北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【23】自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略(2)(2012-10-08)

2024-05-26 20:23:00 | 海上自衛隊 催事
■海軍記念日
 明日は海軍記念日です。自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略、という本来は独立した防衛備忘録などで哨戒する話題を観艦式の写真解説に代えて掲載する第二回です。

 日本の海上防衛戦略について。いま振り返ると海上自衛隊創設60周年という2012年は確かに前年に東日本大震災とこれに連動した福島第一原発事故は発生していましたが、それでも総じて考えるならば平和であったなあ、と実感するのです。

 台湾海峡の緊張と南シナ海の緊張、そしてなにより2022年より継続しているロシアウクライナ戦争のような、軍事力による現状変更はその端緒となるクリミア併合さえ2014年の出来事でしたので、景気不景気の波はあっても総じて平和は続くのだろうと。

 ロシアウクライナ戦争を端緒とした国際情勢の緊迫は、逆に欧州をみていいますと戦争準備といいますか、日本以上にもう何も起きないだろうという楽観論が、なにしろ2014年のクリミア併合を経てさえも、もう漠然と共有知として受け止められていた。

 欧州の突発的な緊張の認識にくらべますと、一応2011年の尖閣諸島国有化や、2007年の北朝鮮核実験、いや繰り返すミサイル実験か、緊張というものはある程度となりにありましたのが日本ですから、全く備えはない、とはならなかったことは僥倖ですが。

 観艦式ひとつとって、これだけの艦艇を動かせる状況にあるのですから相応に脅威が増大しても対応できているという背景なのですが、それにしても、ここまで米中の緊張と台湾海峡問題の切迫度というものはこの日護衛艦ゆうだち艦上では、現実味がない。

 自衛隊観艦式はこのつぎの2015年観艦式を最後に巨大台風や記録的悪天候と新型コロナウィルス感染症などをうけ2014年、じゃあない2024年までいまなお実施できていません。ただ、悪天候では仕方ない、という言葉だけでは説明できないものもありまして。

 予備日を十分とれない、一発本番というわけではないのですけれども、この観艦式は前の一週間の土曜日日曜日の予行と本番前一週間の予行と数日間行われていましたが、2018年観艦式は土日で本番と前日予行の二回のみしか設定されていませんでした。

 2021年観艦式は、CO0VID-19新型コロナウィルス感染症、の影響というよりも2021年に東京五輪をおこなう関係上、中央観閲式を行えない関係から年度単位で陸海空自衛隊行事を動かす必要が生じていて2022年の開催となりましたが、これも悪天候が響く。

 予備日を十分かくほしないというのは別に準備の手配をわすれていたウッカリさんというわけでもなく単に実任務の増大、警戒監視とミサイル防衛に海賊対処任務、艦艇を二週間近く延々と観艦式支援に当てられない、という状況の裏返しにほかなりません。

 地方隊展示訓練も艦艇の実任務が多く、いや2016年熊本地震によりすべての展示訓練が中止されて以降、2022年に舞鶴展示訓練が一回行われたのみでほかはすべて中止となっています。2023年に佐世保が護衛艦いせ一隻のみの展示訓練を計画していましたが。

 こうしたなかで日本の防衛戦略を根本的に見直しが迫られているのではないかという視座です。とまあこう書きますと、今まさに見直しているさなかではないか、と反論といいますか指摘といいますか注釈といいますが、一言あるのかもしれません、しかし。

 反撃能力整備というようないまの防衛戦略の転換にとどまらない、何か根本的な戦略の見直しが必要になっているのではないかということです。憲法改正とか核武装とか原潜保有とか徴兵制とか残業代導入とかそういうことも些細なようにしかおもえない。

 日米同盟、しかしアメリカの増援まで日本が耐え抜くという前提での防衛戦略というものが今後中国の軍事力さらなる強化をまえに成り立つのかということです。いいかえれば、アメリカの増援というものを念頭に日本の防衛戦略が練られてきた土台そのもの。

 安保ハンタイ、と口角泡とばして叫ぶものではありません、いやむしろ視点とはその真逆で日米の対等な防衛協力がなければ、アメリカだけの戦力では今後日本を守るというよりも国際公序を維持できないようになるのではないかという危惧という。

 独自防衛という甘い考えでもなく、です。独自防衛というものは不可能でないにしても効率が悪く、具体的にはその必要なリソースの確保に日本経済が耐えられないことと、独自防衛は国際協調から一歩引くことも意味し、その説明の努力も必要だ。

 防衛へのリソースというものは、基本平和が続きますと防衛への関心が薄れてしまうもので、そのために、それはテレビで何かやっていれば自衛隊モノをみるというような水準を超えるものではなかなかありません、何か動くことを期待できないのですね。

