GetUpEnglish

日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

GetUpEnglishについて

毎日更新! GetUpEnglish Updates Every Day! Since April 1, 2006 (c) 2006-2024 Uesugi Hayato(上杉隼人)

VERY WELL.

2024-10-31 00:25:26 | V
 Very well.は「いいです(よ)、わかりました」(コンパスローズ)。
 何かをお願いされて、「大変よろしい」と答えるわけだから、しぶしぶ同意、承諾する感じが表現される。
 今日のGetUpEnglishはこの表現を学習する。

○Practical Example
“You must finish the report by tomorrow.”
Very well, I'll have it ready by then.”
「明日までに報告書を仕上げなさい」
「かしこまりました。明日までに準備します」

“I think it’s best if you call Chiro and apologize.”
Very well, I’ll do it right away.”
「チロに電話して謝ったほうがいいよ」
「わかったよ、由美さん、すぐにするってば」

●Extra Point
 もう3例。

◎Extra Example
“Please come to my office at 9 a.m. tomorrow.”
Very well, I’ll be there on time.”
「明日の朝9時に私のオフィスに来てください」
「かしこまりました、時間通りに参ります」

“I need you to review these documents thoroughly.”
Very well, Yoko-sensei, I’ll start on them now.”
「これらの書類をしっかり確認してください」
「わかりました、陽子先生、すぐに取り掛かります。」

“Make sure to lock up when you leave, Anna.”
「出るときは必ず鍵をかけるのよ、杏奈ちゃん」
Very well, Mom. I won’t forget.”
「わかったよ、ママ、忘れないよ」

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SIMULATED

2024-10-30 00:38:47 | S
 simulatedは「似せて造った、人工的に再現された、シミュレーションした」
 今日のGetUpEnglishはこの表現を学習する。

○Practical Example
“The astronauts trained in a simulated zero-gravity environment.”
「宇宙飛行士たちは、無重力をシミュレートした環境で訓練を行った」

"He gave a simulated smile to appear friendly, though he was nervous."
「彼は緊張していたが、フレンドリーに見せるために作り笑いをした」

●Extra Point
 もう2例。

◎Extra Example
"Akiko and her company use simulated data to test their new software."
「明子と彼女の会社は新しいソフトウェアのテストにシミュレーションデータを使用している」

"In the experiment, Keiko and Reiko simulated the effects of extreme weather conditions."
「惠子と玲子は実験において極端な天候条件の影響をシミュレーションした」

☆Extra Extra Point
 次のような言い方もする。

★Extra Extra Example
"The game includes simulated scenarios to help players practice real-life skills."
「プレイヤーが実生活のスキルを練習できるように、そのゲームにはシミュレーションシナリオが含まれている」
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PLACID, PLACIDLY

2024-10-29 00:41:41 | P
 placidは「穏やかな、静かな、落ち着いた」
 今日のGetUpEnglishはこの形容詞を学習する。

○Practical Example
"The lake remained placid, even as the wind picked up around it."
「湖は周囲で風が強まっても穏やかだった」

"His placid expression made it hard to tell what he was thinking."
「その穏やかな表情からは、彼が何を考えているのか読み取れなかった」

●Extra Point
  placidly(穏やかに、落ち着いて)もよく使われる。


◎Extra Example
"Hitoshi placidly answered the questions, undisturbed by the chaos around him."
「ヒトシは周囲の混乱に動じることなく、質問に順次答えた」。

"Hyohei placidly gave the instructions, calming the nervous students."
「遼平先生は穏やかに指示を出し、不安そうな生徒たちを落ち着かせた」

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THIS

2024-10-28 00:10:56 | T
 英和翻訳をしていると、原文はthisで記されているのだが、「これ」というより、「それ」とか「その」と訳したほうが自然ではないかと思うことが時々ある。それはまったくそのとおりで、thisが指すものが今、話者の目の前にない、場所も時間も離れたところに指すものであったりすると、そう思えてしまう。
 だが、ここで注意してほしいのは、所と時間は確かに離れているが、話者は「心理的にかなり近い」ととらえているのではないだろうか?
 英語のthisにはこのような感覚があり、英和辞典にも定義されている。
 信頼厚き『研究社 新英和大辞典』にはこの定義と用例がある。

1a [時間的・空間的・心理的に近いものを指して] これ, この物, この人 (cf. that1).
・What's all this I've been hearing about you and Max? 君とマックスについていろいろと聞いているが一体どういうことか.

