CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】罪と祈り

2020-03-09 20:59:41 | 読書感想文とか読み物レビウー
罪と祈り  作:貫井 徳郎

非常に面白い、推理サスペンスを堪能した
充実したというべきなのか、だんだんと明らかになっていく事件の姿が、
とても丁寧で重く、派手な展開ではないのに、
引き込まれて、その辛さのようなものに巻き取られていく
そんな読書体験となったのでありました
面白かった

父親が突然殺された、
その真相を解き明かすために、様々な推理と、父親の道程を探ることを続けていく、
そんな按配で、刑事でも探偵でもないものが真実を求めて、
そこにたどり着いていくという筋書きで、
事件の様々なやりとりも面白いんだけども、
過去と現在をいったりきたりする物語が、
だんだんと真実に収斂していくのが楽しい、そんな読み心地でありました

物語にかなり没頭してしまったので、
もしかしたら、推理が飛躍しているんじゃないか、
過去の出来事を、別章として読んでしまっているから、
本当に暴いてそこにたどり着いたのか、
なんか、都合がよいことがあったりしないかとか
あれこれ考えてしまったのだけども、
こういう物語を書くという行為自体が凄いなと
物語に没頭しながら、構成について思い至ったりしたのでありました
このあたり、情緒よりも理路というか、骨の太い事実が積み重なっていく展開に
あるゆえんかもしれないとか、一人ごちてしまうのであります
ようは、丁寧で地味で人間模様の難しさとかよりも、
ある事件に対する立場や考え方がすっきり説明されているせいで
思わされてしまうのかもと感じる次第なのである
穿った見方だとわかっているんだが、男性作家という感じがする
強力なコテコテ感があった

最後の余韻がいい塩梅で、
完結しているのに、そのエピローグを読みたいと
切望したくなるようないい引き際が
際立って楽しかったと思える小説でありました

人間ドラマを描いていない的なことを書いてしまったけど
当然そんなはずもなく、このやりとりが凄く人間臭いんだけども
なんといえばいいか、どこか理屈めいたというか
かっきりとした構成を読んだと思ってしまう
力強い小説でありました