 防衛戦略の視点に戻しますと、やはり課題となるのは隣国の接近拒否領域阻止の戦略です、これこそ専守防衛の在り方か、とおもわれる名前ですが、実体は日本列島を含めたマリアナ諸島までをミサイルと爆撃機や潜水艦により聖域化するという様式で。

 絶対国防圏としてアメリカ軍をマリアナ諸島より遠くで防ぐという帝国陸海軍の太平洋戦争における戦略と似たものなのかもしれませんが、マリアナ沖海戦で瓦解した絶対国防圏とことなり、中国の戦略はミサイルや爆撃機と潜水艦でかなり現実性がある。

 接近拒否領域阻止の概念と日米同盟の問題で難しいのは、これを中国が本気で整備している現状、まずこの具現化のための中国本土のミサイル網を日本本土から破壊しなければ第七艦隊の空母部隊は日本本土へ到達が難しい、という日米同盟の根幹の揺らぎ。

 マルチドメインタスクフォースという、アメリカの対抗策では大陸に対して同盟国へ射程の長いミサイルを持ち込んで、これはフィリピンと日本本土、あとは韓国を含めるのだろうかという点に加えてアメリカ領グアムとサイパン、ここから撃ち合うもの。

 中国本土との撃ち合いの場合は、なにしろ中国本土には核ミサイル部隊が展開していますから場合によっては戦術核が使われかねない点を、アメリカはどのように段階的アプローチを試みるのかは未知数ですが、核兵器国同士のミサイル戦は過去に例がない。

 ロシアウクライナ戦争では度々プーチン大統領が核兵器に言及していますが、これもウクライナが核兵器を持っていないためにロシアとのミサイル戦をおこなっても核戦争に発展しないわけで、NATOが仮に地対地ミサイルを整備した場合はその限りなのか、と。

 接近拒否領域阻止とマルチドメインドクトリンの衝突は、もう少し核戦争の懸念というものに想像力を膨らませてみるべきではないかという懸念をもつとともに、しかしするとシーパワーというものの土台さえ揺らぐような戦略の転換だと認識が必要でしょう。

 海上防衛、日本の場合はシーレーン防衛と着上陸阻止に2010年代からミサイル防衛が任務に加わりましたが、この部分の変容をどのように受け止めかつ変革を行うのかという厳しい判断がそろそろ考えなければならないようにもおもうのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】特急ひだ号HC85系気動車,大阪-高山間296km!京都駅から岐阜の飛騨高山は高山駅に直通

2024-05-26 20:00:08 | コラム
■大阪高山直通特急
 HC85系気動車の駆動音があさの京都駅に響くとともに0番ホームには路線図を見るならば驚くほど遠方に向かう特急が到着します。

 ひだ号、京都駅到着。ひだ25号は0831時に京都を出ますと米原と大垣を経て岐阜、そして美濃太田と下呂に停車し1214時、高山駅に到着します。運賃は特急料金を含めて7260円で所要時間3時間43分、時間はかかりますがここから高山まで296km、乗り換えは不要だ。

 新幹線を使うと、もう少し後に京都駅を出発する、のぞみ80号名古屋ひだ5号乗り換えで所要時間3時間13分、ただし新幹線ホームから在来線まで5分で乗り換える必要があるので余裕を持った乗り換えだと一本前の新幹線が望ましい、運賃は10450円とのこと。

 乗り換え、いまでは北陸新幹線の敦賀開業にともなうサンダーバード号の鶴賀での新幹線かがやき号乗り換えという煩雑さを思い出すのですけれども、そう、京都駅で特急ひだ号需要が、そちらのほうが所要時間が長いにも関わらず、一定程度ある現実が。

 クルーズトレイン、というわけではないのですが飛騨高山といえばビジネス旅客需要も十分あるのでしょうがやはり観光輸送という側面が大きいはずでして、これを考えると駅弁と飲み物片手に、コンセントもあるというのでスマホと旅という需要は大きい。

 特急と新幹線のりかえというのは、なれている人にはとんとんと階段を下りて通路とおり階段を上るだけ、なのかもしれませんがやはりそこで、降りる準備と乗る準備と落ち着くまでの時間と旅情というものが寸断するのはどうしてもいなめません。

 所要時間がすべて、という新幹線ですが、この特急ひだ号のように、せめて北陸新幹線が大阪開業までは、サンダーバードを一日二往復だけでも金沢に乗り入れることはできないものかなあ、と思うのですね。京都駅にはこうして高山方面乗り場があるのだ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌:京都-近鉄京都駅,包み焼きのかたちで百年ハンバーグの愉しみ

2024-05-26 18:11:41 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 榛名さんの総監部グルメ日誌というからには総監部のある街のある都道府県繋がりで舞鶴地方総監部の舞鶴市の府庁所在地である京都市の話題です。

