形容詞extendedは「伸ばした、広げた、広がった、 (期間を)延長した」。
今日のGetUpEnglishはこの表現を学習する。
○Practical Example
"The meeting was extended in order to finish the agenda at one sitting."
「その議題を一気に片づけてしまうために、会議は延長された」
●Extra Point
extensiveとの違いに注意しよう。
http://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/06531086828bc341d810e602179cc1d8
◎Extra Example
"I am interested in organizing a similar excursion for my class on January 17. However, I would prefer the trip to be extended a bit because I’d like to have my class stay overnight."
「1月17日に同じような旅行を企画したいと考えております。ですが、学生たちに一泊してほしいので、旅行を延長したいです」
pass upは「(機会などを)逃す」。
今日のGetUpEnglishはこの表現を学習する。
○Practical Example
"This plan entails too much financial risk."
"But this opportunity is too good to pass up. So, I will go over the details."
「この計画は費用面のリスクが大きすぎる」
「でも、またとない機会で、逃すのはおしいな。では、ぼくが細部を見直してみるよ」
●Extra Point
もう一例。
◎Extra Example
"Morimoto Pretzels has established a second location at 3452 Avenue. Owner Antonio “Ant” Morimoto noted he could not pass out the opportunity to expand his business."
「モリモト・プレッツェルは3542アベニューに第2店舗を出したオーナーのアントニオ『アント』・モリモト氏はビジネス拡大のチャンスを逃したくなかったという」
動詞reprieveは「(死刑囚〉の刑の執行を猶予する」「…を(危険・困難から)一時的に救う、一時免れさせる」
今日のGetUpEnglishはこの表現を学習する。
○Practical Example
He was unexpectedly reprieved.
「彼は思いがけず一時的に刑の執行を免れた」
●Extra Point
名詞も同形で、「(刑の)執行猶予、(死刑)執行延期(令状)」。
次の用例のように、一般的な状況での「執行猶予」の意味でも使われる。
◎Extra Example
"We walk to Tokyo's famous old fish market, which was threatened with a move to less convenient quarters to allow redevelopment of its prime location, but has possibly gained a reprieve from the discovery that the proposed new site remains contaminated by its previous occupant, a gas plant."
「東京の有名な歴史のある魚市場に向かった。そこはもっと不便な再開発地域への移転が予定されているものの、その移転先には以前ガス工場があったことで、有害物資が残っている可能性が明らかになり、実現は延期されている」
break looseは「(…から)逃げる、脱出する、離れる、自由になる」のほか、「(暴動などが)発生する」の意味でも使われる。
今日のGetUpEnglishはこの表現を学習する。
○Practical Example
"All panic broke loose when the fire alarm went off in our school."
「校内で火災報知器が鳴りだし、いっぺんにパニックになってしまった」
●Extra Point
次のような言い方でも使われる。
◎Extra Example
"Hiroko must have been under a lot of stress throughout the year. She got drunk and broke loose at the year-end party and kept running down her boss."
「ヒロコは今年はストレスがたまっていたに違いない。忘年会では酔って羽目を外し、上司の悪口を言い続けていた」
break looseの「(抑えていた感情が)爆発する」の意味がここではこのような形で表現されている。
sizzlingは「非常に暑い、うだるような」。
今日のGetUpEnglishはこの語を学習する。
○Practical Example
"The midsummer sun was so sizzling hot at the beach that my skin hurt."
「海岸では真夏の太陽が、肌が痛いほどじりじりと照りつけていた」
●Extra Point
「大人気の」という意味でも使われる。
◎Extra Example
"The days are mellow and evenings balmy, it’s a sublime season to discover Italy. Act fast to catch a sizzling one-off deal and stretch your summer into September."
「日中はまろやかで夜は心地よい。イタリアを訪れるのは最高のシーズンです。一回きりの大人気のツアーで、9月まで夏を楽しみましょう」
動詞cakeは普通は受身形で「…を厚く覆う、固める」といった意味で使われる。
今日のGetUpEnglishはこの表現を学習する。
○Practical Example
"David’s shoes were caked with mud."