 注意してほしいのは、『新英和大辞典』の日本語の訳は「これ」を使わずに、「心理的に近いものを指している感じ」を見事に表現していることだ。これが研究社の辞書のすごいところだ。
 よく英和翻訳をしているにもかかわらず、「自分は英英辞典しか引かないから」という人がいるが、英和辞典は英日翻訳のすぐれた訳例の宝庫であり、信頼できる英和辞典はぜひ参考にすべきだ。その点、研究社のオンライン辞書KODは大変ありがたい。

 本日のGetUpEnglishはthisのこの意味の使い方を紹介する
 例文をいくつか挙げる。

○Practical Example
“When this happened, I couldn’t believe my eyes.”
「まさに事件が起きた時、私は自分の目を疑った」

This is exactly what we feared would happen.”
「まさに私たちが恐れていたことだ」

 例文が短いので日本語の訳文には「それ」や「その」をあてるしかないかもしれないが、そもそも「それ」や「その」が何を指すのか読者にはわからないかもしれないから、状況によってはそれが指すものを具体的に出すのがよいように思う。

 たとえば、「まさに事件が起きた時、私は自分の目を疑った」は「飛行機が堕ちた時、わが目を疑った」、「まさに私たちが恐れていたことだ」は、「暴動をわたしたちはまさにおそれていた」くらいにすれば、「話者の心理的な近さ」、「臨場感」や「緊張」が再現できるだろう。

●Extra Point
 もう2例。

◎Extra Example

“I was devastated when this news reached me.”
「知らせが届いき、打ちのめされた」

“After all this, do you still think it was a good idea?”
「あんなことになっても、それがいい考えだったと思う?」
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『桐生タイムス』連載「永遠の英語学習者の仕事録」【43】(2024/10/26)

2024-10-27 00:46:19 | 桐生タイムス
AIが引き起こす大惨事のシナリオ

 テクノロジー創出者として、私はテクノロジーが桁外れの価値をもたらし、無数の人たちの生活を改善し、次世代クリーンエネルギーから安価な難病治療まで、数々の難問に対処してくれる、と信じている。テクノロジーは人類の生活を豊かにできるし、そうでなければならない。歴史を振り返れば、テクノロジーと、その発明家や起業家は、人類の進歩を強力に推し進め、数十億人の生活をよりよいものにしてきたし、それが繰り返されてきた。
But without containment, every other aspect of technology, every discussion of its ethical shortcomings, or the benefits it could bring, is inconsequential. We urgently need watertight answers for how the coming wave can be controlled and contained, how the safeguards and affordances of the democratic nation-state can be maintained, but right now no one has such a plan. This is a future that none of us want, but it’s one I fear is increasingly likely, and I will explain why in the chapters that follow.
だが「封じ込め」ができなければ、テクノロジーの倫理的問題点や恩恵を論じても無意味だ。来たるべき波を管理し封じ込める方法と、民主主義国家の安全装置と活動の許容範囲をいかにして堅持するか、しっかりとした答えを至急出さなければならないが、現時点では誰も具体案を持ち合わせていない。私は誰も望まない未来が訪れるという不安を強めているし、その理由は本書各章で説明する。(『THE COMING WAVE』30ページ) 

 AI、さらにはAIが最も賢い人間以上に人間の持つすべての認知能力を実行できる段階にあるAGI(汎用人工知能[artificial general intelligence])を中心とする来たるべき波は、21世紀の行く末を決する非常に大きな問題を生み出す。われわれはこの新テクノロジーがもたらす恩恵を享受しつつ、その「封じ込め」を試みることが必要だ。それができなければ、人類は悲惨な状況に置かれる可能性がある。
今月の「永遠の英語学習者の仕事録」では、ムスタファ・スレイマンの『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』について、さらにくわしく論じてみたい。
★    ★    ★
 AIを使うのは善意ある者たちだけではない。悪意ある者たちに使われる可能性は十分にある。
 悪意ある者に使われれば、どのような壊滅的被害がもたらされるだろうか。

