CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】フリーター、家を買う。

2017-08-16 19:30:12 | 読書感想文とか読み物レビウー
フリーター、家を買う。  作:有川 浩

面白かった
すがすがしい気分で読み終えた
実に冴えた、読後感の爽やかな物語でした
心にしみるといっては、大げさでありますが、
ほのぼのとしつつ、大きな優しさと、過剰ではない厳しさが同居していて
読んで和んだ一冊でありました

ぼやぼやフリーターしていた男が、
自分の現実と向き合って成長していく

平たくいうと、こんな話なのでありますが、
切っ掛けで、大きく変わることができるという
この羨ましさというか、若干、出木すぎじゃないかと
成長っぷりの素晴らしさに慄いてしまたのであるが、
それはそれとして、こういうお話は
なんだかいいなぁと思わされるのでありました

自分に置き換えるなどと、愚かしいことをするはずもないのですが、
うらぶれた状態から、改心して、それによって事態が好転する
本当に世の中そうだったらいいのにと
何か、斜に構えて言ってしまいがちだけども
そういう気持ちも抱きつつ、こつこつと積み重ねて
やがて大きくなっていくというのが
なかなかどうして面白くて、こういう系統は
好きなんだなと自分の嗜好を思い知るようでありました

全体的にいろいろと優しいと
思わされてしまうんだが、案外人生なんてそんなもんで
ひがんでいるときは、何もかもがうまくいかないようであったり
そういうのが、回りではなく自分であると
気づけていない状態なのかもなんて、慰めてみたりできて
弱っていると心にきく小説であったと
思ったのでありました

しかし、家を買うという一大事についてはともかく、
目的をもってカネをためようというのは
非常に強力なモチベーションだよなと
今更ながらに思ったりして、昨今そういうのが
自分に足りてないんじゃないかと
物語の主人公たりえていない状況に思ったりと、
数行前に、自分に照らさないといった嘘を暴露しつつ
ともあれ、こうあるべきではないかと
読書の影響を、よい方向へもっていきたいと
思わされる一冊

心地よく読み終えたのであります

【読書】街道をゆく 40 台湾紀行

2017-08-15 18:20:29 | 読書感想文とか読み物レビウー
街道をゆく 40 台湾紀行  著:司馬 遼太郎

超有名シリーズながら、読んだことなかったのです
そうか、台湾の話もやってたのかと
思わずこの巻だけを読んでしまったのですが
なかなか、興味深いというか、面白い読み物でありました

司馬遼太郎節といっていいのか、
あの独特の語り口と、現実と虚構がごたまぜになりつつ
まるで、全部本当だったかのように読み下せてしまう
軽妙で、面白い文章がたまらない一冊でありました

数奇な運命をたどった台湾という土地、あるいは
そこに住む人たちについて考えた、
この国を思うことで、国とは何かに思いをはせたと
そういう内容なのでありますが、
秀逸なのは、李登輝さんと対談をしてることであったり、
対談とは別に、話をしているというのも
これまたすごいことだなと思わされるのでありました
この本を読んでしまうと、どうやっても
李登輝という人物について調べたくなってしまうじゃないか

李登輝さんとは、年齢をほぼ同じくして、
太平洋戦争にかかわったという共通点もあり、
戦中派の昭和回顧ともいえる内容ながら、
昭和における台湾という国がよくよくわかるようで
非常に面白かったのでありました
この取材、刊行がおそらくは90年代ということなので
だいぶ経ってからのとはいえ、まだまだ
濃厚な昭和が残っている、あるいは、戦前の日本の姿、幻のようなものが
随所で見られるというのが面白く読めたのであります
当時は、相当数の日本語を話せる方がいたようで、
先住民族の人たちの共通語が日本語であるという話は
どうも、これが初出じゃないかなと思われたりしたのでありますが
日本名でさらりと名乗られることや、
日本語で優しく語りかけられるという体験が
司馬先生を通して、文章として今に届くとなかなか
感慨深いと思われたのでありました

台湾ルポでありながら、観光案内とは当然まったく違う、
この国の歴史について、考えながら
そういう遺構というでもない、歴史の匂いみたいなのを
街のそちこちに見てまわるといったところが
精細な描写ではなく、簡単なというか、
さらりとした会話から立ち上っていて、詩的でもないのに
なんか情緒をかきたてられるというところが
非常にステキだと思わされるのでありました
いちいち格好いいと感じるのであります

