北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】オーストラリア原潜計画とカナダたいげい型潜水艦輸出案,ブラジルプロサブ計画

2024-05-28 20:24:58 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は各国の潜水艦関連の最新情報を纏めてみました。

 オーストラリア海軍が暫定貸与を受けるヴァージニア級潜水艦の建造が大幅に遅延する可能性が出てきました。オーストラリア海軍は当初フランスからバラクーダ級潜水艦、原子力潜水艦を通常動力推進方式に転換するという無理を押し通した潜水艦を導入する計画をイギリスやアメリカから原子力潜水艦を導入すると一転させています。

 ヴァージニア級攻撃型原潜をアメリカから2030年代半ばに借用し運用の実績を積むとともにイギリスより技術供与を受けオーストラリア国内に既存のASU造船施設を利用するか新しく潜水艦造船所を建設し2050年代に独自の原子力潜水艦を建造するという計画でした。しかし今回、ヴァージニア級のアメリカでの建造が大幅に遅れるという状況が。

 バイデン政権が発表した2025会計年度の海軍計画では2024年度起工予定のヴァージニア級攻撃型原潜が2隻の予定を1隻に半減させたことでオーストラリアに回す潜水艦よりもロスアンゼルス級攻撃型原潜後継艦を優先した場合、オーストラリアに回す潜水艦が遅れるとともに次期攻撃型原潜への移行期と重なる懸念が出てきてしまったのです。■

 カナダ海軍の次期潜水艦について日本の潜水艦たいげい型が候補の一つとして想定されているとのこと。これは昨年夏に韓国国内報道としてカナダ海軍次世代潜水艦に日本製潜水艦と韓国製潜水艦の二つが有力視されている旨の報道があったのに続き、3月29日に日本経済新聞が報道したもので、日本案が浮上しているという程度の報道ですが。

 たいげい型潜水艦輸出案は、通常動力潜水艦としては航続距離や行動半径の大きさと静粛性やオホーツク海などの低温海域から沖縄以南の高温海域まで対応可能という適合性の高さ、そして稼働率の高さが利点となります。難点として、技術移転と機密保持の難しさ、毎年1隻の建造という建造能力の限界、教育訓練支援能力の限界などがある。

 韓国製潜水艦としては、弾道ミサイル潜水艦を既に韓国海軍へ納入するなど要求に応じた多彩な設計能力とともに今回韓国はイギリスのBAE社と共同でカナダなどに潜水艦を提案しており、BAE社との協力により様々な技術支援や整備支援などを行うことが可能、ということ。カナダ海軍は稼働率低下が著しいアップホルダー級の後継を模索中です。■

 インドネシア海軍はフランス製スコルペヌ級改良型潜水艦の導入を計画しています。この計画は既に2022年に技術移転及びインドネシア国内での建造に関する覚書を、フランスのナーバルグループとインドネシア海軍との間で交わしていますが大きな進捗が無く、しかし2024年に入り、具体的な建造契約へ進む道筋が見えてきたとのことです。

 インドネシアは国有PT-PAL造船所での建造を希望しており、インドネシアには韓国からのドイツ設計209型潜水艦発展型技術移転を受けた際の施設が既に東ジャワ州スラバヤで稼働中です。ただ、課題はインドネシアもすべての技術移転を受けた場合でも国内生産部品だけでの自己完結した建造ができず、また仕様変更をどこまで盛り込むかでした。

 ナーバルグループによればスコルペヌEvolvedというリチウムイオン電池採用型の最新型が提案されており、これにより水中高速性能が改善、搭載燃料により8000浬の航続距離を有し80日間の連続航行が可能となり、また計画では2隻で21億ドルの調達計画となる見通しですが、三分の一は建造等でインドネシアに還元されるとのことでした。■

 ブラジル海軍が導入する新潜水艦トネレロが進水式を迎えました。フランスのナーバルグループが現地建造を進めていたもので、リオデジャネイロ州のイタグァイ海軍施設において行われた進水式には関係両国首脳であるブラジルのルイスイナーシオルーラダシルバ大統領とフランスのエマニュエルマクロン大統領が揃って臨席しました。

 プロサブ計画としましてブラジル政府は潜水艦の建造能力を独自に保有することを強く希望しており、今回の潜水艦建造は2008年にナーバルグループとの間で結ばれたスコルペヌ級潜水艦改良型建造契約として建造、スコルペヌ級潜水艦を初期にはフランスで建造し、続いてノックダウン生産に移行、最終的に完全な建造能力獲得をめざす。

 トネレロはブラジル海軍向けスコルペヌ級潜水艦では3番艦にあたり、また4番艦としてアンゴスチュラが2025年に進水式を迎える計画です。トネレロ進水式は3月27日に行われましたが、2025年には竣工を予定しており、ブラジル海軍は今後進水した潜水艦の艤装工事を進めるとともに早い段階で公試に移行するものと考えられます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-NATO派遣エストニアカジャカラス首相発言とハリコフ国境周辺のロシア軍部隊動向

2024-05-28 07:01:51 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 NATOとロシアの距離が短縮する事はそのまま次の大戦に展開する懸念が生じますのでどうしても関心事となってしまいます。

 エストニアのカジャカラス首相はNATO加盟国を含む複数の国が訓練要員を既に派遣していると発言しました。ISWアメリカ戦争研究所5月20日付ウクライナ戦況報告ではアメリカのフィナンシャルタイムズ紙の報道を引用するかたちでカラス首相の発言を紹介していて、ウクライナ軍への訓練支援のために現地派遣が既に為されている、と。

 カラス首相発言では、派遣した国の詳細については避けながらも、危険な地域でのウクライナ軍訓練支援を行うことによるリスクは想定済みとしたうえで、ほかのNATO加盟国についても、こうしたウクライナ領内への派遣によりロシアとの関係が悪化し戦争が拡大するなどといったリスクをおそれるべきではないとしました。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 部隊の充足率については自衛隊もなかなかここでは書けないことを知っている故になんともいえないのですが。

 ハリコフ国境周辺のロシア軍部隊動向について、ISWアメリカ戦争研究所5月20日付ウクライナ戦況報告ではハリコフ州北部を防衛するウクライナ軍旅団副旅団長の発言を紹介しており、ロシア軍はさまざなか部隊から集成した部隊をスミ州国境付近に集結させているものの、目的は越境攻撃ではなくウクライナ軍誘引と分析しています。

 ウクライナ軍を国境警備に張り付けさせることでほかの戦線が手薄となることを目的とした誘引と副旅団長の分析を裏付けるように、ロシア軍はヴォフチャンスクではヴォフチャ川に沿って中心部へ浸透を開始、クリシチフカ南部やネタイロフ西方、そしてクラスノホリフカなどで一定程度の前進を続けているという概況があるとのこと。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 現時点では陽動であるのだけれども次の段階をロシアが想定していないとも思えないのですよね。

 アウディイフカ周辺での戦闘概況について、イギリス国防省は5月21日付戦況報告においてロシア軍が高速道路E50号線を起点にその両側に向けて浸透をつづけていると報告しました。ロシア軍のハリコフ州での新しい攻撃軸展開はやはり主攻撃ではなく、ロシア軍攻撃が活発であるのは東武地域であるとイギリス国防省は分析しています。

 高速道路E50号線はロシア軍が制圧しているドネツクとウクライナ軍防衛拠点のおかれたポクロイシクを結ぶ高速道路で、この72時間でロシア軍はかなりの損耗を容認しながら前進しており、この背景にはポクロイシクからドネツクに掛けてのウクライナ軍戦線に突出部を形成させ、そこから分断することが目的とイギリス国防省は分析する。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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