加計学園疑惑:安倍晋三の「国家戦略特区は仕組みとして介入する余地がない」の答弁は疑惑は事実の証明

2017-06-06 12:09:59 | 政治

 安倍晋三が昨日、2017年6月5日の参院決算委員会で加計学園安倍政治関与疑惑問題で民進党議員の平山佐知子に対して「国家戦略特区は仕組みとして介入する余地がない」と答弁したと2017年6月5日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えていたから、ウソつけと思いながら、YouTubからその質疑の動画をダウンロードして関係個所のみを文字に起こしてみた。

 平山佐知子は2016年7月の参院選挙の静岡県選挙区から立候補、当選したばかりで、1年経過に1カ月足りない新人だが、立候補前はNHKの静岡局でニュース番組のアナウンサーを務めていた。

 全国ニュースは極力見る習慣としているが、地方局のニュースはチャンネルを切り替えてしまうことが多いから、顔を知っている程度の知識しかなかった。

 経歴を「Wikipedia」で改めて調べてみて、1971年生れの46歳だとは、顔が若く見えたから、驚きだった。

 平山佐知子はロンドンのテロに抗議の意と犠牲者に対する見舞いを述べてから、加計学園問題の追及に入った。
 
 平山佐知子「加計学園の問題について総理にお伺いします。先週の金曜日に新たなメールが出てきました。文科省の専門教育課の担当者名で少なくとも10人以上にメールが送られたというものです。

 これまでこうしたメールの他、様々な文書、それから証言、次々と今出てきています。もうこれ、総理が指示をされ、関与したということは明らかになっていると私は思うのですが、改めて総理、今回の加計学園獣医学部新設に当たって、総理は関与していらっしゃるでしょうか」

 安倍晋三「先ず従来から申し上げておりますように全く関与していないと。また、関与できないという仕組みになっているということもこう申し上げておきたいと、このように思います。
 
 ま、仕組みとしてではですね、ま、これはご承知だとは思いますが、国家戦略特区諮問会議に於いてしっかり議論がなされ、そこで決まるわけでございます。私がどこにするということの指示を出したことも勿論ありませんし、出せない仕組みになっているわけでありますし、ま、そこで民間議員のみなさんはですね、こういう議論(安倍晋三が関与し、指示を出したという議論)があることに憤っておられるわけでございます」

 平山佐知子「指示していないというふうにおっしゃいました。色々と伺って参りたいと思いますけども、森友問題では文書はないとおっしゃる。今回の加計学園問題に関しては文書が出てきたら、怪文書だと切りつけて、さらにはしっかりと調べもしないのに、これは確認できない、もう調べないというふうに仰る。

 これ、総理が関与していないのなら、しっかり立証する責任が総理にはあると思うんですが、それ如何でしょうか」

 安倍晋三の答弁に対する平山佐知子のこの切り返しを聞いて、これではダメだと思った。「立証する責任が総理にはあると思う」と言っているが、安倍晋三から、「疑惑があると言うなら、言う方がその疑惑を物証を示して立証すべきだ」といった趣旨の答弁を何度されて、何度追及をかわされてきたことか、何も勉強していないようだ。

 安倍晋三は案の定、同じ趣旨の答弁で逃げた。

 安倍晋三「あの委員はですね、質問されるんであれば、事実、事実を知って、しっかりと確認して頂きたいと思いますが、先ず森友のですね、今、『何言ってるんだよ』と場外から汚いヤジがございましたが、ま、これは民進党にありがちな、ヤジでございますが、あのいわば、いわばですね、森友文書につきましては財務省がですね、理財局で調べたわけでございます。理財局が答弁しているわけでございます。

 しかしまた、私達が怪文書ということは私は申し上げていないわけでございまして、えー、これをいわば事実は事実として押さえてから、質問をして頂きたいと、こう思う次第でございます。

 先程から申し上げておりますように、えー、これは私が関与したということであれば、関与した証拠を見せて頂きたい、こう思うわけでありまして、私が関与していない・・・、後ろからですね、あのみなさん、静かな雰囲気で、ヤジり倒すということはですね、えー、どういうことかと思うわけでありますが、宜しいでしょうか、皆さん落ち着きました?