ある種、本土よりも純粋な日本人教育がなされていたという
このくだりが素敵で、ステキでたまりませんでした
そのありもしないものが、もしかしたら戦前には
一部、あるいは、一縷、いたのかもしれないと
そう思わせてくれる何かがあるように
思えてならないのであります

悪さをする日本人というのが増えて、
ずいぶんと幻滅をされたのではないかと
ずっと危惧というか、勝手に心配していたのでありますが
それすらもおごりであり、これらの話は、
あくまで台湾における思い出であり、懐かしい話でしかないと
そう思えばこそ、
意に添えるではないが、応えられる何かじゃないかと思ったりしたのでありました

わけわからん私情の感想が入ってしまったが
語り口が、つらつらしてしまう、司馬遼太郎節も堪能できて
久しぶりに楽しい読書でありました

【読書】シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱

2017-08-14 10:08:12 | 読書感想文とか読み物レビウー
シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱  作:高殿 円

ホームズもののパロディというか、オマージュ作品であります
ホームズとワトソンが女という設定で、
いや、マイクロフトもモリアーティもみんな女と
宝塚とは違うんだが、なかなかステキな小説でありました
ぱぱっと読んで、後腐れなく楽しかったと
満足できるというか、堪能できる感じ
非常にマンガに近いと思われる読み応えであります
読みやすい、面白い、すばらしい

内容は緋色の研究を下地にしつつ、
現代版といっても過言ではない設定のなかで、
ある連続殺人事件をおっかけると、そういうお話なわけでありまして、
あまりホームズものを知らない身分では
十二分に楽しめたように思うのであります
いや、もっと知っているほうが楽しめるのかもしれない
様々なオマージュというか、にやにやさせることが
こめてあったという話なんだが
そのあたりはわからなかったので、なんともいえないのである

まさにホームズといっていいのかわかりませんが、
些細なことから、言い募って推理を披瀝するという
それこれが楽しいことは変わりなく、
これがかなり現代語的かつ、女の子的に語られているので
なかなか楽しいと思われたのであります
特に、ワトソンの造詣が素晴らしくて
ホームズ、ワトソンをいわゆる普通に見ているときに
ワトソンが凡人だといわれているわけだが
これが少女的凡人となると、
こういう表現となるのか、と、むしろ、凡人というのが
ものすごくすっきりと当てはまるようで
このキャラだけで、素晴らしいなと感嘆してしまったのでありました
非常に魅力的といっていいのか、
小説の中ではすばらしい人物であります
近くや、友達や、まして恋人には危険きわまりない人物ではあるんだけども

ちょっとした企画モノという感じからスタートしたのか
二編ありながら、そこまで深く書いていない、
わりと、オマージュを徹底した、ある種のコメディ的読み物のような
そういう軽さがあったわけでありますけども、
あたって、続編が出たりしたら、それはそれで
なかなかどうして楽しそうだなと思わされたりして
軽々と読める推理小説として、あっさり読みくだしたと
そういうお話でありました

おんな城主 直虎  復活の火

2017-08-13 23:36:19 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」
視聴完了していました
序盤からというか、ここ数週間の引きが
まさに、絞られた、そして引き放たれたと
形容してもいいような展開でありました
結局、近藤があかんという話なのか
あの、他愛のないといっては失礼ながら、
そりゃ、あんだけやってりゃ怒るよなという展開からのというのに
なかなか、考えさせられたのであります

何もかもがうまくいっているかのような
ある種、うしろ寒いとすら思えるほど
白々しい展開が、その後のことを予感させて仕方なかったのでありまして
これもまた、嫌だけど、いい演出だなぁと
感心しきりでありました
着々と、何かよからぬことが起きるであろうと
よぎる話ばかりで、政次が本音を吐露したりとか
なかなかどうして、
まぁ、しいていえば、井伊に忠誠をたてていたのくだりは
名演説ではあったけども、あれが
下々に漏れていたというのは、あの瞬間にこれはまずいと
気づくという展開があっても
よかったかしらとか、やや、うがちすぎのことも感じたりしたのであります
ドラマとして、そこまでくどくするとダメなんだろうけど
それくらい、切れ者というか、なんだろうかな
失敗は自分で悟りながらと
そんな姿を見たかったなんて思わされたのでありました

