加計学園文書:文科相、最初の調査では確認できなかった、再調査で確認は安倍晋三の政治的関与隠蔽の証明

2017-06-16 12:01:04 | 政治

 文科相の松野博一が2017年6月15日午後1時半過ぎから記者会見を開いて、5月19日の記者会見では一旦は調査によって存在は確認できなかったとしていた加計学園関係の文書の追加調査での一部存在を認めた。

 先ず文科省の松野博一が冒頭発言で追加調査に至った理由、今回の調査範囲、調査対象、ヒヤリング対象者の追加等を述べてから、民進党などが指摘した19の文書の内14の文書と同内容の文書を確認、2文書については確認できなかった、残り3文書については法人の利益に関わるという理由付けで、現在のところ、存否を含めて明らかにできないとした。

 この3文書についての発言。

 松野博一「なお三っつの文書については法人の利益に関わるものであり、慎重な対応が必要なことから現在のところ、存否を含め明らかにできないところでございます」

 法人には国家または公共の事務を行うことを存立の目的とする国や地方公共団体等の「公法人」と行政等の公共の目的以外の私的な目的のために設立される私法人(しほうじん)が存在する。

 松野が言っている「法人」が公法人なら、安倍政権の利益に関係するから「存否を含め明らかにできない」ということになり、「私法人」なら、加計学園の利益に関係するから、「存否を含め明らかにできない」と言うことになる。

 両方を含めた意味での「法人」と言うことなら、安倍政権と加計学園の利益に関係するから、「存否を含め明らかにできない」と言うことになる。

 いずれにしても、「存否を含め明らかにできない」と言っていることは、実際には存在すると言っていることになる。調査して存在が確認できなかったなら、「確認できなかった」と言えば片付くことであって、そう言うことができないことを示している。

 但し存在しながら、「確認できなかった」と言った場合、後で明らかにしなければならない事情が生じた場合や文科省内の誰かが内部告発でマスコミにリークした場合に備えなければならない必要上の苦肉の策が、「現在のところ」という条件付きで、いわば今後は明らかにするかもしれないという可能性に含みを持たせて、「存否を含め明らかにできない」と言わざるを得なかったということなのだろう。

 法人の利益を持ち出して、「現在のところ、存否を含め明らかにできない」としている一事を以てしても、安倍晋三の政治的関与を証明している。

 松野博一は最後に「文書は確認できなかった」とした前回調査結果を謝罪し、調査報告に関しては事務方の説明に任せてマイクの前から離れている。

 松野博一「前回調査はその時点に於いて合理的な調査であったと考えるものの、結果として前回調査以外の共有フォルダに於いて文書の存在が確認されるという、前回確認できなかった文書の存在が明らかになったことは大変申し訳なく、私としても、この結果を真摯に受け止めているところでございます。

 調査報告の内容に関しましては事務方に説明させて頂きます」

 「前回調査はその時点に於いて合理的な調査」と言っているが、前回調査で「確認できなかった」としていながら、今回の調査で19の文書の内14文書も、その存在が確認されたということは、それが一国の首相の政治的関与が疑われる案件であったとしても、厳正な調査でそれを明らかにするという厳しい態度を最初から有していたなら徹底的に調査をしたはずで、そうしていたなら、「文書は確認できなかった」という報告はあり得ないことになり、前回の調査報告で今回の調査結果とほぼ同様の答を既に出すことができていたはずだ。。

 要するに前回は徹底的に調査をするという姿勢を持っていなかった。その逆であるということは、前回調査は「文書は確認できなかった」という報告を出すことを目的としていたことになる。

 このことも安倍晋三の政治的関与を証明することになる。

 実際に安倍晋三の政治的関与がなかったなら、全ては逆を行っていたはずだ。

 当然、今回の報告がいくら“徹底的な調査”を装ったとしても、上記例から見ても、安倍晋三の政治的関与の隠蔽を目的とした追加調査ということになる。

 では、松野博一に調査報告の内容の説明を任せられた文科省大臣官房統括審議官の義本博司の発言の中から「獣医学部新設に係る内閣府の伝達事項」と題した文書に記されている「官邸の最高レベルが言っていること」についての説明と、「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」と題した文書に記されている「総理のご意向」についての説明を見てみることにする。

