11月7日金曜日の当ブログ記事≪消費税増税/いつかは通る道なら、定額減税よりも消費税の一時停止、そして食品非課税で増税へ≫で題名どおりの「定額減税」(改め「定額給付金」)よりも、事務が繁雑だと言うことなら消費税を一時停止することで国民の生活を補助し、景気を回復したところで食品非課税で消費税を10%なり増税したらどうかと書いたが、勿論、今までの記事同様に何ら反響はない。自分が思っていることを単に書いているだけのブログだから当然の成り行きと言ったところだが、3日前(11月25日)の「asahi.com」記事がイギリスが景気対策を目的に09年末まで消費税を2.5%下げるという記事を紹介していた。参考までに全文を引用。
≪英、消費税2.5%下げ発表 景気対策で09年末まで≫(asahi.com/2008年11月25日1時8分)
<【ロンドン=尾形聡彦】英国政府は24日、景気対策のため、一時的に消費税(付加価値税)の減税に踏み切ると発表した。12月初めから、17.5%の消費税率を2.5%幅引き下げ、15.0%とする。英国の消費税率引き下げは74年に10%から8%に変えて以来。今回の景気後退局面で、消費税を減税するのは欧州主要国で初めてとみられる。
ダーリング財務相は消費税の減税が「すべての人に恩恵があり、最も公正な手法だ」と指摘し、09年末まで続ける方針を示した。所得税額を割り引く一般的な減税では貯蓄に回る分が多くなる可能性があり、消費税率を一時的に引き下げることで、消費意欲を刺激する狙いがあるとみられる。
消費税率を2.5%幅引き下げることによる財政負担の規模は125億ポンド(約1.8兆円)に達し、全体の景気刺激策は200億ポンドに上るという。英政府は消費税減税に伴う財政悪化を改善するため、高所得者の所得税の最高税率(現在40%)を45%へ引き上げる見通しだ。
ブラウン英首相は24日朝の演説で「(90年代の)日本などでは景気後退局面での対策が遅すぎた」と語り、大胆な消費刺激策を取ることで、バブル崩壊後の日本などであった失敗を繰り返さない姿勢を示した。 >・・・・・・・
「英国の消費税率引き下げは74年に10%から8%に変えて以来」の2度目だと言うことだが、1974年という年は1973年10月に第4次中東戦争が勃発、10月22日に停戦合意してはいるものの、アラブ産油国が石油戦略を発動、原油価格を一挙に4倍に引き上げたことから中東にエネルギーを依存していた先進国の経済に大きな打撃を与えた。
いわゆる石油ショックと言われる世界的不況の発生で、英国とて同じ状況下にあったろうから、その景気回復策と国民生活の救済に1974年に消費税率を「10%から8%に変え」たと言うことで、それが少なからず成功したことからの再度の“試行”といったところであろう。
いわば成功体験からの再挑戦でなければならないはずで、って、見るべき効果がなかったにも関わらず同じことの繰返しをするのは日本ぐらいに違いない。
15歳以下の子供や65歳以上の高齢者その他を支給対象として1999年4月1日から9月30日まで行われた1人2万円の地域振興券が財布の紐を締めていた消費者によって最低限必要とする生活必需品の購買にその殆どが向けられ、使わなくて済んだその分の自分のカネは貯蓄に回されたために財政支出は約6200億円必要としたものの、名目GDPを約2,000億円(GDPの個人消費の0.1%程度)押し上げる効果しかなく、差引き約4200億円分効果を見なかった失敗体験をモノとせずに二番煎じでしかない定額減税改めて定額給付金を支給する。
経済専門家の多くが地域振興券に前以て下したように定額給付金の効果に関しても将来の不安に備えて貯蓄に回って活発な消費活動につながるまいと予測し、マスコミが街で聞く声も多くが「貯蓄に回す」と答えていながらである。しかも麻生内閣から支給事務だけではなく、高所得者にも支給するのは不公平ではないかと指摘を受けて一旦は設けることとした所得制限の最終決定まで丸投げされた市区町村は事務手続き簡素化の面からのみ所得制限を設けるだの設けないだのと今以て決めかねて右往左往している。
対してイギリスは「消費税の減税が『すべての人に恩恵があり、尤も公正な手法だ』と指摘・・・・・・所得税額を割り引く一般的な減税では貯蓄に回る分が多くなる可能性があり、消費税率を一時的に引き下げることで、消費意欲を刺激する狙いがあるとみられる」と日本の逆を行く予測を立てている。
麻生首相は08年10月30日の「新しい経済対策『生活対策』の発表」の記者会見で次のように述べている。
「私の目指す日本は、福祉に関して、中福祉・中負担です。中福祉でありながら、低負担を続けることはできません。増税はだれにだって嫌なことです。しかし、多くの借金を子どもたちに残していくこともやめなければなりません。そのためには、増税は避けて通れないと存じます。勿論、大胆な行政改革を行い、政府の無駄をなくすことが前提であります」
また9月14日のNHK番組で「基本的には消費税10%はいまでも一つの案だ。小福祉小負担、北欧のような高福祉高負担とあるが、日本の落ち着く先は中福祉中負担だ。その場合、消費税10%は一つの目安かと思う」(2008年9月23日(火)「しんぶん赤旗」)と述べている。
麻生以下の自民党政府高官、その他は「高福祉、高負担という北欧型でいくのか、米国型の低福祉・低負担でいくのか」と一方に「高負担」、あるいは「低福祉」という痛みをカードとしてちらつかせて、それが嫌ならばと着地点を「中福祉・中負担」に誘導して消費税率増税を国民に納得させようとしている。
これは一種の威しであるばかりか、威しに利用している北欧型の「高福祉、高負担」にはマヤカシを潜ませている。