 テロリストが顔認識機能を備えた自動火器を数百から数千の強力な自律型ドローン群に搭載する。どのドローンも銃撃後に速やかに体勢を立て直し、短時間に連射し、移動することができる。そのドローン群がある人物の殺害を指示され、大都市の中心街に解き放たれる。通勤ラッシュの最中に、恐ろしいほど効率的に都市を最適ルートで移動する。わずか数分で、たとえば主要駅など都市のランドマークを襲撃した2008年のムンバイ同時多発テロより、はるかに大規模な攻撃を起こせるだろう。
 大量殺人者が大規模政治集会の襲撃を決意し、特製の病原体を入れた噴霧装置つきドローンを使用する。集会参加者たちは次々に病気を発症し、家族にも伝染する。演説していた賛否両論ある注目の政治家が最初の犠牲者の1人になる。激しい党派対立の中でこのような攻撃があれば、暴力的な報復が各地に広がり、国内は混乱状態に陥る。
 アメリカ在住の危険な陰謀論者が、自然言語だけを使ってAIに生成させた偽情報動画を大量に流す。さまざまな偽情報動画を発信するが、ほとんどがあまり拡散しない。だが、「シカゴで警察官による殺人事件が発生」というひとつの動画が火を付ける。完全なフェイク動画だが、街頭では騒ぎが起き、警察への嫌悪感が広がる。こうして陰謀論者は拡散させるノウハウを手に入れる。警察官による殺人がフェイク動画であると確認されるまでの間に、暴動が全米規模で発生し、多数の犠牲者が出る。新たな偽情報動画が燃料として次々に投下され、暴動は沈静化しない。
 あるいは、これらが同時発生するかもしれない。ひとつの集会やひとつの都市だけでなく、何百もの場所で同時発生したらどうなるだろうか。(『THE COMING WAVE』324~325ページ)

 来たるべき波が封じ込められなかった場合にどんなことが起こるか、特に本書第III部でくわしく論じられる。
 現在の政治秩序の基盤であり、テクノロジーを封じ込める上で最も重要な役割を果たすのは、国民国家(nation-state)だ。だが、封じ込めが失敗すれば、国民国家が弱体化し、そこから新しい形態の暴力が生まれ、偽情報が拡散し、仕事は消滅し、壊滅的な大災害が発生するかもしれない。来たるべき波は権力構造に変化と転換をもたらし、そこから新たな独裁的な巨大企業がつぎつぎに誕生し、伝統的な社会構造から外れたグループも力を得ることになる。人類はディストピアか破局かというジレンマに陥るのだ(「人類は既知の宇宙における支配的な種から初めて転落するのだ」[三二七ページ]とまで著者は言う)。
 どうすればテクノロジーの波を封じ込めることができるだろうか? 第IV部でムスタファ・スレイマンは「封じ込めへの10ステップ」を提言する。コンピュータープログラムやDNA組み換えのレベルから、国際条約の管理まで、10の厳格な制約を封じ込めの基本計画として提案する。殺戮兵器を作り出すことも、コロナウイルスよりも致死性の高い病原体を作り出してドローンで巨大都市に散布することも可能なテクノロジーを封じ込めるにはどうしたらよいか? AIの普及により仕事を失う可能性のある人たちにどんな対応をするべきか? これまでほとんど論じられることがなかった対応策が、ここで具体的に提言される。
 現在、AI規制については全世界で論じられているし、その関連のニュースはほぼ毎日報じられている。来たるべき波がすぐそこに迫りつつある現代において、本書は全世界の政治家やテクノロジー開発者だけでなく、新テクノロジーがもたらす有益なものを手に入れつつあるわれわれ多くの者たちも読むべき1冊だ。

【本稿は『図書新聞』3660号 (発売日2024年10月19日)に寄稿した一面記事「全人類への警告書――DeepMindの共同創業者、現マイクロソフトAIのCEOによる話題書の邦訳」と同時執筆となったため、同記事と重複する箇所があることをお断りしておく】 

 ムスタファ・スレイマン、マイケル・バスカー『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』(上杉隼人訳、日経BP/日本経済新聞出版)

上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。
 12月には『ディズニーランド・パーク ポップアップ・パークツアー』(河出書房新社)、来年3月には『Marvel Anatomy 超人ヒーロー解体図鑑』(KADOKAWA)の刊行が決まっている。
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TECHNICALLY