「デイビッドの靴は泥がびっしりついていた」
●Extra Point
もう一例。
◎Extra Example
"I’d like to have our kitchen remodeled soon. This oven is so heavily caked in grease and grime that it cannot be easily cleaned."
「すぐに家のキッチンをリフォームしたい。このオーブンには油とすずがべっとりこびりついていて、なかなかきれいにならない」
viaductは「大陸橋、高架橋」。
今日のGetUpEnglishはこの表現を学習する。
○Practical Example
"Because of the viaduct, we can't see much, Master."
"Use your Force, my Padawan."
「マスター、あの高架橋のせいで、見晴らしがききません」
「パダワンよ、フォースを使うのだ」
●Extra Point
もう一例。再びこの記事から見つけた。
◎Extra Example
"The Shin Hi-no-Moto -- a poetic way of writing "New Japan" or "New Rising Sun" -- is one of Japan's myriad casual dining and drinking places, known as izakaya. It is in the heart of the capital, at Yurakucho, under the arches of the great railway viaduct streaming southward from Tokyo Station. And it is so popular that it is virtually impossible to get in without a booking."
「新日の基――「新しい日本」「新しい日の出」を詩的に言う店名だ――は日本に無数に存在するいわゆる居酒屋の一つだ。東京の中心、有楽町の、東京駅から南に延びた大高架下に店を構えている。予約なしでは入れない人気店だ」
tankardは、「タンカード」、すなわち、「取っ手のついた主に金属製のビール用大ジョッキ」のこと。
今日のGetUpEnglishは、この語を学習する。
〇Practical Example
"Bring us a tankard of ale, sweetheart!"
"Don't drink too much, honey. We don't want to see another brewer's droop, do we?"
「ねえ、大ジョッキ一杯のエールを持ってきてくれ」
「ねえあなた、飲みすぎないでね。あなたが酔って、また役に立たなくなってしまうなんていやよ」
brewer's droopは、「(酒の飲みすぎによる)一時的な勃起不能、インポ」
●Extra Point
もう一例。この記事がとても興味深いので、ぜひお読みください。
そこに以下の表現がありました。
◎Extra Example
"Inside the brick-lined restaurant, harried waiters ferry tankards of draft beer, glasses of clear but potent shochu, the Japanese equivalent of vodka, and dishes of raw and grilled fish to groups of flushed-looking office workers. The chatter level rises."
「煉瓦張りの居酒屋の中では、店員たちが忙しく動きまわり、生ビールの大ジョッキや、透き通っているが、アルコール度の高い焼酎や、刺身や煮魚を顔を赤くした会社員の集団に運んでいる」
preeminentは「抜群の、秀でた」。今日のGetUpEnglishはこの語を学習する。
○Practical Example
"Sakika is preeminent in her leadership."
「咲果はその指導力において卓越している」
●Extra Point
もう一例。次のような言い方をよくする。
◎Extra Example
"In addition to her vast knowledge about English language, Sakika is preeminent for speaking it."
「咲果は英語の知識に加えて、運用能力の抜群だ」
「スター・ウォーズ」を訳している時は、まさしく至福の時でした。
「エピソード3」では、オビ=ワン・ケノービの活躍が堪能できました。
オビ=ワンがフォースとひとつになった時の動きは、特に慎重に訳しました。
第15章にこんな描写があります。
Leaping girder to girder, slashing cables on which to swing through swarms of ricocheting particle beams, blade flickering so fast it became a deflector shield that splattered blaster bolts in all directions, his presence alone became a weapon: as he spun and whirled through the control center's superstructure, the blasts of particle cannons from power droids destroyed equipment and shattered girders and unleashed a torrent of red-hot debris that crashed to the deck, crushing droids on all sides. By the time he flipped down through the air to land catfooted on the deck once more, nearly half the droids between him and Grievous had been destroyed by their own not-so-friendly fire.
