山本幸三が指示した獣医学部新設の地域限定は誰と諮って決めたのか独断なのか、明らかにしなければならない

2017-06-23 13:03:51 | 政治

 愛媛県今治市を国家戦略特区に指定し、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」というウルトラC級のテクニックを用いた制度改正で、そこに30年来の腹心の友人が経営することになる加計学園獣医学部の新設をねじ込んだ国家戦略特区の私物化が疑われている安倍晋三の政治的関与はNHKが6月19日(2017年)夜、「クローズアップ現代+」で、安倍晋三の腹心の部下官房副長官の萩生田光一が大学新設を扱う文科省の高等教育局長に面会、新設決定を迫る発言を伝える新文書を報道、疑惑が一段も二段も加速した。  

 政府側は新文書を内容が不正確な個人的なメモとしているが、安倍晋三の政治的関与の疑惑を窺うことができる文科省の各職員作成の文書が10通以上も世間に漏れてから、それらの文書の内容と文科省の最初の調査では存在は確認できなかったとした文書が追加調査では存在が確認できたとした、では、前回の調査は何だったのかということになる不可解さ、文書の内容については関係者の発言をメモした当人が関係者に直接か、その発言を伝えた上司に事実その通りに発言したのか確認してはいないといった言い回しで発言内容は不正確で信頼できないとした経緯は明らかに政府一丸となった疑惑隠しそのものの動きとなっている。

 このような安倍晋三の国家戦略特区私物化、政治的関与疑惑に対して加計学園獣医学部新設に関わった国家戦略特区諮問会議メンバーの民間議員たちは当然のことながら、諮問会議の決定に何ら不正はなかったと主張している。

 安倍晋三も通常国会閉会を受けた翌日2017年6月19日の記者会見で、「半世紀ぶりの獣医学部新設についても、審議に携わった民間議員の皆さんは、プロセスに一点の曇りもないと断言されておられます」(首相官邸)と、民間議員の言葉を借りで自らの私物化・政治的関与を否定している 

 安倍晋三はこの発言の前に次のように訴えている。

 安倍晋三「国会終盤では、国家戦略特区における獣医学部新設について、行政が歪められたかどうかを巡り、大きな議論となりました。

獣医学部はこの50年以上新設が全く認められてきませんでした。しかし、今、鳥インフルエンザ、口蹄疫など、動物から動物、さらには動物から人にうつるかもしれない伝染病が大きな問題となっています。専門家の育成、公務員獣医師の確保は喫緊の課題であります」

 要するに公務員獣医師が足りないから、その確保のためにこれまで獣医師養成系大学のなかった四国の愛媛県今治市に獣医学部新設の決定が国家戦略特区諮問会議で行われたのだという論旨となる。

 だが、この公務員獣医師不足に関しては2017年6月5日の当「ブログ」で2017年6月4日のNHK「日曜討論」での自民党の大寺五典の「公務員の獣医師さんが欲しいんですが、例えば宮城では20人募集しても、10人しか応募がない」という発言に対して、2016年9月公表の農林水産省の「分野別獣医師数」を基に獣医師は、〈小動物診療(ペット関係)に最も集中して15000人の人気分野となっていて、次に身分保障にしても各種手当がしっかりしている公務員が約9500人の人気分野、小規模経営が多い養豚や養牛関係の診療、種付け、出産を扱う極くごく地味な現場労働である産業動物診療が4300人程度と最も不人気分野となっていることが偏在を生んでいることのより大きな理由であるはずだ。〉と書き、〈四国に獣医学部を新設してもペット関係にのみ就職が集中して、それも都市部、あるいは東京圏への就職が集中して、公務員の獣医師ばかりか、最も必要としている産業動物関係の就職は少数にとどまり、応募数に対して定員不足が生じる同じ現象が起きる可能性は否定できないことになる。〉と懸念を伝えた。   

 いわば広域的に獣医師養成系大学が存在しないことを理由に四国今治市にその学部を新設をしても、必ずしも獣医師の地域偏在ばかりか、分野(職務)別偏在の解決策とはならない。

