◆共和党は大規模介入を主張
アメリカのオバマ大統領は10日、イラクシリアのイスラム国ISILに対し地上軍の限定派遣を含む決議案を議会へ提出しました。

イラクシリア領内において一定地域を占領し周辺国へ脅威を高めているISILに対し現在、米軍は有志連合とともに鉱区攻撃を行い、ISILと戦うイラク正規軍やクルド人民兵部隊及びシリア反政府武装勢力などの支援を行っています。今回の決議案はこの行動をさらに拡大する、というもの。

イスラム国掃討へは、米軍地上部隊の派遣が必要と考えられています。こういうのも武装勢力は航空攻撃により移動や攻撃などの積極的行動は封じられていますが、航空機は一定の時間を経過すれば燃料の関係上その空域を去らなければなりません、無人偵察機などが継続的に地域を監視しているもののそれにも限界があります。

従って、望ましいのはISILの武装勢力を順次地上部隊により撃破し、航空支援の下で占領地域をISILの占領下から解放することが必要でして、2013年にフランス軍はマリでのいるラム系武装営力に対し大量の地上部隊を有志連合とともに急速派遣し一気呵成に1000km以上を進撃し、短期間で制圧した事例もありました。
今回オバマ大統領は航空攻撃を引き続き強化すると共に、特殊部隊による捕虜奪還体制を確立し墜落航空機搭乗員救出の体制を固めると共にISIL指導者に対する特殊作戦部隊による制圧捕縛任務等を想定し、限定的な地上部隊の派遣を盛り込んだ決議を議会へ提出しているのですが、共和党は懐疑的で、軍事行動に過度な制限を設ければ長期化し成果が得られない点を強調しています。

オバマ大統領が地上軍の大規模派遣に消極的な点、ISILは戦車などを殆ど有さず掠奪した装備が故障するまで動かしている程度、航空戦力についても皆無です。したがって、ストライカー旅団数個と空中機動師団の派遣により充分対応できる程度のものと言えるのですが、米軍はイラク治安作戦により長年、多くの犠牲者を出したという苦い教訓を忘れられません。

そして、イラクとアフガニスタンからの撤退を公約として大統領選に勝利したオバマ大統領は、イラク領内から米軍を早期に撤退したことでISILがイラク港九合において勢力を伸ばす契機となっており、加えてシリアへの空爆などの開始の時期を遅らせたことがISILが現在の規模となってしまった失策を、地上軍の大規模派遣は認め、ほとんど唯一の成果というべきイラク撤退を撤回することになる事から踏み切れないのでしょう。

一方で共和党は大規模介入を主張する背景にはオバマ政権の失策を認めさせるとともに、共和党政権時代に最も警戒したイラクの破綻国家化とテロの温床となり、テロリズムの策源地としてアメリカ本土へ脅威が及ぶという懸念が既に現実のものとなっているためです。ISILは放置すればイベリア半島のスペインポルトガルやバルカン半島と小アジア半島に黒海沿岸のロシア領内へ侵攻を宣言していますから、放置すれば世界大戦に繋がりかねません。

しかし、オバマ政権は自らの早すぎるイラク撤退が要因となるイラク領内でのISILの肥大化を前に、地上軍を派遣するならば少なからず戦死者を想定しなければならず、もちろん放置すれば解決するために必要な人的犠牲と戦費は増大するのですが、これが政権に更なる打撃になりかねないため、別の道が無いのか、ISILの自滅を模索していますが、そう思う通りのことは起きないでしょう。

他方で、有志連合にアメリカが主体となる事へは懸念があります、戦費が嵩みますし、元はアメリカが早期に撤退したことが要因とはいえ、認めたくはないところでしょう。このため地上部隊の派遣は最小限とし、主にイラク正規軍とクルド人民兵が前面に出て戦うよう設定するという、アメリカには損失は少ないものの長期化する懸念のある手法がオバマ大統領の提示した案で、この施策が如何に進むのか、関心を以て見守りたいところです。
北大路機関:はるな
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(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
アメリカのオバマ大統領は10日、イラクシリアのイスラム国ISILに対し地上軍の限定派遣を含む決議案を議会へ提出しました。