それと並行してといっていいのか、
今川瓦解が滑稽なようでいて
なんというか、残酷な戦国時代を見られて満足なのでありました
結局ああいうものだよなと
あれだけ、今川に尽くしていたかというところから
裏切りが発生していて、また、そこに便宜をはかっていた小野には
一切知らせていないというあたりとか、
さまざまに考えさせられたのでありました
あの内情がわからなかったのもまた、井伊の限界だったと
そういう見方もしたら、また面白かったのか
考えすぎで見当違いなのか
わかりませんけども、ともあれ、楽しく見たのでありました

今月中に、小野の話は片付いてしまうようで
さみしくもあるんだが、楽しみであります

【読書】鉱物マニアになろう

2017-08-12 17:20:58 | 読書感想文とか読み物レビウー
鉱物マニアになろう  著:秋月 瑞彦

なんとなし、鉱山が近所にあるので
うろうろ歩くことにしたわけでありまして、
せっかくだから、そこで何か拾ってくるにしても
鉱物の勉強が必要だろうと
安易な理由で読んだのであります
名前からして、なかなか面白そうだと思ったんだが
これがまた、短いし、端的でわかりやすいはずなのに
なんかしらんが、えらい時間がかかった
いや、難しかった
そういう感想を抱いたのであります

知っているからすると、入門の内容を
実に幅広く扱ったとか、そういう評論になるのかわかりませんが、
地球のなりたち、地殻や地質のこと、それから、
鉱物それぞれの特性と生まれ方、化学式、なりたちといったところ
大から小までという感じで紹介されているのであります
理科の教科書の簡単版という位置づけなのかもしれないと
読んでいて感じたのであります

石、特に鉱物に関して、なるほどなと
本当に基本の部分、結晶とはどういうことなのか、
ガラスとはなんなのかといったところもわかったわけでありますけども、
さらっと地殻変動のところで書かれていた
近々、東北沖で津波を伴う地震が起きるだろうと
地質学的に唄っている一文があって、寒気というか瞠目したのであります
この本自体は2003年成立ということで
なんというか、そういうものだなと感じるのでありました

あとは、そもそもマニアになるためにというか、
マニアになりたい、すでになっているという人は、
その学問の道に飛び込む方法があると
そんなことを書いていたのでありました
このあたりがなかなか面白くて、
やっぱり、この道に限らずだが、道を行くものは
好きという気持ちが一番で、
それによって、どんな立派な施設や、何かで働いていることよりも
よい発見や、楽しみを導くとそんなお話になっていました
たぶん、この先生は本当に好きなんだろうなと
そういう人をまた、何人も見てきているんだろうかと
思いをはせるでもないが、考えるのでありました

面白かったけども、勉強になったかというと
そこらで石を拾ってどうするという実務ではないが
手元のことには役に立たず、鉱物という分野について
興味をもつための一冊であったと
読み終えて感じたのでありました

【読書】ありがとう、うちを見つけてくれて

2017-08-11 21:36:46 | 読書感想文とか読み物レビウー
マンガというか、読み物というか、
そんな感じでありますけども、
映画「この世界の片隅に」の公式ファンブックであります
様々な文化人(主に漫画家)が、この映画に対する気持ちや想いを
つづった、寄せ書きのような本でありました
ある意味、正しい同人誌といったらいいのかもしれない

そんなわけで、なんだろう、この熱量と表現される
好きという気持ちの総体が、本になってできていた
そういうものでありました

漫画家はマンガで書いたり、イラストを寄贈したり、
文筆家は随筆で書いたり、エッセーとしたり、
関係者のインタビューも含めて、
この映画に関わった人、かかわりたい人の総合雑誌みたいな感じで
面白おかしく読むことができた本でありました

映画を見て、面白かったと思って、
あれこれファンの声や、裏話なんかを聞いていたのも手伝って、
この本にまとめられた声といっていいのか、
感想や、想いがまた、見た当時を思い起こさせるようで
なんとも楽しいのでありました
みんな感動するところは、それぞれあるけども、
指摘されるとなるほどなと感心したり、
様々な人が指摘しているとおり、一遍見ただけでは
全体を把握できないのは間違いがないんだなと
改めて思い知らされたりしたのであります

