囲碁の世界など私にとってはまったく別世界の話である。そんな私が現役の棋士から直接お話を聴く機会を得た。ちょこっとだけ囲碁の世界を垣間見た思いだった。
(公財)北海道生涯学習協会が主催する「ほっかいどう学」かでる講座が一昨日10月12日(火)に開催された。このかでる講座も4月を除いてコロナ禍のために今季はずっとオンライン講座での開催だった。それが緊急事態宣言の解除によって6カ月ぶりにリアル開催となったのである。
10月の講座は「着眼大局着手小局 囲碁の世界」と題して、日本棋院 東京本院棋士の遠藤悦史氏(日本棋院8段)が講師として登壇した。遠藤氏は1971(昭和46)年に岩見沢市生まれで50歳である。現在は由仁町在住で、棋士として対局をこなしながら岩見沢市を中心として後進の指導にもあたっているとのことだった。
※ ウェブ上から拝借した遠藤悦史氏の近影です。
ネットで遠藤氏の戦績を調べてみると、382勝351敗と5分以上の勝率で中堅の棋士といったところだろうか?ちなみに今年の7月に現在の囲碁界で話題の仲邑菫二段と対戦し惜しくも敗退したとのことだった。(仲邑二段は10歳で特別プロデビューを果たした女流棋士である)
遠藤氏は受講する私たちのほとんどが私同様に囲碁について素人であるという前提でお話された。したがって、まずは囲碁の歴史について簡単にレクチャーされた。
囲碁は中国で生まれ、日本には7世紀ころ伝えられたといわれ、当初は貴族を中心に楽しまれたという。その頃の言葉に「琴棋書画(きんきしょが)」という言葉があり、高貴な身分の人々のたしなみとされていたそうだ。
※ かでる講座で講義をする遠藤悦史氏です。
その後、安土桃山時代ころから囲碁に秀でた者は「碁打ち衆」と呼ばれ時の権力者(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)らに庇護されことがプロ棋士の始まれとされているとのことだった。その「碁打ち衆」の初代名人と言われたのが「本因坊算砂」と名乗った京都・寂光寺の僧・日海だそうだ。
その後、現代の囲碁界の話に移り、現在は日本棋院、関西棋院併せて486名の現役棋士たちが七大タイトルを競っているという。その七大タイトルとは◆棋聖、◆名人、◆本因坊、◆王座、◆天元、◆碁聖、◆十段の七つである。過去には井山裕太八段が七大タイトルを独占していたこともあったが、現在は井山八段が四つのタイトルを保持し、他は3人の棋士が分け合っている状況だという。
話の最後は、囲碁のルールを簡単に説明され、7×7の格子状の盤で受講者に考えさせる場面があった。場面が限定されて考える分にはなんとなく付いて行けたが、これが本来の19×19の格子状の盤となると、もうどこに目をやったら良いのか皆目見当がつかない、というのが正直なところだった。
※ 遠藤氏の講義を聞き入る受講生たちです。
私のような凡人から言わせると「いったい棋士たちの頭の中はどうなっているのか?」と思うのだが、囲碁にかぎらず各界におけるプロと言われる人たちは持って生まれた才能と努力によって現在の地位を得たのである。今回のお話を聴いて、プロの世界の厳しさを実感するとともに、遠藤氏の囲碁界における今後の健闘を祈りたいと思った。
なお演題の「着眼大局着手小局」は良く聞く言葉であるが、今回の講座では特にそのことには直接は触れなかったように思われた。