週刊文春に加計学園からのヤミ献金を疑惑を報じられた自民党幹事長代行の下村博文が6月29日(2017年)自民党本部で記者会見を開き、疑惑を全面否定した。
文字起こしした動画から冒頭発言のうちヤミ献金に関する関する発言個所と、記者との質疑応答では記者の声を殆ど聞き取ることができなかった個所を除いた両者の質疑応答と下村博文の答弁のうち、重要と思える個所をここに記載してみる。文飾は当方。
下村博文「本日『週刊文春』7月6日号に『下村博文元文科相 加計学園からヤミ献金200万円』と題する記事が掲載されました。この週刊誌記事を見たマスコミの皆さんから質問が事務所にありましたので、ここで説明をさせて頂きたいと思います。
先ず本件記事のタイトルに『加計学園からヤミ献金200万円』とあり、週刊誌が入手した私の事務所の内部文書によれば、『加計学園は2013年、2014年に各100万円を献金しているが、収支報告書には未記載であり、政治資金規正法の疑いがある』と記事にあります。
しかし学校法人加計学園から政治寄付も政治資金パーティー券の購入もして貰ったことはありません。事務所で確認したところ、2013年も2014年も合計11の個人及び企業がいずれも1者20万円以下でパーティ券を購入したものであり、加計学園が購入したものではないとのことであります。
従って加計学園からのヤミ献金という記事は事実に反します。本件記事は週刊誌に写真が掲載されている『博友会パーティー入金状況』と題するエクセルファイルのリストに加計学園と記載されているところから、加計学園がパーティー券を購入したと指摘するものです。
しかし事務所の平成25年の日報で確認したところ、加計学園の秘書室長が事務所を来訪され、個人及び企業で併せて11名から預かってきた合計100万円の現金を持参したので、その11名の領収書を作成し、渡したことが確認できました。
平成26年も同様に11名のパーティー券の購入であったことを確認しております。週刊誌は誌面に日報の写真も掲載しているので、日報も入手しているようであります。そうであれば、入手した日報を確認すれば、加計学園がパーティー券を購入したわけではないことは理解できるはずでありますが、誌面では何ら触れていません。
以上の通り加計学園にパーティー券を購入頂いた事実はなく、本件記事の『加計学園からのヤミ献金200万円』という記事は全く事実無根であります。取り急ぎ大きな見出しで書かれている加計学園の事実関係をご説明致しました」
冒頭発言ではこれ以外に赤坂の料理屋で加計学園理事長の加計孝太郎と下村が密談したとの文春記事に自民党の塩崎泰久と山本順三が同席したことの理由を述べているが、この箇所の発言を取り上げてみる。
下村博文「平成26年10月17日に塩崎先生、山本順三先生及び理事長と赤坂の料理屋で会見しているとの指摘が(週刊誌には)あります。事務所で確認したところ、私の大臣留任を機にメシを食べようかと言うことになり、私の知り合いを誰でもいいから連れて行くということになり、塩崎先生と山本順三先生をお連れ致しました。
本件記事はだから何だということは書かれておりませんが、記事の前後を読むと、恰も理事長や私から二人の先生方に構造改革特区に関する働きかけをしたのではないかと、読者が誤解するのではないかと思います。
この点、塩崎先生も山本順三先生も愛媛県の国会議員として愛媛県と今治市が特区の申請をしていることは理解をされている先生方であり、しかも私よりも古くから今治市新都市整備改革のことをよく知っている方々であり、私などから特区申請に関する話などする必要もありませんし、事実としてもありませんでした」
塩崎と山本順三が下村博文よりも今治市の特区申請と今治市の新都市整備改革の知識により詳しいから、下村の方から特区申請の話をする必要はないとう理由は成り立つが、塩崎と山本順三が愛媛県を選挙区をしている関係から下村留任祝の会食の形を取った今治市特区指定に向けた作戦会議という可能性は、理由上は十二分に成り立たせ得る。