それでいて、こういう凄いものは二度と見てはいけないと書いている人もいて
なるほど、作品との触れ合い方とはそういうものもあるんだなと
想わされたりするのでありました、面白い、
そして、読むほどに、やっぱり私もこの映画が好きだったんだというか
一種の一体感みたいなのに取り込まれていくようで、
これもまた、楽しいのでありました
思えば、これが、この感覚こそが、ヒットと呼ばれた
一連の出来事の正体なのかもしれないと
しょーもないことを考えてしまうきっかけにもなったのでありました

ともあれ、個人的に凄く好きな漫画家である星里もちる先生も寄稿していたので
そのレアなマンガも読めるというお得さに満足しつつ、
一番笑ったのは、のりつけ雅春のマンガでした
そうだよ、あんなんだったよ、すげぇな本当
この人はいつも、こんな感じだけど
いつも面白いと思ってしまう

いい本でありました、何回も読もう

【読書】タルト・タタンの夢

2017-08-10 21:07:47 | 読書感想文とか読み物レビウー
タルト・タタンの夢  作:近藤 史恵

いけないわと思いつつも、シリーズを埋めるようにして
読み進めてしまいました、ビストロ・パ・マルシリーズの最初にあたる単行本であります
シリーズは、追いかけだすときりがなくなるので、
あまり意識しないで読んでいこうと思っているんだが
なんというか、なんだか面白いし、しかも
今回に限っては読み方がさかしまで、最新作から遡っているので
これはこれでいいかなとか、
ちょっとまた、自分に対するよくわからない言い訳を並べたりしながら
ともかく読んだのでメモっておくのであります

題名がタルト・タタンでありまして、
実はシェフは、パティシエもうまいことこなす
甘党の人だとわかって、なるほどなと思わされたのでありました
相変わらず、とてもおいしそうなフランス料理の数々が出てきて、
それをヒントにして、事件というほどでもない
人情話が続くというのは、続シリーズと同じでありました
が、なんだろうか、必ずといっていいほど
バン・ショーという、ホットワインが出てくるので、
そっちのほうが気になってしまったんだが
ともあれ、食べてみたい、飲んでみたいと思わされる内容ばかりでありました

かなり料理の描写が細かく多く、とても堪能できる感じで
読んでいるだけでおなかがすきそうな雰囲気が
たまらないといった読み応えでありました
話も、そこまでディープなものだったり、
哀しい結末や、苦々しい事実なんかが出てくるほどでもなく、
うまく人情話として、ケセラセラな感じで進むので
後腐れないというか、非常に読みやすいという印象でありました

個人的には、二番手シェフの奥さんとの馴れ初めの話が面白くて、
なんだろうか、こういう話、本当にいいなぁ
にやにやしてしまうなと、まさににやにやしながら読んだわけでありまして
人のドラマって、様々なことがあるよなと思わされるのでありましたとさ
考えさせられるほどじゃないけども、
こういうのがとても好きだわといえる感じである

しかし、相変わらずにシェフが頑固そうなのか、
そうでもないのかわからないまま、
でも、推理というか、物事の筋立てた見かたが
素晴らしいと感嘆見舞いつつ
こんなおいしそうな洋食屋さん、近くにないかなと
思わされたりするのでありましたとさ
非常に、楽しく読めました

【読書】オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ

2017-08-09 21:00:20 | 読書感想文とか読み物レビウー
オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ  著:天野 貴元

最近話題の将棋業界でありますけども、
そのプロ棋士になるという狭き門において、
最大の修羅場というか、狭く険しい門であり、
蠱毒の壷でもある奨励会三段リーグという魔境で、
夢破れた人の人生を語った本でありました

この魔境を紹介しているという点だけでも凄いというのに、
読み終わって衝撃だったのが、著者が夢破れた後、
ガンにかかっていて、あまつ、もうお亡くなりになっていると
もう、本当、どうしようもない不安というか、
なんか、つまされるものを覚えさせられたのでありました
読み終わって、面白かったとか思ったけど
亡くなったという事実によって、また
感想の内容が変わってしまうようにも思うのである

と、まぁそれはさておき、
この天野さんが、若き日は天才と呼ばれるほどの才能を発揮して、
それでいて、調子乗りだったという人間らしさというか、
この種の人間に必要とも思われる不遜さみたいなのがあって、
それゆえにか、三段リーグで、若くして入って
とっとと出ていこうと思っていたのが、知らず定着していってしまう
この暗澹といっていいのか、こういうものなんだろうなと
生々しい恐ろしさが淡々でもないが、
実録で語られているので、俄然興味深い内容でありました