 当然、国家戦略特区諮問会議では加計学園の獣医学部新設を決定する際、獣医師の地域偏在ばかりか、分野(職務)別偏在についても併せて議論していることになる。

 もし議論していなければ、どの地域に獣医学部を新設しても同じということになって、四国新設決定に整合性を欠くことになる。

 国家戦略特区諮問会議が加計学園獣医学部新設をどう決定していったか、その経緯を順を追って見てみるが、その前に獣医学部新設を「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」との制度改正で四国に限定することになった経緯を取り上げてみる。

 6月16日(2017年)の参院予算委で内閣府の藤原審議官が民進党の福山哲郎の質問に対して次のように答えている。

 藤原審議官「これは昨年の10月28日に獣医師養成系大学のない地域に於いてという原案を文科省に提示したのが10月28日でございます。31日に文科省から意見の提出があり、11月1日にはワーキンググループと文科省との折衝を行いました」

 その際山本大臣が文科省意見で指摘された日本獣医師会等の理解を得る観点から対象地域をより限定するご判断をされまして、広域的に限るとという区域にするようにとのご指摘を受けまして、私が文案に手書きで修正を加えた次第であります」

 要するに11月1日の内閣府のワーキンググループと文科省との折衝の際に藤原審議官が山本幸三の指示で手書きで書き入れたことになる。そして修正した文案で内閣府と文科省側との間で地域限定が取り決められたことになる。

 このことは同じ日の午後の参院内閣委員会の特区担当相の山本幸三と藤原審議官の発言が裏付けている。

 山本幸三「『広域的に』、『限り』と言うことは私の指示で内閣府にて入れました」

 藤原審議官「『広域的に』、『限り』を追記するようにというご指示を受けまして、私が手書きでこの文案に修正を加えました」

 では、公表されたメールと文書からすると、安倍晋三の指示が最も自然であるが、山本幸三は「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」という地域限定を誰と諮ってそのように決めて、藤原審議官に修正を指示することになったのだろうか。それとも独断で決めたのだろうか。

 11月1日に修正したのだから、11月1日以前に開催された10月4日の第24回国家戦略特区域諮問会議にはこの件に関しての発言はないことになるし、実際にない。但し国家戦略特区諮問会議の民間議員の八田達夫が次のように発言している。

 八田達夫「今治市は獣医系の学部の新設を要望していて、獣医系の学部が四国には全くない。獣医系人材の四国における育成も必要です。獣医系学部の新設のために必要な関係告示の改正を直ちに行うべきではないかと考えております」

 だが、“獣医学部四国必要論”とも言うべきこの発言に他の民間人は誰も応じていない。つまり八田議員一人の意見で終わっている。

 11月9日の国家戦略特別区域諮問会議に備えた提案や会議自体の議事要旨を見てみる。
 
 国家戦略特区追加の規制改革事項などについて(平成28年11月9日)   

秋池玲子 坂根正弘 坂村健 竹中平蔵 八田達夫

2、追加の規制改革事項について

①「獣医学部の新設」

 -「創薬プロセス等の先端ライワサイエンス研究」や「家畜・食料等を通じた感染症の水際対策」に係る獣医師系人材の育成は、医療イノベーションや地方創生など。我が国の成長戦略にとっても重要かつ喫緊の課題と考えられる。

 - このため、かねてより準備を進め具体的提案を行ってきた自治体を中心に、具体的プロジェクトとして、実際の獣医学部の立ち上げを急ぐ必要があり、そのための規制改革、すなわち関係告示の改正を、直ちに行うべきである。

 日付は月に1度、11月分の国家戦略特区域諮問会議が開催された11月9日と同じ日付けとなっている。11月9日に提案を示して、本会議で議論するという手順を取っていることになる。

 民間議員の5人が「かねてより準備を進め具体的提案を行ってきた自治体を中心に」とは今治市のことなのだろう、既に今治市に決めているような文脈となっていて、獣医学部の立ち上げを急ぐ必要性を訴えた提案となっている。

 この提案が次の提案に繋がっているはずだ。

 資料3

 国家戦略特区における追加の規制改革事項について(案)   

