田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

生物多様性を支える動物園の役割

2024-06-06 15:39:02 | 講演・講義・フォーラム等
 生物界で “絶滅危惧種” という言葉を良く聞くことがある。地球は多様な生物が生息してこそ健全であると言われているが、それが危うい現状にあるという。絶滅の危機にある生物たちを守ろうと健闘している動物園の現状を聴いた。

    

 昨日(6月5日)午後、北洋大通センターセミナーホールにおいて「ほくよう生物多様性プロジェクト 環境の日セミナー」が開催され参加した。「ほくよう生物多様性プロジェクト」とは、北洋銀行をはじめ北海道、札幌市、北海道環境財団がタッグを組み、生物多様性の保全を考え、行動しようという組織のようである。
 そのセミナーの基調講演として元旭山動物園々長で、現在円山動物園参与を務める小菅正夫氏「北海道の生物多様性保全と動物園の役割」と題して講演されたので、そのお話の内容を振り返ってみることにする。

        

 小菅氏はまず健全な地球環境とは、①多様な自然環境、②多様な植物相、③多様な動物相、があってこそ健全な地球なのだが、現状は①都市の形成、②食糧の生産、③安全の確保、といった「人に都合の良い自然」に作り替えられてきたことによって様々な生物が絶滅したり、絶滅の危機に陥ったりしていると解説した。
   

 自然環境の激変の例として、小菅氏は渡り鳥のマガンの中継地として知られる美唄市の「宮島沼」を例に挙げられた。私も一度だけ「宮島沼」のマガンが早朝に一斉に飛び立つ光景、そして夕方に沼へ戻ってくる光景を見物したことがあるが、数万羽(最大6万羽と言われている)が飛び立つ光景に圧倒された思い出がある。その「宮島沼」の一帯はその昔は低湿地帯であたり一面がマガンにとっては休み処だったという。ところが開発が進むにつれて今や美唄市の中のほんの小さな沼である「宮島沼」が唯一の休み処となってしまったという。その「宮島沼」では鳥たちの鉛被害を防ぐために鉛弾の使用を禁止したり、休耕田に餌用の水田耕作をしたり(冬水たんぼ)して、マガンの保全に努めているという。
 マガンに限らず、今や多くの生物が絶滅の危機に瀕している。
 そこで関係機関を中心として絶滅の危機に陥っている生物の保全に乗り出しているのだが、保全の方法として「域内保全」と「域外保全」の二つの方法があるという。「域内保全」とは「生息地で生態系を維持しつつ種を維持すること」、「域外保全」とは「棲息地以外で生物を遺伝的多様性を維持しつつ種を維持すること」との定義を示された。
 小菅氏は、その「域外保全」の一翼を担っているのが動物園であるとして、「円山動物園」の事例を説明してくれた。
 「円山動物園」では現在、次のような「域外保全」の取り組みをしているという。
 ① 二ホンザリガニの復活
 ② 國蝶 オオムラサキの保全
 ③ トガリミズミの生態研究 ~ 世界初の繁殖
 ④ コウモリの生態研究
 ⑤ オオワシの継代繁殖 ~ 野生復帰の準備
 小菅氏はそれぞれの取り組みについて詳しく説明してくれたが、その内容を復元することは私の力に余るもので割愛したい。
 小菅氏のお話を聴くことはこれまでの何度かあったが、動物園の現場で奮闘した人らしく具体的であり、小菅氏の飾らない人柄もありとても興味深くお聴きすることができた。動物園というと、家族連れのレジャーの場という側面が一般的であるが、その裏で大変貴重な研究や保全活動に取り組んでいることを改めて教えられた講演だった。