結局、夢破れて、奨励会を退会していくわけなんでありますけども、
その間の機微というか、過ごし方と、精神状態、考えていたこと
それらが少しずつ変わっていく、
そして同時に、その時期を過ごした奨励会員たちとの死闘、
ときおりやってくる本当の天才、
そういうさまざまな出会いといっていいのか、
人物評めいた印象を語る部分なんかも面白くて
現在の将棋界を背負ってたっているといっても相違ない、
天彦名人、阿久津、広瀬、戸部、船井といった
同時期から後輩にかかるそれらの人たちの印象がまた
鮮烈というか、これだけあえいでいる中を
確かにそれなりに苦戦しているのだけども
やはり、どこか違う感じで抜けていくというのが
また、なんともいえぬ、恐ろしいと思わされたのでありました

この場所で戦ったという日々が、なんになったかは
まったくわからないのでありますが、
自身も省みながら、それらを考えていく
その一筆として、物凄く面白く読めたのでありますが
まるで、遺言自伝のようにも思えてしまい
なんというか、とても哀しいのでありました

ドラマ的すぎるけども、そういうものなんだろうと
考えさせられてしまうのであります

【読書】台湾の森於菟

2017-08-08 21:20:27 | 読書感想文とか読み物レビウー
台湾の森於菟  著:森 常治

知らないということは恐ろしいことというほどでもないですが、
本当、物事を知らないなと思い知らされたのでありますけども、
タイトルは、森於菟さんという、日本の医者で
台灣大学で教鞭をとっておられたという方であります
そして、この人は、なんとなんと森鴎外のご子息にあたるのだそうであります

そういうわけで、著者は、鴎外の孫になるというわけだ

鴎外が、台灣と関係していたということなんて
まったく思いつきもしなかったのであります
最近、あれこれと知識をむさぼっていますが、
こと、日本統治時代については、意識的に勉強していなかったというのが
正直なところでありまして、なんともこのあたり
自分の中でちゃんと折り合いがつけられていないというのが
情けないながらの理由なのであるが、それはどうでもよい

当然といえば当然、日清戦争で日本が勝ったので
割譲されたのが、この台灣であり、
そしてその時に、日本は世界へ威信を示すため植民地運営の巧みさを喧伝する必要があった
そのために台灣では、インフラ整備もできていれば、
帝国大学を建てて、水利を整えてと、様々に行っていたのでありました
そのときに、当然のように大学医学部が設立されるわけだけども
ここに、森於菟さんが深く深く関わっておられたと
そういうお話でありました

話としては、この森於菟さんの少し前
鴎外の生き様から触れられていまして、
軍医であった鴎外が、台灣の地でも医者としてあれこれ働いていたようなんだが
この頃の台灣という土地が、風土病と感染症等の宝庫だったようで
まぁ、流石熱帯としかいいようがない
土着の病気で、多くの移植した日本人が死んでしまうという状態だったそうで
それをなんとかしようと、格闘しつつも、
夢半ばでもないが、本土に召集されてそのまま、中途で去ってしまう
その後、それに責任を感じたのかそうでもないのか
わからんが、台灣の医療というか医学をなんとかしようと
やってきたのが、子息森於菟だったようであります

森於菟さんが、台灣で、地元の人と日本人を区別なく接して
様々に教育を施したり、あれこれとしていたということから
太平洋戦争での敗戦時には、大いに助けられたことも多かったと
このあたりは、よい話としてよくよく聞くようなことが
たくさんあったようであります
特にこのつながりによって、鴎外記念館の所蔵品の大半が
無事日本に戻ることとなっていたそうなので
なかなか赴き深い内容であります
というか、骨董屋の身分からすると
台灣の古書店をまわったら、鴎外の原稿とか見つかりそうだなと
いやらしいことも考えてしまうのであります
まぁ、そんなことは、既に山ほどの骨董屋がやってんでしょうけどもね

と、脱線してしまいましたが、
森於菟という人が、鴎外の息子というだけではなく、
医学の人として台灣で素晴らしい貢献をし、また
台灣から、多くの世界をリードする感染症分野での発見や研究を行っていたと
素晴らしいお話だったのでありました
これを聞いて、俄然、次に台北いく機会があれば、
大学に乗り込んで、この銅像を拝ませていただきたいなぁと
思ったり考えたりしつつ、またひとつ
台灣のことを知ったというお話であります

