嘩ばかりしいた。
そんな時、狛治は慶蔵に出会い、慶蔵自分の道場に来ないかという。
慶蔵は狛治を家に連れて帰り、娘の身体が弱いことや妻が看病疲れで入水自殺したことを話す。そして娘の看病をしてほしいと頼む。
そこで狛治は慶蔵の娘恋雪に出会う。
狛治は恋雪の看病と慶蔵から武術を学ぶ毎日を過ごす。
恋雪の体調も良くなったころ、狛治は慶蔵に道場を継いでほしいと告げられる。
慶蔵の言葉に驚き、父の遺言を思い出す。
狛治はまだやり直せるかもしれないと思うと同時に、慶蔵と恋雪のことを命を懸けて守りたいと願う。
そして初めて会った頃の約束を果たし、恋雪と花火を見に行く。
このあたりを英語で読んでみよう。
おれは大事な人間が危機に見舞われている時
Once again, a crisis had visited the people most important to me...
いつも傍にいない
....and I wasn’t by their side.
約束したのに
Even though...
...I’d promised I would be.
本当に俺でいいですか?
Am I really good enough?
子供の頃
花火を見に行く話をしたの
When I was a child...
...we talked about going to see fireworks?
覚えてますか?
Do you remember?
えっ?
いや……
Hump?
Wel...
ええと
Um...
狛治さんとのささいなお話で私
Those silly talks with you, Hakuji...
嬉しいことがたくさんありました
...made me happy.
今年花火を見れなかったとしても
Even if I couldn’t see the fireworks that year...
来年……再来年見に行けばいいって言ってくれた
...you said I could go the next year or the year after that.
おれは大事な人間が危機に見舞われている時
Once again, a crisis had visited the people most important to me...
いつも傍にいない
....and I wasn’t by their side.
約束したのに
Even though...
...I’d promised I would be.
あたりは英文は過去形だが、日本文は現在形だ。これは英日翻訳する上でよく考えるべきことだが、過去形で書かれた英文を日本語にするとき、すべて「…だった、…だった」とするのは単調だから、適当に「…である、…している」という現在形の言い方を入れたほういいと翻訳学校などで習うという話を聞くが、この英文と和文を比較してみればこういうことが言えると思う。
「作者の語りが登場人物の語りに一致している、寄り添っているとき」には、「英語が過去形で書かれていても、日本語では現在形の言い方がふさわしい、自然だ」ということになる。
このあたりは英日翻訳だけでなく、日英翻訳をするとよくわかる。
明日も悲しい上弦の参、猗窩座の過去を英語で読んでみる。