◆親ロ派武装勢力停戦履行成るか?
昨年初頭より続くウクライナ危機は東部ウクライナでの内戦状態へ発展し間もなく一年が経ちます。
ウクライナ、東欧とロシアに隣接する独立国ですが、ソビエト連邦時代にはその一部であり、一方で第二次世界大戦中には親ドイツ住民が反共産軍を編成するなどソ連の一部でありながら欧州との関係を重視するなど、現在のウクライナ危機とウクライナ東部紛争に続く、親欧州と親ロシアに国論が二分されることは多々続いてきました。
この中で、ウクライナでは大統領選挙のたびにこの摩擦が表面化する事例があり、2010年の選挙では親ロシア派の支持を受けヴィクトルヤヌコーヴィチ大統領が就任していますが、大統領はEUとの政治貿易共同協定を調印直前にロシアからの外交圧力により反故とし、これを契機として首都キエフにおいて大規模な暴動が発生、暴動は武装闘争へ展開したため、大統領はウクライナからロシアへ脱出することとなりました。
ロシア政府はウクライナとの関係強化を非常に重視しています、特に欧州へお過度な接近を警戒しており、この背景にはウクライナ領内にあったクリミア半島にロシア黒海艦隊基地があり、黒海艦隊は欧州の地中海へ結ぶ戦略上の要衝となっているため、この拠点を維持できるかが、ロシアの対外的な能力、中東や地中海とアフリカ地域への影響力の行使を左右するためです。ウクライナ暴動が激化し、ヴィクトルヤヌコーヴィチ大統領がロシアへ出国しますと、ロシア軍は海軍歩兵部隊等を動員し、クリミア半島を武力制圧、元々クリミア半島にはソ連時代よりロシア系住民が多く、ロシア系住民居住地域を中心に実施した住民投票を以てロシア領域内へ併合を一方的に宣言します。
ロシアの行動に欧州連合は、我が国やアメリカとともに強い非難声明を出すと共に経済制裁を開始しました。こうした経済措置や非難声明に対しロシア軍は東欧のNATO加盟国周辺での大規模演習を行いNATOを牽制すると共に、ロシア系住民の多い東部ウクライナに対し住民を煽動もしくは民兵の訓練と派遣、一説には特殊部隊の越境派遣を行ったとされます。事態が大きく動いたのは2014年4月7日で親ロシア派の武装勢力がウクライナのドネツィク州議会議事堂を占拠し一方的にドネツク人民共和国の建国を宣言し、ウクライナからの分離独立とロシアからの軍事支援を要求、ウクライナ東部において大規模な紛争が勃発しました。加えて親ロシア派武装勢力ドンバス人民義勇軍など、武装勢力の数は増大、紛争は一挙に激化します。
7月17日にはマレーシア航空17便がウクライナ東部上空で撃墜される事件が発生、ロシア製9K37中距離地対空ミサイルが使用され、ドネツク人民共和国民兵によるウクライナ軍装備品を奪取し使用した疑念やロシア軍正規部隊の介入による撃墜及びロシア側の主張としてウクライナ軍による誤射等が指摘され、9K37は陸上自衛隊の改良ホークに匹敵する装備であるため、簡単に使用できる装備とは異なる事から世界を驚かせました。ロシア領内からのウクライナ軍への砲兵射撃などが加えられているとの指摘があり、今年にはいり、東部ウクライナ国内での民兵部隊の攻勢が激化し、住民へ昨年からの戦闘を含め夥しい被害が出ています。
今回の停戦合意は、昨年2月17日にEUを中心に停戦交渉が行われたものの、今回の事案へクリミア半島併合以来大きく関与しているロシアのプーチン大統領が調印を拒否したため反故となった停戦交渉の焼き直しで、現地時間15日0000時での双方の戦闘停止が記されています。元々の原因は、欧州に接近するウクライナの姿勢の転換というウクライナでの国内問題に端を発した暴動により大統領がロシアへ退避したことで危機となりました。一方でウクライナに対する欧州連合の立ち位置が明確とならず、NATOも危機に際し必要な抑止力をロシアへ行使しなかったことで拡大、しかし一定以上のロシアの拡大を後になり阻止しようとしたことで問題が激化しました。放置すれば1968年のプラハの春と並ぶ危機が発生した可能性があり、現状は折衷した状況ともいえるのですが、今回の停戦合意、何処まで履行されるのか、強い関心を以て見守りたいところです。
北大路機関:はるな
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
