加計学園:安倍晋三の前川氏は“総理のご意向”に「何で反対しなかったのか」の発言はその存在の逆証明

2017-06-04 11:15:21 | 政治

 安倍晋三が2017年6月1日、〈ニッポン放送の番組収録で、学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設を「総理の意向」とした文書の存在を認めた前川喜平前文部科学事務次官を厳しく批判した。〉との書き出しの記事を「時事ドットコム」記事が同日付で伝えていた。 

 安倍晋三「私の意向かどうかは、確かめようと思えば確かめられる。次官であれば『どうなんですか』と大臣と一緒に私のところに来ればいい。
  
 (前川文科省前事務次官が「行政が歪められた」と主張していることに対して)何でそこで反対しなかったか、不思議でしようがない」

 安倍晋三のこの批判は文科省前川喜平前事務次官が2017年5月25日、東京都内で記者会見を開いて、加計学園新設認定は「総理のご意向」だとする文書の存在を認めたときの発言を捕まえて返す刀に利用したということなのだろう。

 前川前事務次官は5月25日の記者会見で次のように発言している。

 記者「もう一点、先程行政が歪められ、自分自身も責任を感じると言われた。どうして事務次官在任中に前川さんの自身の力で行政の歪みを正せなかったのか」

 前川前事務次官「私の力不足が第一の原因ではないか。もう一つは、極めて政治的な意味合いのある意思決定が必要だったんじゃないかと思います」(毎日新聞/2017年5月25日)  

 文科省の事務方のトップとして文科行政を取り仕切っている以上、在職中に政治の側から通常のルールに反する働きかけがあり、その誘導に同調したならまだしも、意に反しする思いを抱いていたなら、トップの責任として意に反する誘導を阻止すべきだったという批判は当然生じる。

 だが、そうしなかった。その責任は免れ得ない。責任の認め方が軽過ぎるという批判はあるかもしれないが、前川前事務次官は「私の力不足が第一の原因ではないか」とその責任を認めている。

 ただ、その責任を批判する側は、“総理のご意向”で行政が歪められたことを前提としなければならない。例えば官房長官の菅義偉は5月30日午前の記者会見で、前川前事務次官の証言を調査しない理由について、「前川さんが勝手に言っていることに、いちいち政府として答えることはない」と発言している。(asahi.com/2017年5月30日12時27分)

 これは行政が歪められたことを前提としない発言となっている。

 「勝手に言っていること」、いわば行政が歪められた事実が存在しなければ、勝手に言っていることの責任は生じるが、歪められた行政を事務次官としてなぜ正さなかったのかという批判は成り立たないことになる。

 いわば安倍晋三や菅義偉が行政を歪めた事実はないと断定する以上、文科省側からすると行政は歪められなかったことになるのだから、事務次官として歪められた行政をなぜ正さなかったのかと批判することは矛盾そのものとなるからだ。

 安倍晋三も2017年5月29日の参院本会議で行政を歪めた事実はないとの趣旨の断言を行っている。

 安倍晋三「(国家戦略)特区の指定や事業者の選定のプロセスは関係法令に基づき適切に実施しており、圧力が働いたことは一切ない」(asahi.com/2017年14時29分)     

 記事は、〈前川喜平・前文部科学事務次官が25日の記者会見で「行政がゆがめられた」などと語ってから、首相が公の場で問題について説明するのは初めて。〉と解説している。

 要するに加計学園獣医学部新設決定のために文科行政を歪めるような圧力を掛けた事実は一切ないと断言していることになる。当然、そのような事実はないとしている以上、前川前事務次官から行政を歪められたと言われる事実も存在するはずはないとする前提で筋立てた発言を押し通さなければならないことになる。

 先に触れたように行政が歪められた事実が存在しなければ、歪められた行政を事務次官としてなぜ正さなかったのかという批判は成り立たないことになるのと同じ論理で、もし安倍晋三が「総理のご意向」を用いて圧力を事実加えていなかったなら、いわば文科行政を決して歪めていなかったなら、「(国家戦略)特区の指定や事業者の選定のプロセスは関係法令に基づき適切に実施」していたことが事実そのものとなって、「次官であれば『どうなんですか』と大臣と一緒に私のところに来」ようがないし、「そこで」あろうと、どこであろうと、「反対」しようがないことになるからである。

 にも関わらず、安倍晋三のニッポン放送の番組収録での「私の意向かどうかは、確かめようと思えば確かめられる。次官であれば『どうなんですか』と大臣と一緒に私のところに来ればいい」という前段の発言にしても、「何でそこで反対しなかったか、不思議でしようがない」という後段の発言にしても、逆に行政の歪みを前提とした筋立ての発言となっている。

 安倍晋三は自身では「総理のご意向」を用いた圧力を否定しているつもりでも、この発言によって実際には圧力をかけたことを認めているのである。

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