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2011-09-13 09:54:04 | 

うっかりして塩を切らしてしまった。塩そのものは塩愛好家だから、国内外、いろんな塩は持っているが、普段用に使うには量が少ない。そこで「お塩買って来て、赤穂の天塩でも、伯方の塩でも、沖縄の塩でもいいよ」と頼んだ。そして急いで「海の精」 を注文した。天塩も伯方の塩もオーストラリアやメキシコの天日塩ににがりを添加した再構成加工塩 だとは知っている。

一口に塩と言ってしまうが、ところによって海水の成分が違うから、塩にもそれぞれの味がある。もちろん含まれている成分によるところが大きいのだが。ときおり、利き酒ならぬ、利き塩もどきのことをしてたのしんでいる。

                                                      

「天塩も伯方の塩もなかった」と言って「瀬戸内のしお」というのを買ってきてくれた。「瀬戸内のしお」?聞いたことがないな。

                                                            

表には「瀬戸内の海水使用」、裏には製造元はなく発売元のイオン株式会社。

製造方法、

原材料名:海塩(日本、イオン膜、立釜)、粗製海水塩化マグネシウム 

工程:混合

粗製海水塩化マグネシウムはにがりのことです、という但し書きが付いている。

                                                         

おや、これはイオン膜交換法で作られた塩ににがりを添加してあるものだ。元専売公社の塩のひとつ、再化学合成塩ではなかろうか。調べると、イオン交換膜法でつくっている会社を見つけた。

                                                         

イオン交換膜式の製塩を行なっている会社 (塩事業センター委託)

   ~ いわゆるJT塩(日本タバコの塩)を作っている会社(7社) ~

  崎戸塩業(株)       長崎県
  ナイカイ塩業(株)     岡山県
  錦海塩業(株)       岡山県
  赤穂海水工業(株)      兵庫県
  讃岐塩業(株)       香川県
  鳴門塩業(株)       徳島県
  新日本化学工業(株)    福島県

さて、「瀬戸内のしお」はどれだろう。この名前を見ていて思い出したのだが、事故を起こした福島原発所の土地は もともとは塩田であったそうだ。

                                                                                                                                                                           

子どものころ、たぶん戦後の物不足のときだろうと思うが、海岸で塩を作っていたのを眺めていた。掘っ立て小屋に、大きな鍋があり、男の人が二人、汗だくになって海水を煮詰めていた。のぞくと、鍋の中には褐色の液体を透して白い塩の結晶が溜まっていた。鍋の周りの塩の結晶も褐色がかっていた。まだ子どもだったから、塩は海水を煮詰めれば出来るものぐらいにしか思わなかった。後年、学校で、塩田の話を聞いて、海岸で塩を作っていた人たちは、かん水をどうして作っていたのだろうかと思った。今思えば、塩は専売だったから、海岸で作っていたのは違法だったのだろう。でも、あの時代だから??? 

                                                       

そうそう、日本は海に囲まれているから、塩は豊富にあったと思われるだろうが、塩は専売、庶民の自由にはならなかった。だからあのクサヤの干物も、塩を生産していたにもかかわらず、干物に使える塩の割当が少なく、十分塩を使えなかったので、漬け汁を使い回ししているうちに、酵母菌などが発酵してあのうまみを作り出したのだ、と読んだことがある。塩に限らず生産者がその恩恵に預かれない歴史はたくさんある。現在だって、存在する。                           

                                                         

塩の専売法は1905年(明治38年)、そして1971年(昭和46年)イオン膜交換法が行われるようになり、塩田は廃れ、NaCl 99.9%という塩辛いだけの塩が生産され、料理人や料理愛好家から顰蹙をかっていた。よく料理人の辻留のご主人が、テレビの料理番組で「料理にはあらじおを使いなさい」と教えていた。そういったって、市販のあらじおとて、イオン交換膜で作ったものだから、本来の味があるわけではなかったろう。一般庶民は専売の塩を使う以外なかったが、当時でも能登の塩は技術保存のために許可されていたし、大島の海の精も研究費補助ということで入手できたから、辻留さんほどの人なら、どこかにルートがあったのだろう。

1997年、92年続いてきた塩の専売法が廃止になった。その後、ようやく本来の塩らしい塩が生産、販売されるようになった。この間、本物を求める人たちの運動はある。

                                                       

市販食塩の情報を写しておこう。

◇イオン交換膜塩 再化学合成塩
海水をイオン交換膜でナトリウムと塩素に分解し再度化学合成して、濃食塩水を作り、真空蒸発法で結晶にする 食塩(塩事業センター)、いわゆるJT塩。実際には塩事業センターの委託で7社が製造。天候や季節の影響がなく、高純度の塩化ナトリウムを低コストで生産でき、重金属やPCBや好塩細菌などを工程で除去できる。
                                                       

