金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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72:藤沢モト 『勝負師の妻』

2012-07-03 09:20:57 | 12 本の感想
藤沢モト『勝負師の妻―囲碁棋士・藤沢秀行との五十年』(角川Oneテーマ21)
★★★★☆

いや~おもしろかった!!

確か、羽生善治『決断力』の後ろの広告を目にして
この本の存在を知ったのだったが、
藤沢氏のことはまったく知らなくてもおもしろい。

アル中、ギャンブルに借金、女性問題、罵詈雑言、
子どもたちには見向きもせず、外に子どもを作ってくる……と、
「ひどい夫」のイメージを構成するありとあらゆる要素を
持ち合わせた感のある夫と、彼と添い遂げた妻の
馴れ初めから現在までをつづった一冊。
旦那さん、
「そんな金なんか、おれが稼ぐ」
って……
家にお金入れてないじゃねーか!!
とツッコミどころ満載なんだけど、
それで「奥さんがかわいそう」という感想が出てこないのは、
負けん気が強く、賢い著者の人柄ゆえなのかしらね。
もちろん、あくまでも著者からの視点でしかないので、
すべてが事実というわけでもないのだけど、
お金がなくても切り抜けちゃう、弱ると家に帰ってくる夫を
見捨てられない、そういう奥さんの才覚と包容力に
結局のところ甘えているのよね……。
愛人一人と協力関係を築くんだけど、別の愛人のことは
腹に据えかねていると見えて結構悪しざまに書いていたり、
「こんど生まれ変わったら、結婚なんかしないで自由に生きたい」
と書いていたりするところも、美しすぎなくて良い。

「スリッパは履いてるんですが、下着もつけてないんですよ。どうしましょう」
という警察からの電話に
「牢屋にでも入れておいてください」
と返すところに笑った。


コメント
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