 百年ハンバーグ、ちょっと疲れたときはおいしいものを食べたいよね、とおもったときに降りた駅が近鉄京都駅ならば、真下にエスカレータで降りてゆきますと東洋亭という京都ならではの洋食やさんがあります。ここは遅い時間帯もランチセットが楽しめて。

 トマトも丸ごとトマトのサラダ、じつはこれほかのお店でも有名なものがあリマして、トマトの食べ方の定番の一つなのかもしれないのですが、家庭でトマトサラダとするよりは一つ凝っていて、しかも野趣あふれるようでちょっと美味しいとともに楽しいのだ。

 ライスと合うのも、洋食という、これは日本食の一部が日本に最適化されたかたちでの欧風食文化なのだ、という世界の視点があるようなのですがなんといわれようとここの百年ハンバーグはソースがごはんとよくあうようになっているので、これもたのしみ。

 包み焼きのかたちで百年ハンバーグはおおきなジャガイモとともに好きレット上で運ばれてきて、そのハンバーグはビーフシチューのような濃厚な、しかしビーフも浮かぶ、ソースとともに、ご飯に載せても、もちろん単体でも、肉汁もソースも全て最高だ。

 アイスティーをつけて、ちょっとあつあつを急ぎ足おおちがう急ぎ口でいただいたのでホテルというよりも口の中ヤケドするてきな状況からほっと一息つきます。冷たさの中にしっかりとアイスティーがベルガモットの香りとともにからだにしみわたる。

 東洋亭、本店は北山駅前という、地下鉄烏丸線では北大路駅のとなりの駅前にあるこれぞ老舗という感じの建物にあるのですが混雑している印象が、京都駅の、近鉄京都駅真下にあります東洋亭は、逆に混雑していないちょっとした穴場のひとつなのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-ハリコフ州攻撃は部隊交代時機狙い,ロシア軍電子妨害と反撃のベルベク飛行場攻撃

2024-05-26 07:00:21 | 防衛・安全保障
■防衛情報-ウクライナ戦争
 ウクライナでの電子戦にかんする情報です。自衛隊が今後想定する無人航空機や野外通信と電子戦の影響というものは戦訓として非常に重要な意味を持つものです。

 ロシア軍の電子妨害によりドローンが飛行不能となった、ISWアメリカ戦争研究所は5月17日付ウクライナ戦況報告においてその状況を説明しています。これは17日にワシントンポストが報じたもので、具体的には5月10日のハリコフ再侵攻に際して電子妨害が広範にかけており、ドローンが飛行不能になっていたとのこと。

 ドローン飛行不能とともに、ウクライナ軍が通信を依存するスターリンク衛星通信についても使用不能になっていたと前線部隊指揮官の発言をワシントンポストが報じています。他方、ウクライナ軍は16日から17日にかけクラスノダールへの無人機攻撃を実施、クリミア半島のエネルギー施設や海軍基地へ攻撃を行い成功しました。
■ハリコフ州攻撃
 自衛隊が部隊行動秘匿をかなり重視している事はこういう戦訓一つとって非常にわかりやすいことなのですが。

 ロシア軍のハリコフ州攻撃は部隊交代の時機を狙ったものだ、ISWアメリカ戦争研究所5月17日付ウクライナ戦況報告では今回のハリコフ攻撃についてウクライナ陸軍のシルスキー司令官の見解を紹介しています。この攻撃はレニングラード軍管区の第11軍団、第44軍団が主導したもので、ウクライナ軍は虚をつかれた構図といえます。

 ウクライナ軍はこのロシア軍侵攻の時点でハリコフ州北部を防衛する部隊の交代を準備しておりその瞬間が狙われたとのこと。また今年失陥したアウディイフカについてもウクライナ軍部隊交代の瞬間に攻撃を受けウクライナ軍が後退を強いられており、部隊交代の情報秘匿に関する難しさなどを端的に示しているといえるでしょう。
■ベルベク飛行場攻撃
 ATACMSの威力だ。

 ウクライナ軍が実施したベルベク飛行場攻撃の戦果についてイギリス国防省は5月18日付の戦況報告で詳細をしめしています。クリミア半島のベルベク飛行場攻撃はその第一報でS-400防空ミサイルシステムのレーダーシステムとミサイル発射装置が破壊され、MiG-31BM戦闘機2機が地上で破壊されたという付帯情報も続報されました。

 クリミア半島でのウクライナ軍攻撃はこの一ヶ月で4回にわたり成功しており、5月12日にはレーダーサイトが破壊、4月16日と4月29日にはジャンコイ飛行場攻撃に成功したとしています。ロシア軍は相次ぐ攻撃から戦闘機分散を進めていますが、分散するほど防空システムの数が必要となり、その確保ができなければ戦闘機損失が増す。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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