京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

  課外授業

2010年01月23日 | 日々の暮らしの中で
「じゃあおれは死んじゃうよ」
娘の文(あや)を相手にこのように話して露伴は亡くなったと言うことは知られている。慶応3年~昭和22年、80歳で亡くなるまで活躍した幸田露伴。今日は、「幸田露伴―至上の愛」という内容で『「文学」の課外授業』が開講された。

ここ100年と言われてまだ歴史の浅い「近代文学」。大学の授業では、どのような題材がどのように料理され講義されているのか。その状況を学外に持ち出す「課外授業」として開講してもらえるのだ。一回1000円当日申し込みで学ばせてもらえるというありがた~い、楽しい一時間半の“授業”だった。

露伴22歳の出世作『風流仏』を取り上げ、尾崎紅葉の『金色夜叉』の話題、正岡子規の『月の都』の最後を読みながら3作品に共通するものなどをおっていかれた。

お金(世俗)よりも愛。単純に愛を讃え、ハイカラでロマンチックな傾向にあった当時の人たち。人間の世界を越えた現実にはありえない話ー10年後の月を涙で曇らせる力を持つ男や月の都に帰る男などの話が好まれたのだろうか。
作品『風流仏』も、世俗でかなわない愛を死んであの世で実現させる、「至上の愛」の小説であると。

    

やがて、登場人物が読者と同じ等身大になっていき、スーパーマンが不在になった代わりに、新しい「心の世界という不思議」が現れた。心の世界を描く。心の世界を覗く仕掛けとして働いたのが近代小説。
田山花袋の『蒲団』は、中年の“先生”と言われる人の心のうちも、こんなもんなんだ!
と、心の不思議への関心を高めた作品だと説明された。

隣人の心のうちも、実は…わからない…。
今最も覗いてみたい最大の関心は小○氏の心でしょうか…って。

近代文学の出発に関わる「坪内逍遥」は、今日の講師、坪内稔典先生のおじいさん。
気分はちょっと豊かに…。 「課外授業」の響きもよくお得感も大。

             (左・「金色夜叉」の口絵、右・「蒲団」の口絵)

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする