先日、中国の大阪総領事講演会に出席する機会を得、改めて日中の基本的思考体系の隔たりを痛感させられた。
さて、日中問題に関して最大のネックとなるのは東シナ海資源開発を通じた島嶼部防衛であろう。島嶼部の一部でも占領される事態となれば、わが国排他的経済水域は否応無く縮減され、海洋国家日本にとりこの問題は死活的である。
しかしながら、わが国の領海警備については北海道北部の沿岸監視隊や対馬警備隊、第一混成団など語句限られた部隊しかなく、その展開能力はヘリコプターの不足や艦艇の能力から非常に限られている。
海上自衛隊は大型輸送艦三隻を有し、必要となれば逆上陸により島嶼を奪取する事は容易であるが、コリンズパウエルが湾岸戦争後に述べたように『マスメディアを制さなければ戦争に勝ったという事にはならない』というように、我が方が“係争地”に上陸し、仮に形ばかりのものであっても守備隊を駆逐すれば国際世論の反応は必ずしも有利となる保障は無く、中国はここぞとばかりにマスメディアを通じてメディア攻勢をかけるであろう。
一方で、予防的にわが国が守備隊を常駐させれば、メディア戦略は我に有利となる事は疑いなく、加えて01式軽対戦車弾のような携帯性に優れ高度な性能を有する火器は抑止のみならず限定侵略の撃退にも期待が出来、仮に少数でも緊急展開部隊を創設し防衛を行うことは検討に値する命題だ。
さて、島嶼部防衛だけではなく、北朝鮮拉致事案が分析されるにつれ、日本海沿岸海域は文字通りゲリラコマンドの浸透を受けやすい事が今更ながら確認され今に至っている。その一方で、日本海沿岸の陸上自衛隊駐屯地は上越の第2普通科連隊、新発田の第30普通科連隊、金沢の第14普通科連隊、米子の第8普通科連隊と長大な海岸線に比して限られており、固有のヘリコプターを有しない普通科連隊としては頭の痛い問題である。
対して、たとえ少数の普通科部隊であっても観測機器や通信機を駆使しゲリラコマンド浸透地域に対して監視拠点を隠密裏に構成し、その動静を見守る事は秘匿性を唯一の武器とする敵には大きな脅威であり、特にその意義は大きい。
確かに近年では師団飛行隊にUH-1Jなどの多用途ヘリコプターが配属され、従来の師団であっても限定的ながら空中機動能力を有するに至ったが、その数量は限定的で、師団飛行隊の総力を挙げたとしても二個小銃小隊の輸送が限度であり、加えて師団飛行隊は師団長直轄であり災害派遣や急患輸送に備え全国に広範に配備されており、数量的には不充分である事は否めない。
新潟や小松に展開する航空自衛隊の救難隊が運用する救難ヘリコプターに近傍の普通科部隊が搭乗し空中機動を支援し緊急展開を行う事も一案であるが、救難隊には航空救難という第一任務があり、恒常的に空中機動の訓練を行う余裕があるかに関しては疑わしい面も多い。
ここで考えられるのが現行の第12旅団の空中機動部隊を拡充し、本格的空中機動旅団に昇華させる提案だが、編成上は東部方面隊の隷下にあり、間もなく新編される中央即応集団に配属されるとの話は聞かないし、何よりも本州島だけでもその面積は広大で、海岸線も長くUH-1Jといった多用途ヘリでも途中給油無しに展開は不可能である。
従って、方面隊の方面ヘリコプター隊の利用という案が最後に浮かぶ。
方面ヘリコプター隊とは何か?
方面ヘリコプター隊とは、多用途ヘリコプター約20機と若干の観測ヘリコプターを有し、有事の際には第一線師団に配属され、その空中機動能力を補完する用途で編成されている。また、各方面隊には一個対戦車ヘリ隊が編成されており、西部方面隊のようにCH-47JA大型ヘリコプターが配備されている事例もある。
その総力は、ヘリコプター40機にも達し、縮小編成の普通科中隊を同時に空輸可能である。
しかしながら、課題も存在する。西部方面隊を除き、編成上方面隊直轄の普通科部隊は存在せず、緊急展開しようにも普通科連隊駐屯地から部隊の到着を待たなければならないという点で、加えてヘリボーンの練度も部隊ごとでまちまちであり、即応性や実戦性双方から問題があるのが現状である。
当然、各方面隊に方面普通科連隊を新設し、方面ヘリコプター隊として空中機動旅団化するという発想に結びつくが、予算面や人的配置から五個方面隊全てが直轄の普通科連隊を新設するのは一朝一夕に出来るものではない。
従って、方面普通科連隊を新設するまでの間の、繋ぎとして何らかの措置が必要となる。
こうして提案したいのが、方面隊隷下にヘリボーンの戦術や展開要領を一般師団に対して教育支援する空中機動教導隊の新設である。多用途ヘリの数量から一個普通科中隊の空中機動が限度である為、教導隊は最低限の一個中隊で対応する事となる。不足分としては必要に応じて教育中の普通科部隊を参加させるしかないが、現実的には後期教育としての教導部隊を方面普通科部隊新設までの繋ぎとするのが限度であろう。
ゲリラコマンド対策・島嶼部防衛の一案として空中機動旅団を方面隊直轄として新編する提案を行い、現実的にそれまでの繋ぎとして後期教育を担当する空中機動教導隊の新編を提案した。何分、本格武力侵攻よりも現実的な脅威であることは確かで、何らかの対応は必要であると考える。
なお、本格的な沖縄県・鹿児島県の島嶼部防衛に関しては、空中機動旅団だけでは不充分であり、第一混成団の改編分散配置や地方隊の位置づけ、ミサイル艇や高速輸送艇、特殊部隊の運用などで更に複合的なアプローチが必要であり、これに関してはまたの機会に譲りたい。
HARUNA
さて、日中問題に関して最大のネックとなるのは東シナ海資源開発を通じた島嶼部防衛であろう。島嶼部の一部でも占領される事態となれば、わが国排他的経済水域は否応無く縮減され、海洋国家日本にとりこの問題は死活的である。