 ハイ、これはですね、こういうことについてはですね、いわば立証責任はですね、それはそこに問題があるんだと言う方が立証するのは当然なことであろうと。そして証拠を以ってですね、これは示すことが当然のことであろうと、こう思う次第でございます」

 同じ回答を引き出す時間のムダを費やしただけのこととなった。

 平山佐知子は立証できない埋め合わせにだろう、疑わしい事実を並べることに代えるささやかな抵抗を見せることしかできなかった。前川前事務次官は文書は本物だと言っているとか、マスコミの報道を借りて、文科省の現役の方が文書を共有していた、メールはパソコンに残っていると言っていたとか。

 そして文書が存在したかどうかは水掛け論になるから、この質問はあとに持っていくと言って、別の質問に変えることになった。

 安倍晋三が「立証責任はですね、それはそこに問題があるんだと言う方が立証するのは当然のこと」と言ったとき、平山佐知子は「立証責任が当方にあるというなら、その責任を果たすために前事務次官その他の証人喚問を認めて欲しい」と臨機応変の追及がなぜできなかったのだろうか。

 2017年5月30日の参院法務委員会でも民進党の小川敏夫は安倍晋三から疑惑があると言うなら、「小川さんはそれを証明して頂きたい」と言われながら、「証明の重要な機会として参考人招致を認めて貰いたい」(当時は証人喚問ではなく、参考人招致を求めていた)と巧みに切り返すことができずに、「総理は私の方で立証しろと仰っている。別にこれ、裁判の場ではありませんから、私が立証する責任はありません。政治はですね、政治を行う者が疑惑を招いたら、自らその疑惑を払拭するために説明するというのは政治家の責任ではないでしょうか」と、ごまめの歯ぎしりにしかならない反論を試みていた。

 殺人事件が起きた。警察はある人物を容疑者として特定した。その人物が殺人を犯したことを立証する責任は警察にあるのであって、その人物にはない。容疑者が自ら殺人事件を立証したとしたら、一遍の喜劇ができ上がる。

 勿論自白ということはあるが、自白はあくまでも警察の取調べという立証の過程で生じる一つの事態に過ぎない。

 確かに安倍晋三が疑惑を招いた。だが、そこに疑惑を見た、あるいは疑惑の構図を見たのは野党やマスコミ、国民の何割かであるが、安倍晋三が自ら疑惑を立証することはあり得ないことであって、当然、期待してはならないことになる。疑惑の立証はあくまでも後者の責任としなければならない。

 そして国会の場での野党の疑惑の立証は追及の方法・内容に頼るしかない。

 安倍晋三は平山佐知子の最初の質問に対して「関与できないという仕組みになっている」と答弁し、改めて「国家戦略特区諮問会議に於いてしっかり議論がなされ、そこで決まるわけでございます。私がどこにするということの指示を出したことも勿論ありませんし、出せない仕組みになっている」と答えている。

 だが、2017年3月13日の参院予算委で社民党の福島瑞穂が安倍晋三に対して加計学園疑惑を追及したとき、このような“関与できない仕組”について一言も言及していない。

 国家戦略特区諮問会議(正式名:国家戦略特別区域諮問会議)の議長は首相の安倍晋三なのだから、もし首相が“関与できない仕組”となっていることが事実なら、そのことは最初から弁えていた認識であるはずだから、福島瑞穂の2017年3月13日の疑惑追及に対してその時点で、関与できない仕組”を縷々説明しなければならなかったはずだ。

