ケイの読書日記

個人が書く書評

「クリスマス・カロル」 チャールズ・ディケンズ著 村岡花子訳 新潮文庫

2020-04-01 18:04:59 | 翻訳もの
 クリスマスが近いわけでもないのに、なぜ「クリスマス・カロル」?と思った人も多いだろう。近くの図書館が、コロナの影響で休館になってしまったので、ブックオフで何か買おうと棚の間をぶらついていたら、まず集英社文庫の「クリスマス・キャロル」が目に留まった。有名だけど、私はまだ未読だったな、やっぱり、こういった世界的な名作は読んでおかなければと思いながらも、クリスマスシーズンでもないから…と他の本を探す。すると、今度は光文社文庫の「クリスマス・キャロル」を見つける。なんだよ、棚に海外文学なんてたいした冊数ないのに不思議だなと、また他の本を探し始めると…またまた新潮文庫の「クリスマス・カロル」に出会ってしまった。
 本の神さまは、今日、私にどうしても「クリスマス・カロル」を読ませたいんだなと、運命を感じ購入。なぜ新潮文庫にしたかというと、村岡花子が訳者だったから。

 読んでみて、深く感銘を受ける。19世紀中ごろの作品だが、さすが100年以上も読み継がれている作品だけの事はある。素直に素晴らしいと思う。

 金の亡者・スクルージ老人は、クリスマスの前日、貧しい人達への寄付を集めに来た紳士たちを追い払い、クリスマスに一緒に食事をどうですかと誘いに来た甥っ子の相手をせず、使用人の書記がクリスマス当日休みたいという当然の要求に、嫌みたらたらで返答する。
 スクルージ老人自身は、金があるのにもかかわらず、鵞鳥もケーキもプディングも用意しない部屋で、おかゆをすすろうと家に帰ると、商売上の相棒だったが7年前に死んだマーレイ老人の亡霊と対面する。
 マーレイ老人はスクルージ老人に、第1、第2、第3の幽霊が来て、自分の運命を変えるチャンスがあると告げる。そのとおり、スクルージ老人のもとには、過去の幽霊、現在の幽霊、未来の幽霊が現れ…。

 この小説には、19世紀半ばのイギリスのクリスマス風景が描かれているが、その素晴らしい事と言ったら!! クリスティのミステリにもキラキラしたお金持ち家庭のクリスマスの情景描写があって、うっとりする。こっちの「クリスマス・カロル」では、もっと貧しい家庭の様子だが、それでも本当に美しい。
 貧しいながらも、精いっぱい着飾って、ご馳走を作って、親せきや友人や住み込みで働いている子どもたちが集まって来て、歌や踊りゲームなどで楽しく過ごす。

 そして、未来の幽霊が見せた物とは…。孤独に死んでいく老人は珍しくないが、死体を発見した家政婦や洗濯女たちが、死人に身寄りがないのを良いことに、シーツや毛布やカーテンや衣類を持ち出し、古着屋に売るのは当時よくあった話なんだろう。それでも、死体を埋葬するため上等なシャツを着せてあるのに、どうせ埋められるんだからと、はぎ取る女は凄い!!おい!地獄に堕ちるぞ!

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