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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 新聞記者 №273

2020-03-17 15:34:10 | 映画観賞・感想

 題材が題材だけに、画面は静かに進行するが非常に緊迫感に満ちた映画だった。この映画が今年の日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞したことはある意味でエポックメイキングなことであると報じられていたが、そのあたりについても考察してみたい。

        

「新聞記者」(2019年制作)は2020年の日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した作品である。この作品の原作は、東京新聞の望月衣塑子記者の同名のベストセラーを原案としたものである。伊藤記者というと、2017年6月の官房長官記者会見において加計学園問題に関して執拗に質問を繰り返したことで注目を浴びるようになった記者である。

 映画は医療系大学の新設計画を巡って、極秘事項があることを投書で知ることになった女性記者・吉岡エリカ(韓国の演技派女優シム・ウンギョン)がその真相を突き止めようと調査に乗り出す。一方、内閣情報調査室の官僚・杉原拓海(松坂桃季)は、現政権に不都合なニュースをコントロールする任務に就いているが、吉岡からの取材協力要請に対して良心の呵責をおぼえ葛藤する。

          

 このあたりの話の流れが、現実に日本の政界を追い続けている望月記者の著書が原案となっていることから、いかにも現実の政界の出来事を映し出しているかのように見えることから一層緊迫感が高まり、観ている者をぐいぐいとスクリーンに引き込んだ。

 私は松坂桃季という俳優については人気俳優だと耳にしてはいたが良く知らない人だった。彼はこの映画の杉原というシリアスな役を良く演じていたと思う。この「新聞記者」が作品賞を受賞したと同時に最優秀主演男優賞を受賞したことは納得できた。対して、吉岡役を演じたシム・ウンギョンは韓国の演技派女優という触れ込みだったが、日本語の発音に若干難があり、演技自体もそれほど突出感を感じず、最優秀主演女優賞を受賞したことには若干違和感が残った。

          

 さて、この「新聞記者」が日本アカデミー賞作品賞を受賞したことについてだが、日本アカデミー賞は今回で43回目を数える歴史ある賞なのだが、「受賞作が大手配給会社の作品の持ち回りになっている」だとか、「出来レース」だとか、あまり良い噂が流れていなかったようだ。そうした中での今回の「新聞記者」の受賞である。この映画は実際大手シネコンでは上映されなかった。札幌ではキャパの小さい「シアターキノ」で上映されただけだった。(受賞後にシネマフロンティアでアンコール上映がされたが…)さらには題材が政権批判ともとれる内容である。このような映画が一年間の最優秀賞に選定されたというニュースは、ある意味で大きな話題だったようだ。

 そうした意味では今回は良くない噂を払拭し、真の意味でその年の最優秀作品が選定されるエポックメイキングな年となってほしいと思う。

 映画のキャッチコピーは「この映画を、信じられるか-」だった。信じるから、信じないかは、観る者それぞれだと思う。しかし、杉原(松坂)の身になって思うと、彼の葛藤が良く理解でき、最後までハラハラドキドキの展開はエンターテイメントとしても十分にその面白さを感得できる映画だった。