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冷たい風にもかかわらず、どこからともなく沈丁花の香が運ばれてきます。四条まで出た帰り、御池で用事を済ませた後はわざわざ通ったこともない筋を選んで1時間ぶん歩き、それを本日のウォーキングと当てました。手先が冷たくなるほどで、途中からバスを利用しました。
ちょっと寄り道してみた六角堂。地面をこすりそうなまでに葉が垂れ下がっている「地ずり柳」には、まっ白な花が咲いています。嵯峨天皇がこの柳の下で妃に出会ったという言い伝えから縁結びの柳とされて、枝々に良縁を願っておみくじが結ばれるようです。爽やかな浅緑色に、はっとさせられるものがありました。どうかすると花見の時期を例年より少し繰り上げないとならない勢いですが、やはりまだ蕾は固い。「真如堂へぜひ行って御覧なさい」とT子さんに勧められています。
「 □ のなかには、□ がいる(ある)。」
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「じぇしかのなかには、しかがいる。」と見つけたJessieは、「きょうかしょのなかには、かがいる」と、もう一文。
一昨日、娘から送られてきた写真の中に混じっていたこの1枚、Jessieが通う日本語学校での課題でしょう。これを見て、何かに似ている…と思い出しました。『91歳の人生塾』(清川妙)に収められている『聞こえない葦』と題した、妙さん36歳の時の手記でした。耳の聞こえない息子さんをどう育てたか、婦人雑誌に綴られた経験の中に、よく似た「ことば遊び」が挙げられていたのです。習ってきたことばの範囲を広め充実させようと、家族ぐるみで試みた遊びだったそうです。
「へびはうなぎに」「のれんはカーテンに」「テレビはラジオと映画に」-「似ている」といった「似てます遊び」。「葉ははっぱとも言います」式の「とも遊び」。「パパは鬼よりかわいいね」と逆襲したという比較の「より遊び」。さらには、「同音異義」「反対語集め」など。息子さん8歳の時だったと。
よく似たJessieの課題はさしずめ「なか遊び」とでもいえるのでしょうか。極端に授業時数の少ない日本語学校です。親の希望がどこまで反映されるか、学校のカリキュラム、子供の意欲、様々な温度差もありそうです。「どんなに微細な水の一滴でも、たゆまず、あきらめず、楽しみながら溜めていけば、いつかは器に溜まっていく」」と妙さん。