■部隊比較
AFV比較という考え方がある、90式戦車とK-1戦車、M-1A2戦車とT-80U戦車、どちらが優れているかという考え方だ。
しかし、例えばアジェンジャー野戦防空システムとZSU-23シルカ自走高射機関砲を比較したとしよう。当然、専用兵器のシルカに軍配が上がることとなろう。M-109A6パラディン自走砲と155㍉GCT自走砲では、射程で優位にある。MLRSとスメルチ多連装ロケットを比較すればスメルチの方が射程は二倍である。
では、何故、個々の性能で優れたこれらの装備を有するイラク軍はアメリカ軍に惨敗したのか、 即ち、個々の兵器の優劣やスペックで比較するだけではなく、部隊編成や作戦運用で比較する必要もあろう。
さて、イラクやアフガニスタンへアメリカ陸軍が始めて創設した装輪装甲車主体の作戦単位であるストライカー旅団が活躍している。筆者が昨年夏期研修に行った外交と安全保障関係の研究所でも主任研究員の方がストライカーを日本でも導入するべきだといっていたし、一部の雑誌や論文では『日本でもストライカーを導入するべきだ』との論調が見られる。
では、わが国の陸上防衛という観点から、陸上自衛隊の北部方面隊に新しく編成された旅団(以下北方旅団)とアメリカ陸軍のストライカー旅団を、どちらが有用であるかについて比較したい。
■陸上自衛隊北方旅団
北方旅団とは、北部方面隊隷下の第五旅団・第11旅団を示す便宜的な名称である。
北部方面隊隷下の部隊は、冷戦時代においてソ連軍の大規模な着上陸侵攻に対処すべく、戦車や装甲車、自走火砲等を優先的に配備されてきた。冷戦終結後の1995年に、陸上自衛隊の戦車数が1200輌から900輌に、特科火砲が1000門から900門に削減された影響で、北部方面隊の第5・11師団、東部方面隊の第12師団、中部方面隊の第13師団が旅団へと縮小改編されたことは周知であろう。
こうした中で、“沿岸配備旅団”、つまり機動打撃力を有する旅団として、改編された訳である。
従って、広島の第13旅団は戦車数が中隊規模まで減少し、相馬原の第12旅団に至っては、戦車部隊そのものが解散している。
一方で、第五・第11旅団は、戦車大隊が戦車隊となり、78輌から54輌に減退し、特科火砲も40輌程度まで減退したものと思われる。
しかし、普通科連隊が三個中隊基幹編成に縮小されたことから、逆に一個普通科中隊あたりの戦車数は増加したこととなり、連隊戦闘団編成時の作戦能力は、強化されたと見ることが出来る。また、2004年に第五師団は旅団に改編されたが、師団HPによれば、同時に軽装甲機動車や96式装輪装甲車、そして90式戦車の配備が為されたとされる。結果、89式装甲戦闘車や96式自走迫撃砲は保有しないものの、全体的に装甲化され、機械化された編成となった訳だ。96式装輪装甲車に関しては一個普通科連隊に集中配備するのか、それとも各連隊の一個中隊程度を96式装輪装甲車によって装甲化するのかについては定かではないが、参考までに同じ北方師団の第二師団(旭川)は、隷下の第三普通科連隊(名寄)が96式装輪装甲車により完全装甲化されている。
96式装輪装甲車は年間30輌程度が調達されている。また軽装甲機動車は年間150~200輌程度が調達されており、年間900~1100名程度を装甲化できる計算となる。
北方旅団は、54輌の戦車と40輌の自走榴弾砲を装備しているが、90式戦車は年間18輌程度から15輌へと調達数を下方修正していて、読売新聞や中日新聞の報道などでは数年内に90式戦車の調達が中止となる見込みである。従って、北部方面隊の戦車すべてを90式戦車で統一化させる事は困難であるとみられ、第二戦車連隊、第一戦車群、第五戦車大隊の順に一個中隊程度を先ず90式戦車で編成し、74式戦車との混成編成を採っている。
特科火砲も、最新の99式自走榴弾砲の装備かが遅々として進まず、75式自走榴弾砲との混成運用が為されている。75式自走130㍉ロケット発射機も12輌が配備されているが、これはMLRSと代替されるという話は聞かない。他方、陸上自衛隊は面制圧火力の量的充実を図る観点からHIMARS装輪式ロケット発射機の導入を検討中といわれ、これが師団特科火力と採用されれば、特科火力の暫定的充実に寄与しよう。
(続く)
執筆:HARUNA
構図:ASUKA
AFV比較という考え方がある、90式戦車とK-1戦車、M-1A2戦車とT-80U戦車、どちらが優れているかという考え方だ。

では、何故、個々の性能で優れたこれらの装備を有するイラク軍はアメリカ軍に惨敗したのか、 即ち、個々の兵器の優劣やスペックで比較するだけではなく、部隊編成や作戦運用で比較する必要もあろう。

では、わが国の陸上防衛という観点から、陸上自衛隊の北部方面隊に新しく編成された旅団(以下北方旅団)とアメリカ陸軍のストライカー旅団を、どちらが有用であるかについて比較したい。
■陸上自衛隊北方旅団
北方旅団とは、北部方面隊隷下の第五旅団・第11旅団を示す便宜的な名称である。

こうした中で、“沿岸配備旅団”、つまり機動打撃力を有する旅団として、改編された訳である。
従って、広島の第13旅団は戦車数が中隊規模まで減少し、相馬原の第12旅団に至っては、戦車部隊そのものが解散している。

しかし、普通科連隊が三個中隊基幹編成に縮小されたことから、逆に一個普通科中隊あたりの戦車数は増加したこととなり、連隊戦闘団編成時の作戦能力は、強化されたと見ることが出来る。また、2004年に第五師団は旅団に改編されたが、師団HPによれば、同時に軽装甲機動車や96式装輪装甲車、そして90式戦車の配備が為されたとされる。結果、89式装甲戦闘車や96式自走迫撃砲は保有しないものの、全体的に装甲化され、機械化された編成となった訳だ。96式装輪装甲車に関しては一個普通科連隊に集中配備するのか、それとも各連隊の一個中隊程度を96式装輪装甲車によって装甲化するのかについては定かではないが、参考までに同じ北方師団の第二師団(旭川)は、隷下の第三普通科連隊(名寄)が96式装輪装甲車により完全装甲化されている。

北方旅団は、54輌の戦車と40輌の自走榴弾砲を装備しているが、90式戦車は年間18輌程度から15輌へと調達数を下方修正していて、読売新聞や中日新聞の報道などでは数年内に90式戦車の調達が中止となる見込みである。従って、北部方面隊の戦車すべてを90式戦車で統一化させる事は困難であるとみられ、第二戦車連隊、第一戦車群、第五戦車大隊の順に一個中隊程度を先ず90式戦車で編成し、74式戦車との混成編成を採っている。
特科火砲も、最新の99式自走榴弾砲の装備かが遅々として進まず、75式自走榴弾砲との混成運用が為されている。75式自走130㍉ロケット発射機も12輌が配備されているが、これはMLRSと代替されるという話は聞かない。他方、陸上自衛隊は面制圧火力の量的充実を図る観点からHIMARS装輪式ロケット発射機の導入を検討中といわれ、これが師団特科火力と採用されれば、特科火力の暫定的充実に寄与しよう。
(続く)
執筆:HARUNA
構図:ASUKA