文科相留任で今後のことを頼むために文科相を補佐する文科副大臣や文科省の事務次官を同席させたという理由なら、十分に納得できるが、同席させた二人共が特区申請をしている愛媛県選出であり、席を設けたホストが愛媛県今治市の特区申請を後押ししている加計学園の理事長というのは余りにもでき過ぎている。
さらに週刊文春の記事に載っている写真は事務所のパソコン内に保存していたデジタルデータの写しで、それを漏洩させたのは今回都議選に立候補の政策秘書を退職した者である疑いがあることを幾つかの証拠を上げて述べて、このような記事の掲載は選挙妨害だと非難、元秘書と週刊誌を名誉毀損と偽計業務妨害罪で告訴する準備を進めていると発言している。
下村博文はパーティー券を購入したという合計11の個人及び企業ついては記者の質問に答えて次のように答えている。
下村博文「これは加計学園の関係の職員、あるいは会社ではないというふうには、あのー、詳しく聞いておりませんが、ただ先程の日報のところを見ますとですね、これは加計学園が、あのー、事務所が、ま、色んな方々にお願いをして加計学園以外の個人や企業からお願いしたと、ま、いうふうに、えー、この報告書の中に書かれているので、ま、そのとおりだというふうにおもいます」
なぜかこれまでの発言と異なって、歯切れが悪くなっている。
次の記者の質問への答弁で加計学園秘書室長のパーティー券購入の形式に触れ、さらにその次の記者への答弁で秘書室長によるパーティー券購入の仲介理由に触れている。
下村博文「つまりその方が窓口になって纏めて、100万とか40万のパーティー券を事務所の方に届けて頂いたと、ま、そういうこと、他にもあります。纏めてと言うことはその企業の中でと言うことではありません」
記者「11人の個人、企業が加計と関係ない人だったりすると、なぜ加計学園の秘書室長が自ら直接100万円を持ってきたのですか」
下村博文「これは、あのー、個人的にですね、私がパーティーをやるのであるなら、協力しましょうという中で、その方の、秘書室長のですね、お知り合いの方々に声をかけて頂いたんであるというふうに理解をしております」、
記者「100万円をわざわざ持ってくるような」
下村博文「室長は東京にはよく来られているようで、うちの事務所にも何回か立ち寄ることもありますから、その中でそういうふうに対応して頂いたんだというふうに理解をしております」
記者が11の個人及び企業の公表を求める。
下村博文「これは11人、11社と申しますか。個人、企業、別々に領収書を切っておりますから、誰かが纏めてということはあったとしても、そこだけバラバラにしたということではないということについては明らかですが、20万円以下については政治資金規正法でパー券については名前を出さなくてもいいことになっていますが、改めてプライバシー等の問題もありますので、確認についてはこちらの方も努力したいと思います」
11人と下村との関係について。
下村博文「11人については私は詳しく存じ上げておりません。調べます。ただ、加計孝太郎さんの名前は入っていないということは聞いております」
再度11の個人及び企業について。
下村博文「これは纏めて貰った方(秘書室長)にですね、領収書を11枚をお出ししていますので、こちらの方からちょっと特定できません。ですから、これはちょっと分かりませんが、調べられるのであれば、調べてみたいというふうに思いますが、プライバシーの問題もありますので、先方の了解が得られれば、調べたいと思いますが、こちらの方では分かりません」
以上、肝心と思える発言を再度ここに記載してみる。
●「学校法人加計学園から政治寄付も政治資金パーティー券の購入もして貰ったことはありません。事務所で確認したところ、2013年も2014年も合計11の個人及び企業がいずれも1者20万円以下でパーティ券を購入したものであり、加計学園が購入したものではないとのことであります。
従って加計学園からのヤミ献金という記事は事実に反します」