 義本博司「現在は細部まで覚えていないものの、文書の同内容を含むということは、あったとすれば、課長補佐以上が含むような案件でございますので、その文書は課長補佐、自分が作ったメモだろうと考えているということでございました。

 それから本文書について記述されている『官邸の最高レベル』というものが、この資料①にもございますが、書かれている文言がございますけども、これについては細部まで覚えていないものの、ここにそういう記述がある以上はこうした趣旨の発言があったものだということだと。

 但しその真意は分からない、どういうふうな相手がそういうふうなご発言であったか、真意については分からないということでした。

 それからこの文書を作った記載内容については、課長補佐の上司ですとか、協議先の相手に確認して発生したものではないというふうな断りを頂きました」

 先ず「官邸の最高レベル」という文言が記されている文書の全文を見てみる。太字は題名。

 〈獣医学部新設に係る内閣府の伝達事項

○平成30年4月開学を大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。成田市ほど時間は掛けられない。

これは官邸の最高レベルが言っていること。山本大臣も「きちんとやりたい」と言っている。文科省メインで動かないといけないシチュエーションにすでになっている。

○国家戦略特区における獣医学部新設に係る方針については以下2パターンが考えられる。(今週、来週での対応が必要)

・内閣府・文科省・農水省による方針を作成(例:成田市「医学部新設」)

・国家戦略特区諮問会議による方針の決定(例:「民泊」)※諮問会議には厚労大臣も出席。

○今治市分科会において有識者からのヒアリングを実施することも可能。
 
 (成田市分科会では、医師会は呼んでいないが、文科省と厚労省で選んだ有識者の意見を聴取(反対派は呼んでいない)。)

○獣医学部新設を1校に限定するかは政治的判断である。〉――

 文書全体を通して解釈したなら、「官邸の最高レベル」は安倍晋三であって、安倍晋三が平成30年4月の開学に間に合うように加計学園獣医学部新設の決定を急いでいるから、時代劇の悪家老か悪代官よろしく、「良きに図れ」と指図している構図と見ることができる。

 但し安倍晋三の意思を内閣府の誰が代わって「これは官邸の最高レベルが言っていること」と伝言役を務めたかは文書からでは明らかとならない。

 義本博司はこの点を利用する薄汚い情報操作を行った。文書全体を通した解釈は無視して「官邸の最高レベル」という文言だけを取り出し、伝言役の真意などどうでもいいことであるはずなのに、それを伝言した者の具体的な真意は分からないと説明した。

 そして文書をメモという形で作ったのは課長補佐であるが、「文書を作った記載内容については、課長補佐の上司ですとか、協議先の相手に確認して発生したものではないというふうな断りを頂きました」と回りくどい役人言葉を使っているが、要するに文書は課長補佐の上司や協議先相手に確認して、その指示に従って書いたものではない、つまり出所不明の文書とした。

 「官邸の最高レベル」という文言を伝言した者の真意は分からない、文書の出所も分からないからと言って、内容全体が示している不正行為を指示する文書ではないとすることはできない。

 得てして不正行為を指示する文書は露見した場合に備えて、責任を回避できるように、あるいは責任を最小限に留めることができるように、うまく立ち回ってトカゲのシッポ切りで最末端だけを犠牲にして上層部は逃げることができるように具体的な出所元を明らかにしないからだ。

 だが、義本博司は真意不明と出所不明とすることで、暗に不正行為を指示する文書ではないとする薄汚いゴマカシを働いた。

 このようなゴマカシを働かなければならない状況は実際には文書が不正行為を指示する内容であることを何よりも示すことになる。

 次に「総理のご意向」との文言のが入っている文書についての義本博司の説明を見てみるが、その文書を先ず記載してみる。 
 
 〈「大臣ご確認事項に対する内閣府の回答」

○設置の時期については、今治市の区域指定時より[最短距離で規制改革」を前提としたプロセスを踏んでいる状況であり、これは総理のご意向だと聞いている。

○規制緩和措置と大学設置審査は、独立の手続きであり、内閣府は規制緩和部分を担当しているが、大学設置審査は文部科学省。大学設置審査のところで不測の事態(平成30年開学が間に合わないこと)はあり得る話。関係者が納得するのであれば内閣府は困らない。