これを最初は次のように訳してみました。
梁から梁へと飛び移り、断ち切ったケーブルにつかまって、跳ね返った粒子ビームが激しく飛び交う中を通りぬけていった。ライトセーバーが素早く動いて偏向シールドとなり、ブラスター弾をあらゆる方向へはじき返した。オビ=ワン自身がいわば一つの武器となっていた。オビ=ワンが司令センターの上部構造の中でくるくる回転したり、走り回ったりするので、戦闘ドロイドが放った粒子弾で装置は破壊され、梁もめちゃめちゃに壊された。そのため、熱で赤くなっている残骸がデッキへどっと崩れ落ち、あたりのドロイドをすべて押しつぶした。オビ=ワンはひょいと身をひるがえして、再び静かにデッキに降り立った。その時にはすでに、グリーバスとのあいだにいるドロイドのほぼ半数が破壊されていた。味方同士による、あまり友好的とは言えない撃ち合いのせいだった。
「熱で赤くなっている残骸」「あまり友好的とは言えない撃ち合い」あたりは訳語として調整が必要なものの、大きな英語の読み違いはありません。
ただ、訳文が「ぶつ切れ」で、フォースとひとつになったオビ=ワンのあの動きのすばやさが出ていません。
最終的に、次のように調整してみましたが、いかがでしょうか?
梁から梁へと飛び移り、ケーブルを断ち切ってはそれにぶら下がり、跳ね返った粒子ビームが激しく飛び交う中をくぐりぬけ、猛スピードでライトセーバーを動かして弾を跳ね返すシールドとし、ブラスター弾をあらゆる方向へ弾はじき返す。オビ= ワンの存在そのものがひとつの武器となっていた。オビ= ワンが司令センターの上部構造のあいだをあちこちかけ巡り、くるくると跳びまわるうちに、戦闘ドロイドの放つ粒子弾が設備を破壊し、梁を粉々に吹き飛ばし、真っ赤に熱せられた瓦礫が床にどっと崩れ落ち、四方八方でドロイドを押しつぶした。オビ= ワンがひょいと身を翻して、音も立てずにふたたび床に降り立ったときにはすでに、グリーバスとのあいだにいるドロイドのほぼ半数が、友軍誤射とも言いがたい味方の攻撃によって破壊されていた。
昨年12月には「スター・ウォーズ」の「エピソードIV」「エピソードV」「エピソードVI」を、そして今年2016年の10月から12月にかけて、「エピソードI」「エピソードII」「エピソードIII」を刊行することができました。
多くの読者のみなさまにお楽しみいただけますことを、関係者一同、祈っております。
スター・ウォーズ エピソード3:シスの復讐
原作:ルーカス,ジョージ 著:ストーヴァー,マシュー 訳:上杉隼人 訳:有馬さとこ
「スター・ウォーズ」新三部作の新訳ノベライズ、第3弾!
クローン大戦の勃発から3年後。分離主義勢力によるパルパティーン最高議長拉致事件が起きる。アナキンはオビワンとともに無事パルパティーンを救出するが、パルパティーンの巧みな言葉に触発され、ジェダイの掟を逸脱してしまう。
さらに妻パドメを失う予知夢にうなされ、強大な力を欲するようになるアナキンに、暗黒面の誘惑が忍び寄り――!?
(C) & TM 2016 LUCASFILM LTD.
