探偵学校の卒業生のもとに、校長の別荘・ムーンズエンド荘での同窓会の案内状が届いた。山の上にあるムーンズエンド荘に行くには、つり橋を渡るしか方法がなく、9人の招待客が別荘にたどり着いた後、つり橋は爆破され、彼らは孤立する。そして、密室など不可能状況下で、1人また1人と殺されていく招待客たち。
アメリカ版・雪の山荘の『そして誰もいなくなった』。
翻訳ミステリは最近読んでないので、とても楽しめた。犯人の手がかりが、登場人物たちの会話や描写の中にちりばめられていて、フェアな作品だと思う。
こういった外部との接触を絶たれ、犯人が自分たちの中にいるだろうという状況下の中、私だったらどういう行動をとるか、クローズドサークル物を読むといつも考える。それぞれ個室になっている自分の部屋にこもるか、互いをけん制しあいながら、一塊になって行動するか。
だいたいのミステリは前者だけど、私は絶対、後者だね。いくら鍵がかかる部屋と言っても、その中に一人でポツンといたら、命が助かっても気が狂いそう。
でも、多くの推理小説では、それぞれ自分の部屋にこもって用心しているはずなのに、次々殺されていく。まあ、そうじゃなかったら、推理小説として成り立たないけど。
私だったら、トイレなども戸口まで集団で移動してもらう。たえず人の目に触れる場所に自分を置いておきたい。寝るのも広間で2~3人ずつ交代で眠る。
そして食事。こういった作品の中で一番違和感を覚えるのが飲食。殺人鬼が徘徊している屋敷の中で、皿に盛った料理をどうして食べる? 封が切ってない、注射針の跡がない缶詰を、缶からじかに食べる。
この『ムーンズエンド荘の殺人』の中でも、最初の遺体が転がり出てきて、その後、すぐに厨房で夕食を用意している。そして一人が毒殺されている。いわんこっちゃない!アホか!あんたらは、それでも探偵か!!
そうそう、探偵学校という存在も不思議な気がした。でもアメリカでは私立探偵はライセンス制だから、専門学校があってもおかしくない。だけど、卒業試験に本当の事件を扱わせるかなぁ。まあ、解決できなかった15年前の卒業試験の事件が、この『ムーンズエンド荘の殺人』の伏線となっているけど。
ファイロ・ヴァンスか…。古いですね。その時代に、私立探偵の免許制ってあったのかな?
私立探偵って、本格推理の分野じゃなくて、ハードボイルドの分野ですよね。
そう、アメリカでは、私立探偵も免許制なんですよね! いつからなんだろう? ハードボイルド派の探偵はライセンス持ってるみたいですが、ファイロ・ヴァンスなんか免許持ってないですよね?(笑)
これはユーモアミステリになりますが、主人公が探偵学校の通信教育を受けている、パーシヴァル・ワイルドの『探偵術教えます』なんてのもありました。