2024-10-27 00:08:35 | T
 副詞technicallyは、「規定[定義]上は, 厳密には, 建前では」(コンパスローズ)。
 今日のGetUpEnglishはこの表現を学習する。

○Practical Example
"Technically, the event starts at 6 PM, but people usually arrive a bit later."
「厳密に言えばイベントは午後6時に始まるが、たいていみんな少し遅れてやって来る」

"Technically, it’s not allowed, but many people do it anyway."
「それは厳密に言えば禁止されているが、多くの人がやっている」

●Extra Point
「専門的に、技術的に」の意味でも使われる。

◎Extra Example
"Technically, the software can support up to 1,000 users at once, but performance may vary."
「技術的には、そのソフトウェアは同時に1000人までサポート可能だが、パフォーマンスにばらつきがあるかもしれない」

"The bridge is technically designed to withstand strong earthquakes."
「その橋は技術的に強い地震にも耐えられるよう設計されている」


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DeepMindの共同創業者、現マイクロソフトAIのCEOによる全人類への警告書

2024-10-26 00:59:43 | The Coming Wave
DeepMindの共同創業者、現マイクロソフトAIのCEOによる全人類への警告書 ムスタファ・スレイマン、マイケル・バスカー『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』上杉隼人訳、日経BP/ 日本経済新聞出版)刊行に寄せて 上杉隼人

 今日のAI(人工知能[artificial intelligence])システムの進化はめざましい。物体も人間の顔もほぼ完璧に認識し、音声からテキストへの変換も、瞬時の言語間の翻訳も問題なくこなす。AIナビで自動運転も可能だ。いくつか簡単なプロンプトを与えれば、新世代の斬新な画像を生成し、情報量の多い論理的な文書も書き上げる。驚くほどリアルな合成音声も生成可能だし、美しい音楽も作曲する。長期的な計画も立ててくれるし、想像力が求められる複雑なアイデアをシミュレーションするなど、かつては人間にしかできないと思われていたことも軽々とこなしてしまう。
 AI、さらにはAIが最も賢い人間以上に人間の持つすべての認知能力を実行できる段階にあるAGI(汎用人工知能[artificial general intelligence])は、数年後には人間と同じレベルでさまざまなタスクを処理できると思われるし、実はすでに実現しているのかもしれない。
 だが、このAIがロボット工学、合成生物学、量子コンピューターといった同じく急激な進化を遂げている新世代テクノロジーと組み合わさることで、開発者すら想定していない未曾有の大混乱と大惨事がもたらされる可能性がある。

 可能性は低いかもしれないが、一度起こってしまえば甚大な影響がもたらされる。たとえわずかな可能性であっても、緊急に対応しなければならない。だが、まだ何も準備ができていない。このまま強力なテクノロジーの「封じ込め」(英語のcontainmentで、管理し、制限し、止めること)に失敗すれば、現在の国家は崩壊し、世界秩序は大混乱に陥る……。
 本書は、AlphaGoを開発したDeepMindの共同創業者で、現在はマイクロソフトAIのCEOを務めるムスタファ・スレイマン(Mustafa Suleyman, 一九八四年~ )の全人類に対する警告書だ。一年前の二〇二三年九月に原書が刊行されて以来、世界中で大変な話題を集めている。
 この注目の一冊がついに日本に上陸、先月末に日経BP/ 日本経済新聞出版より刊行された。

 封じ込めは可能か?  

 テクノロジー創出者として、私はテクノロジーが桁外れの価値をもたらし、無数の人たちの生活を改善し、次世代クリーンエネルギーから安価な難病治療まで、数々の難問に対処してくれる、と信じている。テクノロジーは人類の生活を豊かにできるし、そうでなければならない。歴史を振り返れば、テクノロジーと、その発明家や起業家は、人類の進歩を強力に推し進め、数十億人の生活をよりよいものにしてきたし、それが繰り返されてきた。
 だが「封じ込め」ができなければ、テクノロジーの倫理的問題点や恩恵を論じても無意味だ。来たるべき波を管理し封じ込める方法と、民主主義国民国家の安全装置と活動の許容範囲をいかにして堅持するか、しっかりとした答えを至急出さなければならないが、現時点では誰も具体案を持ち合わせていない。私は誰も望まない未来が訪れるという不安を強めている……。
(『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』30ページ)

