在宅医療がずいぶんと推進されてきた。その範疇には医師が定期的に往診するもので訪問診療、また定期的に看護師が訪問する訪問看護などがある。最近の施設には訪問看護ステーションというものがあり医師の指示を受けて患宅に訪問し、いろいろな保健指導や医療処置などを行なう。そこで必要なのが医師の記載する「訪問看護指示書」である。看護ステーションはこれをみて医師の指示通りに活動するのであるが医療施設に併設された訪問看護ステーションであればよいが、医師とは無関係に独立した看護ステーションであることも多い。指示を出す医師と看護師とは面識もなく普段も一緒に働いているわけではない。まさにこの「指示書」のみにて看護師が活動するわけである。今までこの指示書に何回も記載したことはある。ところがここの記入欄の中に「緊急時の連絡先、緊急時の対応方法」などを書かせる欄がある。実はこの欄が極めて曲者なのである。
その亡くなった友人の話であるが自分の趣味のサークルにおける同好の士である。ここ10年くらいの付き合いであるが、さすがに趣味に関する薀蓄を語らせたら右に出るものはいなかった。なかなかエキセントリックな性格なので好き嫌いの評価が両極端に分かれるような人であった。自分は彼の薀蓄が好きであったし、論旨の展開も理路整然としており、もし自分が間違えたと認識すればすぐにでも撤回するような潔さが特に好きであった。時々飲みにいったが、彼は下戸なのでアルコールは飲まず食事をしていた。でも彼は酒の席が嫌いというわけでもなかった。ところで最近、小学校の同級生の訃報も聞いた。昔、救命センター勤務医時代にも自分より若い年代の患者さんにおける心肺停止などもよく見かけたのであるが、同年代である自分の知己の訃報を聞くにつれ今更ながらに複雑な思いになる。刹那的な毎日を送ったほうがこれからはいいのかもとフッと思うこともある。
友人のMが一昨日亡くなった。昨年の夏、夜中に耳元で蚊の羽音が聞こえたので無意識のうちに手で叩いたら自分の耳を叩き、それから耳鳴りが続いたという。耳鼻科で診てもらった所、ステロイドの内服が投与された。程なくして下血が見られたので相談を受けた。たぶん典型的なステロイド潰瘍による出血だろうから近くの医療機関で胃カメラをするよう勧めた。胃カメラの結果は食道がんであった。大学病院での精査の結果はすでに腎周囲のリンパ節まで転移しているとのこと。しかも悪いことに組織型は通常は扁平上皮癌が多いのであるが、彼の場合は治療プロトコールも十分確立されていない腺癌であった。胃がんに準じたプロトコールでいくとすでに外科手術の適応はなく抗がん剤などの選択しかなかった。あれから1年、失意の中で辛い抗がん剤治療の甲斐もなく永眠された。極めて残念である。(合掌)
さてその講演会での話である。残念ながらワクチン接種に平行して、頻度こそ高くはないが、かならず一定の確率で接種事故、副反応の重篤化がある。これは綿密な問診をしてアレルギーの有無を尋ねたり、また綿密な診察(まあこの診察もあまり意味はないが・・・)をしたりしても100%防ぐことができるわけではない。ワクチンは生物学的な製剤であり、特に生ワクチンは弱毒化させたとはいえ病原体そのものを体内に注入するわけである。ワクチンにて生命にかかわるような事故は、飛行機事故で亡くなる確率よりもずっと低いものの、おこりうる事象なのである。それでも医療裁判を起こされるとほとんど医療側は負けているのだそうである。この話を聴くと「どんなに注意義務を果たしても、事故は一定の確率でおこりうる。そしてもしおこっても自分を擁護できる可能性はほとんどない」ということになる。それでも医師会の先生方は躊躇なくワクチン接種事業に手を上げて参加しているのであるから、掛け値なしにすごいと感じている。ワクチン事故に関して被害者への補償は国が行っている。しかしワクチンを打った医療側に対しては何の配慮もなく、ただ司法判断のいいなりになっているだけの姿勢にはいかがかと感じるのであるが・・・。