◇イオン交換塩の加工塩  イオン交換塩にニガリや鉄などの添加物を加えて加工

いそしお、瀬戸の本塩、五島灘の塩、鳴門のうず塩、くろしお、さぬきの塩、塩野崎の本塩
                                                       

◇再構成加工塩 

塩事業センターなどが輸入した天日塩にニガリやミネラルなどを加えた加工塩
クッキングソルト、キッチンソルト、赤穂の天塩、伯方の塩、シママース、あらしお、瀬戸のましお、昔塩、お塩少々、赤穂のあらなみ天日塩、活性極上塩、日精のミネラル天日塩、ディナー塩、コープ沖縄の塩ウルママース、沖縄のいり塩
                                                       

◇天然海塩(非加熱塩)

ネット式、塩田式で濃縮して天日で結晶させる。遠心するか、堆積させてニガリを減らす。                                          

「 国産 」 海の精(青ラベル)、海の晶、土佐の塩丸、美味海、小さな海(青ラベル)、粟国の塩、                                                    

「 外国産」 ゲラントの塩、フルールドセル、モチアスペチアーレ、フルー・ド・カマルグ、フルール・ダクアセル、セルマラン、ヴァージンソルト、クリスマス島の海の塩、太陽の塩、皇帝塩、古代の塩、鳳凰、浜菱、浜菱焼塩、ホワイトミネラル、海の日記、海水の素、梅丹中国産天日塩、愛農普及会粉砕塩 

                                                                                                                                                            

◇天然海塩(加熱塩)

揚げ浜式、ネット式で濃縮して、釜で結晶させ、遠心してニガリを減らす。            「国産」  能登のはま塩、奥能登揚げ浜塩、海の精(赤ラベル)、小笠原の塩、小さな海(赤ラベル)、自然海塩沖縄の海水塩、ヨネマース、宮古島の自然塩「雪塩」「海の力」、自然海塩ごとう                                                     「 外国産 」 最進の塩

                                                                                                                                                      

◇天然海塩(噴霧乾燥法)

海水を噴霧し急速に空中で結晶化。石膏など通常除去される成分も含まれる。

至福の塩ぬちマース
                                                       ◇採掘天然岩塩

岩塩鉱脈を掘るか、露天掘りして採掘し粉砕精製

サーレディロッチャ、ドロゲリアミニエラ、リアルソルト

◇溶解天然岩塩(非加熱塩)

岩塩鉱脈に水を注入して溶解しポンプでくみ上げ真空蒸発缶で再結晶 山菱岩塩
                                                       

◇溶解天然岩塩(加熱塩)

岩塩鉱脈に水を注入して溶解しポンプでくみ上げ蒸気缶で再結晶

アルペンザルツ(炭酸マグネシウムと炭酸カルシウムを添加)

◇採掘天然湖塩

干上がった湖の塩の結晶を露天掘りして採掘し粉砕精製

オーストラリアの古代湖塩、湖精塩

                                                                                                                                                          

塩の薀蓄を語りだすと長くなるから、おいおい時間を見て付け足していくことにして、手元にある塩から見ていこう。

「海の精」が届くまで、とりあえず、唐津で買ってきた海んまんま「一の塩」を塩が細かいのでおろした。

生産者は一の塩株式会社 住所電話番号が入っている。

原材料名 海水(佐賀県加唐島)

工程    逆浸透膜 立釜、乾燥

                                                                                                                                                      

逆浸透膜って?逆浸透膜とは、海水の淡水化に使うろ過膜のことだった。要するに淡水化時に出来た濃縮された海水を利用したもの。たぶん、他の成分も含有されているだろう。ならこっちの方がイオン膜交換法の塩よりましかな。

でも、使わないうちに「海の精」が届いたので結局料理には使わなかった。で、届いた海の精と一の塩をなめ比べてみた。「海の精」は味がある、甘ささえ感じられる。一方、「一の塩」は味がない。で、またしまってしまった。

                                                       

離島で買ってきた塩、八丈島、青ヶ島、隠岐(海士の塩)、与那国(花塩)の塩の表示を見ている。気がつかなかったが、なかなか興味深い。味見をして買ったのは与那国の「花塩」、ひとつぶなめて美味しいと思った。ただ、結晶が粗いので、煮物にはいいが、節塩などには向かない。そのためにソルトミルを国産、外国産と何個も買ったのが、どうもうまく挽けない。で、大事にしまわれている。

外国も行くたびに、あちこちで塩を買ってきて、それぞれ試しているが、ローストビーフに使うのは今はもっぱらイングランドの塩。もちろんゲラントの塩もお気に入り。

                                                                                                                                                      

ここに塩の用語解説がある。

http://www.salt-fair.jp/term/

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