田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北海道のスマートアグリの今

2017-10-07 16:54:00 | 講演・講義・フォーラム等
 北海道では今、施設内で野菜などを栽培し、収穫する植物工場が各地に建てられているという。その一つ、JFEエンジニアリングが進める大規模なスマートアグリ事業の実態を聞いた。 

     
     ※ JFEが北海道に初めて建設し、稼働させた苫小牧の植物工場の全景です。

 Smart(スマート)…、名詞としては「(洗練された)知性、頭脳、理解力」を指す。また形容詞としては、「賢い、抜け目ない、利口な、洗練された、しゃれた、きびきびした、活発な」などを表す言葉として使用される。
 一方、agri(アグリ)は、agriculture(アグリカルチャー)を短縮したもので、ずばり「農業」を表す。だから「スマートアグリ」とは、「これまでにない洗練された賢い農業」とでもイメージできるだろう。

               
               ※ 講師を務めたJFEエンジニアリングの顧問の三部英二氏です。

 10月3日(火)午後、道民カレッジの主催講座「ほっかいどう学 かでる講座」が開講され受講した。
 本年度第8回目となる今回は、「北海道におけるスマートアグリ事業 ~ 札幌で新しい農業始めます ~」と題して、(株)JFEエンジニアリングの北海道支店の顧問を務める三部英二氏が講師を務めた。
 三部氏は札幌市でずーっと農業分野の技術開発や農業行政に携わってきた方で、札幌市を退職された後、JFEエンジニアリングが北海道に植物工場を建設するに伴い、請われて顧問に招かれた方のようである。
 JFEエンジニアリングの事業分野は環境・エネルギー・快適社会創造・社会インフラ・電力販売と多岐にわたり、植物工場への進出は会社が所有するさまざまな分野のノウハウを総動員して取り組むことを目指しているようだ。

               
               ※ 植物工場で栽培されているミニトマトです。

 三部氏によると、植物工場には三つのタイプがあるという。
 それは、①完全人工光型、②太陽光利用型、③太陽光・人口光併用型の三つのタイプである。現在は、①と②のタイプが互いに200前後が立地されているが、これからは①の完全人工型が主流になるのではないか、と予想した。その理由は、①は他産業からの参入がしやすいからと説明された。
 しかし、JFEエンジニアリングが進めているのは②の太陽光利用型による野菜の生産、並びにそのシステムを開発し、そのノウハウをシステムとして海外にも輸出することを視野においているという。

               
               ※ こちらは同じく苫小牧工場で栽培されているベビーリーフです。

 JFEのスマートアグリシステムは、オランダで確立された「高度栽培制御システム」を採用し、そこに「日本版栽培ノウハウ」を加味したうえで、「地域特性に応じた多様なエネルギー活用(ex. ガスエンジン、バイオマスボイラ、温泉熱など)」によって、多様品種の通年栽培を行っていくシステムだという。

 JFEは2014年に苫小牧に工場を建設して稼働させ、トマトやベビーリーフの生産・出荷を行い、道内のデパートやスーパーはもとよりシンガポールにも出荷するまでになってという。
 JFEはさらなる生産拡大のため、昨年12月札幌・丘珠地区に新工場を建設し、札幌においても植物工場が稼働中とのことだった。

             
             ※ 昨年11月に札幌・丘珠に完成したJFE札幌工場です。

 三部氏は植物工場の利点を次のようにまとめた。
 ① 生産収量の増大化
 ② 供給量の安定化
 ③ 品質の安定化
 ④ 安全化
 ⑤ 資源の有効利用
 ⑥ 労働力確保の容易性

 三部氏は強調する。世界の食糧危機が目前に迫る中、植物工場はその対策として有効な一方策であろうと…。
 ただし、初期投資が膨大になる植物工場は個人や小さな法人が参入するにはまだまだ壁が高いように思われる。
 JFEとしては、システムを海外や他企業への売却を目指しているとも聞いた。
 いずれにしても、今後こうした植物工場で生産された農産物が私たちの食卓に多く上がる日が来ることは間違いないと思われた。