日経新聞のWebサイトに、なかなか興味深いインタビュー記事があった。
「私のリーダー論」という、企画連載だ。
今回は、東京芸大・学長の日比野克彦さんだ。
日経新聞:東京芸術大学長・日比野克彦氏 自分らしさは他者が生む(上)
日比野克彦さんと言えば、1980年代には「段ボールアート」として、話題となった人物だ。
そして、当時から積極的にメディアに登場し、作品についての情報発信をされてきた方でもある。
当時は、日比野さんだけではなく、現在はルイ・ヴィトンとコラボレーションをしている村上隆さんや、「不機嫌な女の子」という作品で一躍注目されるようになった、奈良美智さんなどがいらっしゃる。
日比野さんや村上さん、奈良さん等よりも少し上の世代では「うまへたイラスト」として話題になった、安西水丸さん等が挙げられるかもしれない。
当時は、学校で習うような美術館で静かに鑑賞する芸術ではなく、共感をしたり違和感を感じながらも「なぜ?」と感じるようなアートが、日常的に話題となった時代でもあったような気がしている。
その意味で、日比野さんをはじめとする芸術家たちは、「アートを身近にした」のでは?と、感じている。
その日比野さんも、出身大学の学長をされるようになった。
そして、今回の「自分らしぃさは他者が生む」という言葉に、共感できる部分がある。
芸術の世界は、常にその「評価」は他者にゆだねられてきた。
言い換えれば「自分らしさの表現は、他者の眼・価値観によって決められる」という分野でもあるのだ。
「自分の好きなコトをしていれば、それでよい」という訳ではない、ということでもある。
このような表現をすると「芸術を冒とくしているのか?」とか「商業主義的である」と、指摘されると思うのだが、後世に残る芸術作品は他者がその価値を感じ・認め続けてきたからこそ、今現在も芸術作品として残っている、のではないだろうか?
そう考えると、数年前「自己啓発セミナー」のようなところで盛んに言われた「セルフブランディング」って、何だったのだろう?と、思ってしまうのだ。
この時流行ったのは「自己価値を見つけ、他者との差別化をし、自分の価値を高める」というニュアンスがあったのでは?と、感じていた。
個人的には、個人で仕業をされている方にとっては「セルフブランディング」という考えは、必要だとは考えていたが、当時のように一般企業に勤める人たちにまで「セルフブランディング」が必要なのか?という、疑問を常に持っていた。
というのは、企業という組織の中で「自分の得意分野はこれです!」と言われても、その仕事を担当てきるのか?ということとは、別だからだ。
いくら自分で「この仕事をやりたいです」と、手を上げても、それを決めるのは本人ではなく、上司であったり周囲の人達だからだ。
むしろ「自分の得意分野」に執着してしまうと、自らの可能性を狭めてしまうことに繋がってしまう、と考えていた。
人というのは、とても複雑な思考と行動から成り立っている。
そしてより複雑な思考を持つ為には、「自分の可能性を狭めない」ということもまた重要なのだと思う。
とすれば「自分らしさ」を自分から強調するあまり、自分の可能性を狭めてしまうのでは?
日比野さんが言われる「自分らしさ」の中には、他者が感じ・認める未来の可能性も含まれているように考えるのだ。
因みに企業における「ブランディング」は、「提供する商品・サービスの在り方」から、「他の商品やサービスと差別化を図る」という意味を含んでいる。
商品・サービスが企画された時から「理想や市場での在り方」の方向性を、ザックリと決めているのだ。
それができるのは、市場という大海原に出ていない(=他者とのかかわりがない)ためだ。
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