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062935647
目次
序章 英雄たちの時代
第一部 勝利
第1章 アナキンとオビ=ワン
第2章 ドゥークー
第3章 シスの流儀
第4章 ジェダイに仕掛けた罠
第5章 グリーバス
第6章 救出
第7章 アナキンとオビ=ワン その二
第二部 誘惑
第8章 断層線
第9章 パドメ
第10章 マスター
第11章 政治
第12章 ジェダイからは得られないもの
第13章 フォースの意志
第14章 闇の中を落ちていく
第15章 ウータパウに死す
第16章 啓示
第三部 黙示録
第17章 闇の顔
第18章 オーダー66
第19章 シスの顔
第20章 光と闇
第21章 新たなジェダイ騎士団
訳者あとがき
製品情報
製品名
スター・ウォーズ エピソード3:シスの復讐
著者名
原作:ルーカス,ジョージ 著:ストーヴァー,マシュー 訳:上杉隼人 訳:有馬さとこ
発売日
2016年12月15日
価格
定価 : 本体1,100円(税別)
ISBN
978-4-06-293564-7
判型
A6
ページ数
608ページ
電子版製品名
スター・ウォーズ エピソード3:シスの復讐
シリーズ
講談社文庫
著者紹介
原作:ルーカス,ジョージ(ルーカス,ジョージ)
著:ストーヴァー,マシュー(ストーヴァー,マシュー)
訳:上杉隼人(ウエスギハヤト)
訳:有馬さとこ(アリマサトコ)
『スター・ウォーズ』のノベライズはどれも傑作ですが、特に「エピソード3」の出来栄えは特筆すべきものがあります。
格闘場面の迫力に加えて、西洋の古典や戯作の作風を折りませたその作風が、読者をどこまでも引き付けてやみません。
「エピソード3」にこの描写がありました。
"In these troubled times, is there a difference?" Palpatine asked mildly. "The Jedi have not done a stellar job of bringing peace to the galaxy, you must agree. Who's to say the Sith might not have done better?"
"This is another of those arguments you probably shouldn't bring up in front of the Council, if you know what I mean," Anakin replied with a disbelieving smile.
"Oh, yes. Because the Sith would be a threat to the Jedi Order's power. Lesson one."
Anakin shook his head. "Because the Sith are evil."
「いまは困難な時代だ、その二つのあいだに何か違いがあるかね?」パルパティーンが穏やかに尋ねた。「ジェダイは銀河系に平和をもたらすという偉業を成し遂げてはいない。そうだろう? シスならもっとましだったという可能性を、否定できる者がおるかね?」
「これも、評議会では持ち出せない話の一つです。どういうことかおわかりでしょうが」アナキンは皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「わかっているとも。シスはジェダイ騎士団(ルビ オーダー)の力にとって脅威となるからだ。第一の基本事項だな」
アナキンは首を振った。「シスは邪悪だからです」
最初にこのように訳してみましたが、何かしっくりしない。
a stellar jobのstellarは「すばらしい、主要な」ですが、状況から判断すれば、「偉業」というより、「(ジェダイの)主要な任務」ということでしょう。
disbelievingは基本通りに「信じられない」の意味でとらえればよく、その意味をsmile(笑い)とうまくあわせることを考えなければなりません。
Lesson one.もやはり「学習」の意味を出したいです。
以下のように調整しました。
「いまのような困難な時代に、その二つのあいだに何か違いがあるかね?」パルパティーンは穏やかに尋ねた。「ジェダイは銀河系に平和をもたらすという主要任務をきちんと遂行できていない。そうだろう? シスではさらにうまくいかなかったのか、誰にもわかりはしないじゃないか」
「これも、評議会では持ち出さないほうがよい議論です。どういうことかおわかりでしょうが」アナキンは信じられないというような笑みを浮かべた。
「わかっているとも。シスはジェダイ騎士団(ルビ オーダー)の力を脅かす厄介な存在だからな。第一の学習項目だ」
アナキンは首を振った。「シスは邪悪だからです」
『エピソード3』を訳しながら、翻訳は基本に忠実に、ということを何度も確認しました。
ライトセーバーを使った戦闘シーンは、常に『スター・ウォーズ』のハイライトであると言えるでしょう。ほんとうにハラハラドキドキして、一瞬も目が離せません。オリジナル・ノベルもそうです。
『エピソード2』のジオノーシスの戦いに、以下の描写があります。
Mace reached out with the Force and brought his lightsaber flying to his hand, moving like lightning to parry Jango’s first shot. With the second shot, Mace was more in control, and his parry sent the bolt right back at the bounty hunter. But Jango was already in motion, diving sidelong and coming around ready to launch a series of shots the Jedi’s way.