 本書『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』における著者ムスタファ・スレイマンの主張は一貫している。
 人類は未曾有の力を備えた「来たるべき波」(The Coming Wave)を迎えつつある。来たるべき波はかつてない規模の富と利益を生み出す人工知能(AI)と合成生物学のふたつの中核テクノロジーを有するが、このふたつのテクノロジーが急速に拡散すれば、さまざまな形で悪用される可能性もある。それによって想像もできない大規模な混乱が生じ、社会は不安に陥り、大惨事が引き起こされるかもしれない。来たるべき波は、二十一世紀の行く末を決する非常に大きな問題を生み出すのだ。われわれは新テクノロジーがもたらす恩恵を享受しつつ、その「封じ込め」を試みることが必要だ。それができなければ、人類は悲惨な状況に置かれる可能性がある。
 ふたつのAI会社、ディープマインド(のちにグーグルに買収)とインフレクションAIを立ち上げ、最先端AI技術を開発しつつも、その使い方には常に慎重で、グーグル在籍時にはAI倫理諮問評議会を社内に設置することも求めたスレイマン(現在はマイクロソフト AIのCEOを務める)は、状況を明確に見据え、このように提言する。
 だが、4つの特性(「オムニユース(汎用性がある)」「超進化」「非対称(力の差を埋める〝非対称インパクト〟がある)」「自律性(自ら学習して進化する)」)を備えた来たるべき波の封じ込めは容易ではない。
今何が起こりつつあるのか? 何が波の封じ込めをむずかしくしているのか? 波を封じ込められなければどうなるか? 封じ込めを実現するにはどんなことが必要か?
 スレイマンは本書を通じて、こうした問題を論じながら、今を生きるわれわれだけでなく、これからの世代の行く末を占う。
 スレイマンは第Ⅰ部で、数千年にわたるテクノロジーの歴史をひもとき、テクノロジーの波がどのように広がったのかを概観する。どうして波は社会に浸透したのか? 波を拒んだ社会はどうなったか? 
 第II部では、来たるべき波について詳細に論じる。AI、合成生物学、ロボット工学、量子コンピューターなどのテクノロジーが激しく複雑に絡み合いながら、指数関数的に(exponentially)発展していく中、多くの国家や企業や団体は競い合うように開発を進める。政治、経済、そのほかの理由によって、新テクノロジーの開発を止めることはむずかしい状況にある。
 第III部では、来たるべき波が封じ込められなかった場合にどんなことが起こるかが論じられる。現在の政治秩序の基盤であり、テクノロジーを封じ込める上で最も重要な役割を果たすのは、国民国家(nation-state)だ。だが、封じ込めが失敗すれば、国民国家が弱体化し、そこから新しい形態の暴力が生まれ、偽情報が拡散し、仕事は消滅し、壊滅的な大災害が発生するかもしれない。来たるべき波は権力構造に変化と転換をもたらし、そこから新たな独裁的な巨大企業がつぎつぎに誕生し、伝統的な社会構造から外れたグループも力を得ることになる。人類はディストピアか破局かというジレンマに陥るのだ(人類は既知の宇宙における支配的な種から初めて転落するのだ[三二七ページ])。
 どうすればテクノロジーの波を封じ込めることができるだろうか? 第IV部で、ムスタファ・スレイマンは「封じ込めへの10ステップ」を提言する。コンピュータープログラムやDNA組み換えのレベルから、国際条約の管理まで、十の厳格な制約を封じ込めの基本計画として提案する。殺戮兵器を作り出すことも、コロナウイルスよりも致死性の高い病原体を作り出してドローンで巨大都市に散布することも可能なテクノロジーを封じ込めるにはどうしたらよいか? AIの普及により仕事を失う可能性のある人たちにどんな対応をするべきか? これまでほとんど論じられることがなかった対応策が、ここで具体的に提言される。
 現在、AI規制については全世界で論じられているし、その関連のニュースはほぼ毎日報じられている。来たるべき波がすぐそこに迫りつつある現代において、本書は全世界の政治家やテクノロジー開発者だけでなく、新テクノロジーがもたらす有益なものを手に入れつつあるわれわれ多くの者たちも読むべき一冊だ。
 ユヴァル・ノア・ハラリ(歴史学者、『サピエンス全史』)、ビル・ゲイツ(マイクロソフト共同創業者)、アン・アプルボーム(ピューリッツァー賞受賞、歴史家)、ダニエル・カーネマン(ノーベル経済学賞受賞、『ファスト&スロー』)、ヌリエル・ルービニ(ニューヨーク大学名誉教授)、アル・ゴア(元アメリカ副大統領)、アンドリュー・マカフィー(MITスローン経営大学院首席リサーチ・サイエンティスト)、アラン・ド・ボトン(哲学者、作家)、マーサ・ミノウ(ハーバード大学教授)、エリック・シュミット(元グーグルCEO)、イアン・ブレマー(政治学者、コンサルティング会社ユーラシアグループ社長、『危機の地政学』)、デイヴィッド・ミリバンド(イギリス元外務大臣)、グレアム・アリソン(ハーバード大学ケネディスクール初代院長、『米中戦争前夜』)、アンジェラ・ケイン(元国連軍縮担当上級代表)、ブルース・シュナイアー(サイバーセキュリティ研究者)、エリック・ブリニョルフソン(スタンフォード大学教授、人工知能学者)、ジェイソン・マセニー(ランド社CEO、元テクノロジー担当大統領副補佐官)、スティーブン・フライ(俳優、放送作家)、サー・ジェフ・マルガン(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン[UCL]教授)、リード・ホフマン(リンクトイン共同創業者、インフレクションAI共同創業者)、フェイフェイ・リー(コンピューター科学者)、ジェフリー・D・サックス(経済学者、国連ミレニアムプロジェクト・ディレクター)、チー・ルー[Qi Lu](コンピューター科学者、ミラクルプラスCEO、元マイクロソフト執行副社長)、メーガン・L・オサリバン(ハーバード大学ケネディスクール・ベルファー科学国際問題センター所長)、トリスタン・ハリス(テクノロジー倫理学者)、スチュアート・ラッセル(カリフォルニア大学バークレー校コンピュータサイエンス学部教授)、ニーアル・ファーガソン(歴史家、スタンフォード大学フーヴァー研究所シニアフェロー、『キッシンジャー』)、ジャック・ゴールドスミス(ハーバード大学法科大学院教授)、エリック・ランダー(元アメリカ大統領首席科学顧問)、ケビン・エスヴェルト(MITメディアラボ准教授、生物学者)、エフード・バラク(イスラエル元首相)、ケビン・ラッド(オーストラリア元首相)と実に多くの錚々たる政治家、テクノロジスト、ビジネスリーダー、作家、学者が推薦文を寄せた本書は、まさに時代が求める一冊と言える。

