北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:UH-X次期多用途ヘリコプターを考える⑥ EC-225中型輸送ヘリの導入

2014-05-01 22:09:18 | 先端軍事テクノロジー

◆VIPヘリコプターと同型機を大量取得する案
 UH-Xに動きが当たようですが、陸上自衛隊のUH-Xに関する特集、こちらもまだ続いています。NH-90とUH-60を提案しましたが、既存機から提案を行ってみましょう。
 Uimg_2043 陸上自衛隊は現在要人輸送ヘリコプターとしてEC-225を運用中です。さて、VIPヘリコプターは使い慣れた機体が望ましい、これは陸上自衛隊が要人輸送機に従来のV-107の後継としてフランス製AS-332を導入した際に識者から寄せられた言葉の一つです。それは、V-107とAS-332を比較し、ローターの回転様式や操縦席配置が根本的に別物であるのに加え、陸上自衛隊はV-107に非常に長い経験と実績を有していました。
 Uaimg_7303 全く新規の機体であったスーパーピューマAS-332と比べ、従来のV-107であれば運用実績は川崎重工でライセンス生産が長期間実施され、海外へも輸出されていた点とともに、陸海空自衛隊が輸送ヘリコプターとして、掃海ヘリコプターとして、救難ヘリコプターとして、運用した実績に対しAS-332は全く新しい機体であったことも、一種懸念材料であったのでしょう。もっとも陸上自衛隊は3機の要人輸送用ヘリコプターAS-332を完全に使いこなし、併せて後継機に改良型であるEC-225を導入しています。
Uimg_2076  他方で、EC-225について、その性能を見てみますと航続距離は857kmと非常に大きく、25名の兵員を同時輸送可能であることに加え、重迫撃砲や高機動車程度の車両を空輸可能で、更に取得費用は陸上自衛隊向けのVIP仕様の場合でもUH-60JAと同程度に抑えられています。それならば、多用途ヘリコプターとして方面ヘリコプター隊や一部旅団のヘリコプター隊多用途ヘリコプター飛行隊へ、このEC-225を充当してはどうでしょうか。
Uimg_2888  性能面としてはUH-1J多用途ヘリコプターと比較して人員輸送能力で倍程度、UH-1Jではジープの空輸も実用性に難ありとされてきたのに対し高機動車程度を空輸できるEC-225の導入提案は、総能面でむしろ過大ではないか、との疑念を持たれるかもしれませんが、確かに師団飛行隊の整備能力には手に余るものがあるでしょう。しかし、本稿では方面ヘリコプター隊や一部旅団のヘリコプター隊多用途ヘリコプター飛行隊へ、と限定しているのはこのためです。
Uimg_1914  陸上自衛隊はUH-1Jの後継機選定を進めなければならない状況と同時に、より多数が装備されているOH-6D観測ヘリコプターの後継機を選定せねばなりません。そこで、方面ヘリコプター隊や一部旅団のヘリコプター隊多用途ヘリコプター飛行隊へ比較的大型の多用途ヘリコプターを装備させ、師団飛行隊と旅団飛行隊に方面隊の連絡ヘリコプターはHU-1B程度、OH-6DとUH-1Jの中間程度の航空機を充て、一方で多用途ヘリコプターに大型の機体を充てられないものか、と考えましたしだい。
Uimg_3602  EC-225は多用途ヘリコプターとして申し分ありません、V-107に比肩する輸送力を持ちつつ設計が新しいですので整備性など配慮されています。方面ヘリコプター隊や一部旅団のヘリコプター隊多用途ヘリコプター飛行隊であればヘリコプター野整備隊として充実した整備支援を受けられるわけですので、UH-1Jと比較し整備需要の大きさはこの際ある程度ならば度外視できます。意峰で輸送能力は旅団ヘリコプター隊の飛行隊所要8機であれば、同時に人員のみで200名を空輸可能ですので、ほぼ一個中隊の人員を空輸可能となりますし、車両の空輸能力も大きくなります。方面ヘリコプター隊のUH-1Jについて20機を16機で置き換えたとしても単純計算でほぼ二倍の空輸能力を持つこととなる。
Uimg_7959  併せて、陸上自衛隊の航空装備体系に関するOH-1観測ヘリコプター派生型の多用途ヘリ御プター導入への要求に対し、EC-225の導入は間接的に応える事となります。これは、所謂川崎重工方式UH-Xの開発期間が一定程度掛かるとした前提で、可動機数、稼動というよりも可動とするべきでしょう、この規模を維持するために、方面航空隊のUH-1Jと師団旅団飛行隊のUH-1Jを一機種で置き換えるのではなく、方面航空隊のUH-1JをEC-225で、師団旅団飛行隊のUH-1JとOH-6Dとともに川崎重工方式UH-Xにて置き換える事とすればよい、ということ。
Uimg_8294_1  川崎重工方式UH-Xが開発に着手し試作機と量産機に実用機が部隊使用認可を受け完成するまでの期間、EC-225を以て老朽化したUH-1Jを順番に代替し、比較的機齢の若い機体を順次師団飛行隊と旅団飛行隊に集中、川崎重工方式UH-Xの完成を待ってEC-225は生産を終了し、UH-X,この場合はUH-2となるのでしょうか、こちらに転換してゆけば良いと考えるところ。
Uimg_8327_1  逆に川崎重工方式UH-XをUH-1Jの後継としてだけでなく観測ヘリコプターであるOH-6Dをも川崎重工方式UH-Xにより置き換えることは、こちらも能力過大ではないか、という指摘はあるかもしれません。更に機体規模が大型化することは整備負担の増大を意味します。ただ、多用途ヘリコプターの任務に観測ヘリコプターの任務を付与する運用例は米海兵隊のUH-1Yにより実例がありますし、整備負担面は元々OH-1観測ヘリコプターを大量調達する検討の際に、師団飛行隊へOH-1を配備する構想はあったわけですので、想定外とは決して言いきれません。
Uimg_1417  仮に方面航空隊にのみEC-225を装備するとした場合、20機のUH-1Jを16機のEC-225により置き換え、8機づつ飛行隊を編成するとします。この場合の整備所要は5個方面隊で80機、更に要人輸送用を加え83機となりますが、年間8機のEC-225を取得するとした場合、中期防2期10年間で整備可能となります。EC-225は航続距離857km、巡航速度:261km/h、方面航空隊の対戦車ヘリコプター隊へAH-64D戦闘ヘリコプターの調達が再開された場合にも、随伴し協同することが可能でしょう。
Uimg_3638  性能面では、方面航空隊に課せられる多方面への増援任務に十分対応しますし、尖閣諸島や先島諸島などへの着上陸事案に際しても九州の駐屯地を拠点として、そのまま沖縄本島へ飛行することが可能であるほか、沖縄本島から先島諸島か尖閣諸島へ往復飛行が可能です。機体は一定程度の防弾性能を付与されていますし、必要であれば機関砲にロケット弾をはじめとした武装ヘリコプターとしての運用も可能です。
Uimg_8279_1  EC-225は要人輸送ヘリコプターとして運用されており、多用途ヘリコプターとしては能力過大だ、と指摘された際には、1:1で置き換えるのではなく20機のUH-1Jを16機のEC-225により置き換えている、と前置きしたうえで、VIPヘリコプターは使い慣れた機体が望ましい、という論理を持ち出すことで、ある程度説得力は増すように考えます。EC-225,一つの選択肢と言えないでしょうか。

北大路機関:はるな

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