清朝帝国の最後の皇帝・愛新覚羅 溥儀(あいしんかくら ふぎ)は自らの意思とは関わりなく数奇な運命にもてあそばされた皇帝だった。映画は史実に忠実でないところもあるそうだが溥儀の数奇な、そして不幸な運命を余すところなく描いていた。
映画は1987(昭和62)年、イタリア・中華人民共和国・イギリス・フランス・アメリカの合作で制作されたもので、上映時間219分の長尺物である。私は5月27日(木)BSプレミアムで放送されたものを録画しておき、昨夜ようやく観たのだった。
各国合作の映画であるが、キャストは溥儀役の主演のジョン・ローンが中国系アメリカ人であったが、その他もセリフが付いている役は中国系アメリカ人が演じていて、セリフは全て英語が使われていた。
※ 写真は現在の故宮(旧紫禁城)です。
溥儀は前帝・光緒帝の直接の嫡男ではなかったが、光緒帝の死により本人の意思とは関わりなく、帝国の実力者だった西太后に指名され、1908年わずか2歳にして第12代皇帝に即位されたことから彼の数奇な運命は回り始めた。
溥儀が即位したころ、清国はすでに統治能力を失っており5年後に辛亥革命によって溥儀は退位するが、当時の中国は西欧各国、あるいは日本軍の干渉、それに続く世界大戦、大戦後に誕生する共産党政権と激動の中で、溥儀もまた時代に翻弄され続けたことは諸兄の知るとおりである。
特に日本が満州に進出し、満州国建設に際して元首就任を要請され承諾する。しかし、それは溥儀の思いとは別にあくまで日本の傀儡でしかなく、また満州自体の運命も長くはなかった。その後の溥儀は転げ落ちるばかりであり、観ている方が気の毒になるばかりだった。そして最後は中国の一平民として一生を終える。
映画は中国共産党政権の全面的な協力を得て、清国の皇居であった紫禁城(現故宮)を舞台として撮影されたというが、そのスケール、重厚さは目を見張るばかりである。映画監督を務めたイタリア人のベルナルド・ベルトルッチはその色彩感覚が優れていることで有名だということだが、確かに全体に重厚さを感じさせる色調であったが、私の目から見るとやや暗く、重たい色調かな?と思えた。
私は、愛新覚羅 溥儀については通り一遍の知識しか持ち合わせていないが、彼の数奇な運命を演じたジョン・ローンのやや線が細く、頼りなげな表情が溥儀の不幸な生涯を一層色濃く表現していたように思えた。
長尺物(129分)の映画だったが、見応えのある映画だった。