●「事務所の平成25年の日報で確認したところ、加計学園の秘書室長が事務所を来訪され、個人及び企業で併せて11名から預かってきた合計100万円の現金を持参したので、その11名の領収書を作成し、渡したことが確認できました。
平成26年も同様に11名のパーティー券の購入であったことを確認しております」
●「加計学園にパーティー券を購入頂いた事実はなく、本件記事の『加計学園からのヤミ献金200万円』という記事は全く事実無根であります」
●「加計学園の関係の職員、あるいは会社ではない」
●「つまりその方が窓口になって纏めて、100万とか40万のパーティー券を事務所の方に届けて頂いたと」
●「個人的にですね、私がパーティーをやるのであるなら、協力しましょうという中で、その方の、秘書室長のですね、お知り合いの方々に声をかけて頂いたんであるというふうに理解をしております」、
●11の個人及び企業について、「これは纏めて貰った方(秘書室長)にですね、領収書を11枚をお出ししていますので、こちらの方からちょっと特定できません」
先ず加計学園の秘書室長が下村が政治資金パーティをやるなら協力しようと申し出て、自らがパーティー券販売と集金の窓口になり、加計学園関係の職員、会社ではない個人、あるいは企業にパーティー券購入の声を掛けて、11口分売り捌くことができたから、集金した100万円ずつを2年に亘って合計200万円を下村の東京の事務所に自ら持参して、事務所の人間に自ら手渡した。
その際、事務所側は「領収書を11枚お出し」している。
だが、下村はパーティー券を購入し、代金を支払った「11の個人及び企業」に関してはどこの誰か分かっているが、プライバシーの関係があるから直ちには公表できないとするなら合理的説明となるが、最初からどこの誰かも分からないとしている。
と言うことは、領収書に宛先を書かずに秘書室長に渡したことになるか、宛先は書いたが、控えは取らない領収書を発行したか、いずれかになる。
2016年10月に安倍政権の高市早苗や菅義偉が政治資金パーティーを開いて、金額も日付も宛名も記入していない領収書を発行することを習慣としていることが明らかになって問題視されたが、政治資金規正法は収入に関わる領収書の発行に関して年月日、金額、宛先の記載を義務付けているが「これを徴し難い事情があるときは、この限りでない」と例外を設けていることから、規正法違反ではないとされた事例がある。
安倍政権の閣僚たちは「徴し難い事情」に政治資金パーティーでは招待客の出入りが多くて、受付で書いていると混雑することを挙げていた。だが、加計学園の秘書室長に渡す領収書は下村の事務所である。忙しいことを理由にすることはできない。
だとしたら、控えを取らない領収書を発行したことになるが、一般常識としてあり得ない。
この領収書の不備も怪しい点だが、もう一つ、加計学園の秘書室長は下村がパーティーをやるならと協力しましょうと自らパーティー券の売り捌きを買って出て、売り捌き相手を自分から探し、その代金まで自分から集めて、そのカネを下村の東京の事務所にまで持参して、手渡した。
加計学園の秘書室長はそれ程にも積極的に協力していたにも関わらず、自分にとってより近しい間柄にある、当然より多くの枚数を売り捌くことができると計算できる加計学園関係者や加計学園関連の企業に関してはパーティー券の売り捌き相手として頭に入れていなかった。それ以外の個人や企業に声を掛けたことになる。
秘書室長と加計学園職員との人間関係はそんなにも薄いのか。
この極端な不自然さは奇怪と言うべきで、どう説明をつけることができるのだろうか。
選挙である候補への投票と他への支持の拡大を頼まれた個人は自分が家族や会社の人間と疎遠な関係になければ、先ず取っ掛かりとして家族や会社の人間に投票の協力を申し出るはずだが、まるで家族と勤め先の会社を抜かして家族以外の人間や他の会社の人間に投票と支持を申し出るような奇怪なまでの不自然さである。
疑惑が真っ向から事実に反していたなら、説明に不自然さも奇怪な点も出てこない。出てくるのは事実に何らかの加工があるからだろう。