38年も前、1972年発行の『別冊太陽 小倉百人一首』。
あまり開いた形跡もなく、ページの間からは古書のにおいがただよう。
やっと今になって、それも荷造りの合間にページが繰られるなんて。お気の毒なこと、こんな私に買われてきては、物の役に立つこともできなかった一冊であった。
目にとまった一枚の写真は、入江泰吉氏が撮った「平城宮跡の夕ぐれ」とある光景。
「平城宮跡は足元からさえぎるものもない大空間で、夕暮れと入れちがいに月の出となる。春日山の稜線がほの白くなり、見るまに大極殿跡の一本松が浮かび、草っぱらに光が広がる」
16歳で唐に留学し、35年の半生を過ごして異郷と別れる夜、阿部仲麻呂が思いを馳せたというのが故郷、奈良春日にある三笠山の月だ。彼がはやる心を託したという望郷の歌。
あまの原ふりさけ見れば春日なる三笠の山にいでし月かも
帰国の途についたが海難で果たせず、異国に眠る。月は今も変わることなく白く冴えている。
世界遺産平城宮跡、現在は北側に朱雀門が構えられている。大極殿の復元も進むということで今年の平城京遷都1300年祭のメイン会場となるようだ。
異国の地で生きるということ…。珍しくはないが、娘とは言え、わかりきれない部分はあるもんだ。まっ、それぞれの人生、これで一件落着としておこう。
今年は奈良がいいだろうなあ~
差し込みの写真を楽しみながら、一方でせっせとオーストラリア行きの荷造りに励むという
へんてこりんな半日を過ごした。
(近鉄奈良行き 車両に連結でこんなデザインがあるものも…)