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【M-5撮影特報】琵琶湖飛行艇救難訓練-南海トラフ地震想定南海レスキュー事前訓練(2024-10-17)

2024-10-18 07:00:08 | 詳報 陸海空自衛隊関連行事
■US-2,琵琶湖発着
 琵琶湖、淡水湖に飛行艇が発着するのは旧海軍時代を除けば自衛隊では史上初めての事となります。

 海上自衛隊のUS-2飛行艇が琵琶湖に訓練にて初めて離着水訓練を実施しました。これは中部方面隊により来年1月に予定されている南海レスキュー2025に備えての事前訓練として行われたものです。数日間悪天候をはさんで漸く実施できました。

 飛行艇、旧海軍では1942年に二式大型飛行艇が山中湖離着水を実施していますが海上自衛隊としては初めて、もちろんPS-1対潜飛行艇もUS-1救難飛行艇もUS-1A救難飛行艇も太平洋では厳しい訓練を積んでいますが、淡水の琵琶湖への発着は初めて。

 琵琶湖に飛行艇を降ろす、これは南海レスキューにおいて想定される現代日本最大の脅威、南海トラフ地震に備えるためのものです。南海トラフ地震においては想定されるだけでも梅田駅や大阪駅、名古屋駅などは、残念ながら津波により水没します。

 関西国際空港、神戸空港、中部国際空港、小松島飛行場、徳島空港、遺憾ながら西日本の飛行場は沿岸部もしくは海上を埋め立てて造成された空港が多く、その多くは2011年東日本大震災における仙台空港のように津波の直撃を受ける懸念があるのだ。

 US-2飛行艇の配備される岩国航空基地も沿岸にはあるのですが、東日本大震災における横須賀基地のように、津波の直撃を避けられる瀬戸内海に立地しているため、最悪の状況では飛行艇が重要な任務を担うことがある、具体的には負傷者の搬送だ。

 琵琶湖での発着訓練、この背景には仮に西日本全域の飛行場が機能不随に陥った場合でも海上は、もちろん浮遊物の懸念を解決する必要はおおきいのだけれども、高台の伊丹空港や八尾空港と南紀白浜空港を除いて空港空白地に唯一発着できる固定翼機だ。

 琵琶湖に発着するのは、例えば西日本の被災地において、数十分が左右する人命を救助するために、大津市が沿岸にある琵琶湖、大津市と京都市は地下鉄で繋がっているのですが、ここに降ろすことで救える人命があるかもしれない、という厳しい状況への備え。

 京阪神地域ひとつとっても、南海トラフ地震は全割れの最大規模の発災では大阪市や名古屋市で震度七という想定、すると大阪で引き受けられない負傷者を飛行艇を使い東京やいっそ日本海側、北海道など無事な地域へ搬送する必要性がでてきます。

 US-2飛行艇の現在の保有数は6機、定数は7機ということですが初号機が除籍されたことで現在定数われとなっています。飛行艇、新造される機体は関連企業の撤退などで部品の多くが特注となり、製造費用は700億円、戦車大隊2個分に相当するという。

 外海に発着できる飛行艇は、例えば概要におけるUUV無人潜水艇の運用母機としてなど、救難飛行艇に限られない幅広い運用が可能で、いや南西地域の防衛を含めると戦闘機搭乗員の救出を考えても、もう1個、飛行隊があってもいいとおもうのだけれども。

 救難飛行艇という人命救助、数時間で失われる人命を救う、その本来任務ひとつとっても、南海トラフ地震では、空港が使用不能となった際の最後の選択肢として存在感が大きいわけです。今回琵琶湖での発着訓練はこうした視点で行われました。

 南海トラフ地震、全割れ、想像はしたくないほどの被害が必至なのです、けれどももし、というよりも半割れによる複数の巨大地震で済むかは地学上の確率論になってしまうのですが、発災したとき、手のうちようのない状況を回避すべく、実施されたのですね。

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1 コメント

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Unknown (通りすがり)
2024-10-20 09:14:04
東日本大震災でも津波による漂流物のためUS-2には出番がありませんでした
一方でヘリは頼りになる存在でした
その経験を踏まえると南海トラフ地震に備えるならUS-2を増備するよりヘリを増備した方が良いのは明らかでしょう
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