雑花錦語集・巻三十一にある「変性男子の記」は、よくよく読むとどうやら同性婚の話のようだ。
ようよう読み下しをして改めて精読すると、そういう次第で驚いてしまった。
菊池郡水島村権助娘きん当時廿六歳にお成り候
容儀諸人に勝しながら男を持年をきらひ手業彼是
人に勝し第一心立触して孝心専に有之候
後は近村より此娘もらいぬ者はなきよし親も一生
のかた付ゆへいろ/\すゝめ候へ共とくしんせず
田畑持条にて入婿かれこれも所々より申条候へ共
嫁入を断申候
諸方江も此年承及近き比は左様成ん相談もなし
此娘近所の娘おとくといふものと昼夜を分かず
ぬいはり織機をも一所にいたし居候がおとくはや
七月のくわいたいと成りおとく親共不審たへづ
段々吟味いたし候へば彼きんと夫婦のかためい
たし申候よし
とく申候へば女と女と左様の事傳ふ申よし
それよりはかくきんを吟味いたし候所に持もの
此図のごとくなり(以下略)
其後の顛末については判りかねるが、両家の親御さんのお気持ち察するに余りある。