世の中、知らないことが本当に多いなぁ

【読書】潮騒のアニマ

2017-08-07 21:21:02 | 読書感想文とか読み物レビウー
潮騒のアニマ  作:川瀬 七緒

何作出ているかわからないけども、
ついつい読みたくなってしまうシリーズ作品であります
今回も、昆虫を使ってというか、昆虫から事件を解決するという
推理とサスペンスを堪能できた
楽しい小説でありました
しかし、毎回オチが同じといったらいいのか、
なんとも、すっきり解決するんだけども、痛ましいという状態なのが
どうにかならぬかと思わされるのであります
面白いからいいんだが、本当にもう、主人公が死んで終わるんじゃないか
このシリーズわ

さて、孤島でミイラとなった謎の遺体が発見された、
そんなお話でありまして、自殺で片付けられていたのが
どうにもそうではない感じになっていたということで、
SNS界隈で炎上して、なんだかんだと大騒ぎと
仕方なく、警察もちゃんと調べだして、昆虫先生の大降臨というお話で
二つくらいの事件が並行していて、なかなか面白く読めました

推理ものとしては、若干というか、結構ずるいなぁと
思わされる内容なんだけれども、物語というか、
話の展開が面白くて、ついつい読み込まされるというか
話にのめりこんでしまうのであります
面白い話を楽しむもので、あまり推理ものというジャンルとして
わくわく楽しむものではないのだと改めて思うのであります

今回は、南米の凶悪なアリが主因というか、
キーになっていて、なかなかいい時期に読んだというか、
この物語上で、ひっそり、ヒアリの単語が出てきたりして
なかなかどうしてと思わされたのでありました
しかし膜翅目は、怖いのばっかりだなまったくもう

離島、村社会、謎の因習という
いかにもな下地なんだけども、蓋を開けてみると
割と最近起きていそうなというか、なかなか
残念な事件であったのが秀逸でありまして
なんとなく、そういう感じかなという予感のまま終わったんだけど
面白い小説だったと感じているのでありました

ラブロマンスめいたことも、
ちらちら出ていたり、そうでもなかったりしているわけだが、
それ以上に、赤堀博士の過去というか
なぜ昆虫で事件に関わろうとしだしたのか
そっちが気になって仕方ないと思ったりするのであります
そこらを描いた小説も、もう出てるんだろうか
気になるんだが、また見かけて読んでいこうと思うのである

おんな城主 直虎  虎松の首

2017-08-06 21:09:30 | NHK大河ドラマ感想
NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」
視聴完了であります
いきなり時代というか、物語が動きだしたという感じで、
寿桂尼に見透かされていた、政次とのはかりごとが
盛大に執り行われてかつ、失敗しそうな雰囲気で
なかなか楽しい限りでありました

物語としては、信じるか信じないかと
そのあたりの葛藤が見所だったようにも思うのでありますが、
今川の苛烈といっても差し支えない対応が
なかなか生々しくて面白かったのであります
まもなく死ぬという大名の、ああいう悪し様というのが、
小領主に過ぎない井伊みたいな家とかには
どう写って、どう対処していたのかが
なんとも、まざまざわかったような気分にもなれて
面白いのである
これを切欠に、離反が相次いだりしたら面白いんだが
どうなんだろうかな、
そうさせないための法だったとも思うんだが、
なかなかどうして

虎松が逃げ隠れするというところと、
井伊が本当に潰れたというこの二変が
キーポイントというか、ターニングポイントとも思える感じだったわけでありますが
今回を受けて、いよいよ来週が本番みたいな雰囲気もあるし
ここのところ目が離せないようにも感じたわけでありました
というか、来週見てみないと
今週だけでは、理不尽をどう受け止めたかという話だけで
物語として面白くないので
とっとと来週の分を見たいのである

そんなわけで、じっくり見ているが、
これという感想も書けていないんだが、とりあえずメモを閉じる

【ドラマ】ブランケット・キャッツ

2017-08-05 18:12:40 | ドラマ映画テレビ感想
NHKの金曜ドラマ枠、ドラマ10でよかったのかしら
ともかく、やっていました
猫が出るときいて、そりゃ見ないとなぁと
その一心で見守ってしまったのであります
なかなか面白かったと思うんだが、
続きもできそうな引きで終わったけど
そこまで必要はないかしらなんて感じてしまったのであります