すごくスピード感のある英文ですね。そして映画もありますから、戦いの様子が目に浮かぶようです。
こういった英文を訳すのに重要なのは、このスピード感を殺さないために、①「基本的に英文の順序通りに訳す」、②「基本表現を読み間違えない」、③「英語のイメージを生かして訳す」ということでしょうか。
ここを、
メイスは、目にもとまらぬ速さで動いてジャンゴ・フェットの一撃をかわしながら、フォースを使ってライトセーバーを手に引き寄せた。二発目には落ち着きを取り戻し、光弾をジャンゴに向けてはね返した。しかしジャンゴはすでに動いていた。横に飛び退き、立ち上がってメイスに連射を浴びせようとする。
と最初は訳してしまったのですが、どうでしょうか? 最初の一文Mace reached out with the Force and brought his lightsaber flying to his hand, moving like lightning to parry Jango’s first shot.は、①原文の順序通りに訳し、「メイスがフォースを使ってライトセーバーを手に忍び込ませ、それから稲妻のような動きでジャンゴ・フェットの銃撃に対応した」という流れるような動きを出したいです。そして③like lightning(電光石火のごとく)という表現が示すイメージをなんとか訳文に盛り込みたいです。
さらに、3文目のcoming around ready to...には、句動詞come aroundのこの場合は「意識を取り戻す、元気になる」の意味が表現されていますので、その意味を出すのがいいかもしれません。「横に飛び退き、立ち上がって」は日本語としてやや変ですので、調整したほうがいいかもしれません。すなわち、②基本表現を読み間違えないということに常に注意しないといけません。
次のように訳したらどうでしょう。
メイスはフォースを使ってライトセーバーを手に飛び込ませ、稲妻のような動きでジャンゴ・フェットが撃った一発目をかわした。二発目が撃たれた頃にはメイスも落ち着きを取り戻し、光弾をジャンゴに向かって跳ね返した。しかしジャンゴはすでに動いていた。横に飛びのいて、体勢を立て直したときには、すでにメイスに連射を浴びせる用意ができていた。
『スター・ウォーズ』のオリジナル・ノベルは、いつ読んでも新たな発見があります。
『スター・ウォーズ』の旧三部作につづいて、新三部作を訳させていただけるという信じられないぐらい幸運で光栄なお仕事をいただきましたが、そのあいだ何よりも心かげたのは、ほかのすべての翻訳者の方とおそらくおなじように、原文を正確に読み取ることでした。
『スター・ウォーズ』のオリジナル・ノベルはどれもほんとうにすばらしく、そのすばらしさを日本人の読者のみなさんに何としても伝えないといけません。
『エピソード2』に次の描写がありました。
As the nexu slashed, Padmé turned in a circle the other way, and while the claws tore her shirt and superficially raked her back, she came around hard, delivering a solid blow across the beast’s face with the free-flying end of the chain. The nexu fell back off the pole.
「スピード感」に加えて、たとえばcame around hardの感じをうまく日本語で再現したいです。
ネクスーが爪を振り下ろした瞬間、パドメは円形になっている柱の天辺の反対側を向いた。ネクスーの爪がパドメのシャツを切り裂き、浅くはあったが背中を引っ掻く。パドメはきっと振り返って、外れたほうの鎖の先端でネクスーの顔を強く打ちつけた。
と最初に訳しましたが、turned in a circle , came around hardの意味をおそろしいことに(!)完全に取り違えていたし、何よりスター・ウォーズならではのスピード感が全然ありません。なので、
ネクスーが爪を振り下ろした瞬間、パドメは爪を避ける方向へぐるっと体を回した。ネクスーの爪がパドメのシャツを切り裂き、浅くはあったが背中に傷をつけると同時に、パドメは勢いよく体を戻すようにひねり、外した方の鎖の先端でネクスーの顔に強烈な一撃を加えた。
と修正しました。
『スター・ウォーズ』のオリジナル・ノベルは英語の小説としてどれも非常にすばらしいので、改めて「まずは英語を正確に理解したうえで日本語に移す必要がある」と改めて感じました。そしてそれを心がけていれば、自然と「原文のトーン」が聞こえてくるので、その大変な、しかしとても心地よいスピード感が感じ取れると思います。
翻訳作業はほんとうに厳しい作業でしたが、同時にスター・ウォーズの世界に浸れる至福の時間でした。
スター・ウォーズの魅力の一つに、「戦闘時のスピード感」があります。
オリジナル・ノベライゼーションの英文にもそれがはっきり表れているので、翻訳するにあたっては決してそのスピード感を殺してはいけません。
たとえば、『エピソード I』の3章にある次の文をご覧ください。
“Excuse me, sirs, I’m so sorry,” TC-14 babbled as it maneuvered through the battle droids, holding aloft its tray of scattered food and spilled drinks.
