Sightsong

自縄自縛日記

マーク・ジュリアナ『Family First』

2015-09-05 08:34:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

マーク・ジュリアナ『Family First』(AGATE、2015年)を聴く。

Mark Guiliana (ds)
Chris Morrissey (b)
Shai Maestro (p)
Jason Rigby (sax)

トーンのグラデーションで勝負するようなジェイソン・リグビーのサックスは、一聴スムーズであり、普通のジャズ・カルテットに聴こえてしまう。しかし、それぞれの楽器を聴いていると、まったく普通でないことがそこで起きていることがわかる。

ジャズ・ドラムスが、叩く者と聴く者との身体の共鳴によって成立する制度なのだとすれば、これはその閾をやすやすと逸脱している。ジュリアナのドラムスに耳を追従させようとすると、身体の共鳴を超えてついていけなくなり、かれが広大で微細な領域にじつに緻密なリズムをいきわたらせていることが実感される。まるでグレッグ・イーガンの小説を読んでいるようだ。

シャイ・マエストロのピアノはその多次元空間で軽々と踊り、しかも骨太。実は今回の来日演奏を聴きにいくつもりで、ソロピアノでどのような世界を見せてくれるか楽しみなのだ。


神田界隈の讃岐うどん、丸香と一福

2015-09-05 00:00:23 | 食べ物飲み物

90年代頃の東京には旨いうどん屋がなかった。いやあったのかも知れないが、いまのようにネットで情報を入手できるような状況にはなかった(そういえば、『ぴあグルメMAP』を愛用していた)。もちろん、立ち食いのうどんはまるで違う代物であった。21世紀に入り、「はなまるうどん」が東京に進出して店舗を増やしてきたことはかなり嬉しいことではあったのだが、やはり、高松の「源芳」や「かな泉」で食べたうどんは別次元で、そのような一期一会のうどんを食べたいと願っていた。

そんなわけで、2003年、駿河台下に讃岐うどんの「丸香」ができたときはセンセーショナルだった。先日久しぶりに行ってみると、相変わらず旨すぎるうどんだった。麺にはコシがあり、いりこ出汁。以前は「かま玉」が好みだったが、いまは「かけ」こそが王道だと思っている。ちくわ天、げそ天、いろいろなすり身の丸天などをのせて食べるときには幸福感で一杯になる。

この「丸香」の磁場がまだ消えていない神田淡路町に、やはり香川県を本拠とする「一福」が店を開いたというので、矢も楯もたまらず駆けつけた。「かけ」に、ちくわ天とげそ天。やはりいりこ出汁ながら、「丸香」よりもマイルドな味である。麺も「丸香」ほど自己主張するコシの強さがあるわけではない。もちろん、キャラが立った「丸香」も、やさしい印象の「一福」も、どっちも旨い。

めでたしめでたし。