きっと、いいことあるよね!

母(sake)と息子(keke)の日々の記録。
お出かけ写真と料理など。

sakeの初恋

2013-05-03 | 女だから思ったこと
昔聴いた音楽や、本を読んでいるうちに昔のことを思い出した。
そう言えば初めてつきあった先輩がいたんだった。
誘われて何回か一緒に出かけた。

「キミの作ったお弁当が食べたい」と言われて私は戸惑った。料理のリの字も無かった頃だ。
しかも当時の自分は超好き嫌いがあったので、作るどころか自分が食べれるモノを選ぶだけでも一苦労の時代である。
その上、母親には自分のプライベートを超秘密にしていた。
とにかくデリカシーが欠落している人だった(当時の回想)ので、男とデートとか言ったら近所中にしゃべるかもしれない底知れぬパワーを秘めていたのだ。

コソコソ母の居ない隙を狙いつつ本を見ながら作ってみたのは「ロールパンのサンドイッチ」だった。
片方は何を挟んだか忘れたが、もう片方は覚えている。リンゴのスライスとピーナッツバターをはさんだのである。(意外においしかった)
なんせ母親の居ない隙に初めて作るのだから大変である。それでもどさくさにまぎれて挟んで持っていった。
こうしてしょぼいロールパンが幾つか並んだ弁当ができあがった。

私は彼が好きで、出かけるのを楽しみにしていたのにも関わらず、その一方でとてもしんどい思いをしていた。
それは車酔いが激しかったからである。
我が家は父も妹も車関係の仕事をしていたし、母も当時の人にしては珍しく運転大好きな人だった。そんな訳で出かけるのは常に車であったが、私は車酔いがハンパなかったのである。
(そんな私がその30年後今度は運転席に座って、視界が180度開けるとは誰が予想していただろう。)

それで私は車に酔うか、寝てごまかすかしかなかった。
この弁当にこの有様。


こうして何回か一緒に出かけた後、その先輩は卒業して社会人になった。
もう連絡ナシに会うことはできなかった。

私はもしかしたら連絡が来るのでは、と思ってずっと待った。
1ヶ月、2ヶ月と時間は経っていった。
1度ぐらい思い切って電話をしたことがあったかもしれない。
当時は携帯がないので、家に電話するしかなかったのだ。
仕事で家に帰るのは毎晩夜中ですよと言われた。そして2度も3度も電話する勇気はなかった。

そんな時にクラスメートのI君に告白された。
「他に好きな人がいるから」と断わった。
好きな人がいるのに他の誰かとつきあうなんて考えられなかったから。


やがて私はある噂を耳にする。
その彼が女の人と歩いているのを見かけた、と言う噂である。
心ならずともシュンとなった。
でもその時キライにもならなかったし恨みもしなかった。
車酔いはひどいし、弁当はろくなものも作れない自分では仕方が無いと思ったのだ。
そもそも私たちって付き合っているうちに入っていたのだろうか。彼は私が好きだったのだろうか。


そしてK先輩と言う人から告白された。
もうフリーだし断わる理由がなかったから、付き合うことにした。
おおぴらに付き合った。授業も取れるものは合わせたし、学校でも一緒にいることが多かった。

そんな頃もう忘れていたはずの彼から連絡がきた。
私はのこのこと約束の場所に行った。
何時間か過して、帰り際彼はひと気の無い所に連れ出そうとした時、私はそれを断わった。

彼はとても悲しそうな顔をして「Kと付き合っていることを聞いていたんだよ。だから連絡できなかった。」と言った。
それではまるで私がフッたみたいだ。

いいえ、そんなはずはない。
私はずっと待っていたのに。

でも何も言えなかった。
公然と付き合っているK先輩を裏切ることはありえなかった。

「だから連絡できなかった」と言うのは、優しいウソにちがいない。
きっと私がフッたことにしてくれたのだろうと考えた。
そして、私達は礼儀正しくサヨナラをして、それから二度と会う機会はなかった。


ある日付き合っているK先輩が言った。
「前にIに好きな人がいるって言ったでしょ」と言って、「Iはsakeちゃんの好きなのは俺だって言うんだよ。」
それを聞いて告白したんだ、と言う。

愕然とした。
それじゃ待って、どこかのボタンが一つ違ってたらここでこうしていることもなかったの?


私はたまに彼の住んでいた街を通り過ぎて、思い出す。
もしかしたら幾つかの恋の中で唯一きれいに思い出せるのが、これだったような気がして。