 だが、安倍晋三はそういった答弁は一切せずに「例えばですね、それ今治市が(獣医学部建設の土地を)タダで提供されたと言うことについて、これおかしいだろうという週刊誌がありますが、20年の間にですね、25例あるんですよ。20年の間にですね、25例あってですね、これはタダで、いわば土地が譲渡された例ですね、いわば貸与されている例はもっとあるんです」と答弁しているが、地方自治体が自らの所有地をタダ、つまり無償で法人に提供した例が「20年の間にですね、25例」あろうがなかろうが、今治市の市有地を新設獣医学部設置の土地として無償提供することへの口利きや政治的圧力の関与を否定する証明とはならない。

 世の中に善行がゴマンとあることを以って自分の行いの全てを善行だとするようなものである。

 安倍晋三はまた、「今治市が、今度市がですね、決めたことでしょ?これ、市ですから、国有地ですらないわけですから、私、影響がしようがないじゃないですか」と抗弁しているが、首相ともなれば、地方政治家にも広い人脈を抱えているはずで、国有地でなくても、影響力を行使できないことの証明とはならない。

 いわば安倍晋三は証明とはならない事実を挙げて疑わしいことは何もしていないことの理由付けにしようとした。国家戦略特区諮問会議決定には首相は“関与できない仕組”となっていることを認識していたはずで、事実その通りの仕組みになっていて、その通りだと相手が理解できるように説明できればの話だが、その説明だけで福島瑞穂を納得させることができたはずだ。

 もし安倍晋三がそういった簡単な答弁を用いていたなら、「福島さんね、特定の人物の名前、あるいは役所の名前を出しているんであれば、何か政治によって歪められているという確証が無ければですね、その人物に対して極めて私は、失礼ですよ」とか、「今ここまであなたがですね、疑惑があるが如くにしているじゃないですか。知人に対して質問しているわけであります。名前を出しているわけじゃないですか。名前を出した。しかも学園の名前も出していますよね。それは生徒の募集にも大きな影響を与えますよ。

 これ、あなた責任取れるんですか。私はそう問いたい。これね、NHKで放送されて、全国放送でされるんですね。私は驚くべきことであります」と感情的にならずとも冷静でいられたはずだ。

 なぜこのように感情的にならざるを得なかったと言うと、首相は“関与できない仕組”は前々からそのようには認識していたわけではなく、疑惑追及回避のために新たに作り出した口実に過ぎないからだ。

 新たに設けた口実で自身の清廉潔白の証拠付けとしなければならないのは疑惑が事実だからに他ならない。

 疑惑が事実ではなく、国家戦略特区諮問会議決定には首相は“関与できない仕組”となっていることが真正な事実なら、国会でその疑惑を最初に追及された時点で反論の最有効な、あるいは疑惑否定の最有効な説明の言葉としなければならなかったろう。

 しなかったこのことからも、逆に疑惑の事実証明にしかならない。

 平山佐知子は福島瑞穂と同じ参議院議員である。加計学園疑惑で質問に立つに際して、過去の国会質疑応答を勉強したのだろうか。勉強していたなら、臨機応変の質問ができたかもしれない。

 もし勉強していて、質問を臨機応変に変えることができなかったとしたら、先行き期待できないことになる。

 平山佐知子はその後も、「加計孝太郎さんが大親友であったことはずっと獣医学部新設したいという思いであったことを当然ながらご存知ですね」とか、「大親友の加計さんが獣医学部新設を希望されていたということは、『新設されればいいなー』と思っていたことはありますか」と答えるはずもないことを理解もせずに愚にもつかない質問を続けた。

 この質問の前に平山佐知子が[加計孝太郎さんとは親友ということで宜しいでしょうか」と質問したとき、安倍晋三から、「親友であることと私が政策に関与したということは全く別でございます」と答弁されている。親友という関係から口利きする構図と、親友でなくても口利きする構図は存在するのだから、単に親友をキーワードにしてストレートに口利きを引き出そうとしても相手は答えるはずはない。

 安倍晋三やその他の国会答弁の矛盾を衝いていくしか手はないように思える。

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