○「国家戦略特区諮問会議決定」という形にすれば、総理が議長なので、総理からの指示に見えるのではないか。平成30年4月開学に向け、11月上中旬には本件を諮問会議にかける必要あり。

○農水省、厚労省への会議案内等は内閣府で事務的にやるが、前面に立つのは不可能。二省を土俵に上げるのは文部科学省がやるべき。副長官のところに、文部科学省、厚生労働省、農林水産省を呼んで、指示を出してもらえばよいのではないか。

○獣医は告示なので党の手続きは不要。党の手続きについては、文科省と党の関係なので、政調とよく相談して欲しい。以前、官邸から、「内閣」としてやろうとしていることを党の部会で議論するな、と怒られた。党の会議では、内閣府は質疑応答はあり得るがメインでの対応は行わない。

○官房長官、官房長官の補佐官、両副長官、古谷副長官補、和泉総理大臣補佐官等の要人には、「1、2ヶ月単位で議論せざるを得ない状況」と説明してある。〉――

 内閣府の回答の最初の事項は愛媛県今治市への国家戦略特区指定時を起点に規制改革を名目として「最短距離」で獣医学部を設置認可する手続き(=プロセス)を取っているという意味であろう。

 そしてこのことは「総理のご意向だと聞いている」ということは、それが伝聞の形であったとしても、上から順番に下に向かってそういった指示が出されたことを意味する。

 以下の事項は「総理のご意向」を背景とした、その実現に向けたこまごまとした実現案となっている。この実現案から「総理のご意向」を抜かすわけにはできない。

 では、義本博司のこの文書についての説明を見てみる。

 義本博司「この文書については民進党から提出された文書と酷似している内容面でのものが教育専門家の国家戦略特区以外のフォルダに保有されているということが確認をされました。

 但しこの文書自身が見出しが付いているとか、下線が引かれているということで、民進党から頂いたものについては見出しとか下線がないという点に於いて形状構成が異なるということについては分かったということでございます。

  (中略)

 なおこの文書に於いては文書を作成したと考えられます専門教育課の担当の課長補佐にヒヤリングをを行ったところ、現在はこの文書の内容については当時の自分が作ったメモだろうというふうなことで、ここには『総理のご意向』というふうな文言がありますけども、この文書に記載されている以上はこうした趣旨のご発言があったのではないかと思う。但し先程の①の文書と同じように発言者の真意という、この真意は分からないということでございました。

 5番の内容につての記載事項については先程と同様、上司とか協議相手先から確認していないものでございます」

 「民進党提出の文書は見出しや下線がついていませんでしたが、それらが付いている同内容の文書の存在が確認できました」で済む言い回しを「民進党から提出された文書と酷似している内容面」だとか「形状構成が異なる」だとかくどい言い回しで説明している。

 くどい言い回しで勿体振るのが役人の本質となっているのだろう。
 
 義本博司は最初の答弁と同じように文書全体を通して意味しているところを汲み取るのではなく、「総理のご意向」なる文言だけを取り出して、「総理のご意向」だと伝えた本人の「真意は分からない」とすることで、不正行為を指示する内容ではないとゴマカシている。

 伝えた本人の「真意は分からない」くても、安倍晋三の意向は文書に現れている。日本人、特に役人は上位者に対しては権威主義的な下位者志向が強くて上に言いなりの性向を抱えている。当然、総理大臣の意向だということで、その真意にしても、「総理のご意向」だと伝達の役目を各段階で引き受ける面々の真意にしても、各段階毎に詮索などせずに、ただただ無考え・従順に従っただけと言うことは十分にあり得る。

 いわばそれぞれの真意が分からなくても、不正行為の指示はなかったとする証明にはならない。

 不正行為の指示がなかった証明とはならないことを証明に使う。そうしなければならないということは、安倍晋三の政治的関与隠蔽の証明にしかならない。

 要するに追加調査にしても前回調査と同様に安倍晋三の政治的関与の隠蔽を目的としていたに過ぎない。

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