田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 196 おクジラさま - ふたつの正義の物語

2017-10-21 20:33:33 | 映画観賞・感想

 「クジラのまち」として知られる和歌山県大地町。太地町のイルカ追い込み漁を批判的に描いた米映画「ザ・コーヴ」がアカデミー賞を受賞して以来、太地町は世界中から批判の矢面に立たされてしまった。そんな太地町の漁民たちの戸惑い、反捕鯨団体シーシェパードの監視活動の様子を追い続けるドキュメンタリー映画である。 

                  

 久しく映画を観ていなかったので、私の中で渇望感が湧いていた。そんな中、北海道新聞に映画「おクジラさま」の記事が掲載され、興味を抱いたので10月20日(金)午後、「ディノスシネマズ」札幌に足を運んだ。

 映画はニューヨーク在住の日本人映画監督(札幌出身の佐々木芽生監督)が「ザ・コーヴ」公開の7年後にどちらにも肩入れしない中立の立場から、両者の言い分も含めて太地町の様子を描いたものである。
 映画ではさらに米人ジャーナリストを狂言回し的に登場させている。彼もまた欧米社会の価値観とは一線を画し、この問題を中立的に考えようと太地町に居住してウォッチする。

             
             ※ 太地町にやってきて抗議行動を繰り返すシーシェパードの人たちです。

 両者の言い分は相容れない。
 シーシェパードの側は、クジラ(イルカ)は人間に近い動物であって、これを殺戮して食用にしたり、生け捕りして水族館などに売るのは残酷極まりない行為である、という。
 一方、太地町側はクジラ(イルカ)漁は400年以上前から続いてきた漁であり、食習慣についても日本に根付いた食文化であって、外国からとやかく言われる筋合いのものではないと主張する。

             
             ※ シーシェパードの抗議行動に困惑する太地町の漁師たちです。

 映画はまだまだいろいろなシーンや言い分が出てくるが、この問題についてあるいはどなたかから非難されることを多少は覚悟しながら、少しこの問題について考えてみたい。
 私は幼いころ、当然のようにしてクジラの肉を食していた一人として、世界の中で日本のクジラ漁が規制されてきたことに少なからず不満を抱いていた。私たちが幼少の頃に「捕鯨オリンピック」などといって、資源保護の思想もなく乱獲していた時代は当然反省しなければならない。しかし、今資源は完全に回復し、適切な資源管理のもとでのクジラ漁を規制する何ものもないのではないかと思う。しかし、欧米においては「クジラ」を特別視している感があるのだ。
 太地町の問題もその延長線上にあると思える。わざわざ欧米から日本の片田舎である太地町にやってきて、エキセントリックに言葉汚く太地町漁民を罵る姿には滑稽ささえ感じてしまう。

             
             ※ 中立的な立場から取材をする米人ジャーナリストです。
 
 映画は、タイトルにもあるとおり、どちらも正義をかざして譲らないことをレポしている。しかし、今のところ潮流としては、太地町は徐々に追い詰められている感もある。
 そのことに対して、件の米人ジャーナリストは、太地町(ひいては日本)は情報発信においてシーシェパードに大きく後れをとっていると指摘する。
 私は彼の指摘は日本の最大の弱点を指摘しているようにも思える。
 情報が人間の思考に影響を与えることの大きさを私たち日本人はもう少し重視する必要があるのでは、と教えられた映画だった。