トークイベントに登場したお二人は、今回世界遺産に登録された縄文遺跡だけではなく道内のさまざまな遺跡発掘に携わった方である。遺跡発掘にまつわるあれこれを楽しく語ってくれた。
8月6日(土)午後、紀伊国屋札幌本店1Fインナーガーデンにおいてトークイベントが開催されたので参加した。トークイベントのテーマは「北の縄文人の素顔 ~遺跡から読み解く、縄文の人々の暮らし~」と題して、札幌国際大学縄文世界遺産研究室長の越田賢一郎教授と、元北海道埋蔵文化センター第2調査部長の三浦正人氏が登壇して語り合った。
越田氏は今回の世界遺産登録について、元々は今から14年前に北海道と北東北の縄文遺跡群を関係者間で「縄文回廊を作ろう!」と起ち上げたのが始まりだったという。それから苦節14年、地元の方々の熱意で世界遺産に登録されたことは関係した一人としてとても嬉しいと語った。氏は「その間はけっして長くはなかった」と話されたが、そこには「よく辿り着いたなぁ…」という感慨があったからだろうか?
一方で、主として道内の遺跡の発掘に数多く関わられた三浦氏は、世界遺産に登録された17の構成遺産だけが素晴らしいのではなく、構成遺産に入らなかった遺跡の中にも素晴らしい遺跡がたくさんあると指摘した。入らなかった遺跡も世界遺産の遺跡群を支えていると話された。
次に「北海道の縄文人の特徴」について語られた。
三浦氏は、その特徴として①冬の雪の暮らし(室内での仕事)、②縄文カレンダー、③鮭の利活用、を挙げた。北海道は特に雪に覆われる冬をどう過ごすかが縄文人にとっても大きな課題だったと思われるが、縄文人はこの間を利用して手工芸の技を磨いたとされ、土器・石器などに高度な技術を発揮している。さらには漆製品や翡翠などの装飾品も手がけたという。また、縄文人は諸外国の地域と違い農耕や家畜の飼育といった生活ではなく、狩猟・採集・漁労を中心とした生活をしていたことは知られているが、そのために一年の中で何をどうする、というカレンダーが確立していたのではないか、と指摘した。さらには、道内の河川に遡上する鮭(サケ)を食糧として、保存食として、あるいは履物、衣類などと十二分活用していたと語った。
一方で、越田氏は北海道の縄文人の特徴を「森と海と雪」と表現した。”森” については落葉紅葉樹林が北の地域の食物連鎖の源であるとした。”海” については、北海道の沖合で暖流と寒流が交差する漁場の宝庫だということ。そして “雪” は手仕事をする期間で、工芸品が発達するとともに、春を待つ生活が生活のリズムを作ったとした。
トークの最後に二人は、遺跡というのは壊される(埋め戻される)のが前提なのだが、残されるということは考古学的価値が高いというだと指摘した。この価値をどう伝え、発信していくかが関係者にとって問われる点である。道民の皆さんには今まで以上に関心を持っていただき、遺跡だけでなく景観と共に総合的な観点で地域の発展を図ってほしい、と結んだ。
今回、北海道・北東北の遺跡群が世界遺産に登録されたことを契機に、私のような俄かファンが増えたことは間違いない。このことが契機となって北海道が、北東北が縄文遺跡の聖地となって、全国の遺跡ファンで賑わうことを期待したい。
※ なお、両氏の発言については私の方で発言されたことを元に脚色した部分が多いことをお断りしておきます。