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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 永遠の〇(ゼロ) №269

2020-03-12 16:45:47 | 映画観賞・感想

 戦争を賛美するような映画か否か、議論が大きく割れたと聞いたが、私が見るかぎり戦争を賛美していたようには見えなかった。ただ原作者が過激な発言で世の中を騒がせているあの百田尚樹の作品ということで私の中にバイアスがかかっていたこともあり、素直に映画に集中できなかったきらいがあった…。

    

 相変わらず私の巣ごもり状態は続いている。一昨日、本日と退職組織の会議で外へ出た以外はずーっと家の中で過ごしている。本日は会議の帰りにDVDのレンタル店によって数枚のDVDを借りてきたくらいである。

 さて、映画鑑賞・感想に話を戻そう。

 今回観賞した映画「永遠の〇」(2013年制作)は2015年の日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した作品である。原作は百田尚樹で彼のデビュー作といわれている。

        

       ※ 百田尚樹のデビュー作「永遠の〇」の装丁です。

 映画は、佐伯健太郎(三浦春馬)という青年とその姉慶子(吹石一恵)が自分たちの祖父と思っていた人が彼らとは血の繋がりがなく、本当の祖父は太平洋戦争で特攻によって戦死した宮部久蔵(岡田准一)だと知り、久蔵について調べ始める、というところから始まる。

 姉弟の二人は、久蔵の元戦友を訪ね歩き、聞き取ることによって久蔵の実像を次々と知ることになる。そして二人は久蔵が凄腕のパイロットであり、生きることに強く執着した人物であったことを知る。そんな久蔵がなぜ特攻に志願したのか。聞き取り調査と重ね合わせるように、久蔵の軍隊での生活や空中戦の様子が挿入されていく。

      

     ※ 宮部久蔵の孫にあたる佐伯健太郎(三浦春馬 左)と慶子(吹石一恵)です。

 そして最後に、戦後60年にわたって封印されてきた驚きの事実に辿り着いたのだった。

 戦地において久蔵は後輩パイロットたちに生き延びることを度々諭すのだが、はたして

 実際にはそうした行為がどれだけ可能だったのだろうか?現代においても日本人の中ではさまざまな場面で“同調圧力”が問題とされるが、軍隊においては現代では考えられないような“同調圧力”がかかる中で、久蔵の行為はどこまで可能だったのだろうか?

 またもともと生きることに執着した久蔵がなぜ死を隣り合わせにするような海軍パイロットの道を選んだのかも疑問に残るところである。

             

            ※ 映画の主役・久蔵役の岡田准一です。

 映画では戦闘場面におけるVFXを駆使したシーンが印象深い。あるいはその技術が日本アカデミー賞の受賞理由の一つではないかと思われるくらい印象的である。ちなみにVFXとはビジュアルエフェクト(Visual Effects)の略で、現実にはない映像を作る視覚効果の技術で、アニメなどの映像そのものをコンピューターで作るCGに対して、VFXは実際に撮影された映像を加工したり、合成したりする技術だそうだ。

 映画は最後の最後に驚きの事実を描くが、このあたりはストーリーテーラーとしての百田尚樹の真骨頂なのかもしれない。

 私がリード文で触れた「戦争を賛美していたようには見えなかった」ということに対して、ある映画評論家が「表面的に反戦を唱えながらも、結果的に「日本を取り戻す」民族意識の強化に奉仕する巧みなストーリーである」と主張している。そう指摘されると、私はまだまだ映画を表面的にしか見ることのできない人間なのかもしれない…。

いずれにしても賛否両論の多いこの作品が2015年度の全邦画作品の中で最優秀とされた選定は妥当だったのだろうか?若干の疑問も残った「永遠の〇」だった。

 

さあ、今夜は2014年に日本アカデミー賞・作品賞を受賞した「舟を編む」を観ようと思っている。