 波を封じ込めれば、何が手にできるか?

 膨大で詳細な調査をもとに全世界が知りたい情報を網羅し、マイケル・バスカーの印象的な詩的表現でドラマチックにつづられる本書を数カ月で訳すのは大変な作業であったが、多くの人たちの支援を得てどうにかやり遂げることができた。この場を借りて、その人たちに謝意を表したい。
大作の訳書に抜擢してくださった日本経済新聞出版本部長の國分正哉さんと同編集部の金東洋さんに、深く感謝申し上げる。特に金さんには翻訳上で貴重なアドバイスをいくつも賜り、事実確認、訳文の向上も精力的にはかっていただいた。金さんの力強く寛大な支援と励ましがなければ、とてもできない仕事だった。
 夏村貴子さん、坂元理人さん、片桐恵里さん、品川暁子さん、玉木史惠さん、楠田純子さんには原稿段階で訳文と原文との突き合わせをお願いし(おかげで訳文の質が加速度的に向上した)、眞鍋惠子さん、玲子さんには合成生物学に関する表現を確認していただき、上原昌弘さんにはゲラを念入りに校正していただいた。皆さんに厚くお礼を申し上げる。
                *
 来たるべき波を封じ込めるのはむずかしいし、できないかもしれない。だが、われわれは立ち向かわなければならない。波を封じ込めることができれば、われわれには何を手にできるのか? 
ムスタファ・スレイマンは最後にそのことも示してくれている。スレイマンのその言葉から希望が生み出され、来たるべき波の封じ込めに向けた活動が具体化するかもしれない。
 AI時代最重要書の一冊と言える本書が多くの方に読んでいただけることを願っている。