昨年初頭より続くウクライナ危機は東部ウクライナでの内戦状態へ発展し間もなく一年が経ちます。
ウクライナ、東欧とロシアに隣接する独立国ですが、ソビエト連邦時代にはその一部であり、一方で第二次世界大戦中には親ドイツ住民が反共産軍を編成するなどソ連の一部でありながら欧州との関係を重視するなど、現在のウクライナ危機とウクライナ東部紛争に続く、親欧州と親ロシアに国論が二分されることは多々続いてきました。
この中で、ウクライナでは大統領選挙のたびにこの摩擦が表面化する事例があり、2010年の選挙では親ロシア派の支持を受けヴィクトルヤヌコーヴィチ大統領が就任していますが、大統領はEUとの政治貿易共同協定を調印直前にロシアからの外交圧力により反故とし、これを契機として首都キエフにおいて大規模な暴動が発生、暴動は武装闘争へ展開したため、大統領はウクライナからロシアへ脱出することとなりました。
ロシア政府はウクライナとの関係強化を非常に重視しています、特に欧州へお過度な接近を警戒しており、この背景にはウクライナ領内にあったクリミア半島にロシア黒海艦隊基地があり、黒海艦隊は欧州の地中海へ結ぶ戦略上の要衝となっているため、この拠点を維持できるかが、ロシアの対外的な能力、中東や地中海とアフリカ地域への影響力の行使を左右するためです。ウクライナ暴動が激化し、ヴィクトルヤヌコーヴィチ大統領がロシアへ出国しますと、ロシア軍は海軍歩兵部隊等を動員し、クリミア半島を武力制圧、元々クリミア半島にはソ連時代よりロシア系住民が多く、ロシア系住民居住地域を中心に実施した住民投票を以てロシア領域内へ併合を一方的に宣言します。
ロシアの行動に欧州連合は、我が国やアメリカとともに強い非難声明を出すと共に経済制裁を開始しました。こうした経済措置や非難声明に対しロシア軍は東欧のNATO加盟国周辺での大規模演習を行いNATOを牽制すると共に、ロシア系住民の多い東部ウクライナに対し住民を煽動もしくは民兵の訓練と派遣、一説には特殊部隊の越境派遣を行ったとされます。事態が大きく動いたのは2014年4月7日で親ロシア派の武装勢力がウクライナのドネツィク州議会議事堂を占拠し一方的にドネツク人民共和国の建国を宣言し、ウクライナからの分離独立とロシアからの軍事支援を要求、ウクライナ東部において大規模な紛争が勃発しました。加えて親ロシア派武装勢力ドンバス人民義勇軍など、武装勢力の数は増大、紛争は一挙に激化します。
7月17日にはマレーシア航空17便がウクライナ東部上空で撃墜される事件が発生、ロシア製9K37中距離地対空ミサイルが使用され、ドネツク人民共和国民兵によるウクライナ軍装備品を奪取し使用した疑念やロシア軍正規部隊の介入による撃墜及びロシア側の主張としてウクライナ軍による誤射等が指摘され、9K37は陸上自衛隊の改良ホークに匹敵する装備であるため、簡単に使用できる装備とは異なる事から世界を驚かせました。ロシア領内からのウクライナ軍への砲兵射撃などが加えられているとの指摘があり、今年にはいり、東部ウクライナ国内での民兵部隊の攻勢が激化し、住民へ昨年からの戦闘を含め夥しい被害が出ています。
今回の停戦合意は、昨年2月17日にEUを中心に停戦交渉が行われたものの、今回の事案へクリミア半島併合以来大きく関与しているロシアのプーチン大統領が調印を拒否したため反故となった停戦交渉の焼き直しで、現地時間15日0000時での双方の戦闘停止が記されています。元々の原因は、欧州に接近するウクライナの姿勢の転換というウクライナでの国内問題に端を発した暴動により大統領がロシアへ退避したことで危機となりました。一方でウクライナに対する欧州連合の立ち位置が明確とならず、NATOも危機に際し必要な抑止力をロシアへ行使しなかったことで拡大、しかし一定以上のロシアの拡大を後になり阻止しようとしたことで問題が激化しました。放置すれば1968年のプラハの春と並ぶ危機が発生した可能性があり、現状は折衷した状況ともいえるのですが、今回の停戦合意、何処まで履行されるのか、強い関心を以て見守りたいところです。
北大路機関:はるな
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