海上自衛隊は大型輸送艦三隻を有し、必要となれば逆上陸により島嶼を奪取する事は容易であるが、コリンズパウエルが湾岸戦争後に述べたように『マスメディアを制さなければ戦争に勝ったという事にはならない』というように、我が方が“係争地”に上陸し、仮に形ばかりのものであっても守備隊を駆逐すれば国際世論の反応は必ずしも有利となる保障は無く、中国はここぞとばかりにマスメディアを通じてメディア攻勢をかけるであろう。


対して、たとえ少数の普通科部隊であっても観測機器や通信機を駆使しゲリラコマンド浸透地域に対して監視拠点を隠密裏に構成し、その動静を見守る事は秘匿性を唯一の武器とする敵には大きな脅威であり、特にその意義は大きい。



従って、方面隊の方面ヘリコプター隊の利用という案が最後に浮かぶ。

方面ヘリコプター隊とは、多用途ヘリコプター約20機と若干の観測ヘリコプターを有し、有事の際には第一線師団に配属され、その空中機動能力を補完する用途で編成されている。また、各方面隊には一個対戦車ヘリ隊が編成されており、西部方面隊のようにCH-47JA大型ヘリコプターが配備されている事例もある。
その総力は、ヘリコプター40機にも達し、縮小編成の普通科中隊を同時に空輸可能である。

当然、各方面隊に方面普通科連隊を新設し、方面ヘリコプター隊として空中機動旅団化するという発想に結びつくが、予算面や人的配置から五個方面隊全てが直轄の普通科連隊を新設するのは一朝一夕に出来るものではない。

こうして提案したいのが、方面隊隷下にヘリボーンの戦術や展開要領を一般師団に対して教育支援する空中機動教導隊の新設である。多用途ヘリの数量から一個普通科中隊の空中機動が限度である為、教導隊は最低限の一個中隊で対応する事となる。不足分としては必要に応じて教育中の普通科部隊を参加させるしかないが、現実的には後期教育としての教導部隊を方面普通科部隊新設までの繋ぎとするのが限度であろう。


HARUNA