上杉隼人(うえすぎはやと)
 編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社青い鳥文庫)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』、ジョー・ノーマン『英国エリート名門校が教える最高の教養』(文藝春秋)、ベン・ルイス『最後のダ・ヴィンチの真実 510億円の「傑作」に群がった欲望』(集英社インターナショナル)、ウィニフレッド・バード『日本の自然をいただきます──山菜・海藻をさがす旅』(亜紀書房)、チャーリー・ウェッツェルほか『MARVEL 倒産から逆転NO・1となった映画会社の知られざる秘密』(すばる舎)・ジョン・ル・カレ『われらが背きし者』(共訳、岩波現代文庫)のほか、ディズニー、マーベル、「スター・ウォーズ」関連の翻訳も多数(日英翻訳をあわせて九十冊以上)。 
 十二月には『ディズニーランド・パーク ポップアップ・パークツアー』(河出書房新社)、来年三月には『Marvel Anatomy 超人ヒーロー解体図鑑』(KADOKAWA)の刊行が決まっている。


「図書新聞」No.3660・ 2024年10月26日号に掲載。
https://toshoshimbun.com/「図書新聞」編集部の許可を得て、投稿します。

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WHY

2024-10-26 00:10:36 | W
 whyは間投詞として「[意外なことの発見・承認などの際の発声として] あら!, おや!, まあ!」(研究社英和中辞典)の意味で使われる。
 今日のGetUpEnglishはこの言い方を復習しよう。

〇Practical Point
  "Why, it’s you, Reo!"
「あら、あなたなのね、礼央ちゃん!」

 驚きや再会の喜びが表現される。

"Why, that’s a great idea, Yuta!"
「まあ、それはいいアイデアね、悠太くん!」

 相手の発言に同意して使う。

◎Extra Point  
 当然知っているはずだと思っていたので、驚きとともに使われることがある。

◎Extra Example
"Why, I thought you knew."
「おい、きみは知っていると思ってたよ」
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TO STUMBLE ON[UPON]

2024-10-25 05:03:40 | S
 stumbleは「つまづく」であるが、stumble on, stumble upon, stumble acrossで、「偶然に〜を見つける、偶然~に出会う」という意味で使われる。
 今日のGetUpEnglishはこの表現を学習する。

○Practical Example
"Mayumi stumbled upon an old photo of her parents while cleaning the attic."
「真弓は屋根裏を掃除していて、両親の古い写真を偶然見つけた。

Sayaka stumbled on a great little café hidden in the back streets of Kagurazaka.
「さやかは神楽坂の裏通りに隠れた素敵なカフェを偶然見つけた」

●Extra Point

もう2例。

◎Extra Example
"Akiko stumbled upon a rare book in a second-hand shop."
「暁子は古本屋で珍しい本を偶然見つけた」

"After joining his online translation workshop and studying tremendously hard with her classmates, she fortunately stumbled on an amazing regular translation job for an established web magazine.
「あの先生のオンライン翻訳教室に参加し、クラスメートとすごく熱心に勉強した彼女は、驚いたことにある一流ウェブマガジンの定期翻訳者の仕事を得るという幸運に恵まれた」
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TO STRIKE ... AS ~

2024-10-24 00:57:17 | S
 動詞strikeはいろいろな意味で使われるが、 strike... as ~で、「〜に印象を与える、〜と感じさせる」の意味で使われます。
 今日のGetUpEnglishはこの表現の使い方を学習する。

○Practical Example
"Her attitude struck me as overly confident."
「彼女の態度に、過剰な自信を感じた」

"It strikes me as odd that he didn’t show up to the meeting."
「彼が会議に現れなかったのは、不思議な感じがする」

●Extra Point
 もう2例。

◎Extra Example
"His explanation struck everyone as sincere and thoughtful."
「彼の説明で、この人は誠実で思慮深いと全員思った」

"Doesn’t it strike you as strange that she left without saying goodbye?"
「彼女がさよならも言わずにいなくなったのは奇妙に思わないか?」
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DO A IMPRESSION, DO IMPRESSIONS

2024-10-23 06:13:03 | I
 do an impressionで、「物まねをする」
 今日のGetUpEnglishはこの表現を学習する。

○Practical Example
"When Hanae does an impression of her husband, it’s so accurate that everyone thinks it’s real."
「花江ちゃんご主人の物まねをするとあまりにそっくりで、みんな本物だと思ってしまう。