また講演会でも言っていたが接種回数が増えれば紛れ込み事故もそれに比例して増えるわけなので、複数ワクチンを同時接種し接種回数を減らすことは意義があると述べていた。また日本では単独接種が多いため、トータルでのワクチンの接種回数は極めて多くなる。そのため乳幼児期の接種スケジュールはJRの時刻表ダイヤのごとく超過密状態となる。しかも熱が出た、風邪をひいたなどと接種できない状態は絶対あるので、そこでスケジュールの軌道修正が余儀なくされ複雑極まりない。親御さんもスケジュールの組み立てや立て直しに頭を痛めるであろう。時々「ワクチン接種のスケジュール調整の相談に乗ってほしい」と依頼があるが、多忙な外来業務の中でのこのような複雑な相談は正直閉口してしまう。ネットで「VPD(ワクチンで予防できる疾患)」で検索すると、生まれて2ヶ月からのワクチン投与スケジュールの雛形が入手できるのでそちらを参照いただきたい。ふぅ~便利な世の中である。
ポリオワクチンの不活化製剤接種が9月よりはじまった。医師会主催の予防接種全般に関する講演会があったので聴きにいった。とても勉強になった。ワクチンには任意や義務の接種があるが、これらは打たなくてはならない、とか打たなくともよいという区分けではなく、ただ行政が接種費用の予算を組めるかどうかで分けられているに過ぎないのである。医学的には打たなくともよいワクチンはないのである。諸外国と比べると日本ではかなりの接種に関する制約が多い。例えば不活化ワクチン打ったら次のワクチンまでは6日間あけなさいとか、生ワクチンを打ったら以降27日間は他のワクチンを打てませんよ・・・等。同時接種(一回の受診で複数ワクチンを打つこと)をすれば接種回数は少なくて済むのだが、日本では副反応が起こったら、どのワクチンが「悪さ」したのかわからなくなるので同時接種は特定ワクチンにしか認められていないのである。まあ別にどのワクチンが悪さをしたのか分かったとしても、特にその対応や治療法が変わるわけではないので救命率に差はない。とすると同時接種を推進したほうがいいのであるが・・・。
結局、調べたらCRのPCのマザーボードの故障だそうだ。修理に5日間もかかってしまった。冷汗モノの1週間だった。しかも修理代に諭吉札8枚強もかかると・・・。業者いわく「このような故障は初めてなんですよー」と。初めてでも百万回あってもそんなことはどうもいいのだ。こちらとしては予約された患者さんにお帰りいただいたこと、そしてレントゲンが必要であるが撮影できず、綱渡りで冷汗モノの診療をしてしまったことが辛かったのである。特に予約患者さんには申し訳ないことをした。幸い、快くご理解いただけたので助かった。もしこれが遠方からの患者さんで、しかもわざわざ仕事を休みこの日に予約いただいた方であったら激怒されたであろう。予約患者さんには何があってもこちらの都合で「契約不履行」があってはならないと実感した。開業してもうすぐ5年、先日内視鏡器機も故障した。そろそろいろいろ機械がヘタリはじめる時期かもしれない。という前に実は私の身体がヘタっているのだが・・・。ふぅ~・・・。
そんなこんなで数日間は手足のレントゲンが不鮮明なままの状態が続いた。弱り目に祟り目である。肘内障の患児がきた。でも「たぶん肘内障」であり骨折だって否定はできない。レントゲンを取りたいところであるが、とりあえず整復してみた。ところが整復感であるクリック音がはっきりしない。しかも余計に泣き始めた。(え? もしかしたら脱臼ではなく骨折かも?)などという思いが胸をよぎる。数回整復処置をしていたら、泣き止んで肘を動かし患肢を挙上するようになった。内心ホッとした。もし骨折だったら整復動作で余計にずれていたかもしれない。「すみません今日はレントゲンとれないんだ。このまま様子見て、もし痛がるならまたつれてきてね」といって帰した。危ないところだった。実は他にも打撲の患者さんは数名来ている。「大丈夫ですよ~レントゲン取らなくても」と気軽に(一抹の不安も持ちながら)言ってしまっている。でも万が一他院にいってレントゲンで骨折でも見つかったならうちの信用問題にもなる・・・。オイっ! 早くCRなおせよっ!(泣)