イラクシリア領内において一定地域を占領し周辺国へ脅威を高めているISILに対し現在、米軍は有志連合とともに鉱区攻撃を行い、ISILと戦うイラク正規軍やクルド人民兵部隊及びシリア反政府武装勢力などの支援を行っています。今回の決議案はこの行動をさらに拡大する、というもの。

イスラム国掃討へは、米軍地上部隊の派遣が必要と考えられています。こういうのも武装勢力は航空攻撃により移動や攻撃などの積極的行動は封じられていますが、航空機は一定の時間を経過すれば燃料の関係上その空域を去らなければなりません、無人偵察機などが継続的に地域を監視しているもののそれにも限界があります。

従って、望ましいのはISILの武装勢力を順次地上部隊により撃破し、航空支援の下で占領地域をISILの占領下から解放することが必要でして、2013年にフランス軍はマリでのいるラム系武装営力に対し大量の地上部隊を有志連合とともに急速派遣し一気呵成に1000km以上を進撃し、短期間で制圧した事例もありました。

今回オバマ大統領は航空攻撃を引き続き強化すると共に、特殊部隊による捕虜奪還体制を確立し墜落航空機搭乗員救出の体制を固めると共にISIL指導者に対する特殊作戦部隊による制圧捕縛任務等を想定し、限定的な地上部隊の派遣を盛り込んだ決議を議会へ提出しているのですが、共和党は懐疑的で、軍事行動に過度な制限を設ければ長期化し成果が得られない点を強調しています。

オバマ大統領が地上軍の大規模派遣に消極的な点、ISILは戦車などを殆ど有さず掠奪した装備が故障するまで動かしている程度、航空戦力についても皆無です。したがって、ストライカー旅団数個と空中機動師団の派遣により充分対応できる程度のものと言えるのですが、米軍はイラク治安作戦により長年、多くの犠牲者を出したという苦い教訓を忘れられません。

そして、イラクとアフガニスタンからの撤退を公約として大統領選に勝利したオバマ大統領は、イラク領内から米軍を早期に撤退したことでISILがイラク港九合において勢力を伸ばす契機となっており、加えてシリアへの空爆などの開始の時期を遅らせたことがISILが現在の規模となってしまった失策を、地上軍の大規模派遣は認め、ほとんど唯一の成果というべきイラク撤退を撤回することになる事から踏み切れないのでしょう。

一方で共和党は大規模介入を主張する背景にはオバマ政権の失策を認めさせるとともに、共和党政権時代に最も警戒したイラクの破綻国家化とテロの温床となり、テロリズムの策源地としてアメリカ本土へ脅威が及ぶという懸念が既に現実のものとなっているためです。ISILは放置すればイベリア半島のスペインポルトガルやバルカン半島と小アジア半島に黒海沿岸のロシア領内へ侵攻を宣言していますから、放置すれば世界大戦に繋がりかねません。

しかし、オバマ政権は自らの早すぎるイラク撤退が要因となるイラク領内でのISILの肥大化を前に、地上軍を派遣するならば少なからず戦死者を想定しなければならず、もちろん放置すれば解決するために必要な人的犠牲と戦費は増大するのですが、これが政権に更なる打撃になりかねないため、別の道が無いのか、ISILの自滅を模索していますが、そう思う通りのことは起きないでしょう。

他方で、有志連合にアメリカが主体となる事へは懸念があります、戦費が嵩みますし、元はアメリカが早期に撤退したことが要因とはいえ、認めたくはないところでしょう。このため地上部隊の派遣は最小限とし、主にイラク正規軍とクルド人民兵が前面に出て戦うよう設定するという、アメリカには損失は少ないものの長期化する懸念のある手法がオバマ大統領の提示した案で、この施策が如何に進むのか、関心を以て見守りたいところです。
北大路機関:はるな
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