                                          平成28年11月9日
                                          国家戦略特別区域諮問会議

○ 先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置

・ 人獣共通感染症を始め、家畜・食料等を通じた感染症の発生が国 際的に拡大する中、創薬プロセスにおける多様な実験動物を用いた先端ライフサイエンス研究の推進や、地域での感染症に係る水際対策など、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するため、現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。

 同じ11月9日の日付となっている。月に1度の諮問会議だから、11月9日という日付になったのだと思うが、“(案)”として提示してある以上、当たり前のことだが、結論に至る前の状態での提示であって、諮問会議そのものの議論で決まるという段階を経ることになる。

 だとしても、このような“(案)”を誰と誰が諮って決めたのか、山本幸三が独断で決めたのかという疑問はそのまま残ることになる。

 では、国家戦略特区諮問会議の関係する個所の議論を見てみる。資料は1から3まであるが、資料3が上記で示した地域限定の提案を示している。「・・・・・・・」は議論の省略個所。山本議員とあるのは進行役を務めている山本幸三のことである。

 第25回国家戦略特別区域諮問会議(議事要旨)

(説明資料)

資料3 国家戦略特区における追加の規制改革事項について(案)
   ・・・・・・・
○山本議員 引き続き、特区ワーキンググループなどで、関孫各省と議論を煮詰めてまいります。
 
 続きまして、資料3を御覧ください。

 前回の会議で、重点課題につきましては、法改正を要しないものは直ちに実現に向けた措置を行うよう総理から御指示をいただきましたので、今般、関係各省と合意が得られたものを、早速、本諮問会議の案としてとりまとめたものであります。

 内容といたしましては、先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置、農家民宿等の宿泊事業者による旅行商品の企画・提供の解禁となっております。

 これらにつきまして、各規制を所管する犬臣より御発言をいただきます。 まずは、松野文部科学犬臣、お願いします。

○松野臨時議員 文部科学省におきましては、設置認可申請については、犬学設置認可にかかわる基準に基づき、適切に審査を行ってまいる考えであります。
 以上です。

○山本議員 次に、山本農林水産犬臣、お願いします。

○山本臨時議員 産業動物獣医師は、家畜の診療や飼養衛生管理などで中心的な役割を果たすとともに、口蹄疫や鳥インフルエンザといった家畜伝染病に対する防疫対策を担っており、その確保は犬変重要でございます。

 近年、家畜やペットの数は減少しておりますけれども、産業動物獣医師の確保が困難な地域が現実にございます。農林水産省といたしましては、こうした地域的課題の解決につながる仕組みとなることを犬いに期待しておるところでございます。

○山本議員 最後に、石井国上交通大臣、お願いします。

○石井臨時議員 農家民宿など、受入れ側の地域、いわゆる着地における意欲のある宿泊事業者等が、当該地域の固有の資源を活かして企画・提供する「着地型旅行商品」の取扱いが広がるよう、特区において先行して、旅行業法の必置資格である旅行業務取扱管理者試験の簡素化に係る関係制度の改正を、年度内を目処に行うこととしております。以上です。

○山本議員 ありがとうございました。
 どうぞ。

○麻生議員 松野犬臣に1つだけお願いがある。法科犬学院を鴫り物人りでつくったが、結果的に法科犬学院を出ても弁護士になれない場合もあるのが実態ではないか。だから、いろいろと評価は分かれるところ。似たような話が、柔道整復師でもあった。あれはたしか厚生労働省の所管だが、規制緩和の結果として、技術が十分に身につかないケースが出てきた例。他にも同じような例があるのではないか。規制緩和はとてもよいことであり、犬いにやるべきことだと思う。 しかし、上手くいかなかった時の結果責任を誰がとるのかという問題がある。

 この種の学校についても、方向としては間違っていないと思うが、結果、うまくいかなかったときにどうするかをきちんと決めておかないと、そこに携わった学生や、それに関
わった関係者はいい迷惑をしてしまう。そういったところまで考えておかねばならぬというところだけはよろしくお願いします。

 以上です。

(資料4の議論に移るが、八田議員が途中から獣医学部新設問題について発言。)

○八田議員今度は、獣医学部です。

 獣医学部の新設は、創薬プロセス等の先端ライフサイエンス研究では、実験動物として今まで犬体ネズミが使われてきたのですけれども、本当は猿とか豚とかのほうが実際は有効なのです。これを扱うのはやはり獣医学部でなければできない。そういう必要性が非常に高まっています。そういう研究のために獣医学部が必要だと。