これをたとえば、
「失礼、ごめんなさいませ」TC-14はごちゃごちゃ言いながら、食べ物が飛び散り、飲み物もこぼれたトレイを手に、バトル・ドロイドの間をすり抜けていった。
などとすると、なんだかもったりしたというか、「食べ物が飛び散り、飲み物もこぼれたトレイを手に」の部分が必要以上に印象に残ってしまいます。字数も75字とちょっと多いですね。
ここは、
「失礼、ごめんなさいませ」TC-14がごちゃごちゃ言いながら、飲食物が飛び散ったトレーを抱えてバトル・ドロイドのあいだをすり抜けていく。
とすれば十分だと思います(65字になりました)。原文と同じぐらい、読者にさっと読んでもらわなければいけません。
では、次の文はどうでしょうか?
In the next instant the Jedi appeared, charging from the room with lightsabers flashing. Qui-Gon’s weapon sent a pair of the battle droids flying in a shower of sparks and metal parts that scattered everywhere. Obi-Wan’s saber deflected blaster fire into several more. He raised his hand, palm outward, and another of the droids went crashing into the wall.
これを次のように訳すとどうでしょうか?
次の瞬間、部屋の中から二人のジェダイが飛びだしてきた。手にしたライトセーバーがきらっと光った。クワイ=ガンが斬りつけると二体のドロイドが火花と金属の部品をあたりにまきちらしながら吹き飛んだ。オビ=ワンがライトセーバーでブラスターをはじきかえすと、光弾はいくつかに分かれて飛んだ。さらにてのひらを相手に向けてさっと片手をあげると、別のドロイドが壁に叩きつけられた。(181字)
「原文通り」という基本に忠実なのはその通りなのですが、一文目を切って訳したりすることで、日本語の「ブツ切れ感」が出てしまいます。そして冗長で、原文にあるスピード感がぼやけてしまいます。
ここは次のように訳したらどうでしょうか?
次の瞬間、煌めくライトセーバーを手にした二人のジェダイが飛び出してきた。クワイ= ガンのライトセーバーがドロイド二体を斬りつけると、火花と金属があたりに飛び散る。オビ= ワンのライトセーバーがブラスターを弾き、光弾はいくつかに割れて飛んでいく。つづいてオビ= ワンがさっと片手をあげて手のひらを広げると、別のドロイドが壁に叩たたきつけられる。(168字)
最初に過去形の言い方を示し、それが過去の出来事であるとわかれば、あとはまさにいま目の前で起こっていると思わせる言い方にしてしまっていいと思います。それによって原文のスピード感が再現できます。
『エピソードI』『エピソードII』『エピソードIII』を訳している時は、スター・ウォーズのスピード感を再現することを常に意識しました。
スター・ウォーズ新三部作のオリジナル・ノベルは映画と同じぐらいスリリングな戦闘場面が味わえます。
講談社文庫本のスター・ウォーズ『エピソードI』『エピソードII』『エピソードIII』、どうかよろしくお願いします!
『エピソード I ファントム・メナス』
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062935036
『エピソードII クローンの攻撃』
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062935265
『エピソードIII シスの復讐』
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062935647