北欧諸国に入らないが、先ずは上記英国の例を取り上げて、景気刺激策としての消費税率下げの記事は「17.5%の消費税率を2.5%幅引き下げ、15.0%とする」となっているが、日本の5%から比較したら「17.5%」は相当高い消費税に思えるが、08年7月1日の「YOMIURI ONLINE」記事≪消費税アップ…軽減税率の検討不可欠≫によると、<英国では、物を買ったりサービスを受けたりする際、17.5%の税率がかかる。ただし、家庭用光熱費やニコチンパッチなどは5%、食料品や新聞、薬、子供服などは0%と、2種類の軽減税率がある。標準的な体形の13歳以下の子供が着る服は0%だ。しかし、小柄な大人が買ってもいちいち確認されるわけではないため、「子供服の売り上げは実際の子供の数より多い」との笑い話もあると聞いた。>と一律17.5%ではなく商品によって軽減税率が設けられていることを紹介している。
特に食料品が0%というのは中低所得者にとっては17.5%がウソのような福音であろう。
北欧諸国に関して言えば、「高福祉・高負担」の例に最も取り上げられるスウェーデンに関していうと、消費税は25%と日本の5%から比べたら目が飛び出るほどに税率が高いが、食品はほぼ半分の12%の軽減税率となっている。
さらにHP『スウェーデンはなぜ生活大国になれたのか』(竹崎孜著 あけび書房 2000円)がスウェーデンの生活を次のように教えている。
<税金は直接税と間接税に分けられる。所得税は一定額以上の賃金や年金に課せられるが、特徴的なのは、最高税率のひどさよりは、比較的少ない所得までかかる点である。これは、社会保障と密接なつながりが認められる。税金は広くかける一方で、公平配分のための年金、児童手当金、住宅手当金などを用意しているわけである。同じ理由から家族控除は廃止された。スウェーデンの平均的所得税はおよそ35%、手取り部分は65%である。税金が3分の1以上に達する点だけを考えると恐ろしい重税とされようが、手取額である可処分所得のすべてが生活費に充当できる。すなわち、税金を支払ったあとは、社会保険料、健康保険料は差し引かれない。医療や教育費はゼロ、生命保険は名前すらない。生活を切りつめる貯蓄もしない。年間5週間に及ぶ年次休暇を楽しむセカンドハウスが購入できるのも実質所得が小さくないからといえる。>・・・・・・
「北欧の高福祉・高負担」と言いながら、軽減税率を採用している国があることを隠していることもそれとないマヤカシに入るが、スウェーデンの教育費ゼロ・医療費ゼロについても口を閉ざして言わないのはマヤカシそのものであろう。
翻って日本の教育費や医療費は一人当たり平均でどのくらいかかるのだろうか。一例を挙げると、日本政策金融公庫(10月に国民生活金融公庫など政府系金融4機関が統合)の調査結果をベネッセが取り上げ、自身の教育情報サイトで08年11月20日に伝えているものだが、<世帯年収に占める教育費の割合は平均で34%と、3分の1を占めます。特に200万円以上400万円未満の世帯では55.6%と、年収の半分以上(平均163万8,000円)を教育費に充てており、生活が大変ななかでも子どもの教育のために家計をやり繰りしている事情がうかがえます。住宅ローンも組んでいる世帯(平均年収692万5,000円)でも、45.9%と年収の半分近くが返済と教育費に消えていくといいます。>・・・・
子供の教育費に、あるいはそれにプラスして住宅ローンに一生縛りつけられる日本人の姿のみが窺える。
同じ日本政策金融公庫の調査を報じた記事だが、分かりやすいからついでに10月16日の「asahi.com」記事≪世帯年収の3分の1、教育費に 半分超える層も≫も紹介しておこう。
<世帯年収の3分の1が教育費に消えている――。日本政策金融公庫(東京)が今年2月に国の教育ローンを利用した世帯を対象に行ったアンケートで、そんな実態が明らかになった。年収が低い世帯ほど在学費用の負担は重くなり、年収200万円以上400万円未満の世帯では年収の半分以上を占めていた。
アンケートは7月に実施し、給与所得者がいる世帯からの回答2753件を集計した。
世帯の年収に対する在学費用(小学校以上に在学中の子どもにかかる費用の合計)の割合は平均で34.1%。200万円以上400万円未満の世帯では55.6%に達した。一方、在学費用自体は年収が高い世帯ほど多く、900万円以上の世帯は平均で221万1千円。200万円以上400万円未満の世帯より57万円余り多かった。
高校入学から大学卒業までにかかる費用は、受験費用、学校納付金などを合わせて子ども1人あたり1023万6千円だった。
こうした教育費の捻出(ねんしゅつ)方法を尋ねると(三つまでの複数回答)、「教育費以外の支出を削っている」が61.4%と最も多く、「奨学金を受けている」が49.3%、「子ども(在学者本人)がアルバイトをしている」が42.1%で続いた。節約している支出は上位から旅行・レジャー費62.1%、食費(外食を除く)48.8%、衣類の購入費46%の順だった。(大西史晃)>・・・・
このような国民の教育費に対する負担の大きさに比較して日本は教育費の支出が対GDP比で世界で第25位と、国は身軽な装いで済ませている。
その上将来的な健康に対する不安から民間の保険会社の健康保険、生命保険まで手当てしている日本人も多いだろう。スウェーデン人のように「年間5週間に及ぶ年次休暇を楽しむセカンドハウスが購入できる」どころの騒ぎではなく、自分たちが最初から着地点を決めていて、そこに誘導すべく利用することとなっているために一種の威しとなっている「北欧のような高福祉高負担」が如何にそれとないマヤカシに満ちているか分かろうと言うものである。