マーク・ジュリアナ『Family First』(AGATE、2015年)を聴く。
Mark Guiliana (ds)
Chris Morrissey (b)
Shai Maestro (p)
Jason Rigby (sax)
トーンのグラデーションで勝負するようなジェイソン・リグビーのサックスは、一聴スムーズであり、普通のジャズ・カルテットに聴こえてしまう。しかし、それぞれの楽器を聴いていると、まったく普通でないことがそこで起きていることがわかる。
ジャズ・ドラムスが、叩く者と聴く者との身体の共鳴によって成立する制度なのだとすれば、これはその閾をやすやすと逸脱している。ジュリアナのドラムスに耳を追従させようとすると、身体の共鳴を超えてついていけなくなり、かれが広大で微細な領域にじつに緻密なリズムをいきわたらせていることが実感される。まるでグレッグ・イーガンの小説を読んでいるようだ。
シャイ・マエストロのピアノはその多次元空間で軽々と踊り、しかも骨太。実は今回の来日演奏を聴きにいくつもりで、ソロピアノでどのような世界を見せてくれるか楽しみなのだ。