本当は、なぜこの本を読もうと思ったのか、そこから書き始めたいところなのですが、やたら長くなってしまいそうなので、今回は読んだ本と見た映画の感想を、いつもながら簡単に書いておこうと思います。
19歳のティッシュと22歳のファニー。幼馴染の二人でしたが、お互いがこので一番自分にとって愛おしく美しい人なのだと理解したころ、二人は愛し合い、そして結婚に向けて二人で暮らす部屋を探し始めます。
そこに降ってわいたようなファニーのレイプ犯としての逮捕。
いきなり婚約者は、刑務所の中に入れられてしまいます。
どうしてそんなことが起きてしまうのかという流れは、その前の親友ダニエルの口から語られていたので、同じことが起きたのだと読み手にはわかります。
要するに白人警官たちは、黒人たちに罪を押し付けて検挙すれば、それで終わりです。目をつけられたらお仕舞という感じがします。
本当の犯人は野放し。
治安はどんどん悪くなっていっても無理はないことですよね(と、そんなことは一言も書いていませんが。)
この作品が書かれたのは、1974年。
1970年代のハーレムが描かれています。
思わず、今とその時代は違うよねと思いたくなりますが、どうなのでしょうか。
私的には、やはりこの時代背景は大事なのだと思いたいです。
冤罪で檻の中に入れられた恋人のために、ティッシュとその家族たちは奔走します。そこに描かれているのは、清々しいほどの家族愛です。
特にティッシュが妊娠を家族に告げるシーンは、胸が熱くなります。
ただ本の中の彼らの言葉は、かなりきつくて、時には下品に感じてしまう場合もあります。もちろんそれは私が感じた感覚で、それこそが生きる場所の違いが表れているのかもしれません。
それでも彼らは、娘とその婚約者、生まれてくる孫のために働いてお金を稼ぎ、弁護士費用や、被害者女性から正しい証言を得ようと、その彼女が居るプエルトルコに飛ぶ費用などを捻出します。最初はぼんやり構えていた弁護士も、あまりの理不尽な事件に本腰を入れ始めます。
弁護士も気合を入れて、母はプエルトルコに飛ぶー。
さあ、いよいよな展開になってきたぞと、普通はなるところですが、この物語はサスペンスではありません。
「恋人たち」とタイトルにあって、ラブストーリーメインかというと、そうではなく、この物語は1970年代のニューオリンズの黒人たちの生活を描いたもので、そして私には、ティッシュのその世界でも堂々と生きていこうとする成長譚のように感じたのです。
ネタバレになるので、この先のあらすじは書けませんが、変な言い方ですが、静かでない余韻が残ります。
生きていく人生で、ドラマの終わりのような終わりはないと思います。常に何かが終わりそして何かが始まっているからです。その始まった何かが、自分の新たなる世界の扉を開ける、または自分の人生の戦いの幕が開く・・・この物語はそんな終わり方をしていたなと感じました。
読んで良かったと思いました。
ジェイムズ・ボールドウィン←作者についてはここ
あと4日で終わってしまう、GYAOに映画がありました。間に合わなかった方は下記のプライムもしくはDVD(レンタル落ちでお安いです。)でどうぞ。映画の感想はこれの下からです。
もちろん省いている部分もありますが、ほぼ原作に忠実に作られているこの作品は、ラストだけが少し手が加えられています。
それでもジェイムズ・ボールドウィンという人の作品が原作であるということを知らずに、冤罪事件に家族で戦う物語(ある意味間違ってはいない)と思って映画を見続けた人には、ラストには肩透かしを食らう方もいらっしゃると思います。事実、レビューなどを読んでいると、それで☆の数が少ない方もいたようです。
私も、原作を読まずに先に映画を見ていたら、「あれっ?」と思ったかもしれません。
最近は、ネタバレを嫌って、ほとんど情報を入れていかない私ですが、時々それで失敗しています。ある程度の予習というものは、時には必要かもしれませんね。
そしてこの作品の感想ですが、自分の頭の中で描いていた以上の美男美女で、感情移入がしやすかったです。
そして映像が美しい。監督は「ムーンライト」でアカデミー作品賞を受賞したバリー・ジェンキンス。
見て良かったと思いました。