やもめ男が、妻の残した猫を世話していて、
その猫の里親を探すといったような内容なんだが、
まぁ、里親を選ぶという斬新な展開でもあり、
そこが肝でもあるんだが、
貰いに来る人々が、当然のように、あれこれと問題というか
ドラマがあってというお話で連作でありました

当初、結局一匹も貰われていかないんじゃないかと
不安になるようなところでありましたが、
そんなこともなく、無事といっていいか、
よい里親と出会って出ていく猫なんかもいたりして
なんとも、微笑ましく見守れたのであります

ドラマの内容は、かなり人情味あふれたそれこれだったので
ちょっとそれはなかろうと、つっこみどころもあったけど、
そういう無粋なことはせず、
家族であったり、兄弟であったり、
恋人や夫婦であったりの問題を丁寧に描いて
猫が別に解決していくわけではないという
この押し付けのなさがまた、よかったなぁと
そんな柔らかい印象を覚えたのでありました
最近、くたびれているせいか、これくらいのがいいなどと
思ってしまうのであります

猫が可愛いとか、ステキという内容でもなかったように思うのだけども、
猫の扱い方に関して、やたらと厳しいあたりは好きで、
うちの猫はあそこまでかまってやらなかったなと
反省を促されたりしたのでありますが、
なかなかどうして、でかい猫でも愛らしい素晴らしいものでありました

話としては、駄目男が彼女と同棲するにあたり
猫を飼うという話になるくだりが凄く好きだったのでありますが、
がみがみうるさい大家と、まぁ、よくよく考えても
ペット不可というところで、大家がうるさいと文句いいながら飼うというのは
やっぱりそっちが間違っていると思ってしまうんだが、
そういうことではない、もっと哀しいいわれというか
なんか、あれこれがあってというところが
しみじみ好きだなぁと思わされたのであります
そして、なにげに、人が成長するでもないけど
摩擦があっても、それによってわかり合いと呼んでもよいような
交流があって、それが変化に起因していくというのが
なんともいいなぁなどと思わされたのでありました

最終的には、人死にも関わってしまい
なかなか大変でありましたが、とりあえず大団円で
ステキだったと思われるので
安心して見られるドラマとして、メモっておくのであります

【読書】台湾環島 南風のスケッチ

2017-08-04 22:10:44 | 読書感想文とか読み物レビウー
台湾環島 南風のスケッチ  著:大洞 敦史

なかなか、破天荒な人生を歩んでいる著者による、
台灣一周の読み物でした
実に不思議な読み応えといったらいいか、
旅日記のようでもあるんだが、物語のようでもあるし、
観光紹介文のようでもある
なんと形容していいかわかりませんが、
それでも、台灣について、全土を網羅した
非常に面白い本でありました

実地で見てきたこと、実際に体験したことがベースで、
大きな感情や、話運びに起伏が存在しないので
実に穏やかに読み進められる文章でした
朴訥とは違う、それでも現地の人とよく親しんだ感じや、
その場で、様々な出会いと面白いことがあってと
どこか、離れたというでもないけども、
不思議な距離感で文章が紡がれていて
興味深いというか、面白いのにしっとりとした読み応えでありました

台灣全土をまたにかけてというところが素晴らしく、
よく聞く景勝地もさることながら、台東や離島など、
その他の地域でも、僻地といって差し支えないような
かなり奥まったところを訊ねて歩いていて
非常に面白そうなのでありました
まだまだ、行きたいところが山ほどあるんだな

とはいえ、自分が行ったことのあるところについて
その詳細な描写と、補足解説が面白くて、
台南から、安平にかけてのことは
興味深いし、知っているとさらに楽しいと
そんな筆致であったように思うのでありました

かなりレベルが高いというか、よりディープな楽しみ方をしている
その姿を見られたというだけで、台灣フリークとして
満足できる一冊だったと思い、満足して読み終えたのであります

【読書】ヴァン・ショーをあなたに

2017-08-03 21:48:07 | 読書感想文とか読み物レビウー
ヴァン・ショーをあなたに  作:近藤 史恵

以前にマカロンはマカロンという短編集を読んだ際、
これがシリーズ物だと知りまして、その前の編を探して
たどり着いたのがこの本でありました
これがシリーズの何作目になるのかはわかりませんが、
フランス料理を具材としつつ、人間関係というか
人生や、人との付き合い方についてあれこれと考えさせられる
ちょっとだけ推理のある短編集でありました
相変わらず面白いんだが、自転車競技シリーズとの差というか
違いに驚かされるばかりなのであります

