札幌に残る古い倉庫ということで、私はすっかり「札幌軟石」で造られた倉庫をイメージしていた。しかし、訪ねて行ったところに現れたのは「札幌軟石」の灰色の壁ではなく、赤茶色をしたれんがの壁の倉庫が現れた…。
「旧沼田家りんご倉庫」は主要道の「水源地通」に面して建っていた。実は沼田家ではほぼ同じ住所のところに「沼田家住宅旧りんご倉庫」という札幌景観遺産の指定を受けた倉庫があったが、こちらはすでに解体されてしまい指定が解除された建物もあったようだ。
リード文に記したが倉庫は予想と違いれんが製だった。考えてみれば近くの江別市はれんが製造が盛んな街であったことから建築素材として優れている(耐熱性、蓄熱性、耐火性、etc)れんがを使用することは理に適ったことだったのだろう。
さらには赤茶色をしたれんがの色と、目地として使用する白い漆喰の対比が美しく美的にも優れた建物である。
資料によると、この「旧沼田家りんご倉庫」は、軒下にれんがを蛇腹に組み、ひし形タイルを付けるなど、れんが職人の長浦数雄のこだわりがれんが積みの随所に見られると説明されている。
現在はカフェ「LLOYD’S COFFEE 西岡店」として利用されているということだったので、私は内部見学を兼ねてコーヒーを味わおうと入店したのだが、スタッフから「テイクアウト専門です」と話されたことから、ゆっくりできないことが分かり内部見学を断念することにした。
《旧沼田家りんご倉庫 情報》
◇所在地 札幌市豊平区西岡4条10丁目7-1
◇建設年 1953(昭和28)年
◇構 造 れんが造
◇指定年 2007(平成19)年3月30日
◇その他 現在「LLOYD’S COFFEE 西岡店」として活用
内部見学は、お店利用者のみ。
◇問合せ ☎011-855-3939
◇訪問日 2021年10月4日
一方、「旧中井家りんご倉庫」は同じ豊平区ではあるが、より札幌市の中心に近い平岸に建っているが同じ日に訪れた。主要道からは外れたところに建っていたが、調べてみると元々は主要道である「平岸通」沿いに建てられていたという。それを1988(昭和63)年に建物ごと動かす曳家(ひきや)という方法で20mほど離れた通りから少し奥まった現在の位置に移されたそうだ。外壁の感じは「旧沼田家りんご倉庫」と同じれんが造りのため似た印象だった。これも資料から得た知識だが、れんがの断熱性をより高めるために中空を設けてれんがを積む「小端空間積み」と呼ばれる工法が用いられているとのことである。
現在倉庫は、「よさこいソーラン祭り」の強豪チームの「平岸天神」の太鼓道場として使用されているということで内部の見学はできなかった。
《旧中井家りんご倉庫 情報》
◇所在地 札幌市豊平区平岸3条2丁目2-1
◇建設年 1935(昭和18)年
◇構 造 れんが造
◇指定年 2006(平成198)年3月7日
◇その他 現在「平岸天神太鼓道場」として活用
内部見学は、事前の許可が必要。
◇問合せ ☎011-841-1803
◇訪問日 2021年10月4日