8月3日(木)夜の「道新フォーラム」に続いての札幌冬季五輪開催の賛否を考える討論会である。今回も多士済々の論客が登壇した。特に杉村太蔵氏と佐藤のりゆき氏のやりとりは賛成、反対論者の考え方の違いを浮き彫りした論戦だった。
一昨日(8月21日)夜、共済ホールにおいて札幌青年会議所主催の表記討論会が開催されたので参加した。今回は「道新フォーラム」の時よりはたくさんの聴衆を集めて(新聞報道によるとおよそ参加者は360名とあった)の討論会となった。討論会の登壇者は次のとおりだった。
◆秋元克広 氏(札幌市長)
◆田原総一朗 氏(ジャーナリスト ※オンラインでの参加)
◆杉村太蔵 氏(タレント)
◆佐藤のりゆき 氏(TVキャスター)
◆大川哲也 氏(弁護士)
◆船木和喜 氏(長野オリンピック金メダリスト、経営者)
ファシリテーター 佐藤麻美 氏(フリーアナウンサー)
登壇者の札幌冬季五輪に対する賛否の色分けは、田原氏、杉村氏、船木氏が賛成、佐藤氏は反対、大川氏は懐疑的といった色分けだった。また、秋元氏は招致の当事者であるから当然のように招致に市民の賛意を得たいという立場である。
このような中で、リード文でも触れたように両方の立場を代表するような形で、杉村氏と佐藤氏がそれぞれの考え方の違いを浮き彫りにしてくれたので、そのことを中心としてレポすることにしたい。
その前に、「道新フォーラム」をレポする際も、私の立ち位置について述べた。(その時の内容は8月7日の拙ブログをご覧ください)私はこの問題に対してどちらかというと消極的賛成、あるいは条件付き賛成という立場であることをはっきりさせておきたい。だから、私のレポには多少バイアスがかかっていることを前提にしてお聴きいただければと思います。
杉村太蔵氏は言う。「札幌市は施設については更新時期に来ている施設は整備するが、五輪のために施設を新設することはない。運営費についてはスポンサー資金(民間資金)で運営すると言っている。そのことを信用して開催を後押ししてほしい」と訴えた。それに対して佐藤氏は「いざ開催が決まると、計上された予算の3倍はかかり、無駄な税金を投入することになるから誘致を返上すべきだ」と訴えた。これに対して杉村氏は「札幌市は運営費に税金は使わないと言っている。それほど札幌市を信用できないのなら、佐藤氏自身が組織委なり、組織内部に入って眼を光らせれば良いのではないか?」と問うたが、それには佐藤氏は答えなかった。
このことを皮切りに佐藤氏は、秋元氏が挙げた「五輪開催によって札幌の国際的な地位をさらに向上させたい。そして札幌へのインバウンド客の増加策の一つとしたい。etc.…」について佐藤氏は「札幌はSNSなどで認知度は十分に高まっている。今さらオリンピックでもない。観光客が来ることなどない。税金の無駄遣いは許せない。」などとことごとく反論し、さらには「秋元氏は公にはできない密約をどこかとしているのではないか」などと述べ、あきらかに秋元氏の感情を逆なでするかのような発言に終始した。こうした佐藤氏の発言に対して秋元氏は敢えて反論することもなく大人の対応をしていた。
私は議論を聴いていて、佐藤氏のような手法(論法)を苦々しい思いで聴いていた。論争をする際、論争相手の感情を逆なでするような手法(論法)は方法としてはあり得るのだろう。しかし、冷静に議論を聴こうとしている第三者には、そうした手法(論法)は聞き辛いだけである。
対して杉村氏はどうだったかというと、そうした佐藤氏の発言に乗ることはなかった。杉村氏は「薄口評論家」などと有難くない代名詞をマスコミから与えられているが、長年テレビでコメンテーターを務める中で鍛えられ(?)、けっして偉ぶることなく我々一般人の代弁者としての役割を務められるようになったと思う。
その他の登壇者はどうだかったというと、弁護士の大川氏は法律家としての立場から慎重論に終始したが、非常に分かりやすい解説だった。その賛否については明らかにしないまでもあくまで慎重論に終始していたと感じた。
田原氏はオンライン参加のためか、どうも氏の発言は今一つかみ合わないまま終始した感じだった。
そして船木氏の場合は、直接議論には加わりたくないといった意志が感じられ、「札幌で開催してほしいが、選手の立場としては歓迎されない中で競技はしたくない」的な発言をされていた。
会場には、先の「道新フォーラム」の際もそうだったが、今回も明らかに反対派だと思われる人たちが一定数に入場していて、佐藤氏の発言に拍手を送っていたのが目立った。
この北海道・札幌2030冬季オリンピック・パラリンピック誘致の問題は、まだまだどうなるのか予断を許さない状況だと思われる。今後の推移を注意深く見守っていきたいと思っている。