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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:装甲車は何故必要なのか?:第七回・・・装甲車両に影響を与える遠隔銃塔RWS

2015-02-09 21:56:17 | 防衛・安全保障
◆RWS追加による装甲車強化
 近年の装甲車の新動向として、装甲車と装甲戦闘車の中間を担う区分が誕生します。

 具体的には遠隔操作銃塔RWSの開発です。装甲車と装甲戦闘車の大きな区分は、火力と機動力に防御力が発展した部分で、装甲戦闘車と装甲車の火力の面での最大の相違は機関銃と機関砲の責任交戦距離の相違で、続いて機動力の差異が火力を運用面と投射面双方で補う構図となります。

 装甲車は、部分的にオーストラリアのM-113FSVやオランダのYPR-765に代表されるように砲塔を追加搭載するものが開発されていますが、装甲戦闘車の定義を乗車戦闘の可否として、車内から射撃できるかどうかを分水嶺としていた頃には、例えば車内から射撃可能な73式装甲車をその範疇に部分的に入る、とした論調もありました。

 一方で機動力は装甲戦闘車の比較的重要な要素であり、戦車に随伴する装甲戦闘車には戦車並の不整地とパ能力が求められ、駆動系やエンジン出力に一定以上の余裕があります。逆に装甲車に砲塔を搭載した装甲車で装甲戦闘車の代用と使用と企図したものの出力が戦車に充分随伴できず、後日に装甲戦闘車を導入したという事例が、スペインやオランダであります。

 乗車戦闘に装甲戦闘車の定義を見出そうとする場合、上記の通り不整地突破能力の差異が戦車に協同できるのかという攻撃要素や機動防御などの運用面で、つまり戦車についていけるか行けないのかという部分で出てくるのですけれども、併せて搭載火器が命中するのか、という問題はでてきます。

 車載機銃を車内から投射できたとしても、もちろん中口径機関砲を搭載したものでも、射撃し目標に命中させる機構が無ければ意味がありません。この部分について、砲塔の後日搭載や砲塔のみの増備という選択肢があった訳なのですが、より容易な改修としてRWSを追加搭載するものが出てきている。これは治安作戦等で火力支援に威力を発揮していることがアフガニスタンやイラク等で指摘されていますが、防御作戦においても一定の位置を占めます。

 RWSは、ストライカー装甲車に搭載され我が国でも一定の知名度を有していますが、暗視装置と弾道コンピュータを搭載したものであり、機関砲では無く機関銃を搭載して着るものが基本ではありますが、重機関銃、具体的にはM-2/12.7mm重機関銃の有効射程2000mをかなりの精度により投射することが可能となるもの。

 これによって軽装甲車や従来型の装甲兵員輸送車であっても、責任交戦距離は大きくなり、火器管制装置が新しい分、初期の装甲戦闘車と同程度の能力を、夜間に限れば凌駕するといえるかもしれません。もっとも、装甲戦闘車は初期のマルダー等で重装甲のものがありますので、重機関銃では歯が立ちませんが。

 更に、監視能力が強化されたという事だけを理解し、いち早く敵を発見しようと車体を遮蔽から出す事で、相手に近代的な監視能力があった場合、逆に捕捉され強力な一撃を受ける場合がありますので、防御力などは装甲戦闘車とは違いがあり、指揮官は此処を認識しなければなりませんし、但し書きが多いのですけれども。

 この通り、重機関銃であっても貫徹力には限界がありますので、投射できるとしても威力が対歩兵用と対装甲用では大きく異なりますので責任交戦距離は必ずしも射程に応じたものではありませんが、RWSが普及はじめた2000年代に入ると、目標情報をデジタル戦域情報管理において共有化するC4I技術が発達し、目標情報そのものの意義が大きくなりました。

 極端な表現ですが、一世代前の戦車などを相手に夜間などの条件が有利な状況い限り、目標をRWSの監視能力の高さにより先制し情報優位を得て、共同交戦能力により対処することも出来るわけです。情報を収集し打撃を与える手段の増大ということで、装甲車と装甲車の中間に新しい区分が出来た、といえるやもしれあせん。

北大路機関:はるな
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コメント (2)
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