相変わらず、わからないけども凄いおいしそうなフランス料理の数々と
それにまつわったり、お店にまつわったりする人たちのやりとり
そして、決して笑って終わる話ではない、少し、
ぴりっと辛いというか、爽やか満足とは違うラストを迎える短編が
あれこれと堪能できて素晴らしかったのでありました

いくつもいい小編がありましたけども、
個人的に気に入ったのは、猫の出てくる話で
やっぱり猫に出てこられたらまけだよなと
勝手に一人ごちたりしつつ、
猫愛からのどたばた、そして、思いも寄らない結末みたいなのが
ほんわかと楽しく読めたのでありました
人の優しさというではないが、
ある種の身勝手でもあるんだけども、なかなかどうして
考えさせられるところというには
少し無理がある内容ではあったが、猫がやたら可愛い描写だったので
どうでもよいのである、秀逸だ

そればかりでは当然なくて、
新しいパン屋さんが出来るというときに、
人のコンプレックスから、真理というか
本当のことというのが紡ぎだされるという不思議さを描いていたのも
凄い面白くてというか、料理がエッセンスなのは間違いないけども
それ以上に、人間ドラマが凄い面白いなというか
共感といったらいいか、なんとも、切ない気持ちにさせられるところで
素晴らしいと感じたわけであります
読んでないとなんのことかわからんが、
家族など、親しい人を思う心というのは、あるとき
ひょんなことからわかったりするもんだと
そういう話が好きなのである、人情話なのである

そして、表題作もなるほどなぁというオチであったり
短いので、そんなに凝った謎解きではないけども
少しばかり、人間臭い謎があって、
それをシェフが鮮やかに解決してしまうというところが
お洒落といってはアレだけども、すらっと読めて
とての楽しく読み終えられるという
手軽さとともに、苦い感じのお話も織り交ぜて楽しめる
いいシリーズだと感じ入ったのでありました

嫌な客でもないが、そういう折り合いをどこでつけるか
どこで腹を立てるかというのもまた、考えさせられるところでありますね
人生、楽なことなんざ、どこにもないのだよと
言ってくれているようでもあるし、そんなことはまったくないのかもしれない
読み手によるなと、独り言も記しておく

【読書】静おばあちゃんにおまかせ

2017-08-02 21:50:17 | 読書感想文とか読み物レビウー
静おばあちゃんにおまかせ  作:中山 七里

最近小説ばっかり読んでるなと
若干偏った読書に危機感を抱きつつも
非常に面白かったので、どうでもいいやと
思わされてしまった一冊であります

本格というか、非常に面白いミステリー作品で、
トリックと動機との解明が、私のレベルに合っていて
物凄く面白かったのであります
古典的というか、とてもベタな展開で推理が重ねられて
最後にみんなを集めてネタ晴らしがされるという感じが
テンポもいいし、面白いしと
言うことなしだなと思わされるほどでありました

一冊で、数編の事件が扱われるのでありますけども
最終的には、まとまったシリーズとして大団円といった感じ、
しかも、最後の最後はちょっと衝撃的すぎて
驚き通り越えて、そんなのありかと思わされたりしたんだが
そこも含めて、面白い作品だったと感じるのであります

刑事が、女子高生に推理を助けてもらってという
これまた、ドラマなんかにうってつけっぽい舞台なんだけども
もう一人、安楽椅子探偵めいた女子高生のお婆ちゃんがいて、
この推理がまぁ見事というか、
そこにいたるまでに、だいたいヒントは出したから
さぁ解いてみなさいという感じなんだが
なかなかどうして、ピンとこないというか
いや、なるほどなぁと、論理立てて解明されていく最中に
自分の鈍さをつかれるようで
楽しいのでありました、そうそう、こういうのがいいんだ
実際にそうなるかという疑問をさしはさむほど
私は頭がよくないので、なるほどなぁ、すげぇなと
このカタルシスでもないが、とても楽しいのである

そういう内容を物凄く堪能できるかと思えば、
もうひとつ、おまけでもないけど、ラブロマンスも進行していて
これはこれで、面映いんだが面白いと
コメディにも近いのりでそのあたりも楽しめて
実に娯楽を楽しめたと思える一冊でありました

推理ものが好きだなと、最近
つくづく自分について思うようになってきたのである