吉田兼好が『徒然草』を執筆してから亡くなるまでの20数年の間、散文を一つも書かなかったのははなぜだろう。
この疑問が発端となって光田和伸先生が出された答えは、「『徒然草』は兼好が愛した女性との思い出を書き残したくて書いたものだ」というものでした。ただ、結婚(の約束をしていても)できなかった女性のことを当時の社会で男が書くことは世間体もあって許されなかったので、8つの短編を綴って多くの話の中に紛れ込ませた。筋を通せば、見えてくるものもある、とおっしゃいます。今日の講座でのテーマは、その8編の短編を並べ替えてみることで、兼好の恋の面影を探る、兼好自身の恋愛体験の告白を読み取るという試みでした。
先ずは、「雪のおもしろう降りたりし朝(あした)、…」と書き起こされている31段から。要件があって女性に出した手紙の返事には、(こんなに美しく積もった雪を、あなたはどんなふうに見ていますか、とひと言も聞いてくれないなんて、なんやの)とありました。〈雪の積もった日〉には二人共通の思い出があるらしい、と気をまわして解釈してみる。どこかに書かれているはずだと探したところ、それは105段にあった。
というわけで105段は、「北の星陰に消え残りたる雪の、いたう凍りたるに、…」と始まり、女性の部屋に近い御堂の廊の長押に尻をかけて、ただただお話をすることを楽しんでいる(「物語す」)様子が描かれていた。知り合って間もない、初逢瀬といったところの場面。(だって、もっと親しくなったら?? 寝物語でしょ? ちなみに、近代になって結婚しなかった女性のことを書いた初めての作品は田山花袋の『布団』のようです。)
自伝的恋愛小説・8編の始まりは105段。次に31段がきて、それから1年ほどが巡る間のこととして37段と続く。知り合って間もない頃の様子を思い浮かべ、都の女性の所作を〈よき人〉と思う兼好がいる。この交際がいつか終わるかもしれないという思いを男に見せている女の姿を読み取って…。女性が発病したことが読める36段、…と読み進めていったのでした。和歌の文学の約束事が挿入されている部分の読み取りかたは興味深く、楽しくもちょっと切ない恋愛ドラマは進行中。葬儀を済ませ、兼好の出家までの過程が次回のお楽しみです。
京都御苑の梅はいかにと立ち寄ってみる前に、蘆山寺(写真・上)をのぞきました。下の写真は寺の南隣の紫式部邸宅跡。式部も御苑内を歩いて御所へと出勤したようですよ。式部はこの地で育ち、結婚生活を送り、『源氏物語』を執筆した、と。梅は早咲きの1本だけが開花していましたが、まだまだです。
この疑問が発端となって光田和伸先生が出された答えは、「『徒然草』は兼好が愛した女性との思い出を書き残したくて書いたものだ」というものでした。ただ、結婚(の約束をしていても)できなかった女性のことを当時の社会で男が書くことは世間体もあって許されなかったので、8つの短編を綴って多くの話の中に紛れ込ませた。筋を通せば、見えてくるものもある、とおっしゃいます。今日の講座でのテーマは、その8編の短編を並べ替えてみることで、兼好の恋の面影を探る、兼好自身の恋愛体験の告白を読み取るという試みでした。
先ずは、「雪のおもしろう降りたりし朝(あした)、…」と書き起こされている31段から。要件があって女性に出した手紙の返事には、(こんなに美しく積もった雪を、あなたはどんなふうに見ていますか、とひと言も聞いてくれないなんて、なんやの)とありました。〈雪の積もった日〉には二人共通の思い出があるらしい、と気をまわして解釈してみる。どこかに書かれているはずだと探したところ、それは105段にあった。
というわけで105段は、「北の星陰に消え残りたる雪の、いたう凍りたるに、…」と始まり、女性の部屋に近い御堂の廊の長押に尻をかけて、ただただお話をすることを楽しんでいる(「物語す」)様子が描かれていた。知り合って間もない、初逢瀬といったところの場面。(だって、もっと親しくなったら?? 寝物語でしょ? ちなみに、近代になって結婚しなかった女性のことを書いた初めての作品は田山花袋の『布団』のようです。)
自伝的恋愛小説・8編の始まりは105段。次に31段がきて、それから1年ほどが巡る間のこととして37段と続く。知り合って間もない頃の様子を思い浮かべ、都の女性の所作を〈よき人〉と思う兼好がいる。この交際がいつか終わるかもしれないという思いを男に見せている女の姿を読み取って…。女性が発病したことが読める36段、…と読み進めていったのでした。和歌の文学の約束事が挿入されている部分の読み取りかたは興味深く、楽しくもちょっと切ない恋愛ドラマは進行中。葬儀を済ませ、兼好の出家までの過程が次回のお楽しみです。
京都御苑の梅はいかにと立ち寄ってみる前に、蘆山寺(写真・上)をのぞきました。下の写真は寺の南隣の紫式部邸宅跡。式部も御苑内を歩いて御所へと出勤したようですよ。式部はこの地で育ち、結婚生活を送り、『源氏物語』を執筆した、と。梅は早咲きの1本だけが開花していましたが、まだまだです。
高校入学後の古典の第1時限から古典の虜状態です。
「徒然草」は親しまれている作品ですが、時代の中に文学があることを思うと、
目を見開かせてもらうこと多いです。
ホンモノに触れること、貴重な体験だし素敵な時間ですね。
古典の奥深さになにやら懐かしさやらゆかしさ
やらいろんな感情がごちゃまぜになります。
私には古典をひもとくことは難しいです。
さて、吉田兄弟はますます円熟味を増しているよう
でした。多方面に才能を開花させているようです。
俳句は句会はせいぜい2つですね〜。私はそう思いますが、切れない事情もありまして〜。
一人読みの域を超えて深く、多面的に教えられ楽しませていただいております。
結婚を考えていただろう女性とのお付き合いの思い出。
隠してでも書き残したかったとされる恋物語を1年間の講座の締めで味わってみます。
徒然草、親しみ易くも両極端を記されたり趣あります
雪にちなみ
忘れられない気心あう彼女
しかし叶わなかった恋
兼好さんの思想のきっかけになったのでしょうか
次回も楽しみにしています。ありがとうございました。