京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

百萬合力とは職人たちの心意気

2022年10月27日 | こんな本も読んでみた
日本最初の官寺、大阪の四天王寺の五重塔は、兵火や雷火で7度も破壊されつつよみがえってきた。そうしたなか、地震によって倒壊したことはない。
百済から渡来した金剛重光によって建てられた。金剛一族は〈魂剛〉と名前を変え、1400年にわたって匠の技術を伝えている。金剛組創業は578年。8つの組があり、6組は関西が拠点だそうだ。


現在の五重塔はコンクリート製だそうで、魂剛組の作ではない。
当然?心柱がない。礎石の上に建つ、塔の中心を貫く柱がないのだ。また、全ての五重塔は礎石の中に釈迦の遺骨を安置しているが、ではこの塔に仏舎利は?

一本目の柱に二本目、さらに三本目が、「貝の継ぎ手」という工法で継がれ、ただ礎石の上に立っている心柱。立っているだけで、倒れないように五重塔とつながってはいるが、塔の何かを支えているわけではない。これまた不思議。
現代―安土桃山―平安初期―江戸の終わり―平安半ばー江戸の初期―聖徳太子の御代―現代、と時代を前後させつつ職人たちの物語はつながり、塔の完成へと向かう。各章ごとに時代も登場人物も、作事の内容も異なっている。

百萬合力の宝塔とは五重塔のことを言うのではなく、【艱難(かんなん)が満ちる世であっても、五重塔を再建する力を職人ひとりひとりがもち、それを伝える。その心意気こそが、百萬合力の正体だ】と思う、という言葉が心強い。

四天王寺ってどこにある? どうやって行く? 御堂筋線へ、阪急梅田駅で降りて行けるだろうか。それほどに一人では心もとない大阪の地。コンクリート製の五重塔の一見の価値はいかに。

読み終わる頃だったか、こんな記事が新聞に掲載された。


400年前の修理に関わった大工さん、うっかりではなく、わざと隠し置いたと考えるのも楽しいのではない?



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