"Can you do an impression of that comedian?"
「あのお笑い芸人の物真似をしてみてくれる?」

●Extra Point
 いろんな人の物まねをする、同じ人の物まねを何度もする時はdo impressionsで表現する。

◎Extra Example
"He loves to do impressions of famous actors at parties."
「彼はパーティで有名な俳優の物真似をするのが大好きだ」

"They often do impressions of their boss to make each other laugh."
「彼らはよく上司の物真似をしてお互いに笑っている」
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PALATABLE

2024-10-22 00:16:51 | P
 palatableは「(食物などが)味のよい、口に合う」のほか、「(事が) 趣味にかなう、気にいる」の意味で使われる。
 今日のGetUpenglishはこの語を学習する。

○Practical Example
"The restaurant served dishes that were not only healthy but also palatable, appealing to a wide range of customers."
「そのレストランはヘルシーなだけでなく、おいしくて多くのお客さんに好まれる料理を出していた」

"The new policy was difficult for many employees to accept, but the management made it more palatable by offering additional benefits."
「新しい方針は多くの社員にとって受け入れがたいものだったが、経営陣は追加の福利厚生を提供することで受け入れやすくした」

●Extra Point
 もう2例。

◎Extra Example
"She found the idea of moving to a new city much more palatable after learning about the job opportunities there."
「新しい都市への引っ越しは、そこでの仕事のことを知ると、彼女にはてずっと魅力的に思えた」

"The movie’s dark themes were made more palatable by moments of humor and light-heartedness."
「その映画のテーマは暗いものだったが、笑いや軽い場面を盛り込むことで、受け入れやすくなった」
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SERENDIPITY

2024-10-21 00:47:10 | S
 serendipityは「思わぬ掘り出し物を見つける才能、偶然貴重な発見をすること」(コンパスローズ)。
 今日のGetUpEnglishはこの語を学習する。

○Practical Example
"It was pure serendipity that I found the perfect book for my research on the very first day at the library."
「図書館に最初に行った日に、思いがけないことにわたしの研究にぴったりの本を見つけた」

"Their friendship started with a moment of serendipity when they bumped into each other at a café they both rarely visited."
「彼らの友情は、普段あまり行かないカフェで偶然出会ったことから始まった」

●Extra Point
 もう2例。

◎Extra Example
"Serendipity led the scientists to a breakthrough discovery while they were working on something entirely different."
「科学者たちは全く別のことに取り組んでいる過程で、思いがけない幸運から大発見に導かれた」

"I wasn’t planning to visit that art gallery, but by serendipity, I stumbled upon an exhibit that changed my perspective on art."
「あの美術館に行く予定はなかったが、思いがけず出会った幸運な展示によってアートを見る目が変わった」

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TO AUGMENT(3)

2024-10-20 01:56:33 | A
 動詞augmentは「~を増大させる、増やす」。GetUpEnglishでは、すでに2度学習しているが、今日は新しい例文で学習する。


今日のGetUpEnglishはこの語を学習する。

○Practical Example
"The company decided to augment its workforce to handle the increasing demand."
「増加する需要に対応するため、その会社は従業員を増やすことに決めた」

"She augmented her income by taking on freelance work in the evenings."
「彼女は夜にフリーランスの仕事をすることで収入を増やした」

●Extra Point
 もう2例。

◎Extra Example
"The new technology will augment the capabilities of the existing system."
「新しい技術は既存のシステムの能力を拡張する」

"They plan to augment their marketing efforts with a social media campaign."
「彼らはソーシャルメディアキャンペーンを追加することで、マーケティング活動を強化する計画だ」
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『図書新聞』3660号 (発売日2024年10月19日)の1面に書かせていただきました!

2024-10-19 11:39:18 | The Coming Wave
『図書新聞』(https://toshoshimbun.com/)3660号 (発売日2024年10月19日)に、『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ DeepMind創業者の警告』について、書かせていただきました!

◆今週の一面◆
ムスタファ・スレイマン、マイケル・バスカー著『THE COMING WAVE AIを封じ込めよ』(日本経済新聞出版)邦訳刊行に寄せて
全人類への警告書――DeepMindの共同創業者、現マイクロソフトAIのCEOによる話題書の邦訳
上杉隼人


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