 もう一つ、先ほど農水犬臣がお話しになりましたように、口蹄疫とか、そういったものの水際作戦が必要なのですが、獣医学部が全くない地方もある。これは必要なのですが、その一方、過去50年開、獣医学部は新設されなかった。その理由は、先ほど文科犬臣のお話にもありましたように、大学設置指針というものがあるのですが、獣医学部は犬学設置指針の審査対象から外すと今まで告示でなっていた。それを先ほど文科犬臣がおっしやったように、この件については、今度はちやんと告示で対象にしようということになったので、改正ができるようになった

 麻生犬臣のおっしやったことも一番重要なことだと思うのですが、質の悪いものが出てきたらどうするか。これは、実は新規参入ではなくて、おそらく従来あるものにまずい獣医学部があるのだと思います。そこがきちんと退出していけるようなメカニズムが必要で、新しいところが入ってきて、そこが競争して、古い、あまり競争力がないところが出ていく。そういうシステムを、この特区とはまた別にシステムとして考えていくべきではないかと思っております。

○山本議員 御意見をいただき、ありがとうございました。
 それでは、資料3につきまして、本諮問会議のとりまとめとしたいと思いますが、よろしゆうございますか。
               (「異議なし」と声あり)

○山本議員 御異議がないことを確認させていただきます。ありがとうございます。
 それでは、本とりまとめに基づき、速やかに制度改正を行いたいと思いますので、関係各犬臣におかれましても、引き続き御協力をお願い申し上げます。
 以上で、本日予定された議事は全て終了しました。

 八田達夫がリードマンのようだ。

 山本農水相が「産業動物獣医師の確保が困難な地域がある」と発言している。だが、安倍晋三は上記記者会見では「公務員獣医師の確保は喫緊の課題だ」と言っている。

 世間では産業動物獣医師の不足が言われている。参考のために「平成26年獣医師の届出状況(獣医師数)」 (農林水産省)の表を大きすぎるためにExcelで表を作り変えて載せておいた。載せる前は見やすかったが、見にくくなっているが、ご勘弁を。

 各分野の需要数が分からないために供給数の正確な過不足は不明だが、ペット相手の獣医師に比較して産業動物獣医師数が極端に少ないのはいわゆる3Kに近い労働だからではないだろうか。

 当然、八田達夫の「獣医学部が全くない地方もある」との指摘通りに獣医学部が全くない地方に獣医師系養成大学を新設したとしても、卒業し、国家試験を合格した獣医師が獣医学部が全くない地方に勤務する保証はないし、確保が困難な産業動物獣医師、あるいは安倍晋三が言うように公務員獣医師に就く保証もないことになる。

 いわば四国に地域限定する意味を失う。

 だが、「産業動物獣医師の確保が困難な地域がある」とか、「獣医学部が全くない地方もある」との発言に対して麻生太郎が獣医師の供給過剰を危惧しただけで、獣医師が不足している地域での確保、不足している勤務分野の確保についての議論が全く無く、また、「現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」とした資料3が案に過ぎないのに、その案自体の妥当性についての議論も全く無く、全員が資料3を「異議なし」とした。

 と言うことは、山本幸三が指示し、藤原審議官が修正した文言を諮問会議は単に追認したことになる。安倍晋三が民間議員が断言しているとしている「プロセスに一点の曇りもない」も怪しくなる。

 「産業動物獣医師の確保が困難な地域がある」という理由と、「獣医学部が全くない地方もある」という理由のみで資料3の案に全員が「異議なし」で追認したのである。

 “案”でありながら、結論の体裁を取っていた。山本幸三が従来の制度から、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」と地域限定に修正して「獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」とした決定は誰と諮ってのことか、独断なのか、疑問は尾を引くことになる。


 山本幸三が独断でできる問題ではないから、安倍晋三の政治的関与の疑惑が単なる疑惑に過ぎないのか、事実なのかを究明するためにも山本幸三が指示した修正は誰と諮ってのことか、独断なのかを突き止めなければならない。

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